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有価証券報告書-第93期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/18 15:30
【資料】
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【項目】
174項目
② 戦略
当社グループは、気候変動を将来の不確実性として捉えるのではなく、既に顕在化しつつある事業環境の変化として認識しています。こうした認識の下、当連結会計年度にマテリアリティーの見直しを行い、「脱炭素社会の実現」から「気候変動への適応と緩和」へと変更しました。これは、今後も一定程度の気温上昇は進行すると見込まれる中で、当社事業においては、気候変動への適応がリスク及び機会の両面に与える影響が特に大きいと評価したためです。
当社グループは、気候変動による影響を軽減するための緩和策を進めるとともに、変化する気候条件や社会環境への適応を優先的に取り組むことで、事業の持続性と競争力の確保を目指しています。
1)リスクと機会の分析条件
対象範囲コンポーネント事業、センサー・コミュニケーション事業、モビリティ事業
シナリオIPCC※ AR6 WG1より示される5つのシナリオから3つを選択
SSP5-8.5 (ワーストケース)、 SSP2-4.5(現状ライン)、SSP1-1.9(ベストケース)
時間軸短期:1年、中期:2~3年、長期:3年以上
影響度小:売上0.5%~、中:売上3%~、大:売上10%~

※ Intergovernmental Panel on Climate Change
2)シナリオ定義
当社グループは、気候変動が将来の事業環境に与える影響の不確実性を整理するため、気候変動の進行状況と社会の意向の方向性を組み合わせたシナリオ分析を実施しています。本分析では、縦軸に「気候変動の進行度(物理リスク)」、横軸に「規制強化度(移行リスク)」を設定し、両軸の組み合せにより4つのシナリオを定義しました。これにより、気候リスクが顕在化する局面と、政策・規制対応が進展する局面の違いを踏まえた、多面的な影響評価を可能としています。
各シナリオにおいては、コンポーネント及びセンサー・コミュニケーション事業とモビリティ事業それぞれについて、事業環境の変化がもたらすリスク及び機会を整理・評価しました。事業特性の違いを踏まえて分析を行うことで、気候変動が当社事業に与える影響をより具体的かつ戦略的に把握することを目的としています。

(A) 急速な脱炭素移行を迫られる社会
コンポーネント及びセンサー・コミュニケーション事業モビリティ事業
リスク・サプライチェーン寸断による供給不安定
・脱炭素規制強化によるコスト増
・災害対応投資と脱炭素投資の2重負担
・災害による供給停止で顧客生産停止リスク増大
・急激なEV化によるICE(Internal Combustion Engine)
部品の激減
・顧客からの急激な脱炭素要求
機会・防災性能部品の需要増
・工場/インフラの強靭化向け機器市場拡大
・“適応”市場の成長
・EV/電動化部品の需要急増

(B) 気候危機に翻弄される社会
コンポーネント及びセンサー・コミュニケーション事業モビリティ事業
リスク・災害増加による操業停止
・空調/防災/在庫調整による固定費増加
・成長投資の後ろ倒し
・災害による供給停止で顧客生産停止リスク増大
・EV化の停滞
・顧客の調達シフト(国内回帰・複数調達)
機会・監視/防災機器の需要増
・屋外行動制限に伴う巣ごもり需要増
・災害対策部品の需要拡大
・顧客の地産地消調達

(C) 積極的に脱炭素へ移行する社会
コンポーネント及びセンサー・コミュニケーション事業モビリティ事業
リスク・脱炭素関連の早期投資負担増
・グリーン調達基準の未達による失注
・認証/開示コスト増大
・ICE(Internal Combustion Engine)部品の縮小
・低炭素サプライチェーン対応遅れ
・認証・開示コスト増大
機会・グリーンデバイス市場の拡大
・環境性能が競争力の源泉になる
・EV/電動化部品の需要拡大
・電子部品/半導体の需要増

(D) 現状維持型社会
コンポーネント及びセンサー・コミュニケーション事業モビリティ事業
リスク・脱炭素対応遅れによる競争力低下
・価格競争の激化
・EV化減速により将来リスクを内包
・EV投資抑制で先端部品※の伸びが限定的
機会・継続的省エネ改善による利益率底上げ・継続的省エネ改善による利益率底上げ

