有価証券報告書-第86期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/26 14:40
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、米国では堅調な個人消費が下支えし景気は底堅く推移したものの、欧州は製造業の低迷が長期化し、中国は米国による関税引上げ影響により、景気減速が続きました。さらに年明けから、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界的に経済活動が停滞する状況となりました。
わが国におきましても、外需の減少に伴い輸出が低調に推移し個人消費も減速基調にあるなかで、新型コロナウイルス感染の影響により一層厳しい状況となりました。
そのような環境下、エレクトロニクス市場におきましては情報通信機器関連の停滞基調が続き、車載関連も電子化が進展しているものの自動車の生産台数が世界的に減少したことから、電子部品需要は弱含みで推移しました。
こうした状況のなかで、当社グループにおきましては新規分野への拡販を図る一方、引続き生産効率の改善に努めました。
その結果、当連結会計年度の経営成績は、モジュール製品の受注減を主因に、売上高38,711百万円(前期比△14.0%)、営業利益833百万円(同△38.0%)、経常利益918百万円(同△41.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益663百万円(同△14.5%)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・電子部品
電子部品は、全般的な海外需要の不振に伴いモジュール製品の受注が減速したことを主因に、売上高37,823百万円(前期比△13.9%)、営業利益1,770百万円(同△22.6%)となりました。
・金型・機械設備
金型・機械設備は、金型の売上はほぼ前期水準となったものの機械設備の売上が停滞したことから、売上高784百万円(同△16.6%)、営業利益40百万円(同△5.2%)となりました。
・その他
その他は、商品仕入及び不動産業等にかかる事業であり、売上高は498百万円(同△14.6%)となり、営業利益は110百万円(同+5.8%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,015百万円増加し、6,020百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は6,863百万円となりました。これは、税金等調整前当期純利益900百万円、減価償却費1,163百万円に対し、売上債権が5,419百万円、たな卸資産が1,431百万円、それぞれ減少し、仕入債務の減少は1,989百万円に留まったことが主因であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は1,273百万円となりました。これは、固定資産の取得による支出1,221百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は3,610百万円となりました。これは、借入金の純減3,132百万円、配当金の支払い251百万円などによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
電子部品(百万円)37,556△13.0
金型・機械設備(百万円)656+24.7
合計(報告セグメント)(百万円)38,213△12.6

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の報告セグメントに属していない「その他」に含まれる商品仕入実績を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
その他(㈱大泉製作所商品仕入)
(百万円)
226△27.2

(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
電子部品37,038△17.16,212△11.2
金型・機械設備656+24.7165+520.7
報告セグメント計37,695△16.66,377△9.2
その他331△31.38△81.4
合計38,026△16.86,386△9.7

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.為替換算による差額等は、受注高に含めて調整しております。
d.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
電子部品(百万円)37,823△13.9
金型・機械設備(百万円)518△20.7
報告セグメント計(百万円)38,341△14.0
その他(百万円)370△17.1
合計(百万円)38,711△14.0

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
無錫夏普電子元器件㈲7,72417.27,25118.7

