有価証券報告書-第73期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/29 16:31
【資料】
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【項目】
139項目

研究開発活動

R&Dカンパニーが2019年に発足し3年目を迎えました。機械・要素開発とソフトウェア開発をバランスよく開発できる布陣としております。従来は他社より少しでも高速で、加工領域が広くて、多くの工具が収納できる機械を出すことが最重要課題でした。今でもそれは重要ですが機械の価値の半分くらいはソフトウェアが占めるようになってきたと言えます。
新機種開発においては、トポロジー最適化で学んだ解析技術と最適化技術を用いて、機械を製作する前に徹底して最適化を繰り返し、静剛性、動剛性、熱変位抑制を最適化しております。機械を試作する前に加工能力、精度等が見えるようになっております。より性能の高い機械を、素早くリリースすることに大きく貢献しております。またこの技術を応用してデジタルツインテストカットが実施できるようになりました。これは5軸加工機や複合加工機による加工をコンピュータ上で仮想的に実現する技術で加工時間、加工負荷、干渉、加工状況等の結果を素早く確認可能になります。特に手間のかかる大型で複雑なワーク等で有効に活用でき、デジタルツインテストカットで素早くお客様の要望に応えること、実テスト加工の時間を短縮することが可能です。
2020年末から2021年にかけ、R&Dカンパニー発足時から力を入れて取り組んでいたAIチップリムーバルと非接触機上計測を相次いでリリースいたしました。AIチップリムーバルは機内の切屑堆積箇所をAIにより特定し、制御ノズルを用いて堆積した切屑を効率的に洗い流す経路を自動生成し効率よく切屑を洗い流します。自動化システムのトラブルの多くは切屑の堆積によるものであり、自動化システムを安定的に稼働させます。また機内清掃の負担や切屑流しのクーラントに必要な電力を大幅に削減する効果があります。このユニークな技術は他社に先駆けて開発したもので数多くの特許も出願しております。本年は切屑流しに続いて、ミスト、クーラント処理の画期的な商品をリリースする予定です。
非接触機上計測は、株式会社ニコンとの技術協力により生まれた商品で、機上で複雑形状ワークを高速に高精度で計測します。これまでは加工したワークを3次元計測装置で測定し、精度の修正が必要な場合には再度機械に戻していましたが、機上ですべての作業が可能になったため、作業者の負担を減らし、工数を大幅に削減します。風力発電にもちいられる大型ギヤ等を3次元測定器と同等の精度で、レーザスキャナにより高速に測定します。ギヤ計測においてはギヤのパラメータを入力するだけで計測パスを自動生成する機能があり、容易に高精度な計測が可能となっております。まずはドイツ製の5軸マシニングセンタ用にリリースし、日本製の複合加工機にも展開します。今後もニコンの光学技術や画像処理技術を工作機械に搭載しさらなる高機能化、高精度化を実現します。
自動化においては、これまで開発を進めていたAGVに共同ロボットを搭載したフレキシブルな搬送装置をお客様へ導入し始めております。また弊社事業所内でも利用を開始する予定です。このAGVロボットはレール等の軌道や安全柵が不要なためレイアウト変更が容易に可能です。変種変量生産に対応できる自動化システムとしてさらに発展させる所存です。
セル制御システムについては、DMG MORI AGとDMG森精機株式会社で共通のフレームワークを用いております。リニアパレットプールを自動化システムのコアとして、数千本の工具倉庫から工具の自動入れ替えを行うような大規模で長時間の無人運転にも対応しております。ドイツ製の高精度な5軸工作機械の自動化対応ができるようになっております。
2021年は新機種、要素技術、周辺技術、自動化、ソフトウェアをバランスよくリリースする計画にしております。お客様の効率化とグリーンマニュファクチャリングに貢献する製品群を提供してまいります。
以上の研究開発活動の結果、無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費の総額は16,253百万円となっており、セグメント別としては、マシンツール13,913百万円、インダストリアル・サービス2,340百万円となっております。なお、当連結会計年度より、上記研究開発費の総額には客先の要望等による設計変更や仕様変更等に要した開発活動費用を含めております。