※電動化関連部品、ADAS/自動運転関連部品、半導体/電子デバイス関連、コックピット・インフォテインメント関連
3)リスクと機会の評価
前節で定義したシナリオを基に、当社主要事業における気候関連リスク及び機会を評価しました。
なお、リスク評価に当たっては、事業ごとに、①リスク項目の抽出、②想定される事業への影響の特定、③発生可能性及び影響度に基づく重要度評価(定性評価)を実施し、更に補助的なデータを用いて財務影響を定量化した上で、総合的に評価しています。
<リスク評価>
区分種別項目具体的な影響時間軸影響度対応策
移
行
リ
ス
ク
政策・規制カーボンプライシング制度の加速・カーボンプライシング制度導
入国増加、価格高騰に伴いコ
スト負担が増加
長期小・直接排出量削減によるコス
ト増加リスクの低減
・インターナルカーボンプラ
イシング制度導入による事
業ポートフォリオ評価への
組み込み
政策・規制省エネ・GHG排出量規制の強化・報告対象拡大による管理工数
の増加
・省エネ基準評価による設備更
新前倒し
・上流サプライヤー含む製品カ
ーボンフットプリント算定要
求の拡大による管理工数の増
加
長期小・計画的な設備更新による規
制強化への先行対応
・サプライヤー含む社内デー
タ管理基盤の整備による管
理工数増大への対応
市場低炭素製品需要の拡大・顧客ニーズに対応できないこ
とによる売上減少
・低炭素部材への切り替えに伴
う調達コスト増加と価格転嫁
できないことによる利益率の
圧迫
長期中・低炭素製品・技術開発の強
化による需要対応力の向上
・サプライヤーとの協働や複
数調達先の検討によるコス
ト上昇の抑制と安定調達の
確保
市場鉱物資源の需要逼迫・調達コストの上昇・価格変動
リスクの増大
・供給不安によるサプライチェ
ーン途絶
中期中・代替材料の検討や使用量削
減の検討
・調達リスク分散によるコス
ト・価格変動リスクへの対
応
市場電力需要の拡大・電力料金の上昇リスク増大
・再エネ・脱炭素電源調達の負
担増
中期小・省エネ推進による電力需
要・料金上昇リスクの抑制
・電力調達方法の多様化によ
るリスク分散
物
理
リ
ス
ク
急性洪水・サイクロン・ハリケーン・台風・工場の操業停止
・サプライチェーン寸断
・設備・在庫の破損
中期小・定量的リスク評価に基づく
防災・減災対策の優先実施
・定量的リスク評価に基づく
差プラチェーンリスクの可
視化
慢性気温上昇・従業員の健康悪化による労働
生産性の低下
・空調コスト・エネルギーコス
トの増大
長期小・定量的な熱中症リスク評価
に基づく職場環境・健康対
策の強化
・高温環境を考慮した設備・
建屋対策によるエネルギー
負荷抑制
・リスク評価を踏まえた中長
期的な拠点運営・投資計画
への反映


<機会評価>
種別項目具体的な影響時間軸影響度対応策
市場防災/適応市場の成長に伴うコンポーネント事業及びセンサー・コミュニケーション事業製品の売上増加防災/減災向けデバイス需要の拡大が見込まれる長期小・防災/減災市場の成長を中長期的な事業機会と捉え、研究開発・投資・新規事業開発の検討に反映し、気候変動への適応を通じた持続的な事業成長につなげる
市場水資源/農業向けIoT需要の増加干ばつ、渇水、高温等農業リスクが増大しており、水・農業分野での適応ニーズが増大し、センサー・通信デバイス需要の拡大が見込まれる長期小・干ばつや渇水、高温環境下での水管理/農業生産を支援する用途を想定し、環境データ取得や遠隔監視に適したセンサー/通信デバイスの開発/機能強化を進め、適応ニーズに応える製品提供を強化する

4)リスクマネジメント
企業の持続的成長と企業価値の向上を実現するためには、事業を取り巻く様々なリスクについて、事業への影響度と重要度を適切に見極め、中長期的な視点で施策を立案し、対応していくことが重要であると認識しています。当社グループは、リスクマネジメントの枠組みとしてリスク管理規定を定め、全社的なリスクマップを作成しています。
気候変動に伴う物理的リスク及び移行リスクについても、経営上の重要なリスクの一つとして、全社リスクマネジメントの対象に組み込んでいます。気候関連リスクの識別及び評価に当たっては、TCFDの枠組みに基づき、将来の気候変動が事業に与える影響を整理しています。これらのリスクについては、環境戦略推進プロジェクトが中心となり、IPCC第6次評価報告書に示される気候シナリオ等の外部情報を活用しながら、定期的に洗い出し及び評価を実施しています。洗い出された気候関連リスクは、他の経営リスクと同様の評価基準に基づき整理され、全社リスクマップに反映した上で、サステナビリティ委員会において評価及び対応方針の検討、実行状況のモニタリングを行っています。また、財務影響度が大きいと判断されたリスクについては、取締役会に報告し、必要に応じて審議を行う体制としています。
このように当社グループでは、気候関連リスクを特別なリスクとして切り離すのではなく、全社的なリスクマネジメントプロセスの中に統合し、識別・評価・管理を行うことで、事業への影響提言及び中長期的な企業価値の維持・向上に努めています。

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