有価証券報告書-第64期(平成29年1月1日-平成29年12月31日)

【提出】
2018/03/30 13:11
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125項目

業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度におけるスポーツ用品業界は、健康志向によるスポーツへの関心の高まりや、日常でのスポーツ用品利用の拡大を背景に、堅調に推移しました。
このような情勢のもと、当社グループは、中期経営計画「ASICS Growth Plan (AGP)2020」のコア戦略に基づき、お客様の嗜好の変化に応じた高付加価値商品の発売等を通して、グローバルレベルでの顧客基盤の拡大、ブランド価値の向上を図りました。
直営店の展開では、明るく開放感のある新コンセプトの店舗を通して、顧客基盤の拡大と売上拡大を目指しました。ロンドンに当社最大の旗艦店「ASICS REGENT STREET FLAGSHIP」をオープンしました。この店舗は、アシックス、アシックスタイガー、オニツカタイガー、ホグロフスという当社が有する4ブランドすべての商品を総合的に取り扱う初めての直営店です。そのほか、国内外のファッション感度の高い人々が多く行きかう原宿や世界有数のショッピングストリートであるニューヨークの5番街にも複数のブランドを取り扱う旗艦店をオープンし、アシックスグループブランドの直営店舗数は、全世界で876店となりました。
コア事業であるランニングでは、優れたクッション性と軽量性を両立させたアシックス独自のミッドソール素材「FlyteFoam」を採用した高機能ランニングシューズ「GEL-NIMBUS 20」を市場投入しました。さらに、安定性とクッション性を両立したファンランナー向けのランニングシューズ「GEL-KENUN」を市場投入しました。また、東京、パリ、ストックホルム、ゴールドコーストをはじめとする世界各地のマラソン大会への協賛を行いました。
トレーニングでは、活動的な若者に向けたプレミアムコレクションを通じて、ブランド価値向上を目指しました。日本の伝統的な美意識に通じるシンプルかつミニマルをコンセプトとし、洗練されたデザインと高い機能性を兼ね備えたスポーツアパレル「JYUNI」コレクションをグローバルで発表しました。加えて、「ADAPTABLE」をデザインコンセプトとし、機能性を兼ね備えながら、スポーツシーンのみならず、ライフスタイルシーンでも着用できる新たなトレーニングアパレルを市場投入しました。
コアパフォーマンススポーツでは、グローバルでのブランド認知拡大、商品の信頼性のさらなる向上を目的として、「FlyteFoam」を採用した高機能テニスシューズ「COURT FF」に続き、同素材を採用した高機能バレーボールシューズ「VOLLEY ELITE FF」を市場投入しました。また、パラ世界陸上競技連盟(World Para Athletics)オフィシャルパートナーとして、「世界パラ陸上競技選手権大会ロンドン2017」を、国際陸上競技連盟(IAAF)オフィシャルパートナーとして、同じくロンドンで開催された「第16回世界陸上競技選手権大会」をサポートしました。さらに、当社は桐生祥秀選手(所属:東洋大学)の足の計測や、走行分析実験などで得た知見と桐生選手本人の意見を取り入れて専用のシューズを作製し、日本人初となる100メートル9秒台の新記録樹立をサポートしました。
ライフスタイルでは、2つのブランドによって幅広いお客様に対してそれぞれのブランド認知向上に努めました。アシックスタイガーブランドでは、ニット素材を使った新作シューズ「GEL–KAYANO TRAINER KNIT」を市場投入しました。また、ニューヨーク、上海、ソウルに直営店をオープンしました。オニツカタイガーブランドでは、日本生まれのブランドとして、細部にまで日本製にこだわった「NIPPON MADE」シリーズを展開する世界初の専門店「オニツカタイガー 表参道 NIPPON MADE」を東京にオープンしたほか、新宿に直営店をオープンしました。
マーケティングの展開では、2017年8月の「第16回世界陸上競技選手権大会」を皮切りに、当社の新たなブランドメッセージ「I MOVE ME(ワタシを、動かせ。)」を発表し、日本、アメリカ、中国など各国で著名なインフルエンサーを活用したマーケティングキャンペーンを実施しました。
デジタルの展開では、スマートフォンで足のサイズを計測できるAndroid用スマートフォンアプリ「MOBILE FOOT ID」のサービスを日本、アメリカで開始しました。
国内事業では、侍ジャパンダイヤモンドパートナーとして、野球日本代表「侍ジャパン」への当社製品の提供・サポートを行いました。また、スポーツを軸としたライフスタイルの提案をコンセプトに、カフェやフィットネススタジオなどを設けた新施設「ASICS CONNECTION TOKYO」を東京に開設しました。そのほか、学校法人立命館と、スポーツを通じた人材育成などを目的とした包括的連携交流協定を締結しました。
加えて、シューズ生産拠点である山陰アシックス工業株式会社の新工場棟の建設と既存棟の改築、およびアパレルの生産拠点であるアシックスアパレル工業株式会社の工場を移転新設し、シューズ、アパレルともに「日本製」の高付加価値商品群の開発・生産に向けた体制を強化しました。
JOC・JPCゴールドパートナー(スポーツ用品)としての活動では、平昌2018冬季オリンピック・パラリンピックに出場する日本代表選手団へ提供するオフィシャルスポーツウェアを発表しました。
また、新たな社会的責任投資指数(ESG指数)である「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」の構成銘柄に選定されたのに加え、世界の代表的なESG指数「Dow Jones Sustainability Indices」の「Asia/Pacific Index」対象銘柄に3年連続で選定されました。
その他、ダイバーシティの社内浸透、女性社員のキャリア意識向上を目的に、女性社員向けキャリア研修の対象を若年層にも広げ、実施したほか、ダイバーシティ&インクルージョンをテーマとした社内イベントを開催しました。これらの活動により、女性の活躍推進に関する状況などが優良な企業として、厚生労働大臣より「えるぼし」(最高位)の認定を受けました。さらに、多様な人財が能力を最大限に発揮できる職場の実現に向け、フレックスタイム制度などを推進し、「働き方改革」へ取り組んだ結果、スポーツ庁が創設した「平成29年度スポーツエールカンパニー」に認定されました。
