有価証券報告書-第179期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/27 15:02
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対処すべき課題

以下に記載する事項は、当有価証券報告書提出日現在において入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針(対処すべき課題)
2015年度に金融庁から処分を受けた当社に係る不正会計問題、当社のグループ会社であったウェスチングハウスエレクトリックカンパニー社(以下「WEC」という。)に関連して発生した多額の損失による債務超過、市場第二部への指定替え、決算の遅延等により、株主、投資家、お客様、従業員をはじめとするすべてのステークホルダーからの信頼を大きく毀損しましたことを改めて深くお詫び申し上げます。
◎不正会計問題
不正会計問題により、当社は、内部管理体制等について改善の必要性が高いと認められるとして、2015年9月、当社株式を特設注意市場銘柄に指定する旨の処分を東京証券取引所及び名古屋証券取引所(以下「両取引所」という。)から受け、また、2015年12月には、金融庁から73億7,350万円の課徴金納付命令を受けました。
当社は、2015年9月に発足した新たな経営体制の下、ガバナンス改革により社外取締役を中心とした経営トップへの監督機能の強化、CFO・財務・経理部門による牽制機能の強化や業務プロセスの改革等による内部統制機能の強化、また、経営者層及び従業員の意識改革や開示体制の改善を進めました。
その結果、両取引所から当社の内部管理体制等について相応の改善がなされたとして、2017年10月に当社株式は特設注意市場銘柄等の指定が解除されました。すべてのステークホルダーからの信頼を取り戻すため、今後も改善・改革に向けた施策を継続してまいります。
また、不正会計問題に関連して、国内において当社に対する損害賠償請求訴訟が合計36件提起されており、その訴額の合計は約1,740億円であります。当社としては、今後、訴訟における原告の主張を踏まえて適切に対処していきます。
◎海外原子力事業に関する損失と債務超過
WECは、2008年に、Chicago Bridge & Iron社(以下「CB&I」という。)の子会社であるCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(以下「S&W」という。)とのコンソーシアムにより、WECの新型原子炉「AP1000」を米国で建設するプロジェクトをそれぞれ米国サザン電力社の子会社であるジョージア電力社他(以下「サザン電力」という。)及び米国スキャナ電力社の子会社であるサウスカロライナ・エレクトリック・ガス・カンパニー社他(以下「スキャナ電力」という。)向けに受注しました(以下総称して「本件プロジェクト」という。)。米国同時多発テロや東日本大震災に起因する追加安全対策のための設計変更等が受注後に必要となり、顧客とコンソーシアムの間で追加のコスト負担や納期の変更につき調整が必要となりましたが、協議はまとまらず、サザン電力とは訴訟に発展し、スキャナ電力及びS&Wとも訴訟が懸念される状態となりました。このような状態を解消して本件プロジェクトを推進するため、WECは、S&Wを買収することによりS&Wの所掌する業務を取り込み、本件プロジェクト全体を一元管理し遂行できる推進体制を構築することとし、併せてサザン電力及びスキャナ電力との間で契約金額及び納期変更の合意に至った結果、WECは、2015年10月に、CB&Iとの間で、WECがS&Wの全株式を取得する契約を締結し、2015年12月に当該株式を取得しました。
しかしながら、WECのS&W買収完了後、詳細見積りを入手し、米国会計基準に従いS&Wの資産価値を評価したところ、本件プロジェクトに関する建設・土木建築関連コスト見込額が買収当時の想定を大幅に上回ることが判明しました。また、建設・土木建築の作業効率が改善するに至っていないことも判明しました。この他の要因も重なり、合計で61億米ドルのコスト増加(以下「本件コスト増」という。)を見込む必要が発生しました。その結果、2016年度第3四半期決算において、本件コスト増に伴う本件プロジェクト損失を織り込み、のれんを原子力事業部に計上した上で、既存の原子力事業部におけるのれん残高と併せて減損テストを実施した結果、当該事業部に計上されるのれんの全額を減損することとなりました。
