有価証券報告書-第84期(2025/04/01-2026/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は、次のとおりです。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、米国の通商政策による影響で一部下押し圧力がみられたものの、企業収益や雇用・所得環境は堅調を維持する中、設備投資や個人消費に持ち直しの動きもみられるなど、景気は緩やかな回復傾向となりました。今後の先行きについては、中東情勢の影響や米国の通商政策の動向など、不透明な状況が続いており、物価上昇の継続による企業収益や個人消費への影響も懸念されますが、政府の経済対策や緩和的な金融環境など、各種政策効果が緩やかな景気の回復を支えることが期待されます。住宅投資に関しては、政府の住宅省エネ支援策により断熱製品を中心とした窓リフォーム市場の需要が引き続き創出されたものの、2025年4月の建築基準法等の改正に伴う一時的な着工数の増加に対する反動減や住宅価格の高騰に起因した住宅取得マインドの低下などから、新設住宅着工戸数は著しく減少しました。
世界経済に関しては、欧州ではインフレ警戒から長らく金利が据え置かれる一方で、米国でも利下げ圧力がある中で足元では金利が据え置かれるなど、景気回復の足取りは地域によりばらつきがみられました。中東・インドなどの成長市場では底堅い内需がみられ、また、米国ではAI関連投資などに牽引され全体としては堅調な成長を維持したものの、住宅投資は回復が遅れ雇用情勢にも一部で軟化の兆しが現れました。中国経済においては、長引く不動産市況の低迷などにより景気減速の懸念が一層鮮明となりました。今後についても、不安定な中東情勢や長期化するロシア・ウクライナ紛争といった地政学リスクの再燃によるエネルギー価格への影響、及び主要国の通商政策の変化がもたらす下振れリスクについて、引き続き注視していく必要があります。
このような環境のもと、当社及びその連結子会社(以下「当社グループ」)における当連結会計年度の業績は、国内事業においては、新設住宅着工戸数の低迷により新築向け売上が伸び悩んだものの、水回り製品を中心としたリフォーム需要は堅調に推移しました。海外事業においても、米国における継続した需要の低迷及び中国における不動産市況の低迷があった一方で、欧州における収益性の向上に加え、中東・インドの成長拡大、為替換算の影響などもあり、売上収益が改善しました。これらの結果、当社グループにおける売上収益は1兆5,107億4百万円(前年同期比0.4%増)の増収となりました。
利益面については、資材・エネルギー及び部品価格の高止まりによるコスト増加があったものの、主に国内において販売価格の適正化に努めたことや欧州を中心とした売上の改善、構造改革によるコスト削減効果などもあり、事業利益は385億0百万円(前年同期比22.9%増)の増益となりました。一方で、追加の構造改革の実施などに伴うその他の費用の計上が前連結会計年度に比べて増加したことにより、営業利益は284億3百万円(前年同期比4.3%減)の減益となりました。また、継続事業からの税引前利益についても、その他の費用の増加に加え、為替差損により金融費用が増加したことなどから、157億8百万円(前年同期比22.0%減)の減益となりました。
非支配持分を控除した親会社の所有者に帰属する当期利益は、一部の連結子会社の収益性の低迷などに起因する税負担率の上昇があったものの、海外の連結子会社における法人税率変更により税金費用が減少したこと等から、81億43百万円(前年同期比4.1倍)の増益となりました。
(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
セグメント別の概況は次のとおりです。なお、セグメント別の売上収益はセグメント間取引消去前であり、事業利益は全社費用控除前です。
また、報告セグメントについては従来2区分で開示しておりましたが、当連結会計年度より3区分に変更しています。このため、前年同期との比較は、変更後の報告セグメントに基づき組み替えて行っています。(以下、「④ 生産、受注及び販売の実績」においても同様です。)報告セグメントの変更の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 5.事業セグメント」に記載のとおりです。
[ウォーターテクノロジー事業]
主に水回り製品を手がけるウォーターテクノロジー事業においては、国内事業は、衛生陶器やバスルーム製品のリフォーム向け売上が堅調に推移したことにより、対前年同期比で増収となりました。海外事業は、欧州における水栓金具を含む大半の商品カテゴリーで売上が改善し販売数量が増加したことに加え、中東・インドも引き続き堅調な需要継続による売上拡大がありました。一方で、米国においては、前年の浴槽事業譲渡に伴う売上減少やリフォーム市場が需要回復には至らず、また中国においても引き続き不動産市況が低迷したことなどから、海外事業全体では、対前年同期比でほぼ横ばいとなりました。その結果、同事業の売上収益は、8,110億52百万円(前年同期比0.8%増)の増収となりました。
事業利益は、国内事業のリフォーム売上の増加と価格改定効果があったことに加え、海外事業においても欧州・中東における売上改善や構造改革による効果が寄与したことなどから、454億38百万円(前年同期比23.3%増)の増益となりました。
[ハウジングテクノロジー事業]
主に国内で住宅建材製品を展開するハウジングテクノロジー事業においては、低炭素社会の実現に向けた国策による補助金制度を背景に、窓を中心とした高断熱商品のリフォーム向け売上が堅調に推移した一方で、新設住宅着工戸数の低迷により新築向け売上が低調であったことなどから、売上収益は、5,256億57百万円(前年同期比0.3%減)とわずかに減収となりました。
事業利益は、売上減少の影響に加え、窯業サイディング事業の終了に係る費用計上の影響があったものの、価格改定とコスト削減効果などで補ったことから、267億10百万円(前年同期比2.6%増)と増益となりました。
[リビング事業]
主に国内でキッチン、洗面、インテリア建材を扱うリビング事業においては、リフォーム向け売上が堅調に推移したほか、キッチンは新築向け売上も好調を維持したことなどから、売上収益は、2,075億79百万円(前年同期比1.0%増)の増収となりました。