3.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(事業全体の経営成績)
・売上高
売上高は、全般的な海外需要の不振に伴い、モジュール製品の受注が減速したことを主因に、前期に対し6,322百万円減少(前期比△14.0%)し、38,711百万円となりました。
・売上原価
売上原価は、売上高の減少に伴い、前期に対し5,563百万円減少(同△14.4%)し、33,009百万円となり、売上原価率は材料費率の高いモジュール製品の売上高ウエイトが低下したことから、85.3%と、前期に対し低下しました。
・販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費におきましては、減収に伴ない経費の抑制に努めた結果、前期に対し248百万円減少(同△4.9%)し、4,869百万円となりましたが、販管費率としては、12.6%と、前期に対し上昇しました。
・営業外損益(営業外収益及び営業外費用)
営業外損益の純額は85百万円の益(前連結会計年度は220百万円の益)となりました。前期は円安にシフトしたため、為替差益を236百万円計上しましたが、当期は為替差益が19百万円に留まったことが主因であります。
・経常利益
営業利益の減少および為替差益の減少を主因に、前期に対し646百万円減少し、918百万円(前期比△41.3%)となりました。
・特別損益(特別利益及び特別損失)
特別損益の純額は17百万円の損(前期は392百万円の損)となりました。前期は特別損失として、米国における集団民事訴訟の和解契約締結に伴なう訴訟和解金339百万円を計上しましたが、当期は特別利益、特別損失とも特段の計上はありませんでした。
・税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)
税金等調整前当期純利益は、900百万円となり、前期に対し272百万円減少(前期比△23.2%)し、法人税、住民税及び事業税は、49百万円の減少となりました。
また、法人税等調整額としては、前期は連結納税上の繰越欠損金を使い切り105百万円となりましたが、当期は△3百万円となりました。税金費用合計としては、前期に対し158百万円減少(同△40.1%)し、236百万円となりました。
・親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益、特別損益(損)、税金費用の計上などから、663百万円(同△14.5%)となり、1株当たり当期純利益金額は79.24円(前期は92.70円)となりました。
(事業全体の財政状態)
・現金及び預金
前期は受注回復に伴ない運転資金が必要となったことから、現金及び預金は減少しましたが、当期は受注減により生産水準が低下したことから、売上債権、たな卸資産が減少し、前期末に対し1,971百万円増加(前期比+37.5%)し、7,228百万円となりました。
・売上債権(受取手形及び売掛金)
売上高が減少基調となったことから、前期末に対し5,610百万円減少(同△42.3%)し、7,648百万円となりました。
・たな卸資産
生産の減少に伴ない、前期末に対し1,518百万円減少(同△22.3%)し、5,286百万円となりました。
・有形固定資産及び無形固定資産
減価償却費1,163百万円に対し、設備投資は1,484百万円となったことなどから、前期末に対し194百万円増加(同+2.0%)し、9,927百万円となりました。
・繰延税金資産
繰延税金資産は、法人税等調整額△3百万円(益)による増加などから、前期末に対し10百万円増加(同+0.8%)し、1,434百万円となりました。
・仕入債務(支払手形及び買掛金)
仕入債務は生産の減少に伴ない、前期末に対し2,075百万円減少(同△27.3%)し、5,526百万円となりました。
・退職給付に係る負債
勤務費用と利息費用の計上により221百万円増加し、退職給付の支払いにより305百万円減少した他、未認識数理計算上の差異が40百万円発生(負債減)したことなどから、当期末の退職給付に係る負債は、前期末に対し123百万円減少(同△2.6%)し、4,631百万円となりました。
・有利子負債(短期借入金、長期借入金)
有利子負債は、前期末に比べ3,132百万円減少(同△25.1%)し、9,338百万円となりました。
・純資産の部
純資産の部の合計は、前期末に対し15百万円増加(同+0.1%)し、12,656百万円となりました。
純資産の部の増減の概要は次のとおりであります。
株主資本は、親会社株主に帰属する当期純利益により663百万円増加しましたが、剰余金の配当により251百万円減少したことなどから、前期末に対し407百万円増加(同+3.3%)し、12,701百万円となりました。
その他の包括利益累計額は、アジア通貨安円高により為替換算調整勘定が286百万円減少したこと、株安によりその他有価証券評価差額金が174百万円減少したことを主因に、前期末に対し385百万円減少(同△113.4%)し、△45百万円となりました。
非支配株主持分は、当期において子会社の野村エンジニアリング㈱の株式を追加取得し、完全子会社としたことから、当期末は、残高がなくなりました(前期末は7百万円)。
(セグメントごとの経営成績等)
・電子部品
チップ抵抗器において車載向け受注の増加に対応し、国内において約4億円の増産投資を行った一方、モジュール製品においては、受注が減少基調となったことから、前期比減収減益となりました。
・金型・機械設備
金型の売上はほぼ前期水準となりましたが、機械設備の売上が停滞したことから、前期比減収減益となりました。
・その他
売上高は、㈱大泉製作所製品の受注減により、前期比減となり、利益は不動産業を主体に前期比増となりました。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループは、ROE6%以上を目標としております。ROEは前々期は9.1%、前期は6.2%でしたが、当期は5.2%と、目標には届きませんでした。
情報通信機器向け需要において成長に鈍化がみられるなかで、当社は、自動車の電子化の進展に伴い、安定受注で、かつ高付加価値が見込めるカーエレクトロニクス分野への製品の拡販と開発に注力しており、徐々に成果に現れてきていましたが、当期は自動車生産の世界的減速の影響を受けました。
また、年明けから新型コロナウイルス感染が世界的に拡大したことから、中国およびアセアン地区における子会社が操業率の低下を強いられましたが、中国子会社の決算期は12月期であること、また、アセアン地区の社会的規制は3月以降であったことから、生産面での直接的な影響は当連結会計年度におきましては限定的なものに留まりました。しかし、受注面におきましては、各品種総じて年度末にかけ減少基調となったことから減収減益となり、2020年度はこの影響がさらに大きくなることが懸念されます。
感染収束の見通しが不透明ななかで、需要回復の時期や水準の予測は困難な状況であり、当面は経費の抑制により対応せざるを得ないものと考えておりますが、このような環境下においては、変革する市場ニーズにマッチした製品の提案が急務であり、当社のセンサ技術、回路設計技術、無線技術の融合を図ることでIoTなどの新分野への参入に取り組んでおります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが、税金等調整前当期純利益、減価償却、売上債権およびたな卸資産の減少などにより6,863百万円となり、投資活動によるキャッシュ・フローが設備投資を主因に△1,273百万円、財務活動によるキャッシュ・フローが借入金の純減を主因に、△3,610百万円となったことなどから、当期末における連結ベースの現金及び現金同等物は、前期末に対し2,015百万円増加(同+50.3%)し、6,020百万円となりました。
b.財務政策
運転資金は、自己資金および金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資などの長期資金は、自己資金および金融機関からの長期借入を基本としております。
c.重要な資本的支出の予定およびその資金の調達源
当期後1年間の設備投資は、総額1,200百万円を計画しておりますが、その所要資金は主として、自己資金および金融機関からの長期借入金をもって充当する予定であります。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
新型コロナウイルスの感染につきましては、当年度内に収束に向かうものと考えており、将来長期にわたる経営環境の悪化は想定しておりません。
ただし、第2波などによる影響が長期化した場合は、繰延税金資産の回収可能性および固定資産減損の見積りに影響する可能性があります。