有価証券報告書-第93期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/28 13:22
【資料】
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【項目】
133項目

研究開発活動

当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「21世紀社会に貢献する創造的、個性的な企業集団」を目指すことを基本理念としており、「新製品・新事業の拡大」および「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究活動を行っております。
現在、当社「技術開発研究所」内の「特殊鋼研究部」、「電磁材料研究部」、「プロセス研究部」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で281名であります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は62億5百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。
(1) 特殊鋼鋼材
主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および製鋼、精錬、凝固から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。
当事業に係る研究開発費の総額は15億24百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。
・製造性に優れる高強度熱間鍛造用鋼
自動車の部品軽量化のために高強度材料を適用する場合、機械加工などの製造性悪化が課題となっています。従来の非調質鋼に比べて低炭素のベイナイト組織に制御することで加工性に優れ、かつ、時効硬化現象を活用することで大幅に硬くできるため、加工コストの低減と高強度化の両立が可能となりました。今後、非調質鋼が適用されているクランクシャフトやコンロッド、燃料噴射部品などの小型軽量化に貢献すべく実用化を進めてまいります。
・フェーズドアレイ超音波検査技術
特殊鋼製品の内部品質保証には超音波探傷を用いており、お客さまからの品質厳格化の要求にお応えするため、製造プロセス内で全数を高精度に検査する技術を開発しております。鋼片や棒鋼製品での実用化を目指しており、すでに医療用チタン棒鋼向けには高精度な自動探傷装置を導入して品質保証能力を向上させております。
(2) 機能材料・磁性材料
主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。
当事業に係る研究開発費の総額は30億86百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。
・高窒素ステンレス鋼「DSR40N」
窒素はステンレス鋼において強度・耐食性の両方を向上させる有効な元素であります。この窒素の効果を最大限に利用することで、58HRC以上の硬さとSUS630相当の耐食性を両立させました。従来鋼では適用が難しかった厳しい腐食環境下での利用が可能であり、すでに機械刃物や軸受などに採用されております。今後は、高耐食材ニーズが高まっている自動車部品など幅広い用途に採用されることが期待されております。
・重希土類元素フリーHEV向け磁石
弊社グループのダイドー電子では独自の熱間加工工法を用いてリング磁石を製造しておりますが、その技術を応用した板磁石を開発いたしました。組織制御により高い耐熱性を持ち、重希土類元素を全く使用せずにハイブリッド自動車の主機モータなどに使用できます。すでに日系自動車メーカーに採用されており、今後拡大を目指してまいります。
(3) 自動車部品・産業機械部品
主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。
当事業に係る研究開発費の総額は14億49百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。
・水冷壁パネル肉盛技術
火力発電設備やゴミ焼却設備などで、高温に曝される炉内の炉壁に用いられる水冷壁パネルの耐食性、耐摩耗性を向上させるために、現地施工でパネル表面に高合金鋼を肉盛する技術を開発しております。溶接ワイヤを用いたMIG法よりも希釈率が低く、薄肉で施工することが可能なPPW(プラズマ粉体肉盛)法を用い、粉末供給を適切に制御することで、立てたままのパネル表面に肉盛層を滑らかに形成する技術を確立いたしました。
(4) エンジニアリング
主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。
当事業に係る研究開発費の総額は1億45百万円であります。