有価証券報告書-第91期(2025/04/01-2026/03/31)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び当社の関係会社)が判断したものであります。
(1)YKKグループの経営理念
当社グループは、“他人の利益を図らずして自らの繁栄はない”という思想に基づくYKK精神「善の巡環」を、全事業を貫く精神的支柱としています。企業は社会の重要な構成員であり、共存してこそ存続でき、その利点を分かち合うことにより社会からその存在価値が認められるものです。常に新しい価値を創造することによって事業の発展を図り、それがお客様、お取引先の繁栄につながり、社会貢献できるという考え方のもと、世界約70の国/地域で現地に根差した事業を展開しております。
そして、この「善の巡環」の精神を根幹とした経営理念「更なるCORPORATE VALUEを求めて」のもと、お客様に喜ばれ、社会に評価され、社員が誇りと喜びを持って働ける会社であり続けるために、商品、技術、経営の質を高めております。これらを実践するに当たって常に根底にあるのが「公正」であり、これを価値基準として経営判断を行っております。
(2)YKKグループの経営体制
当社グループは、1934年に創業者 吉田忠雄がファスナーの加工販売を始めて以降、材料から製造設備、製品まで全てを自社で開発・生産する一貫生産体制の確立や海外展開など、ファスナーに新しい価値を創造しながら事業を展開してまいりました。1959年にはアルミ溶解及びアルミ押出の操業を開始し、現在のAP事業に至ります。
2021年度以降、当社によるファスニング事業とYKK AP㈱によるAP事業を中核とし、各事業に特化した設備開発と機械製造のエンジニアリングを行う経営体制のもと、YKK精神「善の巡環」、経営理念「更なるCORPORATE VALUEを求めて」を共有する企業集団として、共通する考え方や理念を持ちながら、それぞれの事業に最適な経営体制で事業競争力を高めてまいりました。
2026年3月31日には、住設機器・建材事業を担うパナソニック ハウジングソリューションズ㈱が当社グループに加わり、ファスニング事業、AP事業、HS事業を中核とした新たな体制での事業運営がスタートしました。YKK AP㈱とパナソニック ハウジングソリューションズ㈱の強みを融合することでシナジーを創出し、更なる事業競争力強化を図ります。
上記経営体制のもと、可能な限り共通の基盤を持ちながらも、それぞれの事業がコーポレート・ガバナンスと事業推進を効率的かつ効果的に実施できるよう、各社において、執行の組織体制・制度の検討を引き続き進めてまいります。更に、それを監督する取締役会の実効性を高めるための取組や、今後も国内外で求められる財務・非財務情報開示の拡充、グループとしての経営管理体制の強化に引き続き積極的に取り組んでまいります。
なお、コーポレート・ガバナンスの考え方や詳細については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」で記述しております。
(3)YKKグループ 第7次中期経営計画
当社グループは、2025年度から2028年度までの4年間を対象とする第7次中期経営計画を策定しております。第7次中期経営計画においては、当社グループ中期経営ビジョンとして「Prosper Together for a Sustainable Future 『持続可能な未来へ、共に発展』」を掲げ、顧客・社会・社員などの全てのステークホルダーの抱える課題に真摯に向き合い価値貢献すべく、課題解決力の追求のため「共感力」「技術革新」「人的資本」の3つを最重要ポイントとしています。
事業環境としては、気候変動への懸念を背景とした社会のサステナビリティ意識の更なる高まりや、AI、デジタルトランスフォーメーション(DX)の普及等による産業構造の変化を想定しており、これらが事業に与える影響に対し、より広い視野と高い感度で対応することが重要と考えております。多様化する全てのステークホルダーの課題の解決に真摯に向き合い、企業価値向上を目指してまいります。
