有価証券報告書-第123期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/29 13:05
【資料】
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【項目】
146項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
<経営理念>○伝統と革新スピリットを融合
「永くに亘る歴史と伝統を基盤にし、革新的スピリットの融合で、機動的かつ柔軟な経営を推進する」
○社会と業界の発展に貢献
「環境対応と経済性を両立した技術と品質向上への飽くなき挑戦で、社会、海運・造船業界の発展に
貢献する」
○総合力を発揮し、世界へ飛躍
「社員の力を結集し、開発・設計・製造・販売・サービスの一貫体制で、世界に伍していける企業を
目指す」
○無災害職場の確立
「危険予知の徹底と闊達なコミュニケーションで、災害ゼロを目指す」
<経営ビジョン>「世界的視野に立ち、伝統と革新を融合させ、日の丸舶用エンジンをお客様とともに育て、次代を拓く」
(2) 経営戦略等
当連結会計年度は、持続可能な会社体制への移行を目指し、以下の3点について、重点的に取り組みを進めてきました。
① 基幹となる主機事業における受注拡大
・経営効率を最大化できる生産体制にシフトするべく、攻めの経営で、主機の受注を拡大する。
② PMI(Post Merger Integration)の総仕上げ
・本社エリアに、開発およびアフターサービス部門を集約、部門の一体配置により、ECM(Engineering Chain
Management)を推進することで、分断されたアフターサービス事業の統合・効率化を目指す。併せて、今後の事業規模拡大に備え、経営基盤を強化する。
③ 持続可能な企業としての社会的責任の完遂
・革新環境技術の製品化・市場投入により、環境負荷を軽減する。また、ESG経営の徹底で、SDGs達成に貢献
し、社会との共生を目指していく。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営指標としては、本業での収益を示す「営業利益」を重視し、安定した収益体質の確立を目指してまいります。
(4) 経営環境
当連結会計年度における我が国経済は、雇用環境の改善等を背景に、緩やかな回復基調が続きましたが、米中貿易摩擦の影響による中国経済の減速や、年度末にかけての新型コロナウイルス感染症拡大「コロナショック」も加わり、世界経済は急激に停滞し、先行き不透明な状況で推移しました。
こうした経済情勢下、当社グループと関連性が高い、我が国海運・造船業界においては、海運会社が各種環境規制や燃料動向見極めのため、新造船発注を抑制していた最中に、経済活動が停滞し、人や物の動きが制限されるコロナショックが同時到来したため、より一層、市場環境のボラティリティは高まっております。
また、新造船発注が低迷している状況下、造船業界においても、需要回復や船価改善も遅れており、引き続き、厳しい事業環境が継続するものと考えます。
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、2017年4月の事業統合以来、PMIを推進し、事業構造改革を進めておりましたが、開発・サービス部門を、本社エリアに拠点集約することで、総仕上げが完了しました。2021年3月期からは、この成果を刈り取って、持続的に発展を遂げていく計画であり、このために、主に以下の取り組みを進めてまいります。
① 主機関
・環境規制の強化をビジネスチャンスと位置付け、UEエンジンの次世代省エネ、環境規制対応技術を積極的に
アピールし、攻めの経営を展開してきております。この姿勢は、今後も継続するとともに、2021年3月期
は、この成果として受注を積み重ねてきた主機関を製造していく年度になることから、増産体制への移行を
確実なものとして行きます。
② 部品・修理等
・サービス事業においては、売上増と減の要素が拮抗するものの、現状は、堅調な受注・売上を継続して
おります。具体的には、売上増の要素としては、硫黄分濃度規制に適合した新しい燃料油(適合油)の利用
開始により、予備品の需要が拡大するなど、改造需要は旺盛です。売上減の要素としては、減速運転や、CBM(Condition Based Maintenance)推進により、メンテナンスの需要が減少となります。また、新型
コロナウイルス感染症により、海外への渡航が制限され、工事の一部で、延期がみられましたが、当社
グループの業績に与える影響は軽微です。
・サービス事業では、2017年4月の事業統合以来、事業構造改革の取り組みを推進してきており、販売チャネル
の再構築、在庫管理の徹底、業務プロセスの効率化なども進めております。今後、主機関の増産を進める
ことで、サービス事業の更なる拡大に繋げていきます。
・ライセンス事業の展開としては、日本および中国におけるライセンシーの受注・製造・アフターサービスを
全面的に支援しております。中国ライセンシーでは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた取り
組みとして、生産活動が停滞していた時期もございましたが、現状は既に再稼働しており、当社グループの
業績に対する大きな支障は、足元では発生しておりません。
・主機関以外の他製品向け工事の分野では、主機事業の操業を勘案しつつ、他製品向け工事を計画的に取り
込むことで、当社グループ工場内における操業を常に最適な状態に保ち、経営資源から産み出される価値の
最大化を目指していきます。
③ 事業構造改革の推進
・本社エリアに、新社屋・新倉庫が完成することで、開発・サービス部門を本社エリアに移転・集約すること
が可能となりました。拠点集約で、経営資源を集中することで、業務効率化と、バリューチェーンの更なる
機能強化を目指します。
・これにより、「開発、設計、製造、販売、サービスの一貫体制」が実現しました。今後の事業規模拡大やESG
経営の推進に備え、経営基盤をより強固にしていきます。
④ 研究開発の推進
・日の丸ライセンサーである当社グループの誇る研究開発能力は、製品の競争力を維持し、事業を伸長させて
いくための重要な経営資源として位置付けております。
・これを活用し、短期レンジでは、環境規制(TierⅢ)や、EEDI規制を視野に入れ、製品の競争力強化に資す
る新型エンジンの市場投入や、差別化新技術の競争力強化等を推進していきます。
※EEDI規制:1トンの貨物を1マイル運ぶ際に排出されるCO2量を規制するもの。
EEDIとは、Energy Efficiency Design Index(エネルギー効率設計指標)を意味する。
・中長期レンジでは、GHG(温室効果ガス)削減、脱炭素社会実現に向け、カーボンフリーの代替燃料の試験
研究など、先進的な各種取り組みを、戦略的に展開中です。
・こうした研究開発の取り組みと併せ、ESG経営を徹底し、SDGs達成への貢献を進めていきます。