有価証券報告書-第97期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/24 13:51
【資料】
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【項目】
147項目

研究開発活動

当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で330名であります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は4,722百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。
(1) 特殊鋼鋼材
主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および製鋼、精錬、凝固から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は958百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・破断分割型コンロッド用高強度非調質鋼
自動車エンジンに用いられる破断分離型コンロッドでは、強度と破断分離の容易性が必要ですが、特に最近は、燃費改善を目的とした高強度化が強く求められています。当社では、鋼材成分を最適化することで、破断分離性を確保しつつ、自動車用としては最高クラスの強度が得られる新たな非調質鋼を開発いたしました。本開発鋼は自動車用コンロッドに採用され、2020年から量産を開始しております。
・ホットスタンプトリム金型用鋼
近年、生産性改善のため、従来のレーザ加工に代わり、ホットスタンプの熱間成形中にプレス機内で穴あけ、トリム加工を実施するプレスメーカーが増えています。今回、硬さと熱伝導率に優れたホットスタンプトリム金型用の材料を開発し、一部のユーザー様で採用されました。今後、さらなる採用拡大を目指してまいります。
・高耐食高靭性プラ型用鋼「NAK86K,PAT868S」
自動車のヘッドライト製造に使われる金型用鋼として、NAK80と同じ硬さで、割れ難く錆び難いNAK86Kを、また、ガラスフィラー含有樹脂や腐食性樹脂など金型への高負荷化に対応できる金型用鋼として海外で多く使用されるH13と同じ硬さと割れ難さで、錆び難いPAT868Sを開発いたしました。両鋼種共にプラスチック成形技術の変化とユーザーの動向にいち早く応えた商品で、順調に売り上げを伸ばしております。
(2) 機能材料・磁性材料
主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は2,838百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・パ-マロイ箔「STARPAS」
自動車の電動化や自動運転、IoT機器で課題となる磁気ノイズの抑制用にパ-マロイ箔を開発し、販売を開始しました。当社の軟磁性材料を、kHz~MHzの帯域でもっとも効果が高まるように箔化し、さらに熱処理条件の適性化を図りました。また、打ち抜きなどの加工も可能であり、ラミネ-トによる積層品の提供も行ってまいります。
・赤色点光源LEDのフラットタイプ表面実装部品(SMD)「MED7P14-SMF-1」
お客様からの光出力向上や生産性向上、高密度実装化への高い要求から、世界最高レベルの光出力を有する赤色点光源LEDの表面実装部品を開発、リリースいたしました。今後の需要拡大が見込まれる工場自動化、ロボット、3Dセンシング等への用途拡大を目指してまいります。
・AI(機械学習)を用いた丸棒外観検査
星崎工場で製造される耐食・耐熱丸棒鋼は、表面の酸化スケールを除去するためピーリング加工をして出荷しております。表面疵のない高品質な製品を提供するため、外観検査技術開発を進めております。特に近年注目されているAI技術を使った検査技術の実用化を目指しております。
(3) 自動車部品・産業機械部品
主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は801百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・Ni基超合金組織制御技術の確立
鍛造プロセスにおける組織変化をモデル化したシミュレーション技術を活用し、渋川工場の自由鍛造7000トン油圧プレスでは未経験領域であった大型で難加工な産業用ガスタービンディスクの製造技術を開発しました。従来の型鍛造品対比で安価かつ短いリードタイムで提供することが可能になり市場の期待に貢献しております。
(4) エンジニアリング
主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。
当事業に係る研究開発費の総額は123百万円であります。