有価証券報告書-第102期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で300名であります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は6,623百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。
(1) 特殊鋼鋼材
主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および溶製から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は2,122百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・面疲労/曲げ疲労強度に優れた浸炭浸窒用鋼および浸炭浸窒プロセスの開発
歯車などの表面硬化処理として、高い面疲労強度が期待できる浸炭浸窒処理が注目されています。当社では、浸炭浸窒処理における従来からの課題を解決(曲げ疲労強度を悪化する原因となる粗大窒化物を抑制)し、面疲労と曲げ疲労強度を同時に向上可能な浸炭浸窒用鋼を開発しました。さらに、狙いの窒素濃度分布を安定して得られるプロセス(真空浸炭と大気圧浸窒)も確立しています。本技術を適用することで、お客様の求める部品強度向上に貢献してまいります。
・8%クロムダイス鋼の一次炭化物およびポロシティ(空洞欠陥)形成に及ぼす凝固条件の影響解明
冷間工具鋼は高い硬さと耐摩耗性を有する材料ですが、大型インゴットの鋳造では、凝固時のミクロ偏析による一次炭化物の粗大化やポロシティの生成が問題となります。本鋼種はこれらの課題を抑制する合金ですが、凝固条件によっては発生が懸念され、とくにポロシティは、後工程での割れや未圧着欠陥の要因となるため、その発生予測と制御が重要です。そこで当社では、一方向凝固実験により凝固条件がこれらの形成に及ぼす影響を調査し、Niyamaパラメータの適用性を検討しました。本成果はその学術的・技術的価値が評価され、日本鉄鋼協会において俵論文賞を受賞しております。今後は、工業的な活用に向け、引き続き精度向上を図ってまいります。
・磁粉探傷試験におけるAIを用いた中間製品表面きずの検出と深さ推定
熟練検査員の不足が懸念される中、当社はAIを用いた中間製品表面きずの自動検出技術を開発しました。本技術は熟練検査員のノウハウを学習した独自のAIモデルにより、きずの検出に加え深さ推定できる点が特徴です。今後は、熟練検査員の経験に依存していた検査体制からAIの結果と検査員の判断を融合した持続可能な検査体制へ移行していきます。本技術は(一社)日本非破壊検査協会にて新進賞や最優秀賞を受賞し高い評価を得ています。
・鋼材(高減衰材)における結晶粒径および結晶方位を考慮した超音波数値解析技術の開発
鋼材の内部品質保証を目的とした超音波探傷では、探傷方法の設計最適化に数値解析技術を活用しています。しかし、粗大な結晶粒によって超音波の減衰が大きい鋼材(高減衰材)では従来、高精度な数値解析ができませんでした。当社では、高減衰材特有の結晶粒径や結晶方位の分布を考慮した数値解析技術を名古屋工業大学と共同開発し、設計最適化の技術を確立しました。今後は、本技術の活用により品質保証体制の更なる高度化に貢献してまいります。
(2) 機能材料・磁性材料
主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は2,639百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・重希土類フリーネオジム-鉄-ボロン熱間加工磁石のネオジム-銅粒界拡散技術の開発
当社が開発している熱間加工磁石は重希土類を使用せずとも高特性化が可能で、資源制約や環境負荷低減に貢献します。現在開発中のネオジム-銅合金を用いた粒界拡散技術により、従来材から耐減磁性を約10%向上させました。これにより重希土類を使用した粒界拡散磁石に匹敵する耐減磁性の確保に成功しています。xEVや高効率モータ向けに、重希土類依存からの脱却を図ってまいります。
・三層-三日月磁石モータの高トルク密度化に関する研究
当社では、熱間加工磁石の塑性加工技術を活用し、磁石形状の自由度を生かした高性能モータ設計技術の研究開発を進めております。自動車駆動用埋込磁石同期モータを対象に、三日月形状磁石を適用したロータ構造の検討を行いました。量産で一般的に用いられる直方体磁石を用いた自動車駆動用モータと比較し、磁石配置および磁化方向制御の最適化により、高温環境下での耐熱性を確保しつつ、最大トルクを12%向上できることを実証いたしました。本技術は、モータの高トルク化による小型化・低コスト化に貢献できると考えており、モータメーカに提案を進めてまいります。