事業利益についても、リフォーム関連製品の売上増による影響に加え、原材料や資材のコスト上昇による影響を価格改定効果でカバーしたことなどから、78億42百万円(前年同期比8.5%増)の増益となりました。
(注)1.事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
2.「国内事業」「海外事業」については、当社グループの連結業績管理にて定義しているマネジメントベースの区分を使用しており、所在国による区分とは一部異なります。具体的には、ウォーターテクノロジー事業、ハウジングテクノロジー事業及びリビング事業において、国内で管轄している一部の海外子会社を「国内事業」に含めています。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて531億23百万円増加の1兆8,839億27百万円となりまし
た。流動資産は、為替換算に伴う増加影響に加え、価格上昇などによる棚卸資産の増加により、現金及び現金同等物などの減少があったものの、前連結会計年度末に比べて177億8百万円増加の7,189億49百万円となりました。非流動資産は、主にのれん及びその他の無形資産が為替換算に伴い増加したことにより、一部の政策保有株式の売却を行ったことによるその他の金融資産の減少があったものの、前連結会計年度末に比べて354億15百万円増加の1兆1,649億78百万円となりました。
また、資本は6,683億61百万円、親会社所有者帰属持分比率は35.3%(前連結会計年度末比1.6ポイント上昇)です。
(億円)


③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。なお、金額は非継続事業を含むキャッシュ・フローの合計額です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、826億89百万円の資金増加となりました。前年同期に比べて173億13百万円の減少となり、この主な要因は、営業債権及びその他の債権、棚卸資産、営業債務及びその他の債務などの運転資本の変動に伴う減少があったことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、政策保有株式の売却に係る収入があった一方で、設備投資に伴う有形固定資産及び無形資産の取得による支出などから235億93百万円の資金減少となりました。前年同期に比べて45億34百万円の支出減少です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期、長期とも有利子負債の調達と返済を機動的に行ったことに加え、配当金やリース負債の支払があったことなどから724億68百万円の資金減少となりました。前年同期に比べて2百万円の支出減少です。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、換算差額による影響などを含めると、前連結会計年度末に比べて79億3百万円減少の1,156億24百万円です。

④ 生産、受注及び販売の実績
生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
受注実績
ハウジングテクノロジー事業の工事物件については、受注生産を行っています。当連結会計年度における受注実績は、次のとおりです。
販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
なお、本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。また、分析に記載した実績値は1億円未満を四捨五入して記載しています。
① 重要な会計上の見積り及び判断、重要性がある会計方針
重要な見積りを伴う会計方針とは、不確実性があり、かつ翌連結会計年度以降に変更する可能性がある事項、又は当連結会計年度において合理的に用いることができる他の見積りがあり、それを用いることによっては財政状態及び経営成績に重要な相違を及ぼすであろう事項の影響に関して見積りを行う必要がある場合に、最も困難で主観的かつ複雑な判断が要求されるものです。また、当社グループを取り巻く市場の動向や為替変動等の経済情勢により、これらの見積りの不確実性は増大します。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって利用する重要な会計上の見積り及び判断については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の見積り及び判断の利用」に記載のとおりです。また、当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用する重要性がある会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況に対して、事業全体及びセグメントごとに重要な影響を与えた要因について経営者の視点から見た認識及び分析・評価は、次のとおりです。
[当連結会計年度の業績に対する評価]
当連結会計年度は、引き続き厳しい事業環境ながら売上収益は60億円増の1兆5,107億円と増収を達成することができました。売上総利益率は34.1%と1.0ポイント改善しました。
国内事業では、新設住宅着工戸数の低迷の影響を受けたものの、リフォーム事業へのシフトの効果に加え、高断熱や省エネなど高付加価値製品の販売強化の効果により増収となりました。ウォーターテクノロジー事業及びリビング事業は、リフォーム向け売上が堅調だったことにより好調に推移しました。一方で、国策による大規模な補助金制度を背景に窓を中心とした断熱商品のリフォーム向け売上が堅調だったものの、新築向け売上減少の影響が大きく、ハウジングテクノロジー事業はわずかに減収となりました。
海外事業では、欧州全体では景気回復の動きは鈍いものの、ブランド力強化により水栓金具やフラッシングシステムなどの売上が改善したことや、成長市場である中東・インドにおける堅調な売上拡大があったものの、米国における浴槽事業譲渡に伴う売上減少や中国の不動産市況の低迷が継続した影響などを受け、前期比で減収となりました。今後は収益性の改善を目指し、成長に向けた戦略的集中と市場特性に応じたアプローチを機動的に展開していきます。