2017年3月、ウェスチングハウス社グループは、本件コスト増を受け、今後の資金繰り見込み、事業価値の維持等を考慮し、米国連邦倒産法の法的保護の下で再建をはかることが、事業再生及びステークホルダー全体の利益のために最善と判断し、米国連邦倒産法第11章に基づく再生手続(以下「本件再生手続」という。)を申立てました。当該申立てにより、ウェスチングハウス社グループは2016年度通期決算から当社の連結対象外となりました。
上述ののれんの減損及びウェスチングハウス社グループの非連結化並びに本件プロジェクトにおいて当社が電力会社に提供していた親会社保証に関連する損失計上及びウェスチングハウス社グループへの当社債権に対する貸倒引当金の計上等により、2016年度通期決算では、当期純損益ベースで約1兆2,400億円の損失を計上しました。
この極めて多額の損失を計上したことを主因として当社グループは債務超過となり、当社の金銭借入契約において財務制限条項に抵触するとともに、当社の事業遂行に必須である特定建設業の許可の更新が期限である2017年12月にできない状況が生じました。このような状況から、当社には継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められることとなったため、前期の連結財務諸表に対する注記において「継続企業の前提に関する注記」を記載することとなりました。
また、当該債務超過により両取引所の有価証券上場規程等に基づき、両取引所から当社株式を市場第一部から第二部へ指定替えする旨及び上場廃止基準にかかる猶予期間銘柄(債務超過)とする旨の通知を受け、当社株式は、2017年8月1日付で市場第二部に指定替えとなりました。
◎決算の遅延
上述の本件再生手続申立てにより、ウェスチングハウス社グループに関する部分について、本件再生手続申立てに伴い関連する債務の金額及び計上時期の精査等、再生手続に伴う特別な会計処理が必要となりました。また、ウェスチングハウス社グループの決算・監査手続の完了を受け、当社の独立監査人が、WECの監査人の監査結果の評価や監査法人内の必要な手続等、当社グループの監査の完了のために必要な最終的な監査手続を実施することになりました。さらに、ウェスチングハウス社グループに関する工事損失引当金について、当該損失を認識するべき時期の調査において、損失の認識時期が適切であったかどうかについての確認が必要となったため、決算・監査手続に相応の時間を要する状況になりました。
その結果、当社は、第178期有価証券報告書を提出期限である2017年6月30日までに提出することができず、延長申請を行ったうえで延長後の提出期限である2017年8月10日に、第178期有価証券報告書を提出しました。
独立監査人は、当該有価証券報告書に関し、特定の工事契約に関連する損失については2016年3月31日現在の連結貸借対照表に負債計上する必要があったところ、適切に計上されておらず、当該損失が適切な期間に計上されていないことによる連結財務諸表に与える影響は重要であるとして、除外事項を付した限定付適正意見を表明しました。
また、当該有価証券報告書に係る内部統制報告書に関しては、当社としては財務報告に係る内部統制は有効と評価しましたが、独立監査人からは、当該損失の認識時期の妥当性を検証する内部統制が適切に運用されておらず、内部統制の不備が認められるとして、当該内部統制報告書に対して不適正意見とする内部統制監査報告書を受領しました。
第179期第1四半期報告書、第2四半期報告書及び第3四半期報告書に係る四半期レビュー報告書においては、比較対象年度である前年同期の数字のみを除外する限定付結論が表明されています。独立監査人は、2016年度の会計処理が米国会計基準に準拠しておらず、そのことが2017年度の数値と2016年度の数値の比較可能性に影響を及ぼすとしていることから、2017年度通期についても限定付適正意見を表明しています。
なお、当社監査委員会は、当該損失に関連して、弁護士等の独立した第三者を起用してWECと調査を実施し、調査の結果として、2017年4月11日及び同年8月10日、当社取締役会に対し、①2016年12月以前に、当社及びWECが、財務諸表に織り込むことができる程度の確度をもって当該損失を認識し又は認識し得たと評価することは困難であること、及び、②当社及びWECの財務報告にかかる内部統制は有効に機能していたと認められること、を報告しております。