・磁場中熱処理を施した鉄基ナノ結晶合金の透磁率スペクトルと鉄損を解析
パワーエレクトロニクスデバイスの高周波化を背景に、ナノ結晶材料は優れた損失・透磁率特性を有することから様々なデバイスへの適用が検討されています。本材料は磁場中熱処理を施すことにより高周波磁気特性を改善できることが知られていますが、そのメカニズムに関しては理解が不足していました。当社では磁場中熱処理を施したナノ結晶材料の交流磁気特性と動的磁化挙動を調査することにより、磁気特性の定式化手法を見出しました。今後、更なる現象理解を深め材料特性向上へと繋げてまいります。本研究は東北大学共創研究所での当社の取り組みの成果となります。
・3D金属積層造形技術(レーザ粉末床溶融結合法(L-PBF)、ワイヤアーク積層造形法(WAAM))に関する研究
3D金属積層造形は航空宇宙、エネルギー、産業機械分野等を中心に適用が拡大しており、当社は同技術に用いられる金属粉末およびワイヤを製造・販売しております。L-PBF(Laser Powder Bed Fusion)においては、造形時に発生する残留応力の蓄積および解放に伴う造形体の変形が課題で、鉄基合金を対象に、造形時の変形挙動に及ぼすマルテンサイト変態の影響を調査し、造形中の変形挙動の制御に資する知見を得ております。また、WAAM(Wire Arc Additive Manufacturing)は、高い造形速度を有することから大型造形品への適用が期待される一方、造形条件(層間温度等)が機械特性に与える影響についての体系的な知見は限定的でしたが、これらの関係を整理し、安定した品質確保に向けた基礎的な知見を構築しました。
・積層造形用ワイヤの建設利用のための技術実証を開始
当社は、㈱竹中工務店およびシモダフランジ㈱と共同で、建設分野における金属3Dプリンターの活用を目的とした研究開発を行っております。本研究では、建築・インフラ分野で発生する金属廃材を積層造形用溶接ワイヤとして再生し、WAAM方式金属3Dプリンターによるアップサイクルの実用性を検証しております。また、建築用途への適用に必要となる屋外環境下での耐久性評価として、当社星崎工場食堂棟の屋外に積層造形により製作したスツールを設置し、当社の高強度・高耐食性を有する二相ステンレス鋼溶接ワイヤの耐久性を検証しております。これらの研究開発を通じ、建設分野における積層造形用ワイヤの利用拡大を推進してまいります。
・難密着プリント基板に適したターゲット材「STAR-ADMAXTM」の開発
5Gアンテナやインターポーザ(中間基板)に用いられるポリイミド樹脂などの難密着基板材料に対し、信頼性の高い配線形成を可能とする密着膜を成膜できるターゲット材「STAR-ADMAXTM」を開発しました。本製品により形成される密着膜は、高い密着力とエッチング性を両立しており、適用基板の量産工程の早期立ち上げが期待されます。今後、需要拡大が見込まれる難密着基板分野において、本製品を通じて電子デバイスの高度化に貢献してまいります。
・超微小発光窓径赤外点光源LED
当社では、赤色(波長650nm)および赤外(同855nm)の点光源LED素子を製造・販売しており、赤外素子は産業ロボット用サーボモーターのエンコーダ光源として広く採用されています。近年、協働ロボットやヒューマノイドロボットの市場拡大が進む中、光源には高分解能化のための発光窓微小化や、高温下でも安定して動作する耐熱性が求められています。本モデルは、発光窓径が世界最小レベルのφ35μmでありながら、125℃までの高温環境でも高い信頼性を維持します。本素子は、ロボットの小型化に伴うエンコーダの高分解能化・高温対応の要求に応えるものであり、今後の産業機器の高性能化・小型化に大きく寄与すると期待されます。
(3) 自動車部品・産業機械部品
主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,539百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・ニッケル基超合金Waspaloyにおける自由鍛造大型ディスクの製造プロセス開発