コストの削減については、海外事業において人員配置や販売戦略の最適化などの構造改革を推進してきた効果の発現や、本社費などの販管費削減努力の継続に加え、サプライチェーンの再構築、事業ポートフォリオの最適化等に取り組みました。今後も、AI活用を含めた事業全体のデジタル化などにより、販管費を中心としたコスト構造を抜本的に作り変えるべく対応を進めていきます。事業環境が厳しい時期だからこそ、変化への対応力を高め、強固な事業基盤を築いていきます。
また、税負担率について、これまでグローバルに事業を拡大してきた過程で、赤字が続く一部の子会社が存在するなど、グループ全体の税務構造が必ずしも最適化されておらず、高い水準にありました。こちらについて、赤字法人の解消や法人の適正配置、国際的な税制変化に即したグループ内資金還流の円滑化に取り組んでいます。税負担率を適正化することにより、事業ポートフォリオの最適化と連動した「利益体質の変革」を進めていきます。
当社グループを取り巻く事業環境の厳しさは続いており、迅速かつ適切な対応が迫られています。上記にて説明した対応策を着実に取り組むことにより、財務の安定性を確保しつつ、当社の持続的な成長とPurpose(存在意義)の実現に努めてまいります。
[資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応]
当社は、中期目標の指標として事業利益率7.5%、ネット有利子負債EBITDA倍率3.5倍以下、親会社所有者帰属持分比率35%以上の実現を掲げています。また、長期の財務指標として事業利益率10%、投下資本利益率(ROIC)10%を達成することを目指しています。

(注)1.ROE :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷{(親会社の所有者に帰属する持分(前期末)+
親会社の所有者に帰属する持分(当期末))÷ 2}
2.ROIC:営業利益 ×(1-実効税率)÷ (営業債権及びその他の債権 + 棚卸資産 +
固定資産(のれん等無形含む)- 営業債務及びその他の債務)
また、当連結会計年度末時点でのPBRは0.7倍にとどまっており、ROEの向上に繋がる利益率の改善を推進していきます。そのために事業利益率の改善策として、価格の適正化や、AI等のテクノロジーを駆使した効率化による販管費を中心としたコスト構造の抜本的な見直し、及び税務構造の最適化に取り組んでいきます。加えて、アセットライト戦略によって資産効率を上げることで、ROEを段階的に、かつ着実に目標水準に引き上げていきます。
[キャピタルアロケーション・株主還元に対する考え方]
当社は、期間収益並びにキャッシュ・フロー、内部留保、財務体質等の経営全般にわたる諸要素を総合的に判断の上、利益配分を決定することを方針としています。具体的には、その時点でのキャッシュ・フローの状況を勘案し、財務体質の強化に加え、競争力の強化を目的とした設備投資(新商品開発、合理化、IT投資等含む)等の成長投資を優先することを前提に内部留保の使途を決定します。株主還元については、長期にわたり安定した配当を実施することを基本とし、中期的なEBITDAの水準に基づき年間配当金額を決定するとともに、自己株式の取得は機動的に行う方針です。この方針のもと、次期の配当は1株当たり90円を予想しています。

(注)調整後EBITDA:事業利益 + 減価償却費(IFRSにおけるリース会計適用による現金の流出を伴う減価償却費の計上額の補正)
[財務の安定性確保]
現時点では、将来成長の基盤であるイノベーションを優先事項ととらえ、大型のM&Aや設備投資は検討していません。また、当面、大型の借入れや増資計画はありませんが、資本的支出については長期的かつ持続的な成長につながるITや人材、デザイン・ブランドなどの無形資産も含む成長投資により営業キャッシュ・フローの増加を図るとともに、保有資産の最適化を通じて成長投資に必要な資金の創出を図ります。
当社では、ネット有利子負債EBITDA倍率を3.5倍以下に、また親会社所有者帰属持分比率を35%以上に改善することを中期目標の指標として、アセットライト化の推進に基づく資本効率の向上と固定費の削減に取り組んでいきます。
[次期の見通しと通期業績予想値]
次期の見通しについては、国内においては雇用・所得環境の改善や底堅い企業収益を背景に、個人消費及び省力化・デジタル関連を中心とした設備投資などに支えられ、経済環境は持ち直しの動きが続くことが期待されます。しかしながら、住宅価格の上昇による新築需要のさらなる縮小や、中東情勢等の地政学リスクに起因する石油由来原材料の供給懸念並びにエネルギー価格の高止まり、為替変動や物価上昇の動向によっては依然として先行きが不透明な状況が続くと見込まれます。
海外においても、各国のインフレ動向を受けた金融政策の不確実性が残るものの、欧州における安定的な成長や中東・インド地域などの成長市場における底堅い需要の取り込みが期待されます。その一方で、米国の相互関税措置をはじめとする通商政策の動向や、中東情勢及びロシア・ウクライナ紛争などの地政学的リスクの長期化に起因する世界的な情勢不安が懸念されます。これらに加え、中国における長引く不動産市場の低迷や、紛争に起因するエネルギー・資源価格の上昇に伴うインフレーションのリスクなど、引き続き不透明な状況が続くと見込まれます。
このような厳しい事業環境のもと、当社グループにおいては経営の基本的方向性を示した「LIXIL Playbook」の優先課題に基づき、これまでも積極的な対策を講じてきました。特に喫緊の課題である海外事業の収益性の回復に向けては継続して構造改革に取り組むとともに、利益率の高い商品へのシフト並びに流通経路のシフト、不採算事業の整理などの事業ポートフォリオのさらなる見直し、サプライチェーンの再構築などを推進していきます。こうした取り組みの成果は、次期以降の収益性の改善に必ず貢献するものと考えています。
一方で、業績の向上と持続的成長に向けて、差別化商品の拡大と、社会や環境課題の解決におけるインパクト(良い影響)創出を同時に実現することを目指しています。これまでも機動的で起業家精神にあふれた組織へと変革する取り組みを続けてきましたが、今後も引き続き、デジタル化の加速とインクルーシブな企業文化の醸成を通じてイノベーションを推進し、新たな成長機会の確立につなげていきます。
