有価証券報告書-第98期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/24 12:49
【資料】
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【項目】
154項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
グループ経営理念を「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」と定め、大同特殊鋼グループとして、素材または素材に関する技術をもって素材が秘めている可能性をひきだし、新たな価値を創造することで、人と社会の未知のニーズに応え、その発展につながるよう貢献し続けることを目指しております。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
今後の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和されることで、世界経済の回復が継続すると見込まれます。当社におきましても、自動車関連を中心に一定の需要が見込まれますが、変異種の流行による感染の再拡大や半導体などの部材不足による自動車生産の減少、またウクライナ情勢を起因とした原材料価格の高騰など、収益を下押しする大きなリスクを内包した先行き不透明な環境と認識しております。このような状況の下、原価低減活動のさらなる推進や固定費の徹底的な圧縮策を引き続き推し進めることで、事業への影響が最小限となるよう努めるとともに、再生産可能な価格水準に向けた販売価格の改定を実施してまいります。
他方、中長期的な視点では、世界規模での地球温暖化抑制への取り組みが本格化し、CO2排出量の削減を目的とした社会構造の転換が進展することが見込まれます。当社の主要需要先である自動車産業においては電動化が加速し、内燃機関自動車は2020年代半ばにピークアウトすることが想定されます。化石燃料からグリーンエネルギーへのシフトによる水素など新エネルギー市場の拡大が注目されております。またデジタル革命の加速により、情報通信などデジタル化を支える半導体産業は、今後も持続的な成長が見込まれます。
このような経営環境の中、2030年のありたい姿、および2023年度(2024年3月期)までの3年間を実行期間とする中期経営計画(大同特殊鋼グループ2023中期経営計画)を2021年6月に策定いたしました。2023中期経営計画では、2020中期経営計画の行動方針を深化させつつ、2030年のありたい姿を具現化するため、将来の環境変化に備えた事業活動を推進いたします。
<2030年のありたい姿>当社を取り巻く外部環境が目まぐるしく変化するなかでも、経営理念である「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を実現するため、2030年のありたい姿として[高機能特殊鋼を極め、「グリーン社会の実現」に貢献する]を策定しております。当社グループは、これまで機能性に優れた素材でお客様の技術革新を支えてまいりました。この方針に変更はありませんが、これからの外部環境変化に適応するため、事業の強靭化を進め、環境変化への耐性を強化するとともに、高機能特殊鋼を極めることにより新しい社会ニーズに応えることで、グリーン社会の実現に貢献してまいります。
<2023中期経営計画行動方針>①成長分野のビジネス拡大(将来を見据えた種まき)
今後の成長市場である、CASE(自動車)、半導体関連製品、グリーンエネルギー分野の需要を捕捉するための取り組みを強化いたします。
CASE関連においては、高周速対応減速機用歯車など特殊鋼鋼材については、これまでの高品質歯車用鋼の製造技術に関する知見に加え、特殊表面処理技術を組み合わせることによりさらに信頼性の高いソリューションを提供してまいります。また、主機・補機・センサ用磁石については、中津川先進磁性材料開発センターの最大活用により主機モータ用特殊配向磁石に加え、特徴あるセンサ用および補機用ボンド磁石で新たな需要を捕捉してまいります。
通信・情報分野で一層の急成長が期待される半導体関連につきましても、グループの幅広い高機能製品群でそのニーズを確実に捉えてまいります。
グリーンエネルギー分野においては、高温・高圧水素環境下で耐え得る対水素脆化用鋼の開発、工業炉用水素バーナーの実用化でそのニーズに確実に応えてまいります。
グリーンエネルギー分野、半導体関連製品においては、それぞれの新市場におけるニーズの探索および当社グループが保有するシーズを幅広く捉え、今後の製品戦略・拡販活動へ繋げていくため全社横断型ワーキンググループを設置しております。
②事業体質の強靭化(2020中期経営計画の深化)
外部環境変化への耐性強化、既存事業のプレゼンス拡大を図るため、営業サイドでは適正マージンの確保やポートフォリオ改革により高限利品を拡大してまいります。生産サイドでは堅調なステンレス鋼需要を捕捉するため、2020年中期経営計画に実行した戦略投資の補完として知多工場の製鋼部門を中心に生産上方弾力性改善投資を実行いたします。また長期的な内燃機関向け特殊鋼の需要減少への対応として主力工場間の生産集約、生産性向上投資、歩留向上等の損益分岐点引き下げに寄与する諸施策を今中期より実行し、生産効率向上およびコスト削減を進めてまいります。また生産体制についても、人員の最適配置・適正化、DX推進による省工数・省人化を図り、労働生産性の向上を目指します。
③海外展開拡大
東アジア市場を中心に海外での高機能ステンレス鋼、高合金、工具鋼の売上拡大を目指します。2021年8月にティムケンスチール社の中国営業拠点の全持分を取得いたしました。本件を契機に、ティムケンスチール社との協業関係をさらに深化させ、中国市場向けのSBQ製品(Special Bar Quality)のさらなる拡販および高合金や特殊ステンレス鋼の販売力強化に繋げてまいります。
また、海外規格対応による欧米市場の開拓、円安環境下を活かした自由鍛造品を中心とした海外需要の捕捉など、販売強化に向けた取り組みを加速いたします。
④ESG経営の推進
当社ではサステナビリティを経営の中核に位置付け、SDGsなど社会課題の解決による持続可能な社会の実現と、持続可能な企業価値向上の両立を目指しております。この取り組みをより強力に推進するため、2022年4月1日付でサステナビリティ委員会を設置するとともに、サステナビリティ施策を全社に展開・推進する専任組織としてサステナビリティ推進室を設置しております。
またESGへの取り組みについては以下のとおりであります。
環境の面では、2030年度でのCO2排出量を2013年度対比で50%の削減を目指します。当社は2050年でのカーボンニュートラル実現を目指し、「Daido Carbon Neutral Challenge」を策定しましたが、その過程である2030年においては、自社・既存省エネ技術の全面展開、CO2フリー電源への切り替えにより、CO2排出量削減を推進いたします。加えて、経団連と連携して脱炭素社会の構築に向けた「チャレンジ・ゼロ」のプロジェクト活動も推し進めることで、鉄鋼業界全体のCO2削減にチャレンジしてまいります。
社会の面では、引き続き健康経営やダイバーシティの推進など、これまでの取り組みを深化させ、従業員を始めとした各ステークホルダーからの信頼性確保に努めてまいります。
ガバナンス面では、政策保有株式の金額を今中期経営計画期間において目標としていた純資産の20%以下まで縮減いたしました。今後はみなし保有株式を含め純資産の20%以下となるよう、さらなる縮減を目指すことで資本効率の向上に努めてまいります。また2022年6月24日をもって監査等委員会設置会社へ移行し、取締役会の体制を見直すことでコーポレート・ガバナンス強化に繋げてまいります。
<経営計画目標>本計画で掲げた行動方針の遂行により、最終年度である2023年度において、以下指標の実現を目指します。
最終年度(2024年3月期)
営業利益自己資本利益率(ROE)D/Eレシオ投資 3年累計
決裁ベース
鋼材売上数量
(単体)
配当性向
400億円以上8.0%0.50850億円1,200千t30%目安