なお、当社グループは、地球規模での環境分野への貢献が求められる中、更に高いレベルの環境経営を実現するため、2019年4月に環境への取組の長期的な方向性を示す「YKKグループ環境ビジョン2050」を策定しており、ファスニング事業、AP事業がそれぞれの事業目標を設定し、地球環境に貢献する取組を継続して進めております。HS事業は事業ポートフォリオへの組込からまだ日が浅いため、具体的な事業目標は今後設定してまいります。
セグメントごとの事業環境、事業方針及び対処すべき課題は、次のとおりであります。
(ファスニング事業)
ファスニング事業では、第7次中期事業方針として「ONE YKKによる持続可能社会実現への貢献」を掲げ、更なる価値創出を目指して事業を推進しております。今後もアパレル業界では、資材の調達分散、サステナビリティ意識の高まり、消費者の嗜好変化に伴う小ロット・短サイクル化の進行等が想定されております。よりグローバルで顧客の要望に迅速に応えていくために、顧客課題に正面から向き合い寄り添う人財の育成と、デジタル技術等を活用したファスニング事業の一体感(ONE YKK)を構築してまいります。
第7次中期事業計画2年目の2026年度においても、「より良いものを、より安く、より速く、よりサステナブルに」のスローガンに加え、「業界をリードするわくわくする商品・サービスの提供」を掲げ、顧客・社員・社会の感動体験を創出する企業への進化を図ってまいります。上記の中期事業方針を受け、「サステナビリティ対応」「わくわくする商品提案」「新たな技術によるコスト競争力追求」「グローバル×ローカル供給網最適化」「グローバルで繋がる業務基盤構築」「未獲得市場への対応強化」「社員エンゲージメント向上とYKKブランド強化」に取り組んでまいります。
「サステナビリティ対応」については、YKK精神と経営理念に相通ずるものとしてサステナビリティを経営の中心に据えて事業を展開しており、温室効果ガスの排出量削減や、サーキュラーエコノミーへの移行を後押しする様々な商品・技術の開発・推進を進めております。2030年には持続可能素材製品の販売比率を100%にすべく、取組を加速してまいります。
「わくわくする商品提案」については、お客様に“わくわく”していただける商品開発・提案を目指します。縫製業者様向けにはより扱いやすい商品、一般消費者の方々に対してはより環境や安全に配慮した社会課題の解決の一助となるような商品の開発を進めます。外部知見を活用したイノベーション創出に向け、デザイン会社や素材サプライヤー、大学との連携を強化し、2026年度以降も創造的な商品の具現化を推進してまいります。
「新たな技術によるコスト競争力追求」については、めっき着色系要素技術の強化を進めてまいります。2025年12月に当社グループに加わったイタリアのBluclad社との相互シナジーにより、高度なめっき着色技術を強化し、特にラグジュアリー分野における商品価値を更に高めてまいります。
「グローバル×ローカル供給網最適化」については、業界のグローバルサプライチェーン再構築の進行や顧客の多品種小ロット化、短納期対応として、内製化を含む域内完結型サプライチェーンの構築を進め、ONE YKKでの納期対応及びコスト競争力の強化を図ります。
「グローバルで繋がる業務基盤構築」については、デジタル技術の活用をはじめとした各種施策を組み合わせ、顧客と生産現場、世界の工場を繋げることで、ファスニング事業のONE YKKによる顧客サービスの向上を実現します。
「未獲得市場への対応強化」については、サステナビリティ意識の高まりを受け、アパレル分野等での大幅な需要増加は見込みづらいことから、成長市場での需要増の捕捉に加え、アパレルや鞄分野以外の用途開拓を強化してまいります。
「社員エンゲージメント向上とYKKブランド強化」については、世界中の多様性に富んだ社員が、企業価値向上の原動力となり、エンゲージメント高く働く姿を目指してまいります。社員一人ひとりが誇り・つながり・やりがいを実感し、能力を最大限に発揮できる企業文化を醸成することで、YKKブランドの価値をさらに高めてまいります。
これらを実現するため、2026年度は総額880億円の設備投資を予定しております。特に、今後の成長を担うISAMEA(India/South Asia/Middle East/Africa)・ASEAN・中国地域に623億円と積極的に配分し、各地域特性にあった投資をバランスよく実行するとともに、サステナビリティ関連やデジタル関連は将来に向けて重点的に投資してまいります。