これまで取り組んできた事業基盤の強化による成果は見え始めており、長期的な成長への道筋は変わっていません。ステークホルダーの皆様に提供する価値をさらに高め、ひいては、『世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現』という当社グループの存在意義を実現するために前進してまいります。
このような中、次期の通期業績予想値につきましては、上記のような事業環境・経営戦略を考慮し反映させた結果、売上収益は1兆6,000億円(前年同期比5.9%増)、事業利益は450億円(前年同期比16.9%増)、営業利益は375億円(前年同期比32.0%増)、税引前利益は250億円(前年同期比59.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は120億円(前年同期比47.4%増)と、増収増益を見込んでいます。
なお、上記の次期見通しは現時点で入手可能な情報に基づき当社が判断したものであり、リスクや不確実性を含んでいます。昨今の中東地域における地政学的リスクの高まり、それを発端とするサプライチェーンの混乱による資材の調達難、原油価格の高騰並びに石油由来原材料の価格上昇等の不確実性につきましては、現時点においてその影響額を合理的に算定することが困難であることから、本業績予想には織り込んでいません。そのため、実際の業績は、様々な要因によりこれらの見通しとは異なる結果となることがあります。

(注)1.EPS(基本的1株当たり当期利益)の2027年3月期予想値の算定上の基礎となる期中平均株式数については、2026年3月31日現在の発行済株式数(自己株式数を除く)を使用しています。
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。また、各指標は、以下により算出しています。
ROE :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷((親会社の所有者に帰属する持分(前期末)+
親会社の所有者に帰属する持分(当期末))÷ 2)
ROA :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷((総資産額(前期末)+ 総資産額(当期末))÷2)
ROIC:営業利益 ×(1-実効税率)÷ (営業債権及びその他の債権 + 棚卸資産 +
固定資産(のれん等無形含む)- 営業債務及びその他の債務)
ネット有利子負債:有利子負債 - 現金及び現金同等物
3.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としています。
資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりです。
当社グループは、健全な財政状態を維持しつつ、事業活動に必要な資金を安定的かつ機動的に確保すべく、営業活動によるキャッシュ・フローの創出や幅広い調達手段の実現に努めています。手元流動性に関しては、非常時の決済資金相当額を常に維持することを基本とし、財務柔軟性を確保するため、銀行などの金融機関からの借入や社債の発行に加え、コマーシャル・ペーパー発行枠及びコミットメントラインの確保、受取手形の流動化といった取り組みを通じて、調達手段の多様化を図っています。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大のような想定外の事象により経営環境が急激に悪化した際のリスクに備えて、上記の基本方針とは別に短期資金の調達枠を設定しています。また、当社グループ内においても設備投資案件の優先順位付け、在庫管理の徹底、販管費の縮減方策などを通じてさらなる手元流動性の確保に努めています。
当連結会計年度においては、運転資本の増減などにより営業キャッシュ・フローは減少したものの、政策保有株式の売却に係る収入があったことなどから、当連結会計年度末におけるネット有利子負債は前連結会計年度末に比べて27億円減少し5,316億円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,156億円となりました。
次期においても、引き続きフリー・キャッシュ・フローの改善を通じて有利子負債の圧縮と財務体質の健全化を図ります。


なお、財務状況に関する主要指標の推移は、次のとおりです。
(注)1.各指標は、連結ベースの財務数値により算出しています。なお、各指標は、以下により算出しています。
ネット有利子負債:有利子負債-現金及び現金同等物
EBITDA :事業利益+減価償却費及び償却費
2.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は、次のとおりです。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、米国の通商政策による影響で一部下押し圧力がみられたものの、企業収益や雇用・所得環境は堅調を維持する中、設備投資や個人消費に持ち直しの動きもみられるなど、景気は緩やかな回復傾向となりました。今後の先行きについては、中東情勢の影響や米国の通商政策の動向など、不透明な状況が続いており、物価上昇の継続による企業収益や個人消費への影響も懸念されますが、政府の経済対策や緩和的な金融環境など、各種政策効果が緩やかな景気の回復を支えることが期待されます。住宅投資に関しては、政府の住宅省エネ支援策により断熱製品を中心とした窓リフォーム市場の需要が引き続き創出されたものの、2025年4月の建築基準法等の改正に伴う一時的な着工数の増加に対する反動減や住宅価格の高騰に起因した住宅取得マインドの低下などから、新設住宅着工戸数は著しく減少しました。
世界経済に関しては、欧州ではインフレ警戒から長らく金利が据え置かれる一方で、米国でも利下げ圧力がある中で足元では金利が据え置かれるなど、景気回復の足取りは地域によりばらつきがみられました。中東・インドなどの成長市場では底堅い内需がみられ、また、米国ではAI関連投資などに牽引され全体としては堅調な成長を維持したものの、住宅投資は回復が遅れ雇用情勢にも一部で軟化の兆しが現れました。中国経済においては、長引く不動産市況の低迷などにより景気減速の懸念が一層鮮明となりました。今後についても、不安定な中東情勢や長期化するロシア・ウクライナ紛争といった地政学リスクの再燃によるエネルギー価格への影響、及び主要国の通商政策の変化がもたらす下振れリスクについて、引き続き注視していく必要があります。