◎第三者割当増資及びWEC関連資産の譲渡等による債務超過の解消
当社は以下のとおり第三者割当増資及びWEC関連資産の譲渡等による債務超過の解消と財務体質の強化に取り組みました。
WECの本件プロジェクトにおいて当社がサザン電力及びスキャナ電力に提供していた親会社保証の履行に関して、サザン電力との間では責任上限額を3,680百万米ドルとし、2021年1月までの間で分割して支払うことで、スキャナ電力との間では責任上限額を2,168百万米ドルとし、2022年9月までの間で分割して支払うことで合意に至り、当社が負担する親会社保証責任の上限額を確定いたしました。
当社取締役会は2017年11月に第三者割当による新株発行による約6,000億円の資金調達を決議し、2017年12月に全額払込が完了しました。この資金調達により、当社は2017年12月及び2018年1月に本件プロジェクトに係る当社親会社保証の責任上限額の全額について早期弁済を実施し、WECに対する代位債権(求償権)を取得しました。当社は、2018年1月に、本代位債権及び当社がウェスチングハウス社グループに関連して保有するその他債権についてNucleus Acquisition LLCとの間で債権譲渡契約を、ウェスチングハウス社グループ持株会社(東芝原子力エナジーホールディングス(米国)社及び東芝原子力エナジーホールディングス(英国)社の2社)の株式についてBrookfield WEC Holdings LLCとの間で株式譲渡契約を、それぞれ締結しました。当該債権譲渡は、2018年1月に完了しました。また、株式譲渡に関しては、東芝原子力エナジーホールディングス(米国)社株式の譲渡は2018年4月に完了し、残る東芝原子力エナジーホールディングス(英国)社株式については、早期の譲渡完了を目指しています。なお、2018年3月にウェスチングハウス社グループの再建計画が連邦破産裁判所において認可されたこと等を受け、関連法規に基づき、両株式の取得価格全額が当期の税務上の損失として認識されました。
上記新株発行による約6,000億円の資本増強に加え、本代位債権を含む債権の譲渡完了及びウェスチングハウス社グループの再建計画認可等に伴いウェスチングハウス社グループ持株会社株式に係る税務上の損失が認識されたことにより、メモリ事業の東芝メモリ㈱への分割に伴う税額影響が低減され、約4,400億円の追加的な資本改善が達成されました。さらに代位債権及びその他債権の譲渡による売却益として税控除後で約1,700億円を計上することで、上記の新株発行、税額影響の軽減と合わせて合計約12,100億円の資本改善を行いました。これにより、当社は2018年3月期に係る連結貸借対照表において債務超過を解消するに至りました。
なお、当社は、2017年10月、WEC及びウェスチングハウスエレクトリック英国ホールディング社(以下「WECUK」という。)との間で、当社が保有するマンジェロッティ社の株式70%をWECUK又はその子会社に譲渡すること、及びWECUKが保有する原子燃料工業㈱(以下「原燃工」という。)の株式52%を東芝エネルギーシステムズ㈱(以下「ESS」という。)が取得することについて合意しました。マンジェロッティ社の株式譲渡は2017年11月に完了し、マンジェロッティ社は当社の連結対象から除外されました。また、原燃工についてはESSが、住友電気工業㈱及び古河電気工業㈱との間で、両社が各々24%を保有する原燃工株式を取得する株式譲渡契約を2018年3月に締結しており、すべての株式譲渡が完了した場合、原燃工は100%連結子会社となる予定です。
上述のウェスチングハウス社グループ持株会社の株式譲渡及び原燃工株式の取引が完了することにより、当社とウェスチングハウス社グループ各社との出資関係はほぼすべて解消され、残るは当社が60%の株式を保有するウラン取引商社であるアドバンスウラニウムアセットマネジメント社のみとなります。同社の位置づけにつきましても継続してWECと協議してまいります。
◎メモリ事業