(AP事業)
AP事業では、第7次中期事業方針として「収益構造の変革」と「技術革新による価値創造」を掲げ、事業を推進しております。2026年4月からは、「パナソニック ハウジングソリューションズ㈱とのシナジー創出」に向け、相互の強みを発揮することで、シナジーの早期創出、最大化を目指してまいります。
2026年度の事業環境は、中東情勢の緊迫化に伴う地政学リスクの高まりにより、エネルギー価格の上昇や、原材料の供給不足、資材価格の高騰、供給リードタイムの長期化が懸念されます。また、継続する円安傾向や人手不足の影響も含め、総じて不透明な状況が続くものと見込んでおります。
日本においては、新設住宅着工戸数は長期的な減少傾向にあるものの、GX推進により新築の更なる高断熱化が促進され、リフォームでは3省連携補助事業(住宅省エネキャンペーン)が継続されております。一部資材や商材の供給停滞、資材価格の高騰による市場低迷のリスクを注視し、安定的な供給体制の構築と収益性の維持向上に努めてまいります。海外においては、北米ではビル・住宅市場ともに先行きが不透明な状況にあり、中国では市場の縮小傾向が続くと見込んでおります。台湾では住宅着工は前期並み、インドネシアでは市場は弱含みで推移すると見込んでおります。中東情勢等を受けての先行きは不透明であり、今後も注視してまいります。
このような事業環境のもと、原材料の供給不足リスクへの対応として、安定供給に向けた主要原材料等の確保に優先的に取り組んでまいります。2025年12月公表の価格改定は、2026年5月受注分より適用しておりますが、今後更にエネルギー価格や資材価格、ロジスティクス費用の高騰が見込まれます。そのため、継続して製造・供給コストダウンの実施や販管費の削減を図るとともに、更なる価格改定の実施を検討いたします。日本においては、リフォーム・改装分野へのシフトについて、住宅事業ではエンドユーザーへの認知拡大と需要喚起に向けた生活者接点チャネルへの提案強化や内窓の商品ラインアップ拡充を、ビル事業では改装専門拠点の拡充による分譲マンション等への提案を強化してまいります。素材構成の最適化について、住宅事業では更なる樹脂窓化の推進を、ビル事業ではGX ZEH-Mを見据えた高断熱化の推進を、産業製品事業では販売ボリュームの拡大に取り組みます。製造供給体制の最適化については、需要地に応じた製造供給体制の構築と、デジタル・ロボット技術による一部部品の自動組み立てエリアの24時間無人化を目指します。
海外においては、北米のビル建材では中西部・西海岸エリアでの販売強化、住宅建材では南部6州における更なる市場浸透を図ります。中国では、2027年1月の江蘇社新工場の稼働予定に向け、内需の競争力を強化してまいります。新築分野では中級市場での更なる拡販を進め、改装分野では更なるチャネル拡大に取り組みます。台湾では全域における受注強化と大型物件対応の体制強化を、インドネシアでは中級市場向け商品の販売強化とターゲットエリアの拡大を図ってまいります。欧州市場においては、ドイツのゾイファート ニクラウス社を起点とした事業領域の拡大を図ってまいります。
(HS事業)
HS事業では、くらしに向き合い、人々の営みを支えるくらしの空間を提供し続けることを使命とし、「くらしの『ずっと』をつくる “Green Housing”」を事業スローガンに掲げております。この考え方のもと、主力商品である住宅設備・建材の競争力を強化し、良質な商品を安定的に供給し続けることを目的とした「くらし設備建材ソリューション」、業界のバリューチェーン変革を通じた新たな価値創出を目指す「くらし価値イノベーション」、及び新規マテリアルやデバイスの開発・提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する「くらしテクノロジーイノベーション」の3つを戦略として事業を推進しております。これらの戦略を軸として、将来の社会課題や事業環境の変化に的確に対応しつつ事業領域の拡大を図るとともに、国内新築市場に加え、リフォーム、非住宅、海外市場への販売構成シフトを加速することで、持続的な成長の実現を目指してまいります。