当連結会計年度における売上高は400,157百万円と前年同期間比0.3%の増収(前年度の為替換算レートを適用した場合2.0%減)となりました。このうち国内売上高は、ランニングシューズが堅調に推移した一方で、スポーツウエアが低調であったため、101,072百万円と前年同期間比0.5%の減収となりました。海外売上高は、オセアニア/東南・南アジア地域および東アジア地域でランニングシューズおよびオニツカタイガーシューズなどが好調でした。しかしながら、米州地域および欧州地域が低調であったことなどにより、299,085百万円と前年同期間比0.5%の増収(前年度の為替換算レートを適用した場合2.6%減)となりました。
売上総利益は原価率の改善などにより、183,259百万円と前年同期間比3.8%の増益となりました。販売費及び一般管理費は、直営店の出店拡大に伴う費用の増加および多様なデジタル戦略を展開するための費用の増加などにより、163,688百万円と前年同期間比8.4%の増加となりました。その結果、営業利益は19,571百万円と前年同期間比23.2%の減益となりました。経常利益は、前年同期間は為替差損を計上しましたが、当連結会計年度は為替差益を計上したことなどにより、21,738百万円と前年同期間比7.1%の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は欧州地域の事業構造改革に伴う特別損失を計上したことなどにより12,970百万円と前年同期間比16.7%の減益となりました。
報告セグメント別の業績は、次のとおりであります。
① 日本地域
日本地域におきましては、ランニングシューズが堅調に推移した一方で、スポーツウエアが低調であったため、売上高は119,462百万円(前年同期間比0.4%減)となりました。セグメント利益につきましては、原価率の改善はありましたが減収の影響などにより、5,886百万円(前年同期間比6.3%減)となりました。
② 米州地域
米州地域におきましては、米国が低調であったことなどにより、売上高は106,177百万円(前年同期間比6.0%減、前年度の為替換算レートを適用した場合7.7%減)となりました。一方で、セグメント利益につきましては原価率の改善に加え、貸倒引当金繰入額の減少などにより、2,360百万円(前年同期間比173.6%増、前年度の為替換算レートを適用した場合168.6%増)となりました。
③ 欧州地域
欧州地域におきましては、小売市場の変化と競争の激化などの影響により、売上高は106,290百万円(前年同期間比1.2%減、前年度の為替換算レートを適用した場合5.4%減)となりました。セグメント利益につきましては、減収の影響などにより8,297百万円(前年同期間比26.6%減、前年度の為替換算レートを適用した場合29.8%減)となりました。
④ オセアニア/東南・南アジア地域
オセアニア/東南・南アジア地域におきましては、ランニングシューズおよびオニツカタイガーシューズが好調であったことにより、売上高は27,659百万円(前年同期間比15.1%増、前年度の為替換算レートを適用した場合9.5%増)となりました。セグメント利益につきましては、4,056百万円(前年同期間比11.7%増、前年度の為替換算レートを適用した場合6.4%増)となりました。
⑤ 東アジア地域
東アジア地域におきましては、韓国における店舗再編による減収はあったものの、中国で引き続きランニングシューズおよびオニツカタイガーシューズなどが好調であったことにより、売上高は49,131百万円(前年同期間比13.0%増、前年度の為替換算レートを適用した場合10.4%増)となりました。セグメント利益につきましては、5,097百万円(前年同期間比2.0%増、前年度の為替換算レートを適用した場合1.2%増)となりました。
⑥ その他事業
その他事業におきましては、ホグロフスブランドのアウトドアウエアなどが低調であったことにより、売上高は9,238百万円(前年同期間比0.8%増、前年度の為替換算レートを適用した場合1.3%減)となり、セグメント損失は253百万円となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローにおきましては、当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、78,102百万円と前連結会計年度末比14,464百万円増加しました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は37,136百万円となり、前年同期間比834百万円の収入減少となりました。
収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益21,834百万円、減価償却費9,362百万円、仕入債務の増加額7,065百万円であり、支出の主な内訳は、法人税等の支払額6,902百万円、貸倒引当金の減少額1,399百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は13,788百万円となり、前年同期間比257百万円の支出減少となりました。
支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出10,993百万円、無形固定資産の取得による支出3,180百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は11,548百万円となり、前年同期間比6,523百万円の支出増加となりました。
支出の主な内訳は、社債の償還による支出5,000百万円、配当金の支払額4,458百万円、長期借入金の返済による支出1,550百万円であります。
キャッシュ・フロー指標のトレンド
平成26年3月期平成26年12月期平成27年12月期平成28年12月期平成29年12月期
自己資本比率(%)49.956.557.858.357.3
時価ベースの自己資本比率(%)121.3154.4139.5129.397.9
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)6.84.22.11.00.9
インタレスト・カバレッジ・レシオ8.915.018.848.569.0

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
4.平成26年12月期は、決算期変更に伴い9ヶ月間の変則決算となっておりますので、キャッシュ・フロー対有利子負債比率およびインタレスト・カバレッジ・レシオは9ヶ月間の営業キャッシュ・フローおよび利払いに対する数値を記載しております。