発電用ガスタービンの高効率化に伴い、高い耐熱性を有するニッケル基超合金の大型部材需要が高まっていますが、Waspaloyは優れた特性を持つ一方で熱間鍛造が難しく、大型品では成形性と組織制御の両立が重要な課題となっています。自由鍛造によるディスク製造に強みを有する当社でも、プロセス設計の最適化には高度な技術を要していましたが、特殊な熱処理により熱間加工性を改善し、結晶粒径制御を実現しました。さらに鍛造シミュレーションを活用して自由鍛造プロセスを最適化し、通常は数万tクラスを要しますが、7000tプレスで製造することに成功しました。本成果は、日本鋳鍛鋼会において最優秀論文賞を受賞するなど、学協会から高く評価されています。
・ニッケル基超合金の鍛造プロセスにおける機械学習を用いたサロゲートモデル構築とその評価
ニッケル基超合金の鍛造工程設計にはシミュレーションの活用が不可欠であり、当社では独自のデジタルエンジニアリングシステムを用いた製造プロセス開発を行っています。工程最適化においては多数の条件を組み合わせた検討が望ましいものの、有限要素法による解析では計算水準数が膨大となり、計算時間が大きな制約となっています。そこで当社では計算時間短縮の新たな手法として、機械学習を活用したCAE代理モデル(サロゲートモデル)を開発しました。サロゲートモデルはシミュレーション結果を学習することで、物理計算を介さずに高速な予測を可能とし、これまで困難であった効率的な工程検討を実現しました。
・ICMD®活用事例を国際会議「ICME Impact Forum」で発表
ICMEに基づく材料設計プラットフォーム「ICMD®」の活用成果を、米国開催の国際会議で日本企業として唯一発表しました。近年、材料の高性能化が求められる中で、材料の成分や製造工程から組織・特性を計算工学で予測するICMEという手法が注目され、当社では2023年ごろからQuesTekというICMEのパイオニアがリリースした「ICMD®」を利用し、シミュレーションと実際の製造工程で得られるデータの比較・検証を通じて、予測精度の向上に取り組んでまいりました。量産工程を再現可能なラボ設備を用い、製造条件の変動を反映した独自のデータベースを作成し、シミュレーションと組み合わせることで高精度な予測モデルを開発しました。このモデルを活用し、従来は複数回の試作を要していた開発案件を、一度の試作でお客様の要求特性を満たし、開発期間を大幅に短縮しました。お客様の製品化に向けた材料開発の実現性向上と開発の早期化を推進してまいります。
(4) エンジニアリング
主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は321百万円であります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は6,623百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。
(1) 特殊鋼鋼材
主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および溶製から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は2,122百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・面疲労/曲げ疲労強度に優れた浸炭浸窒用鋼および浸炭浸窒プロセスの開発
歯車などの表面硬化処理として、高い面疲労強度が期待できる浸炭浸窒処理が注目されています。当社では、浸炭浸窒処理における従来からの課題を解決(曲げ疲労強度を悪化する原因となる粗大窒化物を抑制)し、面疲労と曲げ疲労強度を同時に向上可能な浸炭浸窒用鋼を開発しました。さらに、狙いの窒素濃度分布を安定して得られるプロセス(真空浸炭と大気圧浸窒)も確立しています。本技術を適用することで、お客様の求める部品強度向上に貢献してまいります。
・8%クロムダイス鋼の一次炭化物およびポロシティ(空洞欠陥)形成に及ぼす凝固条件の影響解明
冷間工具鋼は高い硬さと耐摩耗性を有する材料ですが、大型インゴットの鋳造では、凝固時のミクロ偏析による一次炭化物の粗大化やポロシティの生成が問題となります。本鋼種はこれらの課題を抑制する合金ですが、凝固条件によっては発生が懸念され、とくにポロシティは、後工程での割れや未圧着欠陥の要因となるため、その発生予測と制御が重要です。そこで当社では、一方向凝固実験により凝固条件がこれらの形成に及ぼす影響を調査し、Niyamaパラメータの適用性を検討しました。本成果はその学術的・技術的価値が評価され、日本鉄鋼協会において俵論文賞を受賞しております。今後は、工業的な活用に向け、引き続き精度向上を図ってまいります。
・磁粉探傷試験におけるAIを用いた中間製品表面きずの検出と深さ推定
