有価証券報告書-第110期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 15:39
【資料】
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【項目】
117項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、経営方針として、「企業理念」、「行動憲章」、「行動基準」、「行動指針」及び「環境基本方針」を掲げ、事業活動を通して社会に貢献してまいります。また、技術立社として、トライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑技術)の領域から、産業技術、環境保全技術の発展に向け積極的に取り組み、企業としての社会的責任を果たしていく所存であります。
この度、平成30年度(2018年度)から平成35年度(2023年度)までの新中期経営計画として、「Raise Up "Daido Spirit" ~Ambitious, Innovative, Challenging~」(“大同スピリット”を更なる高みに引き上げ、大きな飛躍を果たす~高い志、改革する意欲、挑戦する心~)がスタートいたしました。環境変化が激しく予測が難しい状況下ではあるものの、大同メタルグループの進化のスピードを上げて、揺るぎない体制を創りあげてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、経営戦略策定において、経営資源を柔軟かつ効率的に活用することに努めており、収益性や資本効率の高い経営を維持していくために、「売上高営業利益率」や「自己資本利益率(ROE)」などを重視しております。
経営環境の大きな変化に柔軟に対応できる企業体質の強化と合理化等に取り組み、中長期的な企業価値向上に努めてまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、中長期的な視野に立って、販売・生産・技術・新事業などの事業戦略を掲げ、安定的な発展と成長を目指しておりますが、企業を取り巻く環境は常に大きく変化しており、その短期的な経営判断は、将来に向けた持続的な成長を確実なものとするうえで極めて難しい舵取りを要求されます。
当社は、前中期経営計画「Together To The Top(ともにトップを目指そう)」の第1ステージ(平成24年度から平成26年度まで)において、事業基盤の拡充と再構築を図るべく、グローバルベースでの生産能力の増強に取り組みました。具体的には、中国、チェコ、インドネシアで第2工場が稼働し、タイでは第3工場が稼働、加えてメキシコでは新工場が完成いたしました。また、売上拡大への取り組みとしては、販売体制の強化のため、メキシコに販売会社を設立し、中国でも販売拠点の増設を行いました。更に技術サポートの充実のため、チェコに欧州テクニカルセンターを設置し、当社グループ全体で組織体制強化を進めてまいりました。
続く第2ステージ(平成27年度から平成29年度まで)においては、「連結売上高1,110億円、営業利益167億円、営業利益率15%以上」を掲げ、『すべり軸受の全ての産業分野での世界トップシェア獲得』を目指しました。具体的には、インドで自動車用エンジン軸受工場を稼働させ、ロシアではトラック用エンジン軸受事業に参入いたしました。また、軸受材料であるバイメタルの生産能力増強のため、平成28年8月より大同メタル佐賀株式会社でバイメタルの生産を開始いたしました。更には、自動車の来るべきパラダイムシフト(エンジンからモーターへ)に的確に対応すべく、中長期的な事業の多角化と多面性を目指して、平成28年度に株式会社飯野ホールディングとATAキャスティングテクノロジージャパン株式会社の2社を連結子会社化し、軸受以外の新たな事業の柱の構築に着手いたしました。
このように当社は、前中期経営計画に基づく取り組みを通じて、世界5地域での生産・販売体制を拡充させ、かつ軸受以外の新たな事業領域への進出を果たし、次なる飛躍への環境を整備いたしました。
その結果、売上高では、造船・建設機械分野の市場の長期低迷、ポリマー軸受のグローバル展開の遅れによる減収があったものの、2社の買収により、計画値をほぼ達成することができました。しかしながら、営業利益は、前述の既存事業における売上高減少の影響に加えて、大同メタル佐賀株式会社(軸受材料の製造子会社)の設立に伴う初期費用の増加、並びに、メキシコの工場における急激な受注増加によって生じた費用の増加の影響などにより、計画値の達成がかないませんでした。
