有価証券報告書-第112期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 16:00
【資料】
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【項目】
158項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、経営方針として、「企業理念」、「行動憲章」、「行動基準」、「行動指針」及び「環境基本方針」を掲げ、事業活動を通して社会に貢献してまいります。また、技術立社として、トライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑技術)の領域から、産業技術、環境保全技術の発展に向け積極的に取り組み、企業としての社会的責任を果たしていく所存であります。
2018年度から2023年度までの6ヵ年の中期経営計画として、「Raise Up "Daido Spirit" ~Ambitious, Innovative, Challenging~」(“大同スピリット”を更なる高みに引き上げ、大きな飛躍を果たす~高い志、改革する意欲、挑戦する心~)をスタートしております。環境変化が激しく、予測が難しい状況下ではあるものの、大同メタルグループの進化のスピードを上げて、揺るぎない体制を創りあげてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、経営戦略策定において、経営資源を柔軟かつ効率的に活用することに努めており、収益性や資本効率の高い経営を維持していくために、「売上高営業利益率」や「自己資本利益率(ROE)」などを重視しております。
経営環境の大きな変化に柔軟に対応できる企業体質の強化と合理化等に取り組み、中長期的な企業価値向上に努めてまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、中長期的な視野に立って、販売・生産・技術・新事業などの事業戦略を掲げ、安定的な発展と成長を目指しておりますが、企業を取り巻く環境は常に大きく変化しており、その短期的な経営判断は、将来に向けた持続的な成長を確実なものとするうえで極めて難しい舵取りを要求されます。
当社グループは、中期経営計画に基づき、引き続きすべり軸受の全分野において世界トップシェアの獲得を目指すと同時に、自動車の来るべきパラダイムシフト(エンジンからモーターへ)に向けEV・PHV・HVなどの電動自動車で多くの需要が見込まれるアルミダイカスト製品などの新事業領域への取り組みを強化し、また、成長が期待される既存事業領域である一般産業分野の風力発電等の再生可能エネルギー向け特殊軸受の世界的拡販体制を整備、強化し需要拡大に対応することでシェアの拡大を図り、自動車用エンジン軸受以外の売上高比率を高めることで事業拡大を進めてまいります。
(4)会社の対処すべき課題
中期経営計画の実行
当社グル-プは、新型コロナウイルス感染症の拡大等による事業環境の変化やリスクの顕在化のおそれについて、後述の「2 事業等のリスク」に記載のとおり認識しておりますが、感染拡大に対する世界各国・各機関による諸施策及び顧客の生産活動の動向を注視しつつ、柔軟かつ迅速に対処することで、2018年度からスタートした中期経営計画(2018年度から2023年度まで)の目標達成を目指し、今後も取り組んでまいります。
当社は、中期経営計画において、経営の重要な軸として次の四本の柱を位置付けておりますが、2019年度の主な実績及び優先的に対処すべき課題は以下のとおりです。
第1の柱:既存事業の磨き上げ"真のトライボロジーリーダーへ"
第2の柱:新規事業の創出・育成"新たな事業の柱を築く"
第3の柱:強固な基盤の確立"システム、財務基盤など経営基盤の整備"
第4の柱:組織・コミュニケーションの活性化"外部環境に適応した柔軟で活力ある組織づくり"

<第1の柱:既存事業の磨き上げ>① 自動車用エンジン軸受、自動車用エンジン以外軸受
既存事業におけるマーケットシェア(2019暦年、当社推定)につきましては、2018年に引き続き自動車エンジン用半割軸受において世界トップシェア(33.0%)を達成いたしました。今後、トラックエンジン用軸受の拡販やガソリンエンジン用軸受の新規開拓により更なるシェア拡大を目指してまいります。
自動車用エンジン以外軸受につきましては、市場ニーズに対応した新製品・新用途の拡販を進めてまいります。
② 非自動車用軸受
舶用低速ディーゼルエンジン用軸受のマーケットシェア(2019暦年、当社推定)につきましても、2018年に引き続き世界トップシェア(55.0%)を達成いたしました。特に海外向けの低速ディーゼル用エンジン軸受については、海外の新規顧客を取り込むことができたためシェア拡大にも寄与しました。今後、更に競争力を高めていくために、生産性向上の取り組みを進め、低速ディーゼルエンジン用軸受のみならず中高速ディーゼルエンジン用軸受の更なるシェア拡大を目指してまいります。
また、一般産業分野におけるエネルギー分野においては、高効率型の火力発電向けのガスタービンや蒸気タービン用軸受の拡販を進めてまいります。
③ 自動車用軸受以外部品