熟練検査員の不足が懸念される中、当社はAIを用いた中間製品表面きずの自動検出技術を開発しました。本技術は熟練検査員のノウハウを学習した独自のAIモデルにより、きずの検出に加え深さ推定できる点が特徴です。今後は、熟練検査員の経験に依存していた検査体制からAIの結果と検査員の判断を融合した持続可能な検査体制へ移行していきます。本技術は(一社)日本非破壊検査協会にて新進賞や最優秀賞を受賞し高い評価を得ています。
・鋼材(高減衰材)における結晶粒径および結晶方位を考慮した超音波数値解析技術の開発
鋼材の内部品質保証を目的とした超音波探傷では、探傷方法の設計最適化に数値解析技術を活用しています。しかし、粗大な結晶粒によって超音波の減衰が大きい鋼材(高減衰材)では従来、高精度な数値解析ができませんでした。当社では、高減衰材特有の結晶粒径や結晶方位の分布を考慮した数値解析技術を名古屋工業大学と共同開発し、設計最適化の技術を確立しました。今後は、本技術の活用により品質保証体制の更なる高度化に貢献してまいります。
(2) 機能材料・磁性材料
主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は2,639百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・重希土類フリーネオジム-鉄-ボロン熱間加工磁石のネオジム-銅粒界拡散技術の開発
当社が開発している熱間加工磁石は重希土類を使用せずとも高特性化が可能で、資源制約や環境負荷低減に貢献します。現在開発中のネオジム-銅合金を用いた粒界拡散技術により、従来材から耐減磁性を約10%向上させました。これにより重希土類を使用した粒界拡散磁石に匹敵する耐減磁性の確保に成功しています。xEVや高効率モータ向けに、重希土類依存からの脱却を図ってまいります。
・三層-三日月磁石モータの高トルク密度化に関する研究
当社では、熱間加工磁石の塑性加工技術を活用し、磁石形状の自由度を生かした高性能モータ設計技術の研究開発を進めております。自動車駆動用埋込磁石同期モータを対象に、三日月形状磁石を適用したロータ構造の検討を行いました。量産で一般的に用いられる直方体磁石を用いた自動車駆動用モータと比較し、磁石配置および磁化方向制御の最適化により、高温環境下での耐熱性を確保しつつ、最大トルクを12%向上できることを実証いたしました。本技術は、モータの高トルク化による小型化・低コスト化に貢献できると考えており、モータメーカに提案を進めてまいります。
・磁場中熱処理を施した鉄基ナノ結晶合金の透磁率スペクトルと鉄損を解析
パワーエレクトロニクスデバイスの高周波化を背景に、ナノ結晶材料は優れた損失・透磁率特性を有することから様々なデバイスへの適用が検討されています。本材料は磁場中熱処理を施すことにより高周波磁気特性を改善できることが知られていますが、そのメカニズムに関しては理解が不足していました。当社では磁場中熱処理を施したナノ結晶材料の交流磁気特性と動的磁化挙動を調査することにより、磁気特性の定式化手法を見出しました。今後、更なる現象理解を深め材料特性向上へと繋げてまいります。本研究は東北大学共創研究所での当社の取り組みの成果となります。
・3D金属積層造形技術(レーザ粉末床溶融結合法(L-PBF)、ワイヤアーク積層造形法(WAAM))に関する研究
3D金属積層造形は航空宇宙、エネルギー、産業機械分野等を中心に適用が拡大しており、当社は同技術に用いられる金属粉末およびワイヤを製造・販売しております。L-PBF(Laser Powder Bed Fusion)においては、造形時に発生する残留応力の蓄積および解放に伴う造形体の変形が課題で、鉄基合金を対象に、造形時の変形挙動に及ぼすマルテンサイト変態の影響を調査し、造形中の変形挙動の制御に資する知見を得ております。また、WAAM(Wire Arc Additive Manufacturing)は、高い造形速度を有することから大型造形品への適用が期待される一方、造形条件(層間温度等)が機械特性に与える影響についての体系的な知見は限定的でしたが、これらの関係を整理し、安定した品質確保に向けた基礎的な知見を構築しました。
・積層造形用ワイヤの建設利用のための技術実証を開始
当社は、㈱竹中工務店およびシモダフランジ㈱と共同で、建設分野における金属3Dプリンターの活用を目的とした研究開発を行っております。本研究では、建築・インフラ分野で発生する金属廃材を積層造形用溶接ワイヤとして再生し、WAAM方式金属3Dプリンターによるアップサイクルの実用性を検証しております。また、建築用途への適用に必要となる屋外環境下での耐久性評価として、当社星崎工場食堂棟の屋外に積層造形により製作したスツールを設置し、当社の高強度・高耐食性を有する二相ステンレス鋼溶接ワイヤの耐久性を検証しております。これらの研究開発を通じ、建設分野における積層造形用ワイヤの利用拡大を推進してまいります。