2026年度の事業環境は、継続する物価上昇や資材価格の高騰による消費マインドの低迷、人口動態を背景とした構造的な需要の弱さに加え、中東情勢の不安定化等による地政学的リスクの高まりもあり、国内外ともに先行き不透明な状況が続くものと見込んでおります。日本においては、新設住宅着工戸数は、前年度における建築基準法改正の影響による減少からは一定の持ち直しが見込まれるものの、全体としては低調に推移すると見込んでおります。一方、リフォーム市場は国策による省エネ、耐震化関連等の各種補助金制度拡充を背景に引き続き底堅い潜在需要を維持しています。海外においては、中国では不動産不況により新設住宅着工戸数は減少するものの、リノベーション、リフォーム市場は堅調に推移し、加えて中国国内での日本式ライフスタイルの浸透や内装工事単価の上昇もあり、システムキッチン・建具・床材等の定制品(受注生産品)市場は拡大すると見込んでおります。
このような事業環境のもと、日本においては、リフォーム・非住宅市場へのシフトに向けて、建材や水廻りの対象市場向け新商品の投入、当該市場販売比率の高い販売代理店への対応力強化、量販店、ホームセンター、eコマースといった販路拡大や、非住宅用途別に適切な決定権者へのスペックイン活動等の強化に向けて、リソースシフトも含め積極的に進めてまいります。また、環境が厳しい新築市場に対しても、販売・限界利益額確保のために、新築ビルダー市場攻略に向けた商品体系の見直しに加えて、従来品の価格改定を実施してまいります。
海外においては、重点推進エリアを中国・台湾・北米と設定しており、中国、台湾エリアでは、一体型トイレの品揃え強化に加えて、洗面化粧台やユニットバスといった商材拡充を進め、豊富な商品ラインアップを活かした住宅設備・建材の一括提案を推進するとともに、競争力のあるバリューチェーンを構築し、日本式リフォームの価値提案を加速してまいります。北米では、グループ会社であるケイミュー㈱の外壁材拡販に向け、東海岸エリアでの塗装物流拠点を本格稼働させ、更なる販売拡大を図ってまいります。加えて、新規商材として温水洗浄便座の北米市場投入についても検討してまいります。
(1)YKKグループの経営理念
当社グループは、“他人の利益を図らずして自らの繁栄はない”という思想に基づくYKK精神「善の巡環」を、全事業を貫く精神的支柱としています。企業は社会の重要な構成員であり、共存してこそ存続でき、その利点を分かち合うことにより社会からその存在価値が認められるものです。常に新しい価値を創造することによって事業の発展を図り、それがお客様、お取引先の繁栄につながり、社会貢献できるという考え方のもと、世界約70の国/地域で現地に根差した事業を展開しております。
そして、この「善の巡環」の精神を根幹とした経営理念「更なるCORPORATE VALUEを求めて」のもと、お客様に喜ばれ、社会に評価され、社員が誇りと喜びを持って働ける会社であり続けるために、商品、技術、経営の質を高めております。これらを実践するに当たって常に根底にあるのが「公正」であり、これを価値基準として経営判断を行っております。
(2)YKKグループの経営体制
当社グループは、1934年に創業者 吉田忠雄がファスナーの加工販売を始めて以降、材料から製造設備、製品まで全てを自社で開発・生産する一貫生産体制の確立や海外展開など、ファスナーに新しい価値を創造しながら事業を展開してまいりました。1959年にはアルミ溶解及びアルミ押出の操業を開始し、現在のAP事業に至ります。
2021年度以降、当社によるファスニング事業とYKK AP㈱によるAP事業を中核とし、各事業に特化した設備開発と機械製造のエンジニアリングを行う経営体制のもと、YKK精神「善の巡環」、経営理念「更なるCORPORATE VALUEを求めて」を共有する企業集団として、共通する考え方や理念を持ちながら、それぞれの事業に最適な経営体制で事業競争力を高めてまいりました。
2026年3月31日には、住設機器・建材事業を担うパナソニック ハウジングソリューションズ㈱が当社グループに加わり、ファスニング事業、AP事業、HS事業を中核とした新たな体制での事業運営がスタートしました。YKK AP㈱とパナソニック ハウジングソリューションズ㈱の強みを融合することでシナジーを創出し、更なる事業競争力強化を図ります。