アルミダイカスト製品については、タイでは、主に電動化自動車用アルミダイカスト製品を生産する新子会社であるDMキャスティングテクノロジー(タイ)CO., LTD.の稼働が2020年2月より始まっております。2020年夏には本格的な量産化の開始を予定しており、今後、電動化自動車市場でのプレゼンスを一層高めてまいります。
曲げパイプ、ノックピン、NC切削品などの部品については、生産合理化に向けた国内外の生産拠点の集約及び再編を行い生産の合理化を進めました。今後は、当社のグループ会社との事業シナジーを高めながら、収益改善に取り組んでまいります。
<第2の柱:新規事業の創出・育成>新規事業(既存事業における新用途開拓を含みます。)につきましては、国内では、吸音材であるカルム(アルミニウム粉末を独自の方法で焼結した多孔質板)が、その吸音効果の高さから、2021年に開催予定の東京オリンピックの水泳会場であるアクアティクスセンターに採用されました。今後引き続き、確かな品質を軸に様々な視点から市場を広げ、売上拡大を推進してまいります。
欧州・中国では、海上・陸上の風力発電ニーズが高く、風力発電用軸受の需要増加が見込まれることから、当該製品を製造するTMBS(ターボマシナリーベアリングシステム)事業の体制強化に向け、2019年4月に第2カンパニーTMBS事業部を独立させて第5カンパニーを新たに設置し、その推進に注力しております。
新規事業創出に向けた社内の体制づくりとしましては、2018年10月に実績・経験のある既存事業に捉われずに新製品の開発に対応するため、技術ユニット内に未来創造室を設置し、様々な新領域研究の企画、基礎実験に取り組んでおります。
<第3の柱:強固な基盤の確立>当社は、経営基盤の強化を図るため、財務体質の改善に取り組んでおります。その一環として、自己資本比率の改善に取り組んでおり、2017年度末時点においては30.3%でしたが、公募による新株式発行等により2018年度末時点では35.0%に、2019年度末時点では35.1%と改善しております。また、経営資源の有効活用・資産の効率的活用の観点から、かつて本社兼名古屋工場として使用していた土地を譲渡し、当連結会計年度において固定資産売却益を3,909百万円計上いたしました。今後も引き続き、経営資源及び資産の最適な活用方法を検討してまいります。
さらに、大同メタルヨーロッパLTD.における売掛金の滞留問題の再発防止策の一環として、2020年4月にコンプライアンスセンターを設置しました。
これにより、内部統制機能と、ガバナンス機能を統合し、当社グループのグローバルガバナンス、グローバルコンプライアンス体制の強化・徹底を図っております。
<第4の柱:組織・コミュニケーションの活性化>当社は、これまでも、ワークスタイル改革として、総労働時間短縮に向けた取り組みを実施してまいりましたが、2020年3月2日付で経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されました。「健康経営優良法人制度」とは、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。
当社グループでは、こころとからだの両面での健康づくりにより前向きなコミュニケーションが職場で生まれ、業務においてもよい効果を生むと考えているため、従業員の心身の健康増進を重要な経営課題の一つと捉え、今後もさらに、多様な人材がその個性と能力を十分に発揮し活躍できる職場づくりの実現と環境の整備を推進してまいります。
内部統制の改善及び強化
第1四半期決算の作業過程におきまして、当社の英国子会社である大同メタルヨーロッパLTD.(以下DMEといいます。)の会計処理に一部誤謬があり、当社の過去の決算において、貸倒引当金が過少に計上される等の誤りが生じていることが判明いたしました。
これに伴い、過年度の決算を訂正するとともに、平成27年3月期から平成31年3月期の有価証券報告書の訂正報告書を提出いたしました。
当社グループといたしましては、財務報告に係る内部統制の重要性を強く認識しており、再発防止に向けて、以下の改善策を講じて、内部統制の適切な整備・運用を図っております。
DMEにて経理担当者を新規で採用することにより現地スタッフの1人当たりの業務負荷を削減させると共に、当社従業員をDMEの経理担当役員(Finance Director)として新たに出向させる等、2名の経理財務部門の人的補強を実施いたしました。また、DMEにおける業務フローの見直しも並行して行い、売掛金の回収が未了となっている取引(未入金、過小入金等)については月次の業務報告会を通じて社内で共有する等、他部門(営業部門、出荷部門)も連携して売掛金の回収を促進していく体制を構築し内部牽制機能の強化を図りました。
さらに、当社とDMEは、月次で売掛金滞留状況・回収状況に関するレビュー会議を開催すると共に、週次で特定の取引先に関わる課題・問題点を共有・協議するための会議も開催しており、DMEにおける顧客与信管理の適切な運営を実行しております。加えて、グループ会社に対する外部監査人からの要改善指摘事項についてはコンプライアンスセンターが改善完了まで継続的にフォローするほか、その指摘事項及び改善内容を広く当社及びグループ会社の経営者・管理者の間での情報共有を徹底することによって、グループ会社全体に対するモニタリング体制の強化を実施いたしました。