・難密着プリント基板に適したターゲット材「STAR-ADMAXTM」の開発
5Gアンテナやインターポーザ(中間基板)に用いられるポリイミド樹脂などの難密着基板材料に対し、信頼性の高い配線形成を可能とする密着膜を成膜できるターゲット材「STAR-ADMAXTM」を開発しました。本製品により形成される密着膜は、高い密着力とエッチング性を両立しており、適用基板の量産工程の早期立ち上げが期待されます。今後、需要拡大が見込まれる難密着基板分野において、本製品を通じて電子デバイスの高度化に貢献してまいります。
・超微小発光窓径赤外点光源LED
当社では、赤色(波長650nm)および赤外(同855nm)の点光源LED素子を製造・販売しており、赤外素子は産業ロボット用サーボモーターのエンコーダ光源として広く採用されています。近年、協働ロボットやヒューマノイドロボットの市場拡大が進む中、光源には高分解能化のための発光窓微小化や、高温下でも安定して動作する耐熱性が求められています。本モデルは、発光窓径が世界最小レベルのφ35μmでありながら、125℃までの高温環境でも高い信頼性を維持します。本素子は、ロボットの小型化に伴うエンコーダの高分解能化・高温対応の要求に応えるものであり、今後の産業機器の高性能化・小型化に大きく寄与すると期待されます。
(3) 自動車部品・産業機械部品
主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,539百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・ニッケル基超合金Waspaloyにおける自由鍛造大型ディスクの製造プロセス開発
発電用ガスタービンの高効率化に伴い、高い耐熱性を有するニッケル基超合金の大型部材需要が高まっていますが、Waspaloyは優れた特性を持つ一方で熱間鍛造が難しく、大型品では成形性と組織制御の両立が重要な課題となっています。自由鍛造によるディスク製造に強みを有する当社でも、プロセス設計の最適化には高度な技術を要していましたが、特殊な熱処理により熱間加工性を改善し、結晶粒径制御を実現しました。さらに鍛造シミュレーションを活用して自由鍛造プロセスを最適化し、通常は数万tクラスを要しますが、7000tプレスで製造することに成功しました。本成果は、日本鋳鍛鋼会において最優秀論文賞を受賞するなど、学協会から高く評価されています。
・ニッケル基超合金の鍛造プロセスにおける機械学習を用いたサロゲートモデル構築とその評価
ニッケル基超合金の鍛造工程設計にはシミュレーションの活用が不可欠であり、当社では独自のデジタルエンジニアリングシステムを用いた製造プロセス開発を行っています。工程最適化においては多数の条件を組み合わせた検討が望ましいものの、有限要素法による解析では計算水準数が膨大となり、計算時間が大きな制約となっています。そこで当社では計算時間短縮の新たな手法として、機械学習を活用したCAE代理モデル(サロゲートモデル)を開発しました。サロゲートモデルはシミュレーション結果を学習することで、物理計算を介さずに高速な予測を可能とし、これまで困難であった効率的な工程検討を実現しました。
・ICMD®活用事例を国際会議「ICME Impact Forum」で発表
ICMEに基づく材料設計プラットフォーム「ICMD®」の活用成果を、米国開催の国際会議で日本企業として唯一発表しました。近年、材料の高性能化が求められる中で、材料の成分や製造工程から組織・特性を計算工学で予測するICMEという手法が注目され、当社では2023年ごろからQuesTekというICMEのパイオニアがリリースした「ICMD®」を利用し、シミュレーションと実際の製造工程で得られるデータの比較・検証を通じて、予測精度の向上に取り組んでまいりました。量産工程を再現可能なラボ設備を用い、製造条件の変動を反映した独自のデータベースを作成し、シミュレーションと組み合わせることで高精度な予測モデルを開発しました。このモデルを活用し、従来は複数回の試作を要していた開発案件を、一度の試作でお客様の要求特性を満たし、開発期間を大幅に短縮しました。お客様の製品化に向けた材料開発の実現性向上と開発の早期化を推進してまいります。
(4) エンジニアリング
主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は321百万円であります。