有価証券報告書-第97期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/24 13:51
【資料】
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【項目】
147項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
グループ経営理念を「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」と定め、大同特殊鋼グループとして、素材または素材に関する技術をもって素材が秘めている可能性をひきだし、新たな価値を創造することで、人と社会の未知のニーズに応え、その発展につながるよう貢献し続けることを目指しております。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
今後の世界経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン普及により、徐々に正常化に向かうことが期待されますが、変異種の流行による感染の再拡大など、先行きについては依然として不透明な状況にあります。当社の主要需要先である自動車関連の受注は、今後も緩やかな回復が見込まれますが、足元の半導体不足による自動車メーカーの減産リスクに注視していく必要があります。また、原材料価格の高騰や、米中の通商問題に起因する景気後退懸念など、当社収益に影響を与えるリスク要因も複数認識しております。このような状況下、固定費を中心とした徹底的なコスト圧縮策を引き続き推し進めることで、事業への影響が最小限となるよう努めてまいります。
他方、中長期的な視点では、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが地球規模での大きなテーマとなっています。お客様におきましても地球温暖化ガスの削減が大きなテーマとなっており、自動車の電動化、また、自動車の内燃機関や航空機のジェットエンジンの高効率化などが求められています。当社は、機能性に優れた素材を提供することでこれらお客様の技術革新を支え、お客様とともに持続可能な社会の実現と当社の中長期的な成長に取り組んでまいります。
なお、2020中期経営計画の結果および2023中期経営計画の方向性については次のとおりです。
<2020中期経営計画の結果>2020中期経営計画では、下記3点の行動方針のもと一定の成果を挙げましたが、同時に今後の対処すべき課題も見えてまいりました。
(行動方針)
①ポートフォリオ改革(構造材料から機能材料へ)
成長機会の多い機能材料・磁性材料セグメントへ積極投資を実施し、売上高トップセグメント化を目指すと同時に、全社的製品ポートフォリオを改革し、利益の最大化を目指してまいりました。
知多第2工場のステンレス棒鋼加工ラインの増設を始めとした生産能力の増強投資を実施し、ステンレス鋼、高合金、粉末といった継続的に伸びていく需要を確実に捕捉できる生産体制を整え、長期的に大きな市場成長が見込まれる磁石事業についても、中津川先進磁性材料開発センターを開設し、次世代の革新モーター技術とそれにふさわしい搭載磁石に関する研究を強化してまいりました。
これらの結果、目標であった機能材料・磁性材料の売上高トップセグメント化を達成しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、投資した設備の効果が最大限発現できておらず、この点は今後の課題となりました。
②事業基盤の強化(損益分岐点改善、経営体質強化)
長期継続的な成長を実現するため、事業全体の基盤である鋼材事業に関しては、ベース値上げにより一定レベルの再生産可能なマージンを確保し、また固定費を中心とした徹底的なコスト削減の実施により、損益分岐点の改善を図ってまいりました。
将来の国内特殊鋼需要の減少を見据え、さらなる損益分岐点の改善と激しく変化する外部環境に適応していくことが今後の課題と認識しております。
③事業の再構築
ターボハウジング部門において、市場競争の激化を受け、収益性が低下したものと判断し、国内では固定資産の減損処理を実施し、また中国事業についても清算しました。流通・サービスセグメントにおいても、ホテル・ゴルフ場の営業を停止しました。今後も選択と集中を進め、資本効率を高めてまいります。
(経営指標)
2020年度(実績)2020年度(目標)
売上高4,127億円5,800億円
営業利益100億円470億円
親会社株主に帰属する当期純利益45億円300億円
ROS(売上高営業利益率)2.4%8%
ROA(総資産経常利益率)2.0%7%
ROE(自己資本利益率)1.6%9%
設備投資額(3年累計工事ベース)963億円950億円
配当性向33.0%20~25%

<2023中期経営計画の方向性>昨今では、自動車の電動化や脱炭素社会への移行が加速しております。これら激変する外部環境に適応するため、2030年のあるべき姿を描いたうえで、そこからバックキャストで中期ビジョンを策定してまいります。同時に、2020中期経営計画で見えた課題の解決を加えながら持続的な成長を達成するため、以下の取り組みを実施します。
(組織体制の変更)
①特殊鋼鋼材事業 <再編>自動車電動化の加速等による中長期的な国内特殊鋼鋼材の需要減少に備え、営業部門はビジネスユニット制を廃止し、体制を大括り化した営業本部に再編するとともに、製造部門も一元的に統括できる生産本部体制とすることにより、基軸となる鋼材事業の強靭化を図ってまいります。また、海外営業部を設置し、成長する海外特殊鋼需要の捕捉を加速してまいります。
②素形材・工具鋼事業 <統合>自由鍛造品を扱う事業を統合し、効率的な生産を志向することにより、コスト競争力を強化してまいります。また、素形材事業は高合金海外営業部を、工具鋼事業は工具鋼海外営業部を、それぞれ設置し、海外市場における拡販を強固に推進してまいります。
③機能製品事業・次世代製品開発センター <新設>自動車のCASE(*)領域、先進医療、次世代エネルギー分野などで需要拡大が見込まれる機能製品群(粉末・帯鋼・電子部材)に関し、これら製品群の成長を包括的に推進するため機能製品事業部を新設するとともに、萌芽領域の製品群の事業化を担う次世代製品開発センターを創設し、新規需要を創出してまいります。
*CASE(Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化))
(気候変動対応の取り組み)
当社は、気候変動問題にも積極的に対応するため、「Daido Carbon Neutral Challenge」を策定しており、次の方針により、2050年でのカーボンニュートラル実現を目指してまいります。
①既存技術を結集させた徹底省エネ ②脱炭素電源の活用 ③脱炭素技術の導入
2030年においては、当社の既存省エネ技術の全面展開、CO2フリー電力への切り替えにより、2013年度対比で50%のCO2削減を目指してまいります。加えて、経団連と連携して脱炭素社会の構築に向けた「チャレンジ・ゼロ」のプロジェクト活動も推し進めることで、鉄鋼業界全体のCO2削減にチャレンジしてまいります。
新組織体制での事業計画および気候変動を中心としたESG対応を踏まえた2023中期経営計画については現在策定中であり、決定次第速やかに公表いたします。