上記経営体制のもと、可能な限り共通の基盤を持ちながらも、それぞれの事業がコーポレート・ガバナンスと事業推進を効率的かつ効果的に実施できるよう、各社において、執行の組織体制・制度の検討を引き続き進めてまいります。更に、それを監督する取締役会の実効性を高めるための取組や、今後も国内外で求められる財務・非財務情報開示の拡充、グループとしての経営管理体制の強化に引き続き積極的に取り組んでまいります。
なお、コーポレート・ガバナンスの考え方や詳細については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」で記述しております。
(3)YKKグループ 第7次中期経営計画
当社グループは、2025年度から2028年度までの4年間を対象とする第7次中期経営計画を策定しております。第7次中期経営計画においては、当社グループ中期経営ビジョンとして「Prosper Together for a Sustainable Future 『持続可能な未来へ、共に発展』」を掲げ、顧客・社会・社員などの全てのステークホルダーの抱える課題に真摯に向き合い価値貢献すべく、課題解決力の追求のため「共感力」「技術革新」「人的資本」の3つを最重要ポイントとしています。
事業環境としては、気候変動への懸念を背景とした社会のサステナビリティ意識の更なる高まりや、AI、デジタルトランスフォーメーション(DX)の普及等による産業構造の変化を想定しており、これらが事業に与える影響に対し、より広い視野と高い感度で対応することが重要と考えております。多様化する全てのステークホルダーの課題の解決に真摯に向き合い、企業価値向上を目指してまいります。
なお、当社グループは、地球規模での環境分野への貢献が求められる中、更に高いレベルの環境経営を実現するため、2019年4月に環境への取組の長期的な方向性を示す「YKKグループ環境ビジョン2050」を策定しており、ファスニング事業、AP事業がそれぞれの事業目標を設定し、地球環境に貢献する取組を継続して進めております。HS事業は事業ポートフォリオへの組込からまだ日が浅いため、具体的な事業目標は今後設定してまいります。
セグメントごとの事業環境、事業方針及び対処すべき課題は、次のとおりであります。
(ファスニング事業)
ファスニング事業では、第7次中期事業方針として「ONE YKKによる持続可能社会実現への貢献」を掲げ、更なる価値創出を目指して事業を推進しております。今後もアパレル業界では、資材の調達分散、サステナビリティ意識の高まり、消費者の嗜好変化に伴う小ロット・短サイクル化の進行等が想定されております。よりグローバルで顧客の要望に迅速に応えていくために、顧客課題に正面から向き合い寄り添う人財の育成と、デジタル技術等を活用したファスニング事業の一体感(ONE YKK)を構築してまいります。
第7次中期事業計画2年目の2026年度においても、「より良いものを、より安く、より速く、よりサステナブルに」のスローガンに加え、「業界をリードするわくわくする商品・サービスの提供」を掲げ、顧客・社員・社会の感動体験を創出する企業への進化を図ってまいります。上記の中期事業方針を受け、「サステナビリティ対応」「わくわくする商品提案」「新たな技術によるコスト競争力追求」「グローバル×ローカル供給網最適化」「グローバルで繋がる業務基盤構築」「未獲得市場への対応強化」「社員エンゲージメント向上とYKKブランド強化」に取り組んでまいります。
「サステナビリティ対応」については、YKK精神と経営理念に相通ずるものとしてサステナビリティを経営の中心に据えて事業を展開しており、温室効果ガスの排出量削減や、サーキュラーエコノミーへの移行を後押しする様々な商品・技術の開発・推進を進めております。2030年には持続可能素材製品の販売比率を100%にすべく、取組を加速してまいります。