このような環境のもと、当社及びその連結子会社(以下「当社グループ」)における当連結会計年度の業績は、国内事業においては、新設住宅着工戸数の低迷により新築向け売上が伸び悩んだものの、水回り製品を中心としたリフォーム需要は堅調に推移しました。海外事業においても、米国における継続した需要の低迷及び中国における不動産市況の低迷があった一方で、欧州における収益性の向上に加え、中東・インドの成長拡大、為替換算の影響などもあり、売上収益が改善しました。これらの結果、当社グループにおける売上収益は1兆5,107億4百万円(前年同期比0.4%増)の増収となりました。
利益面については、資材・エネルギー及び部品価格の高止まりによるコスト増加があったものの、主に国内において販売価格の適正化に努めたことや欧州を中心とした売上の改善、構造改革によるコスト削減効果などもあり、事業利益は385億0百万円(前年同期比22.9%増)の増益となりました。一方で、追加の構造改革の実施などに伴うその他の費用の計上が前連結会計年度に比べて増加したことにより、営業利益は284億3百万円(前年同期比4.3%減)の減益となりました。また、継続事業からの税引前利益についても、その他の費用の増加に加え、為替差損により金融費用が増加したことなどから、157億8百万円(前年同期比22.0%減)の減益となりました。
非支配持分を控除した親会社の所有者に帰属する当期利益は、一部の連結子会社の収益性の低迷などに起因する税負担率の上昇があったものの、海外の連結子会社における法人税率変更により税金費用が減少したこと等から、81億43百万円(前年同期比4.1倍)の増益となりました。
(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
セグメント別の概況は次のとおりです。なお、セグメント別の売上収益はセグメント間取引消去前であり、事業利益は全社費用控除前です。
また、報告セグメントについては従来2区分で開示しておりましたが、当連結会計年度より3区分に変更しています。このため、前年同期との比較は、変更後の報告セグメントに基づき組み替えて行っています。(以下、「④ 生産、受注及び販売の実績」においても同様です。)報告セグメントの変更の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 5.事業セグメント」に記載のとおりです。
| (単位:百万円) | |||||
| 前連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | 増減額 | 増減率 | ||
| ウォーター テクノロジー 事業 | 売上収益 | 804,881 | 811,052 | 6,171 | 0.8% |
| 事業利益 | 36,853 | 45,438 | 8,585 | 23.3% | |
| 利益率 | 4.6% | 5.6% | |||
| ハウジング テクノロジー 事業 | 売上収益 | 527,123 | 525,657 | △ 1,466 | △ 0.3% |
| 事業利益 | 26,034 | 26,710 | 676 | 2.6% | |
| 利益率 | 4.9% | 5.1% | |||
| リビング 事業 | 売上収益 | 205,462 | 207,579 | 2,117 | 1.0% |
| 事業利益 | 7,226 | 7,842 | 616 | 8.5% | |
| 利益率 | 3.5% | 3.8% | |||
| 消去又は全社 | 売上収益 | △ 32,769 | △ 33,584 | △ 815 | |
| 事業利益 | △ 38,776 | △ 41,490 | △ 2,714 | ||
| 合 計 | 売上収益 | 1,504,697 | 1,510,704 | 6,007 | 0.4% |
| 事業利益 | 31,337 | 38,500 | 7,163 | 22.9% | |
| 利益率 | 2.1% | 2.5% | |||
[ウォーターテクノロジー事業]
主に水回り製品を手がけるウォーターテクノロジー事業においては、国内事業は、衛生陶器やバスルーム製品のリフォーム向け売上が堅調に推移したことにより、対前年同期比で増収となりました。海外事業は、欧州における水栓金具を含む大半の商品カテゴリーで売上が改善し販売数量が増加したことに加え、中東・インドも引き続き堅調な需要継続による売上拡大がありました。一方で、米国においては、前年の浴槽事業譲渡に伴う売上減少やリフォーム市場が需要回復には至らず、また中国においても引き続き不動産市況が低迷したことなどから、海外事業全体では、対前年同期比でほぼ横ばいとなりました。その結果、同事業の売上収益は、8,110億52百万円(前年同期比0.8%増)の増収となりました。
事業利益は、国内事業のリフォーム売上の増加と価格改定効果があったことに加え、海外事業においても欧州・中東における売上改善や構造改革による効果が寄与したことなどから、454億38百万円(前年同期比23.3%増)の増益となりました。
[ハウジングテクノロジー事業]
主に国内で住宅建材製品を展開するハウジングテクノロジー事業においては、低炭素社会の実現に向けた国策による補助金制度を背景に、窓を中心とした高断熱商品のリフォーム向け売上が堅調に推移した一方で、新設住宅着工戸数の低迷により新築向け売上が低調であったことなどから、売上収益は、5,256億57百万円(前年同期比0.3%減)とわずかに減収となりました。
事業利益は、売上減少の影響に加え、窯業サイディング事業の終了に係る費用計上の影響があったものの、価格改定とコスト削減効果などで補ったことから、267億10百万円(前年同期比2.6%増)と増益となりました。
[リビング事業]
主に国内でキッチン、洗面、インテリア建材を扱うリビング事業においては、リフォーム向け売上が堅調に推移したほか、キッチンは新築向け売上も好調を維持したことなどから、売上収益は、2,075億79百万円(前年同期比1.0%増)の増収となりました。
事業利益についても、リフォーム関連製品の売上増による影響に加え、原材料や資材のコスト上昇による影響を価格改定効果でカバーしたことなどから、78億42百万円(前年同期比8.5%増)の増益となりました。
(注)1.事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
