有価証券報告書

【提出】
2023/06/23 16:24
【資料】
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【項目】
153項目
3. 気候変動リスクに対処する戦略
(1)ポートフォリオの脱炭素化と強靭化への取組
「2.リスク管理」で記載したとおり、当社は、気候変動関連のリスク及び機会を当社の事業戦略に重要な影響を与えるサステナビリティ関連のリスク及び機会として特定しています。そのうえで、"MC Climate Taxonomy"による分類に基づきモニタリング対象として特定した一部のグリーン及びトランスフォーム事業に対して、1.5℃シナリオ分析を実施し、これらのリスク及び機会がビジネスモデルとバリューチェーンに与える影響を評価しています。この評価結果を事業戦略へ落とし込むべく、シナリオ分析を実施したトランスフォーム事業については、トランスフォーム・ディスカッション(※)にて事業の方向性を左右する要素につき議論しています。同議論内容も踏まえて、事業戦略会議にて社長、各営業グループCEO、次世代エネルギー部門長及び産業DX部門長がGHG削減目標を踏まえた投資計画を討議します。
以上のような、気候変動に係るリスク管理及び戦略への織り込みに加え、対外開示までを一つのサイクルとしてとらえて、効果的な運用を行っています。※トランスフォームに分類された事業を対象に、移行リスクとして注視すべき需給の動向や技術革新の動向を特定し、事業への影響
を経営レベルで毎年モニタリングするもの。