「わくわくする商品提案」については、お客様に“わくわく”していただける商品開発・提案を目指します。縫製業者様向けにはより扱いやすい商品、一般消費者の方々に対してはより環境や安全に配慮した社会課題の解決の一助となるような商品の開発を進めます。外部知見を活用したイノベーション創出に向け、デザイン会社や素材サプライヤー、大学との連携を強化し、2026年度以降も創造的な商品の具現化を推進してまいります。
「新たな技術によるコスト競争力追求」については、めっき着色系要素技術の強化を進めてまいります。2025年12月に当社グループに加わったイタリアのBluclad社との相互シナジーにより、高度なめっき着色技術を強化し、特にラグジュアリー分野における商品価値を更に高めてまいります。
「グローバル×ローカル供給網最適化」については、業界のグローバルサプライチェーン再構築の進行や顧客の多品種小ロット化、短納期対応として、内製化を含む域内完結型サプライチェーンの構築を進め、ONE YKKでの納期対応及びコスト競争力の強化を図ります。
「グローバルで繋がる業務基盤構築」については、デジタル技術の活用をはじめとした各種施策を組み合わせ、顧客と生産現場、世界の工場を繋げることで、ファスニング事業のONE YKKによる顧客サービスの向上を実現します。
「未獲得市場への対応強化」については、サステナビリティ意識の高まりを受け、アパレル分野等での大幅な需要増加は見込みづらいことから、成長市場での需要増の捕捉に加え、アパレルや鞄分野以外の用途開拓を強化してまいります。
「社員エンゲージメント向上とYKKブランド強化」については、世界中の多様性に富んだ社員が、企業価値向上の原動力となり、エンゲージメント高く働く姿を目指してまいります。社員一人ひとりが誇り・つながり・やりがいを実感し、能力を最大限に発揮できる企業文化を醸成することで、YKKブランドの価値をさらに高めてまいります。
これらを実現するため、2026年度は総額880億円の設備投資を予定しております。特に、今後の成長を担うISAMEA(India/South Asia/Middle East/Africa)・ASEAN・中国地域に623億円と積極的に配分し、各地域特性にあった投資をバランスよく実行するとともに、サステナビリティ関連やデジタル関連は将来に向けて重点的に投資してまいります。
(AP事業)
AP事業では、第7次中期事業方針として「収益構造の変革」と「技術革新による価値創造」を掲げ、事業を推進しております。2026年4月からは、「パナソニック ハウジングソリューションズ㈱とのシナジー創出」に向け、相互の強みを発揮することで、シナジーの早期創出、最大化を目指してまいります。
2026年度の事業環境は、中東情勢の緊迫化に伴う地政学リスクの高まりにより、エネルギー価格の上昇や、原材料の供給不足、資材価格の高騰、供給リードタイムの長期化が懸念されます。また、継続する円安傾向や人手不足の影響も含め、総じて不透明な状況が続くものと見込んでおります。
日本においては、新設住宅着工戸数は長期的な減少傾向にあるものの、GX推進により新築の更なる高断熱化が促進され、リフォームでは3省連携補助事業(住宅省エネキャンペーン)が継続されております。一部資材や商材の供給停滞、資材価格の高騰による市場低迷のリスクを注視し、安定的な供給体制の構築と収益性の維持向上に努めてまいります。海外においては、北米ではビル・住宅市場ともに先行きが不透明な状況にあり、中国では市場の縮小傾向が続くと見込んでおります。台湾では住宅着工は前期並み、インドネシアでは市場は弱含みで推移すると見込んでおります。中東情勢等を受けての先行きは不透明であり、今後も注視してまいります。
このような事業環境のもと、原材料の供給不足リスクへの対応として、安定供給に向けた主要原材料等の確保に優先的に取り組んでまいります。2025年12月公表の価格改定は、2026年5月受注分より適用しておりますが、今後更にエネルギー価格や資材価格、ロジスティクス費用の高騰が見込まれます。そのため、継続して製造・供給コストダウンの実施や販管費の削減を図るとともに、更なる価格改定の実施を検討いたします。日本においては、リフォーム・改装分野へのシフトについて、住宅事業ではエンドユーザーへの認知拡大と需要喚起に向けた生活者接点チャネルへの提案強化や内窓の商品ラインアップ拡充を、ビル事業では改装専門拠点の拡充による分譲マンション等への提案を強化してまいります。素材構成の最適化について、住宅事業では更なる樹脂窓化の推進を、ビル事業ではGX ZEH-Mを見据えた高断熱化の推進を、産業製品事業では販売ボリュームの拡大に取り組みます。製造供給体制の最適化については、需要地に応じた製造供給体制の構築と、デジタル・ロボット技術による一部部品の自動組み立てエリアの24時間無人化を目指します。
