有価証券報告書-第110期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/23 15:03
【資料】
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【項目】
147項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、基本理念として「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」ことを会社の使命として掲げ、「世界のHINO」として広く社会から評価されるよう、事業活動を進めていきたいと考えております。
会社の使命を果たすため、当社グループの事業活動に対する取り組み方針を下記のとおり定めております。
1.世界の人々から信頼される商用車メーカーを目指し、グローバルな事業展開を行います。
2.技術の継承と革新を続け、お客様のお役に立つ商品やサービスを提供いたします。
3.変化を的確に捉え、社会との調和を図り、持続可能な発展を目指します。
4.社員の多様性を尊重し、活気あふれる企業風土をつくります。
(2)会社の環境及び対処すべき課題
<エンジン認証に関する当社の不正行為について>当社のエンジン認証に関する不正行為(2022年3月4日付けおよび同月25日付け当社プレスリリース)につきまして、株主の皆様やお客様をはじめ、数多くの皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、心より深くお詫び申し上げます。
当社は、北米における排出ガス認証のプロセス遵守状況に対する社内での課題認識を契機に、日本市場向けエンジンに係るエンジン認証手続き上の問題の有無を調査することとし、外部弁護士と当該調査を進め、排出ガスおよび燃費に関するエンジン性能の再確認も進めてまいりました。日本に調査対象を広げる中、現行規制である2016年排出ガス規制(ポスト・ポスト新長期規制)対象エンジンの複数機種において、認証手続き上の不正行為があったことを確認するとともに、エンジン性能に問題があることも判明したため、2022年3月4日、国土交通省および経済産業省へ報告し、公表いたしました。その後の国土交通省による立ち入り調査を経て、同月25日、別のエンジンにつきましても、性能の問題が不正行為によるものと判断したことを公表し、同月29日、不正行為が確認されたエンジン機種とその搭載車型の型式指定取り消しという行政処分を受けました。尚、北米における排出ガス認証のプロセス遵守状況上の課題に関する当局による調査は現在も継続しております。
これらのうち、経年変化により排出ガスの規制値を超過する可能性がある中型エンジン「A05C(HC-SCR)」搭載の「日野レンジャー」一部車型については、2022年3月25日にリコールを届出、お客様へご案内し順次対応を進めております。
当社のエンジン認証に関する不正行為につきましては、現時点までの判明事項から、現場における数値目標達成やスケジュール厳守へのプレッシャー等への対応が取られてこなかったことが問題の背景にあると考えており、経営として非常に重く受け止めております。
今後の会社経営においては、コンプライアンス最優先の姿勢を明確にし、組織変更や業務プロセスの見直しといったガバナンスの改善に加え、従業員一人ひとりの意識改革への取り組みを進めてまいります。
今後も自社による総点検として、エンジン認証手続きに関する徹底的な事実関係の調査、認証プロセスの遵守状況およびエンジン性能の検証を継続してまいります。加えて、事案の重要性に鑑みて、当社と利害関係のない外部有識者による特別調査委員会を設置し、本件問題に関し、事案の全容解明および真因分析に加え、当社の組織の在り方や開発プロセスにまで踏み込んだより本質的な再発防止策の提言を委嘱いたしました。
当社は、その結果も踏まえて、今後も、信頼回復に向けた抜本的な再発防止およびコンプライアンス・ファーストの企業体質再構築に取り組んでまいる所存です。
<将来に向けた取り組み>2022年度の世界経済は、国・地域により差はあるものの総じて回復基調が継続する一方、地政学リスクや部品供給不足、物流の停滞といった先行きへの不透明感が続くと考えております。また、地球環境に対する積極的な行動が求められており、自動車業界においても、CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)といった新技術の進展が年々加速しています。
こうした環境認識の下、当社グループは経営環境の変動に左右されにくい事業構造の構築に向けた構造改革とカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みについても着実に推進し、「豊かで住みよい持続可能な社会」の実現を目指してまいる所存です。
(構造改革の推進)
コロナ禍により、従来以上に経営環境の変動に左右されにくい事業構造の構築を加速する必要性を再認識し、持続的成長が可能な事業基盤、競争力の確立に向けた構造改革を推進しております。「選択と集中」を念頭に、お客様から見て競争力に繋がるところにはリソースを集中してトータルサポートを更に進化させ、一方、協調すべき領域については様々なパートナーとの連携を進めてまいります。
(カーボンニュートラルの実現に向けて)
当社グループは地球環境問題解決に向けた取り組みを経営の最重要課題の一つと位置づけております。カーボンニュートラルの実現に向けて、電動車の普及のみならず、素材から製品の廃棄までのライフサイクル全体の視点で、各国政府や関連業界と連携しながら、お客様や社会に必要とされるあらゆる方策を追求してまいります。
以上の取り組みにおいて当社グループは、お客様や社会からの信頼を一日でも早く回復できるよう、コンプライアンス・ファーストの企業体質の再構築に向けて不断の努力を続けてまいります。
株主の皆様には、何卒今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げます。