2.「国内事業」「海外事業」については、当社グループの連結業績管理にて定義しているマネジメントベースの区分を使用しており、所在国による区分とは一部異なります。具体的には、ウォーターテクノロジー事業、ハウジングテクノロジー事業及びリビング事業において、国内で管轄している一部の海外子会社を「国内事業」に含めています。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて531億23百万円増加の1兆8,839億27百万円となりまし
た。流動資産は、為替換算に伴う増加影響に加え、価格上昇などによる棚卸資産の増加により、現金及び現金同等物などの減少があったものの、前連結会計年度末に比べて177億8百万円増加の7,189億49百万円となりました。非流動資産は、主にのれん及びその他の無形資産が為替換算に伴い増加したことにより、一部の政策保有株式の売却を行ったことによるその他の金融資産の減少があったものの、前連結会計年度末に比べて354億15百万円増加の1兆1,649億78百万円となりました。
また、資本は6,683億61百万円、親会社所有者帰属持分比率は35.3%(前連結会計年度末比1.6ポイント上昇)です。
(億円)


③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。なお、金額は非継続事業を含むキャッシュ・フローの合計額です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、826億89百万円の資金増加となりました。前年同期に比べて173億13百万円の減少となり、この主な要因は、営業債権及びその他の債権、棚卸資産、営業債務及びその他の債務などの運転資本の変動に伴う減少があったことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、政策保有株式の売却に係る収入があった一方で、設備投資に伴う有形固定資産及び無形資産の取得による支出などから235億93百万円の資金減少となりました。前年同期に比べて45億34百万円の支出減少です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期、長期とも有利子負債の調達と返済を機動的に行ったことに加え、配当金やリース負債の支払があったことなどから724億68百万円の資金減少となりました。前年同期に比べて2百万円の支出減少です。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、換算差額による影響などを含めると、前連結会計年度末に比べて79億3百万円減少の1,156億24百万円です。

④ 生産、受注及び販売の実績
生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| ウォーターテクノロジー事業 | 435,512 | 99.6 |
| ハウジングテクノロジー事業 | 225,119 | 99.2 |
| リビング事業 | 103,188 | 101.5 |
| 合計 | 763,819 | 99.7 |
商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| ウォーターテクノロジー事業 | 67,212 | 95.4 |
| ハウジングテクノロジー事業 | 108,357 | 90.7 |
| リビング事業 | 41,215 | 103.8 |
| 合計 | 216,784 | 94.4 |
受注実績
ハウジングテクノロジー事業の工事物件については、受注生産を行っています。当連結会計年度における受注実績は、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 受注高 (百万円) | 前年同期比 (%) | 受注残高 (百万円) | 前年同期比 (%) |
| ハウジングテクノロジー事業 | 87,621 | 100.7 | 134,147 | 109.4 |
販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| ウォーターテクノロジー事業 | 811,052 | 100.8 |
| ハウジングテクノロジー事業 | 525,657 | 99.7 |
| リビング事業 | 207,579 | 101.0 |
| 報告セグメント計 | 1,544,288 | 100.4 |
| セグメント間取引 | △33,584 | 102.5 |
| 合計 | 1,510,704 | 100.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
なお、本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。また、分析に記載した実績値は1億円未満を四捨五入して記載しています。
① 重要な会計上の見積り及び判断、重要性がある会計方針
重要な見積りを伴う会計方針とは、不確実性があり、かつ翌連結会計年度以降に変更する可能性がある事項、又は当連結会計年度において合理的に用いることができる他の見積りがあり、それを用いることによっては財政状態及び経営成績に重要な相違を及ぼすであろう事項の影響に関して見積りを行う必要がある場合に、最も困難で主観的かつ複雑な判断が要求されるものです。また、当社グループを取り巻く市場の動向や為替変動等の経済情勢により、これらの見積りの不確実性は増大します。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって利用する重要な会計上の見積り及び判断については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の見積り及び判断の利用」に記載のとおりです。また、当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用する重要性がある会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況に対して、事業全体及びセグメントごとに重要な影響を与えた要因について経営者の視点から見た認識及び分析・評価は、次のとおりです。
[当連結会計年度の業績に対する評価]