これら前中期経営計画の結果を踏まえた上で、当社は、平成30年度(2018年度)から平成35年度(2023年度)までの新中期経営計画として、「Raise Up "Daido Spirit" ~Ambitious, Innovative, Challenging~」(“大同スピリット”を更なる高みに引き上げ、大きな飛躍を果たす~高い志、改革する意欲、挑戦する心~)をスタートいたしました。前中期経営計画の成果と課題、予測される事業環境の変化やリスクを踏まえ、以下の4本の柱を経営の重要な軸と位置づけて取り組んでまいります。
第1の柱:既存事業の磨き上げ"真のトライボロジーリーダーへ"
第2の柱:新規事業の創出・育成"新たな事業の柱を築く"
第3の柱:強固な基盤の確立"システム、財務基盤など経営基盤の整備"
第4の柱:組織・コミュニケーションの活性化"外部環境に適応した柔軟で活力ある組織づくり"

(4)会社の対処すべき課題
新中期経営計画の実行
当社は、平成30年度(2018年度)から平成35年度(2023年度)までの6ヵ年にわたって、新中期経営計画を実行することにより、3年目の平成32年度(2020年度)に、「売上高:1,200億円」、「営業利益:100億円」、「営業利益率:8.3%」、「自己資本利益率(ROE)9.5%」を中間の必達目標とし、最終年度である平成35年度(2023年度)には、「売上高:1,400億円」、「営業利益:140億円」、「営業利益率:10.0%」、「自己資本利益率(ROE)10.0%」の達成を目指してまいります。
新中期経営計画のもと、当社グループ一丸となって経営の重要な軸である4本の柱に基づいた以下の取り組みを実践することで、企業価値の向上を図り、当社グループ全体の持続的発展に努めてまいります。
第1の柱:既存事業の磨き上げ “真のトライボロジーリーダーへ”
すべり軸受の全分野において世界市場でトップシェアを獲得し、同分野での揺るぎない地位の確立を目指します。具体的には、自動車用エンジン軸受、ターボチャージャー用軸受、大型船舶用エンジン軸受、中小型船舶・建設機械用エンジン軸受、水力・火力・風力発電用特殊軸受やポリマー軸受を含む一般産業用軸受などすべり軸受の全分野での世界トップシェア獲得を目指してまいります。これは、前中期経営計画からの継続テーマであり、引き続いて目標達成に向け邁進してまいります。
第2の柱:新規事業の創出・育成 “新たな事業の柱を築く”
平成29年度より本格的に当社グループへ加わった株式会社飯野ホールディングとATAキャスティングテクノロジージャパン株式会社の2社を中心とした新事業領域を、当社グループが長年にわたり築き上げた販売網などと連携させることによって、新たな事業の柱に育ててまいります。また、当社は、研究開発への投資を一層拡大させ、成長分野と目される領域での新規事業の創出にも努めてまいります。このような取り組みを通じて、自動車の来るべきパラダイムシフト(エンジンからモーターへ)に的確に対応し、新事業分野及び非自動車用の特殊軸受の分野での成長基盤を着実に築いてまいります。
第3の柱:強固な基盤の確立 “システム、財務基盤など経営基盤の整備”
前中期経営計画を通じて世界5地域での生産・販売体制の拡充は計画どおり進めましたが、グローバルで強固な経営基盤を確立するには、グローバル最適生産・販売体制の再構築、グループ組織の戦略的再編、グローバル研究開発体制の強化・確立、IoT活用による新生産システム導入など取り組むべき課題が山積しております。このため、新中期経営計画の期間を通して、経営環境の大きな変化に柔軟に対応できるように、これらの課題に対して全力を挙げてまいります。
第4の柱:組織・コミュニケーションの活性化 “外部環境に適応した柔軟で活力ある組織づくり”
当社は、当社グループにおいて、グローバルな人事採用やダイバーシティーに意を用いた採用を促進し、今後の当社グループの一層の成長を担うべき人材の確保に努めてまいります。さらに教育・研修を充実させるほか、社内で風通しの良いコミュニケーションの場、環境を整えることにより、将来の成長を見据えた社員間の活発な議論、コミュニケーション、ワークライフバランスの深化を通し、組織の活性化に努めてまいります。
(5)株式会社の支配に関する基本方針
①基本方針の内容
当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針は以下のとおりであります。