機動的かつ迅速な経営判断体制の整備及び資金調達手段の拡充を通じて、メモリ事業の更なる成長を図ると共に、メモリ事業への外部資本導入を円滑に進めるために、2017年4月、当社のメモリ事業を会社分割し、東芝メモリ㈱(以下「東芝メモリ」という。)に承継しました。当社は、当社の借入金の返済原資の確保及び財務体質回復のため、複数の候補先との間で入札手続きによるTMC株式の売却手続きを進めていたところ、メモリ事業提携先のサンディスク社(同社を買収したウエスタンデジタル社の子会社)がサンディスク社との合弁会社(以下「本合弁会社」という。)の出資持分を東芝メモリに譲渡したこと等が合弁契約違反であると主張し、仲裁及び訴訟が申立てられました。
同年9月、当社は、ベインキャピタルを軸とする企業コンソーシアムにより組成される買収目的会社である㈱Pangeaと東芝メモリの全株式を譲渡する株式譲渡契約(以下「本譲渡契約」という。)を締結し、同年10月の当社臨時株主総会で同契約は承認されました。同年12月、当社グループは、ウエスタンデジタル社との間で、係属中の仲裁及び訴訟を解決し、フラッシュメモリ事業に関する協業を一層強化していくことについて合意し、係属中の仲裁及び訴訟はすべて取り下げられました。
本譲渡契約の実行には、必要な競争法当局の承認の取得等の前提条件が付されておりましたが、2018年5月にすべての前提条件が充足され、同年6月、東芝メモリ株式の㈱Pangeaへの譲渡(以下「本件譲渡」という。)が完了しました。
本件譲渡における譲渡価格は約2兆3億円です。当該譲渡価格は、2018年5月末日時点の東芝メモリの推定純負債額、推定運転資本額、推定累積設備投資額に基づき算出されたものですが、今後、当社と㈱Pangeaは、各推定額と実績額との間の差額を確認し、差額を精算する予定です。
また、本件譲渡とともに、当社は㈱Pangeaに合計3,505億円を再出資して、㈱Pangeaの議決権のある普通株式を約1,096億円分、転換権付き優先株を約2,409億円分取得しました。
本件譲渡と再出資の結果、東芝メモリは当社連結対象から外れて、㈱Pangea及び東芝メモリは当社の持分法適用会社となる予定です。
なお、㈱Pangeaからの配当については、5年間は予定されておりません。
◎継続企業の前提に関する重要な不確実性の解消
上述のとおり、当社は、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しておりましたが、メモリ事業の譲渡実現の蓋然性が高まるとともに、WEC関連資産の譲渡の実現及び第三者割当増資の完了により、資金繰りや債務超過による財務体質への懸念の解消が進みました。また、特定建設業の許可を必要とする事業については、特定建設業許可を有する会社を承継会社とした会社分割を行うなどの対策を行い、この結果特定建設業許可の更新ができないことで生じる事業への悪影響の懸念もなくなりました。これらのことにより、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は解消いたしました。
このような状況の中、当社の経営方針の内容は、以下のとおりです。
Ⅰ.財務基盤の早期回復と強化
当社は引き続き、健全な経営に向けて財務体質の強化に取り組んでまいります。
今後も、保有資産については聖域なくその意義を見直し、保有資産の売却を継続していきます。
Ⅱ.当社グループの組織運営の強化
当社は、4つの社内カンパニーを分社化しました。分社後の各事業会社については、グループ内の連携を強化しつつ、それぞれの事業会社の事業価値最大化に特化します。コーポレート機能については、当社グループ全体の企業価値最大化とガバナンス強化に注力します。
1.事業会社について
分社後の各事業会社は、自律した事業体として、新規事業展開を含めて事業価値の最大化に集中していきます。事業特性や外部環境に応じた内部管理体制を構築し、外部監査の適用を直接受けることでガバナンスを強化してまいります。また、社内カンパニー制に比べて事業責任を明確化するため各分社会社が傘下会社を直接子会社化することでガバナンスを一層強化します。各事業会社は、市場と顧客に対する説明責任を直接的に果たしてまいります。
2.コーポレート機能について
グループ全体に対するガバナンスについては、関係会社の管理を、コーポレート機能を担う東芝本体と事業会社で連携して引き続き徹底していきます。東芝本体では、事業ポートフォリオの柔軟な組み換えなどのグループの戦略策定や適切な資源配分、リスク管理機能の拡充など、東芝グループ全体の企業価値の最大化とガバナンス強化に注力していく方針です。
Ⅲ.今後の注力事業領域
