有価証券報告書-第155期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/19 16:33
【資料】
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【項目】
86項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、経営理念の核である「新しい発想でお客様の価値創造に貢献します。」というミッションのもと、「Innovation for Customers」をブランドスローガンとして掲げ、グループ一丸となり、グローバルに成長し続ける企業を目指します。
経営の基本戦略としては「※グローバルニッチトップ™」戦略(成長するマーケットを選択し、ニッチな分野を対象に当社固有の差別化技術を活かして、世界№1シェアを狙う)と「※エリアニッチトップ™」戦略(エリア固有のニーズにマッチした製品で、世界各地でのトップシェアを狙う)を掲げ、この両輪で事業の拡大を図ります。
このような方針のもと、当社グループは新しい発想でお客様の価値創造に貢献し、更なる成長に向け多くのイノベーションを創出してまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、「新しい発想でお客様の価値創造に貢献します。」という経営理念に基づき、中期経営計画を策定しております。また、売上収益、営業利益およびROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)を客観的な指標として採用しております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
製造業を取り巻く経営環境は昨今、激変しています。自動車業界においては、電動化、自動運転、コネクテッド、シェアリングなどの技術革新が急速に進んでいます。
また、エネルギー業界や情報通信業界との融合など、従来の業界の枠を越えた再編も始まろうとしています。AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)をはじめとするデジタル化の進展、グローバル規模での企業間の競争激化、COVID-19の発生による世の中の変化等、外部環境は著しい変化の中にあります。なお、COVID-19が今後の経営環境や経営戦略に与える影響については、(4)会社の対処すべき課題に記載しております。
当社グループは、2018年度に策定した中期経営計画において、ニッチトップ戦略で強みを発揮できる「情報インターフェイス」「次世代モビリティ」「ライフサイエンス」の3つのフォーカス領域を明確に打ち出しました。これらの領域で変化を先取りし、新たな事業を打ち立てることで事業ポートフォリオを進化させていきます。また、成長戦略の推進と構造改革の両輪で、外部環境に影響されにくい収益基盤の構築を図ってまいります。
① 成長戦略の推進
Nittoグループの強みを発揮すべく「情報インターフェイス」「次世代モビリティ」「ライフサイエンス」を新たな成長領域とし、これまで培ってきた技術やビジネスモデルと融合させながら、新しい事業の創出に取り組みます。その一例として、これからデータセンター市場の成長や次世代移動通信システム(5G)の普及などにより、電子機器向け材料、半導体関連材料、電子プロセス材料などの需要は拡大すると見込んでいます。これまで培ってきた粘着技術、塗工技術、高分子制御技術など応用し、早期に実績化を目指します。
② 現行事業の構造改革
インダストリアルテープ事業やオプトロニクス事業を中心に、グローバル規模での生産拠点の見直しなどを行い、徹底した合理化を図っていくとともに、国内及び海外での事業構造改革を推進してまいります。
③ 経営基盤の強化
売上や利益の拡大にとどまらず、「安心で安全な職場環境づくり」、「事業活動に伴う環境負荷の低減」、「お客様に喜んでいただける品質の追求」、「社会貢献活動への取組み」などの施策に引き続き取り組むことで、ステークホルダーの皆様へ高い価値を提供してまいります。特に、当社グループの事業や製品を通じ、SDGsなどの社会課題の解決に貢献することにより当社グループの企業価値を向上させる経営を目指します。
また2017年から2020年までの4年間、男子プロテニス協会「Association of Tennis Professionals(ATP)」と、ATPワールドツアーのシーズン最終戦「ATPファイナルズ」において、日本企業初となるタイトルスポンサー契約を締結しております。ブランド力向上を図り、新たな世紀におけるグローバル展開を加速していきます。