当社は、中長期的な視野に立って、販売・生産・技術・新事業などの事業戦略を掲げ、安定的な発展と成長を目指しておりますが、企業を取り巻く環境は常に大きく変化しており、その短期的な経営判断は、将来に向けた持続的な成長を確実なものとするうえで極めて難しい舵取りを要求されます。
安定的な発展と成長を確実なものとし、持続的な企業価値の向上を図っていくため、平成30年度から、新中期経営計画として「Raise Up "Daido Spirit" ~Ambitious, Innovative, Challenging~(“大同スピリット”を更なる高みに引き上げ、大きな飛躍を果たす~高い志、改革する意欲、挑戦する心~)をスタートいたしました。
そして、当社は、当社の顧客及び仕入先をはじめとする取引先、従業員及びその家族、地域住民その他のステークホルダーと協調しながら、短期的かつ急激な変化への柔軟な対応と、上記の中長期的な視野に立っての企業経営による持続的な成長を目指し、そのような持続的な成長によって得られる利益を株主の皆様に還元することが、短期的、一時的な利益を株主の皆様に配当するよりも、株主の共同の利益に資するものと確信しております。
したがいまして、当社は、当社の顧客、仕入先をはじめとする取引先、従業員及びその家族、地域住民などをはじめとして、上記の中長期的な視野に立っての企業経営による持続的な成長を支持して下さる方に、バランスよく株式を保有して頂くことが望ましいと考えております。
②基本方針の実現に資する取り組み
1)基本方針の実現に資する特別な取り組み
(ア)中長期的な視野に立っての企業経営による持続的な成長を実現するための当社の財産の有効な活用
当社は、これまでも上記中長期的な視野に立った企業経営による持続的な成長を実現するために当社の財産を有効活用してまいりました。
今後も、中長期的な視野に立った企業経営による持続的な成長を実現するためには、今後の市場動向、変化に対応した生産・販売・技術の拠点体制の整備、国内外の子会社の生産性向上など当社レベルまでへの引き上げ及び製品・設計・製造・生産・開発の各技術の世界トップレベルの維持が必要となることから、株主の皆様への利益配当とのバランスを考慮しつつも、積極的な新製品及び生産技術などの研究開発、モノづくり力のアップ、産・官・学による先端技術の活用及び導入、知的財産権での企業防衛などに有効かつ効率的に当社の財産を投資してまいる所存です。
(イ)従業員による株式保有の推進
当社は、従業員持株会加入者に奨励金を支給すること等により、従業員による株式の保有を推進しております。
引き続き、従業員持株会拡充に向けた積極的な取り組みを実施してまいります。
(ウ)地域住民の当社に対する理解の促進
当社は、主要事業所での親睦行事や地域住民の工場見学会などへの参加等地域住民との交流を行い、地域住民による当社への理解が深まるよう心がけております。
2)基本方針に反する株主による支配を防止するための取り組み
当社は、上記の基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されること(以下、「敵対的買収」といいます。)を防止するため、以下のように取り組んでまいります。
まずは、当社の資産を最大限有効活用しつつ、上記の中長期的な視野に立っての企業経営による持続的な成長を実現し、企業価値を増大させ、株主の皆様への適切な利益の還元を可能とするとともに、当社の企業価値の市場における評価の向上に結びつけるべく、積極的なIR活動に努めております。
その上で、継続的に実質株主を把握し、敵対的買収者が現れた場合には、当該敵対的買収者による買収目的の確認及び評価並びに当該敵対的買収者との交渉を社外の専門家の意見を聞きながら行い、当該敵対的買収者が当社の基本方針に照らして不適切と判断した場合には、適切な対抗手段を講じる考えであります。
また、敵対的買収者の出現に備えた事前の敵対的買収防衛策の導入につきましても、これを否定するものではなく、法令、関係機関の指針又は他社の動向も踏まえながら、株主共同の利益を確保しつつ、有効な方策を引き続き検討していく所存であります。
③上記取り組みの妥当性に関する判断及びその理由
上記取り組みが基本方針に合致し、株主共同の利益を侵害せず、当社の役員の地位の維持を目的とするものではない適切なものであることは、その取り組みの態様から明らかであり、対抗手段や敵対的買収防衛策につきましても、基本方針に反する場合にのみ発動するものであることから、適切であることは明らかであると思料いたします。