今後当社グループは、社会インフラ、エネルギー、電子デバイス、デジタルソリューションの4つの注力事業領域で人々の暮らしと社会を支える役割を担っていきます。これまで培ってきた確かな技術力を生かし、豊かな価値を創造し、持続可能な社会に貢献します。
1.社会インフラ事業領域
水処理や受配電、防災、道路、放送、航空管制、郵便などの公共インフラ事業を安定収益事業として位置付け、これらの収益をベースに、成長事業として位置付けた二次電池やエレベーター、空調、鉄道システム、物流システム事業に対し、必要に応じた投資を実施してまいります。また、中国とインドを成長地域とし、戦略的に各事業を拡大していきます。お客様の価値を高めるサービスを継続的に提供することで、当社の製品・システムを長期にわたり、繰り返し幅広く採用いただく「循環型ライフサイクルビジネス」を展開していきます。
2.エネルギー事業領域
世界的な脱炭素化・脱石炭化の市場変化に対応すべく、水力・地熱・太陽光などの自然エネルギーを利用した発電設備や、既設火力・送配電設備のサービスと更新ビジネス等で安定収益を目指します。国内原子力については再稼働、メンテナンス、廃炉を中心に引き続き社会的責任を果たしてまいります。一方、成長事業である次世代エネルギーとして期待される水素について、自立型水素エネルギー供給システムH2One™の製品開発など、将来の種となる技術開発も着実に進め、市場への早期投入を図っていきます。
3.電子デバイス事業領域
ディスクリート半導体やシステムLSIなどを軸に産業用・車載用の市場で強みを生かして安定した収益確保を図っていきます。今後の市場拡大が見込まれる車載市場での事業拡大のため、2017年10月に車載戦略部を設立しており、中長期のマーケティング、商品企画機能を強化していきます。また、HDDについても市場拡大が続くデータセンター用途向けに、14テラバイトHDDなど高容量機種を他社に先駆けて市場投入することでシェア拡大と収益確保を図ります。世界初、世界最高性能の製品群を続々と世に送り出し、新しい市場の開拓と事業拡大を推進してまいります。
4.デジタルソリューション事業領域
官公庁向けや製造インフラ向けなどのシステムインテグレーションを中心に安定した収益を確保するとともに、東芝のものづくり、音声・画像認識技術によるIoTや人工知能を活用したデジタルサービスソリューション(デジタル技術を活用したサービスソリューション)を成長事業として積極的に展開していきます。IoTや人工知能などを活用したICTソリューションの開発・製造・販売に一元的に対応できる体制を構築し、製造・産業・社会インフラ、流通・金融、官公庁・自治体向けの各ソリューション事業のさらなる拡大を進めます。また、市場のデジタルトランスフォーメーション(情報通信技術を活用し、デジタル化を推進することによる新しい価値創出)に俊敏に対応し、IoTアーキテクチャーSPINEXTMによりサービス価値を創造・提供できるビジネス・イノベータをめざすとともに、ICT技術を活用し、当社グループの企業価値最大化に貢献します。この推進のため、2018年4月1日付でデジタルトランスフォーメーションによる全社成長戦略を牽引する最高デジタル責任者(Chief Digital Officer:CDO)を設置するとともに、コーポレート推進部門として、デジタルトランスフォーメーション戦略統括部を設立しました。また2018年4月2日付で新たなデジタルビジネスにおいてコンサルティングから価値創造までを一貫して提供する東芝デジタル&コンサルティング㈱を設立しました。
Ⅳ.企業価値の最大化
2018年4月1日付で車谷暢昭が代表執行役会長CEOに就任し、新経営体制で当社グループの企業価値の最大化を目指してまいります。各種の短期施策を立案し実行に移すと共に、事業別の変革プランの策定を行い、2018年内に「東芝Nextプラン」として、今後5年間の事業計画を発表する予定です。
短期施策として、「経営インフラ整備」、「オペレーション改善」、「構造転換・体質強化」を軸に基礎収益力を強化します。「経営インフラ整備」では、事業毎の主要業績指標(KPI)を再度整備して、現場とマネジメントが共通で見られる仕組みを整えます。また、内部監査機能については、従前から実施してきた会計コンプライアンスのチェックを継続するとともに、経費の統制や業務プロセスなどを含めたより広範なチェック機能を構築します。「オペレーション改善」では、調達・設計・製造・販売に至るすべてのバリューチェーンの見直しを網羅的に行うことで、売上原価率の低減を図ります。またプロジェクト審査機能については、従前から実施してきた会計プロセスの妥当性チェックに加え、新規受注案件の採算性を向上するプロセスを拡充します。「構造転換・体質強化」では、より筋肉質な構造に転換し、体質強化を図るために、エネルギー事業などにおける構造転換を重点的に進めるとともに、スタフなど間接機能やグループ会社数も含め聖域を設けず全社的に見直しを行います。個別の施策については、確定した段階で公表します。