当連結会計年度は、引き続き厳しい事業環境ながら売上収益は60億円増の1兆5,107億円と増収を達成することができました。売上総利益率は34.1%と1.0ポイント改善しました。
国内事業では、新設住宅着工戸数の低迷の影響を受けたものの、リフォーム事業へのシフトの効果に加え、高断熱や省エネなど高付加価値製品の販売強化の効果により増収となりました。ウォーターテクノロジー事業及びリビング事業は、リフォーム向け売上が堅調だったことにより好調に推移しました。一方で、国策による大規模な補助金制度を背景に窓を中心とした断熱商品のリフォーム向け売上が堅調だったものの、新築向け売上減少の影響が大きく、ハウジングテクノロジー事業はわずかに減収となりました。
海外事業では、欧州全体では景気回復の動きは鈍いものの、ブランド力強化により水栓金具やフラッシングシステムなどの売上が改善したことや、成長市場である中東・インドにおける堅調な売上拡大があったものの、米国における浴槽事業譲渡に伴う売上減少や中国の不動産市況の低迷が継続した影響などを受け、前期比で減収となりました。今後は収益性の改善を目指し、成長に向けた戦略的集中と市場特性に応じたアプローチを機動的に展開していきます。
コストの削減については、海外事業において人員配置や販売戦略の最適化などの構造改革を推進してきた効果の発現や、本社費などの販管費削減努力の継続に加え、サプライチェーンの再構築、事業ポートフォリオの最適化等に取り組みました。今後も、AI活用を含めた事業全体のデジタル化などにより、販管費を中心としたコスト構造を抜本的に作り変えるべく対応を進めていきます。事業環境が厳しい時期だからこそ、変化への対応力を高め、強固な事業基盤を築いていきます。
また、税負担率について、これまでグローバルに事業を拡大してきた過程で、赤字が続く一部の子会社が存在するなど、グループ全体の税務構造が必ずしも最適化されておらず、高い水準にありました。こちらについて、赤字法人の解消や法人の適正配置、国際的な税制変化に即したグループ内資金還流の円滑化に取り組んでいます。税負担率を適正化することにより、事業ポートフォリオの最適化と連動した「利益体質の変革」を進めていきます。
当社グループを取り巻く事業環境の厳しさは続いており、迅速かつ適切な対応が迫られています。上記にて説明した対応策を着実に取り組むことにより、財務の安定性を確保しつつ、当社の持続的な成長とPurpose(存在意義)の実現に努めてまいります。
[資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応]
当社は、中期目標の指標として事業利益率7.5%、ネット有利子負債EBITDA倍率3.5倍以下、親会社所有者帰属持分比率35%以上の実現を掲げています。また、長期の財務指標として事業利益率10%、投下資本利益率(ROIC)10%を達成することを目指しています。

(注)1.ROE :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷{(親会社の所有者に帰属する持分(前期末)+
親会社の所有者に帰属する持分(当期末))÷ 2}
2.ROIC:営業利益 ×(1-実効税率)÷ (営業債権及びその他の債権 + 棚卸資産 +
固定資産(のれん等無形含む)- 営業債務及びその他の債務)
また、当連結会計年度末時点でのPBRは0.7倍にとどまっており、ROEの向上に繋がる利益率の改善を推進していきます。そのために事業利益率の改善策として、価格の適正化や、AI等のテクノロジーを駆使した効率化による販管費を中心としたコスト構造の抜本的な見直し、及び税務構造の最適化に取り組んでいきます。加えて、アセットライト戦略によって資産効率を上げることで、ROEを段階的に、かつ着実に目標水準に引き上げていきます。
[キャピタルアロケーション・株主還元に対する考え方]
当社は、期間収益並びにキャッシュ・フロー、内部留保、財務体質等の経営全般にわたる諸要素を総合的に判断の上、利益配分を決定することを方針としています。具体的には、その時点でのキャッシュ・フローの状況を勘案し、財務体質の強化に加え、競争力の強化を目的とした設備投資(新商品開発、合理化、IT投資等含む)等の成長投資を優先することを前提に内部留保の使途を決定します。株主還元については、長期にわたり安定した配当を実施することを基本とし、中期的なEBITDAの水準に基づき年間配当金額を決定するとともに、自己株式の取得は機動的に行う方針です。この方針のもと、次期の配当は1株当たり90円を予想しています。

(注)調整後EBITDA:事業利益 + 減価償却費(IFRSにおけるリース会計適用による現金の流出を伴う減価償却費の計上額の補正)
[財務の安定性確保]
現時点では、将来成長の基盤であるイノベーションを優先事項ととらえ、大型のM&Aや設備投資は検討していません。また、当面、大型の借入れや増資計画はありませんが、資本的支出については長期的かつ持続的な成長につながるITや人材、デザイン・ブランドなどの無形資産も含む成長投資により営業キャッシュ・フローの増加を図るとともに、保有資産の最適化を通じて成長投資に必要な資金の創出を図ります。
当社では、ネット有利子負債EBITDA倍率を3.5倍以下に、また親会社所有者帰属持分比率を35%以上に改善することを中期目標の指標として、アセットライト化の推進に基づく資本効率の向上と固定費の削減に取り組んでいきます。
[次期の見通しと通期業績予想値]
次期の見通しについては、国内においては雇用・所得環境の改善や底堅い企業収益を背景に、個人消費及び省力化・デジタル関連を中心とした設備投資などに支えられ、経済環境は持ち直しの動きが続くことが期待されます。しかしながら、住宅価格の上昇による新築需要のさらなる縮小や、中東情勢等の地政学リスクに起因する石油由来原材料の供給懸念並びにエネルギー価格の高止まり、為替変動や物価上昇の動向によっては依然として先行きが不透明な状況が続くと見込まれます。
海外においても、各国のインフレ動向を受けた金融政策の不確実性が残るものの、欧州における安定的な成長や中東・インド地域などの成長市場における底堅い需要の取り込みが期待されます。その一方で、米国の相互関税措置をはじめとする通商政策の動向や、中東情勢及びロシア・ウクライナ紛争などの地政学的リスクの長期化に起因する世界的な情勢不安が懸念されます。これらに加え、中国における長引く不動産市場の低迷や、紛争に起因するエネルギー・資源価格の上昇に伴うインフレーションのリスクなど、引き続き不透明な状況が続くと見込まれます。