(4)会社の対処すべき課題
米中貿易摩擦等の地政学的なリスク、COVID-19発生に端を発する世界的な景気の下振れ懸念、また、COVID-19発生に伴う世の中の変化など、当社グループは対処すべき課題の多い環境下におかれています。このような環境下で、当社グループは、社内外の様々な技術や情報を融合させることで新たな価値を創出していきます。また、創業からの当社グループの強みである、新技術開発・新用途開拓を追求することで新需要を創造する「三新活動」にあらためて力を入れて取り組み、顧客の価値創造に貢献してまいります。
また、2020年1月27日付「当社連結子会社社員の不正行為に関するお知らせ」で公表いたしました、当社の連結子会社である上海日東光学有限公司の現地購買担当社員らによる不正取引につきまして、当社は、外部専門家を加えた社内調査委員会(委員長:神崎正巳常勤監査役)を設置して、調査を実施し、同年4月27日付で最終報告書を受領しています(同日付「当社連結子会社社員の不正行為に係る社内調査結果等に関するお知らせ」にて、社内調査委員会の構成、調査結果の概要および今後の対応を公表しております)。今後は、その調査結果を踏まえて抜本的な防止策の策定と内部管理体制の強化に取り組んでまいります。なお、社内調査委員会からは、当該連結子会社内における類似案件は検出されず、また、他にリスクの高い拠点はないとの報告を受けています。
セグメント別においては、それぞれ次の取組みを重点的に実施します。
・インダストリアルテープ
基盤機能材料では、既存事業での最適な生産体制の見直しや生産性改革を実行し、競争力を向上していきます。また、5Gの普及やデータセンター市場が牽引役となり、電子材料、半導体プロセス材料、電子プロセス材料などの需要拡大を見込まれる分野で新製品の創出に努めてまいります。なお、COVID-19の影響としてお客様の在庫状況に大きな変動が生じる可能性があります。トランスポーテーション事業では、COVID-19の影響により自動車生産台数の長期的低迷が想定されるなか、グローバルで供給体制の見直しや合理化の徹底、現行製品の統廃合等により、既存製品の競争力を強化し収益性を改善していきます。また、自動車の電動化、自動運転、コネクテッド、シェアリングといった変化に対するカーエレクトロニクス関連や航空機など自動車以外のモビリティ分野での新たな製品の創出を進め、さらなる事業成長を目指します。
・オプトロニクス
情報機能材料では、ディスプレイ市場がコモディティとハイエンドに2極化してきています。その中で、業界トップの技術力に磨きをかけ、新たなディスプレイの変化に応えていきます。また、製品ライフサイクルマネジメントの強化と合理化を徹底し、事業基盤の強化と高収益事業の拡大を目指します。プリント回路においては、ハードディスクドライブ(HDD)用途でのシェア拡大と合理化を徹底し、高収益性を目指します。また、これまで培った高精度回路形成技術をスマートフォンやその他用途における新たな需要に対して展開していくとともに、生産設備の拡張を進めるなど、今後の事業の柱に成長させていく取り組みをさらに強化していきます。なお、COVID-19の影響拡大等を背景としたテレワークの浸透や通信環境の変化に伴うニーズの高まりが想定されます。こうした変化を着実に捉え、迅速な対応を図っていきます。
・ライフサイエンス
後期臨床テーマ増や新薬承認を追い風に、核酸医薬市場では今後の市場拡大が見込まれています。その中で、製造技術開発力を強化し受託製造のシェアを拡大していくとともに、創薬では、肺線維症および難治性のがん治療薬領域で研究開発と治験を推進し、新たな事業の柱として育てていきます。また、2019年9月に大日本住友製薬株式会社様より販売が開始された非定型抗精神病薬の「ロナセン®テープ」の販売ルートの拡大や安定供給のための協力を進めて参ります。なお、COVID-19の影響拡大に伴い治験活動が延期される可能性があります。
・その他
メンブレンでは、生産プロセスの自動化を始めとする合理化を進めるとともに事業基盤の強化を進めてまいります。エネルギーや環境分野でも新たな事業成長を目指し、収益性向上に向けて取り組んでいきます。新規事業では、プラスチック光ケーブルを始め、開発中案件の一刻も早い量産化を目指します。
※「グローバルニッチトップ / Global Niche Top」「エリアニッチトップ / Area Niche Top」は、当社の登録商標です。