(2)気候変動関連のリスク及び機会に係るシナリオ分析
① 気候シナリオの考え方
気候シナリオとは、脱炭素化の速度や程度に影響を及ぼす社会経済・政策・市場・技術等に関する一連の仮定を置き、その結果として将来どの様な社会が実現されうるかを描くものです。1.5℃シナリオを用いてシナリオ分析を行う場合は、産業革命以前に比べた気温上昇が1.5℃に抑えられた世の中が実現しているという仮定のもと、地球温暖化や気候変動そのものの影響や、気候変動に関する長期的な政策動向による事業環境の変化等を予想し、事業戦略への影響を検討することとなります。したがって、財務諸表における会計上の見積りの基礎となる、最新の入手可能な信頼のおける情報に基づく合理的な見積りと、シナリオ分析における一連の仮定は異なるものです。また、シナリオ分析は需給等に関する市場全体の傾向を仮定しますが、当社の保有資産の優位性あるいは劣後性や、売買契約等の特殊性により、市場全体の傾向と当社の事業への影響が一致しない場合もあります。加えて、シナリオ分析が数十年単位の超長期的な影響を分析するのに対し、財務諸表における資産及び負債の測定においては、数年から十年といった中長期的な時間軸の影響が大きく、足元の事業環境がより強く反映されることとなります。以上より、仮にシナリオ分析において、当社の事業に関連する資産の価値毀損等あるいは負債の増加等の影響が示された場合にも、それらが直ちに財務諸表における資産及び負債の測定に影響を及ぼすとは限らないと考えられます。会計上の見積りにおける気候変動の影響の考え方については、第5 経理の状況 連結財務諸表注記2 「(5)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」をご参照ください。
② シナリオ分析に用いた1.5℃シナリオについて
気候シナリオについては、国際エネルギー機関(International Energy Agency (IEA))、 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change(IPCC))、気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(Network for Greening Financial Services (NGFS))等を始めとする機関・団体のほか、気候変動の移行リスク・機会が大きい事業を保有し、同事業の検証・評価に特に関心が高い一部の民間企業も独自に策定、公表しています。
当社は、ポートフォリオの脱炭素化と強靭化の両立に向けては、これら気候シナリオを参照した「シナリオ分析」を行い、各事業について気候変動の移行リスク・機会を適切に把握し、それらも踏まえた事業戦略を策定することが重要と考えています。その観点から、当社は、2019年度より気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿う形で、主にIEAの気候シナリオを用いたシナリオ分析を実施しており、前連結会計年度からは2050年ネットゼロ実現を前提とした1.5℃シナリオを使用した分析を開始しました。当社が前連結会計年度に実施した1.5℃シナリオ分析では、IEAの“Net Zero Emission by 2050 Scenario(IEA NZE)”を参照しましたが、IEA NZEでは分析に必要となる十分な粒度のデータが提供されておらず、当社事業の特性や、地域戦略等を踏まえた定量面も含む詳細な分析を行うことは困難でした。これを踏まえ、当連結会計年度は外部の第三者機関と協働し、可能な限り主要な前提をIEA NZEと整合させた上で、地域別・商材別の需要といった、より細かい粒度のデータを含む独自の1.5℃シナリオ(2022年度1.5℃シナリオ)を策定し、これを参照して分析を行いました。
③ 分析対象事業の抽出
気候変動がもたらしうるリスク・機会の影響が特に大きいと想定される事業をシナリオ分析対象とするべく、下記の方針に沿って選定を行いました。
リスクサイドの事業選定に当たっては、GHG排出量と資産規模の二つの指標を勘案しました。具体的には、“MC Climate Taxonomy”に基づき、GHG排出量が多く、かつ排出量削減の難易度が相対的に高いことから気候変動リスクが大きいトランスフォーム事業に分類された事業のうち、資産規模が特に大きい「天然ガス・LNG」、「原料炭」、「発電(化石燃料)」事業(これら3事業はトランスフォーム事業における当社の投融資残高の約7割を占める)を分析対象候補とした上で、既に「新規の石炭火力発電事業には取り組まずに段階的に撤退、2050年までに非化石比率100%」という明確な事業方針を掲げている「発電(化石燃料)」事業は例外的に対象外とし、最終的に「天然ガス・LNG」、「原料炭」事業を2022年度1.5℃シナリオ分析の対象として選定しました。
機会サイドについては、“MC Climate Taxonomy”に基づいて気候変動機会が大きいグリーン事業に分類されたもののうち、当社の主力事業であり既に具体的な案件が複数存在する「再生可能エネルギー」事業を2022年度1.5℃シナリオ分析の対象として選定しました。
④ 分析の結果及び結果を踏まえた事業方針
(天然ガス・LNG事業)
天然ガス・LNGは移行期において重要な役割を担うエネルギー源であり、今回分析に用いた2022年度1.5℃シナリオ下においては、長期的には天然ガス・LNGの需要減が見込まれるものの、当社LNG事業の戦略地域であるアジア地域では長期に亘り一定程度の需要が想定されています。 掛かる事業環境認識に基づき、「中期経営戦略2024」のとおり、当社はエネルギー・資源の安定供給と社会・経済活動の低・脱炭素化の両立を目指し、以下のとおり「LNG事業の強靭化」と同時に「LNGバリューチェーンの低・脱炭素化」にも注力いたします。より中長期的には、技術イノベーションや各国政府による政策動向等を含めた事業環境を見極めた上で、LNG事業の更なる低・脱炭素化の取り組みを進めるとともに、LNGポートフォリオの最適化及び次世代エネルギー分野への投資を本格化していきます。
「LNG事業の強靭化」と「LNGバリューチェーンの低・脱炭素化」に関するより詳細な取組みは以下のとおりです。
既存のLNG事業については、生産量の大部分が長期契約に基づいて販売されていますが、生産効率の向上やコスト削減等による競争力強化を図ると同時に、継続的にポートフォリオの最適化を検討していきます。
新規のLNG案件については、脱炭素化が急速に進展した場合の座礁資産化のリスクも念頭に置き、2022年度1.5℃シナリオ下における投資採算も考慮して新規投資判断を行います。
「LNG事業の強靭化」と並行して、本邦最大級のLNG事業者の立場・強みを活かし、LNGバリューチェーン自体の低・脱炭素化に資するCCUS等の推進、ブルー水素やe-methane(合成メタン)等の次世代エネルギーの製造・供給等に関する取り組みを進めることで事業機会を取り込みつつ、脱炭素社会への移行の一翼を担っていきます。
これらは、過去50年超に亘る当社の天然ガス・LNG事業への取り組みから得られた経験・知見・ネットワークが活用可能な領域であり、既に具体的な検討を進めています。
(原料炭)
鉄鋼業は今後長期にわたる移行期間に入ると想定されますが、BMA事業の主要商品である高品位原料炭は高炉製鉄プロセスの低炭素化に貢献することから、低品位の原料炭との比較において必要性が相対的に高まる見通しです。一方、許認可の取得難化等、開発難易度が高まることから、新規炭鉱投資が一段と減速し供給の減少が想定されます。BMA事業は、高品位の原料炭の安定供給を継続します。
また、当社はGHG排出削減を積極的に推進しており、BMA事業においても、再生可能エネルギー調達、メタンガス処理やディーゼル代替等に関する取り組みを検討・推進しています。一例として、2020年にBMAは炭鉱の電力需要の半分を再生可能エネルギー由来の電力に切り替える契約を締結しました。2020年代半ばまでにScope 2排出量を半減させる計画です。
また、パートナーであるBHP社、製鉄大手及び大手エンジニアリング会社と共同で、製鉄所でのCO2回収技術の実証試験等を共同で実施する旨の協業契約を締結する等、製鉄バリューチェーン全体でのGHG排出削減に取り組んでいます。
当社は金属資源事業においても、「脱炭素」・「電化」・「循環型社会」の三つの切り口でEX戦略を推進していきます。製鉄バリューチェーンでの脱炭素化に加え、電化に不可欠な銅・電池原料等や、リサイクル事業への取り組みを強化していきます。
(再生可能エネルギー)
再生可能エネルギーの導入や蓄電池の普及、及びこれに伴う電力供給システムの分散化傾向は、政策・規制、技術革新等の状況により国・地域による差異があり、発現するタイミングが大きく異なる可能性があります。当社は、再生可能エネルギーを「つくる(発電)」、天候により変動する電気を「整える(需給調整)」、整えた電気と付加価値の高いサービスを「届ける」、といったこれら電力バリューチェーン上の各機能の強化を通じて、洋上風力の成長が見込まれる日本や、N.V. Enecoをプラットフォームに持つ欧州を中心に、米州・アジア等でも再生可能エネルギーを起点とする事業拡大を目指します。具体的な目標として、「2030年度までに再生可能エネルギー発電容量を2019年度比倍増(3.3 GW → 6.6 GW)」を掲げており、これの達成に向けて取り組んでいきます。
2022年度1.5℃シナリオにおける主要な前提、及びIEA NZEとの比較、事業環境分析、並びに事業環境を踏まえた方針・取組等の詳細は「サステナビリティ・レポート2022(2023年2月28日時点)」の「環境-気候変動」内の「1.5℃シナリオ分析」、「1.5℃シナリオ分析の結果、及び分析から得られる示唆」に掲載しています。また、同レポート、同章の「物理的リスク」に物理的リスク分析についても掲載しています。
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/esg/

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