事業別の変革プラン策定においては、事業別にグローバルの優良企業とのベンチマークにより目標を設定し、中期事業戦略を策定します。目標の設定にあたっては、売上ではなく、フリー・キャッシュフロー(FCF)や投下資本利益率(ROIC)といったキャッシュを創出する力を重視します。
上記で検討した事業別中期戦略をベースに、デジタルを活用した高収益・リカーリング事業へ構造転換するための計画を策定します。5年後のあるべき姿の基礎をつくり、既存ビジネスの技術、製品の強みに、AI(人工知能)やIoT(あらゆるモノをインターネットでつなぐ)といったデジタル技術を組合せ、顧客価値を最大化するサービス・ソリューションの提供にシフトすることで、循環性・継続性のあるリカーリング型ビジネスモデルへの転換を目指します。
企業価値最大化の観点で、「東芝Nextプラン」を策定し、成長投資と構造転換に必要な資金、財務の健全性や格付けに加えて、株主還元等、適切な資源配分を検討してまいります。
以上のとおり当社は改革を進めているところではありますが、株主、投資家をはじめとするすべてのステークホルダーからの信頼を大きく毀損しましたことを改めて深くお詫び申し上げます。皆様からの信頼を取り戻すべく、経営陣以下全社一丸となって全力で改革に取り組んでまいります。
(2)株式会社の支配に関する基本方針
1)基本方針の内容
当社グループが株主の皆様に還元する適正な利潤を獲得し、企業価値・株主共同の利益の持続的な向上を実現するためには、株主の皆様はもちろん、お客様、取引先、従業員、地域社会等のステークホルダーとの適切な関係を維持、発展させていくことも必要であり、これらのステークホルダーの利益にも十分配慮した経営を行う必要があると考えています。
また、当社株式の買付の提案を受けた場合に、その買付が当社の企業価値・株主共同の利益に及ぼす影響を適切に判断するためには、各事業分野の有機的結合により実現され得るシナジー効果、当社グループの実情、その他当社の企業価値を構成する要素が十分に把握される必要があると考えます。
当社取締役会は、上記の要素に鑑み、当社の企業価値・株主共同の利益の確保、向上に資さない当社株式の大量取得行為や買付提案を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当ではなく、このような者による当社株式の大量取得行為に関しては、必要かつ相当な手段を採ることにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保する必要があると考えています。
以上の考え方に基づき、当社は、2006年6月に当社株式の大量取得行為に関する対応策(いわゆる買収防衛策)を導入し、2009年6月及び2012年6月に更新してまいりましたが、経営環境等の変化、金融商品取引法整備の浸透の状況、株主の皆様の意見等を考慮しながら慎重に検討した結果、2015年6月以降、当該対応策を更新しておりません。
なお、当該対応策終了後も弊社株式の大規模買付を行おうとする者に対しては、大規模買付行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための必要かつ十分な情報の提供を求め、併せて当社取締役会の意見等を開示し、株主の皆様の検討のための時間と情報の確保に努める等、金融商品取引法、会社法及びその他関係法令の許容する範囲内において、適切な措置を講じるとともに、引き続き企業価値及び株主共同の利益の確保及び向上に努めてまいります。
2)基本方針の実現に資する特別な取組み
当社グループは、強靭な企業体質への転換を図ることにより株主、投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様の信頼回復につなげるべく、「内部管理体制の強化及び企業風土の変革」、「構造改革の断行」、「事業ポートフォリオ及び事業運営体制の見直し」、「財務基盤の整備」を実施しています。