海外においては、北米のビル建材では中西部・西海岸エリアでの販売強化、住宅建材では南部6州における更なる市場浸透を図ります。中国では、2027年1月の江蘇社新工場の稼働予定に向け、内需の競争力を強化してまいります。新築分野では中級市場での更なる拡販を進め、改装分野では更なるチャネル拡大に取り組みます。台湾では全域における受注強化と大型物件対応の体制強化を、インドネシアでは中級市場向け商品の販売強化とターゲットエリアの拡大を図ってまいります。欧州市場においては、ドイツのゾイファート ニクラウス社を起点とした事業領域の拡大を図ってまいります。
(HS事業)
HS事業では、くらしに向き合い、人々の営みを支えるくらしの空間を提供し続けることを使命とし、「くらしの『ずっと』をつくる “Green Housing”」を事業スローガンに掲げております。この考え方のもと、主力商品である住宅設備・建材の競争力を強化し、良質な商品を安定的に供給し続けることを目的とした「くらし設備建材ソリューション」、業界のバリューチェーン変革を通じた新たな価値創出を目指す「くらし価値イノベーション」、及び新規マテリアルやデバイスの開発・提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する「くらしテクノロジーイノベーション」の3つを戦略として事業を推進しております。これらの戦略を軸として、将来の社会課題や事業環境の変化に的確に対応しつつ事業領域の拡大を図るとともに、国内新築市場に加え、リフォーム、非住宅、海外市場への販売構成シフトを加速することで、持続的な成長の実現を目指してまいります。
2026年度の事業環境は、継続する物価上昇や資材価格の高騰による消費マインドの低迷、人口動態を背景とした構造的な需要の弱さに加え、中東情勢の不安定化等による地政学的リスクの高まりもあり、国内外ともに先行き不透明な状況が続くものと見込んでおります。日本においては、新設住宅着工戸数は、前年度における建築基準法改正の影響による減少からは一定の持ち直しが見込まれるものの、全体としては低調に推移すると見込んでおります。一方、リフォーム市場は国策による省エネ、耐震化関連等の各種補助金制度拡充を背景に引き続き底堅い潜在需要を維持しています。海外においては、中国では不動産不況により新設住宅着工戸数は減少するものの、リノベーション、リフォーム市場は堅調に推移し、加えて中国国内での日本式ライフスタイルの浸透や内装工事単価の上昇もあり、システムキッチン・建具・床材等の定制品(受注生産品)市場は拡大すると見込んでおります。
このような事業環境のもと、日本においては、リフォーム・非住宅市場へのシフトに向けて、建材や水廻りの対象市場向け新商品の投入、当該市場販売比率の高い販売代理店への対応力強化、量販店、ホームセンター、eコマースといった販路拡大や、非住宅用途別に適切な決定権者へのスペックイン活動等の強化に向けて、リソースシフトも含め積極的に進めてまいります。また、環境が厳しい新築市場に対しても、販売・限界利益額確保のために、新築ビルダー市場攻略に向けた商品体系の見直しに加えて、従来品の価格改定を実施してまいります。
海外においては、重点推進エリアを中国・台湾・北米と設定しており、中国、台湾エリアでは、一体型トイレの品揃え強化に加えて、洗面化粧台やユニットバスといった商材拡充を進め、豊富な商品ラインアップを活かした住宅設備・建材の一括提案を推進するとともに、競争力のあるバリューチェーンを構築し、日本式リフォームの価値提案を加速してまいります。北米では、グループ会社であるケイミュー㈱の外壁材拡販に向け、東海岸エリアでの塗装物流拠点を本格稼働させ、更なる販売拡大を図ってまいります。加えて、新規商材として温水洗浄便座の北米市場投入についても検討してまいります。