有価証券報告書-第88期(2022/01/01-2022/12/31)

【提出】
2023/03/23 9:21
【資料】
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【項目】
159項目

対処すべき課題

当面の優先的に対処すべき課題の内容等
近年、サステナビリティ意識の高まりやデジタル化など、環境の変化が急速に加速しています。成長戦略と基盤強化など本質的なものに今一度立ち返り、変革のスピードを上げていきます。2030年の長期ビジョン「Art for Human Possibilities ~人はもっと幸せになれる~」に向けて、成長性を高めるとともに、企業価値をさらに向上させていきます。
○中期経営計画の進捗
当社は、今中期経営計画(2022年~2024年)より、将来に向けて各事業に経営資源を適正に配分するポートフォリオマネジメントを実装しました。初年度の実績としては、成長性・収益性・効率性の財務指標は目標値を達成しました。また、コア事業が順調に進捗する一方、成長事業は上海ロックダウンや短期的な需要減速の影響を受け成長率が鈍化しました。新規事業は、新サービスの正式提供開始や新たな分野の自動化実証実験など着実に進捗しています。

■戦略事業領域
[新規事業]
長期ビジョンでは、「Rethinking Solution」を一つのテーマとして掲げています。社会課題に対して、当社がこれまで培った技術や知見とパートナーとの共創活動で、ヤマハらしい新価値創造を進め、SDGsの達成に貢献する事業開発を加速させます。
モビリティサービスでは、インド・ナイジェリアで事業を開始しました。車両の貸与を通じて、アセットマネジメント事業を行うと同時に、事業を通じた就労機会の創出により、人々の生活の質向上にも貢献していきます。
低速自動走行では、株式会社ティアフォーとジョイントベンチャーを組織、屋内外の幅広いニーズに対応する無人自動搬送サービス「eve auto」の提供を正式に開始しました。自動運転EVによる自動搬送の商用サービスは国内初の取り組みです。営業体制を強化し、高まる物流自動化ニーズに応えることで事業拡大を目指します。
医療・健康では、細胞培養工程を効率化する「CELL HANDLER(セルハンドラー)」を国立研究機関へ納入しました。農業自動化では、出資先企業への技術者派遣など、協業で開発・実証実験を進めています。
[ロボティクス事業(成長事業)]
中長期的には様々な分野のデジタル化や自動化ニーズの高まりにより、市場は今後も伸長が見込まれています。当社はさらに事業規模と領域を拡大し、ヤマハロボティクスホールディングス株式会社を含めた販売と開発のシナジー効果を高めながら、さらなる収益力向上を目標とします。また、事業拡大に向けた生産能力の増強のため、工場増築に着手しました。グローバルでは、需要が拡大している東南アジア・インドでの事業拡大を目指し、2023年1月にシンガポールに新会社を設立しました。
[SPV事業(成長事業)]
1993年に世界初となる電動アシスト自転車を発売して以来、多くのお客様に支えられ、2023年に30周年を迎えます。人々の移動様式の変化、そして世界的な環境規制と意識の高まりから、市場は拡大し続けています。当社はe-Kitの競争力強化と、完成車ニューモデルの投入で、市場成長以上の規模拡大と、売上高倍増を目指します。欧州市場に自社ブランドのeBike 3モデルを2023年より導入することを発表しました。
■コア事業領域
[二輪車事業]
足元では、半導体をはじめとした部品調達難などの逆風を受けていますが、今後も新興国において、プレミアム戦略を加速していきます。アセアン・インドなど需要が回復する市場においてプレミアム商品の販売比率を高め、収益性を向上します。
また、電動化シフトへの対応として、バッテリー着脱式電動スクーター「NEO'S」の販売を欧州で開始、バッテリー固定式電動スクーター「E01」の実証実験を欧州・日本・アセアンで順次開始しています。今後も電動スクーターの開発スピードを上げていきます。
[マリン事業]
「マリン版CASE」推進による提供価値拡大と高収益体質の維持・強化を目指しています。
2024年の大型船外機の生産能力20%増強(2021年比)の計画に加え、さらに2026年までに15%増強(2024年比)します。また、ラインナップの強化として、2023年に当社最大となる450馬力の船外機を北米市場に投入します。
CASE戦略では、次世代操船システム「HARMO」を2022年春より欧州で販売開始しました。また、フィンランドのITスタートアップ企業「Skipperi」への出資を2023年1月に行い、シェアリングベンチャーへの布石を打ちました。
■財務指標・株主還元方針
資本コスト以上のリターンの継続的創出を目標とし、ROE15%水準、ROIC9%水準、ROA10%水準(いずれも3年平均)を目指します。株主還元については、「業績の見通しや将来の成長に向けた投資を勘案しつつ、安定的かつ継続的な配当を行う」ことを基本方針とし、キャッシュ・フローの規模に応じて機動的な株主還元を実施します。総還元性向は中期経営計画期間累計で40%水準です。なお、2022年は第2四半期連結会計期間に200億円の自己株式取得を行いました。2023年は300億円を予定しています。
■サステナビリティに向けた取り組み
2050年のカーボンニュートラルを目標とした「ヤマハ発動機グループ環境計画 2050」のうち、海外を含む自社工場における目標達成時期を2035年へと前倒ししました。これまでに、省エネルギー・再生可能エネルギー設備を10か国以上に導入し、国内事業所でのCO2フリー電力の採用を開始しました。
また、カーボンオフセットが可能な新たな取り組みとして、環境分野の課題解決に取り組む企業へ出資する投資ファンド「Yamaha Motor Sustainability Fund」を設立し、スタートアップ企業への出資を行いました。環境課題の解決に挑戦している多くの企業との連携を強め、より良い社会の実現に貢献していきます。
■DX戦略
基盤となるDX人財の育成・創出に加え、経営基盤の改革とお客様とつながることで、生涯を通じたヤマハファンを創造していきます。
DX人財は、2024年までに1,200人創出を目指しており、実践的な教育を進めています。
■人財戦略
会社の成長に欠かせない「人財の活力」を高めるため、社員エンゲージメントを重要な指標として取り入れました。エンゲージメント向上をグローバルで加速するため、2023年より海外グループ会社と共通指標を用いた調査を開始します。継続的なフォローアップを実施し、社員のエンゲージメントスコア向上を目指します。
■安全ビジョン
当社は、「2050年交通死亡事故ゼロ」を目指しています。長期ビジョンの構成要素である「Transforming Mobility(モビリティの変革)」では、モビリティに関わる様々な社会課題の解決と変革に向けて、パーソナルモビリティが本来持つ価値の一つ「楽しい移動」の実現に取り組んでいます。「人機官能・人機安全」という独自の開発思想で「技術・技量・つながる」を軸にした安全をもとに、お客様と共に「事故のない社会」を目指します。具体的には、「認知・判断・操作・被害軽減のアシスト」「運転技術向上のアシスト」「データ集積によるヒューマンエラー及び環境起因事故予防のアシスト」に取り組みます。