このような厳しい事業環境のもと、当社グループにおいては経営の基本的方向性を示した「LIXIL Playbook」の優先課題に基づき、これまでも積極的な対策を講じてきました。特に喫緊の課題である海外事業の収益性の回復に向けては継続して構造改革に取り組むとともに、利益率の高い商品へのシフト並びに流通経路のシフト、不採算事業の整理などの事業ポートフォリオのさらなる見直し、サプライチェーンの再構築などを推進していきます。こうした取り組みの成果は、次期以降の収益性の改善に必ず貢献するものと考えています。
一方で、業績の向上と持続的成長に向けて、差別化商品の拡大と、社会や環境課題の解決におけるインパクト(良い影響)創出を同時に実現することを目指しています。これまでも機動的で起業家精神にあふれた組織へと変革する取り組みを続けてきましたが、今後も引き続き、デジタル化の加速とインクルーシブな企業文化の醸成を通じてイノベーションを推進し、新たな成長機会の確立につなげていきます。
これまで取り組んできた事業基盤の強化による成果は見え始めており、長期的な成長への道筋は変わっていません。ステークホルダーの皆様に提供する価値をさらに高め、ひいては、『世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現』という当社グループの存在意義を実現するために前進してまいります。
このような中、次期の通期業績予想値につきましては、上記のような事業環境・経営戦略を考慮し反映させた結果、売上収益は1兆6,000億円(前年同期比5.9%増)、事業利益は450億円(前年同期比16.9%増)、営業利益は375億円(前年同期比32.0%増)、税引前利益は250億円(前年同期比59.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は120億円(前年同期比47.4%増)と、増収増益を見込んでいます。
なお、上記の次期見通しは現時点で入手可能な情報に基づき当社が判断したものであり、リスクや不確実性を含んでいます。昨今の中東地域における地政学的リスクの高まり、それを発端とするサプライチェーンの混乱による資材の調達難、原油価格の高騰並びに石油由来原材料の価格上昇等の不確実性につきましては、現時点においてその影響額を合理的に算定することが困難であることから、本業績予想には織り込んでいません。そのため、実際の業績は、様々な要因によりこれらの見通しとは異なる結果となることがあります。

(注)1.EPS(基本的1株当たり当期利益)の2027年3月期予想値の算定上の基礎となる期中平均株式数については、2026年3月31日現在の発行済株式数(自己株式数を除く)を使用しています。
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。また、各指標は、以下により算出しています。
ROE :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷((親会社の所有者に帰属する持分(前期末)+
親会社の所有者に帰属する持分(当期末))÷ 2)
ROA :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷((総資産額(前期末)+ 総資産額(当期末))÷2)
ROIC:営業利益 ×(1-実効税率)÷ (営業債権及びその他の債権 + 棚卸資産 +
固定資産(のれん等無形含む)- 営業債務及びその他の債務)
ネット有利子負債:有利子負債 - 現金及び現金同等物
3.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としています。
資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりです。
当社グループは、健全な財政状態を維持しつつ、事業活動に必要な資金を安定的かつ機動的に確保すべく、営業活動によるキャッシュ・フローの創出や幅広い調達手段の実現に努めています。手元流動性に関しては、非常時の決済資金相当額を常に維持することを基本とし、財務柔軟性を確保するため、銀行などの金融機関からの借入や社債の発行に加え、コマーシャル・ペーパー発行枠及びコミットメントラインの確保、受取手形の流動化といった取り組みを通じて、調達手段の多様化を図っています。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大のような想定外の事象により経営環境が急激に悪化した際のリスクに備えて、上記の基本方針とは別に短期資金の調達枠を設定しています。また、当社グループ内においても設備投資案件の優先順位付け、在庫管理の徹底、販管費の縮減方策などを通じてさらなる手元流動性の確保に努めています。
当連結会計年度においては、運転資本の増減などにより営業キャッシュ・フローは減少したものの、政策保有株式の売却に係る収入があったことなどから、当連結会計年度末におけるネット有利子負債は前連結会計年度末に比べて27億円減少し5,316億円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,156億円となりました。
次期においても、引き続きフリー・キャッシュ・フローの改善を通じて有利子負債の圧縮と財務体質の健全化を図ります。


なお、財務状況に関する主要指標の推移は、次のとおりです。
| 2022年 3月期 | 2023年 3月期 | 2024年 3月期 | 2025年 3月期 | 2026年 3月期 | |
| 売上収益事業利益率(%) | 4.5 | 1.7 | 1.6 | 2.1 | 2.5 |
| 親会社所有者帰属持分比率(%) | 34.3 | 33.7 | 34.1 | 33.7 | 35.3 |
| ネット有利子負債/EBITDA(倍) | 2.9 | 4.8 | 5.3 | 4.7 | 4.4 |
(注)1.各指標は、連結ベースの財務数値により算出しています。なお、各指標は、以下により算出しています。
ネット有利子負債:有利子負債-現金及び現金同等物
EBITDA :事業利益+減価償却費及び償却費
2.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。