有価証券報告書-第69期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

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2016/06/30 9:59
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133項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
① 概要
当連結会計年度における世界経済は、米国では力強さには欠けるものの個人消費や住宅投資を中心に緩やかな回復基調を維持していましたが、平成27年12月のフェデラル・ファンド金利の引き上げ以降は停滞感も見られました。また、欧州では、実体経済面は総じて回復基調を維持しましたが、財政問題や難民問題、地政学的問題など政情面での不安定要素もあり、不透明な状況にありました。中国では不動産や金融バブルへの反動や設備過剰問題などにより景気が減速する中にあっても、安定成長への移行を目指す新常態政策が進められた結果、経済成長が鈍化しました。その他の新興諸国でも金融環境の変化や資源価格の下落、政治的・地政学的問題などの影響を受け、全体的に停滞感のある状態が続きました。
国内経済は、個人消費や住宅投資が若干上向いたものの力強さに欠け、海外景気の低迷による輸出の伸び悩みや円高傾向に動いたことなどにより製造業の生産活動にも停滞感が出ました。結果として、設備投資も伸び悩んだ他、公共投資も減少傾向にあったことから、いわゆるアベノミクスや日本銀行の金融緩和による景気浮揚効果が薄れてきました。
このような環境において、当連結会計年度の売上高は、石油製品や鋼材の供給過剰や需要の低迷による価格下落などにより、前連結会計年度比13.0%減の1,511,800百万円となりました。一方、利益面では、営業利益は商品市況低迷の影響を受けた金属原料事業や非鉄金属事業などの減益により前連結会計年度比4.9%減の18,178百万円、経常利益は持分法による投資損失が発生したものの、為替差損の減少などにより前連結会計年度比8.1%増の15,424百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は固定資産の譲渡に伴う売却益の発生や当該資産の過年度に計上した減損損失等について税務上の損金算入を行ったことによる法人税等の減少などから、前連結会計年度比180.3%増(約2.8倍)の25,469百万円となりました。
② 売上高
売上高は、石油・化成品事業や鉄鋼事業の減収などにより、前連結会計年度に比べ13.0%減の1,511,800百万円となりました。そのうち、国内売上高は前連結会計年度に比べ12.0%減の1,130,114百万円、海外売上高は前連結会計年度に比べ15.8%減の381,686百万円となりました。
③ 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、市況下落による仕入れ価格の低下と在庫圧縮のための仕入数量の減少などにより、前連結会計年度に比べ13.5%減の1,455,240百万円となりました。
販売費及び一般管理費は、給料・賞与の増加や新規連結した子会社分の経費の増加などにより、前連結会計年度に比べ4.8%増の38,381百万円となりました。
④ 営業利益
営業利益は、鉄鋼事業での請負工事に係る収益が増加しましたが、金属原料事業や非鉄金属事業で地金やスクラップ販売の利幅が縮小したことから、前連結会計年度の19,107百万円に対して4.9%減益の18,178百万円となりました。なお、売上高営業利益率は1.2%と前連結会計年度に対し0.1ポイント上昇しました。
⑤ 営業外損益
営業外収益は、貸倒実績率の低下に伴う一般貸倒引当金の戻入益が591百万円発生した他、受取配当金が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ57.3%増加し3,773百万円となりました。また、営業外費用は、持分法適用関連会社であるCOSMOSTEEL HOLDINGS LIMITEDの株価下落によるのれんの一括償却などからの持分法による投資損失が1,304百万円発生しましたが、前連結会計年度に比べ為替の変動が穏やかだったことから為替差損が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ9.9%減少し6,526百万円となりました。
⑥ 特別損益
特別利益は、千葉県に所在する流通センターの不動産を売却したことなどに伴い発生した固定資産売却益13,074百万円や負ののれんの発生益1,101百万円などにより、14,918百万円となりました。
一方、特別損失は、投資有価証券や出資金の減損による評価損3,273百万円などにより、3,599百万円となりました。
⑦ 法人税等
法人税等は、売却した不動産について過年度に認識していた減損損失等を損金算入したことなどにより、課税所得が減少したため、前連結会計年度に比べ67.4%減少し、1,264百万円となりました。
⑧ 当期純利益
当期純利益は、前連結会計年度に比べ178.7%増加(約2.8倍)の25,479百万円となり、その内、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ180.3%増加(約2.8倍)の25,469百万円となりました。その結果、1株当たり当期純利益金額は、前連結会計年度の43.85円に対し、122.92円となりました。
⑨ セグメントの状況
鉄鋼事業の売上高は前連結会計年度に比べ9.1%減の798,691百万円、セグメント利益は0.6%増の14,829百万円となりました。建設分野では予定物件は多いものの、出件や着工の具体化が延期されたり、工事進捗の遅れなどが多く、条鋼類の荷動きは停滞しました。製造業向け需要も海外経済の低迷から輸出向けが低調だったほか、国内消費や設備投資などの伸び悩みなどから、鋼板類の販売が失速しました。また、価格面でも中国経済の停滞から供給過剰となった鋼材や半製品が国際市場に流入して国際価格を押し下げ、その影響を受けて鉄スクラップ価格も下落し、国内市況を押し下げる誘因となるなど年度を通じて下げ基調で推移し、売上高が減少しました。また、利益面では、アベノミクス初期の景気回復期に受注した比較的採算の良い建設物件の請負工事が完工計上されて利益に貢献したものの、持分法適用会社であるCOSMOSTEEL HOLDINGS LIMITEDの株価が大きく下落し持分法による投資損失が発生したことや海外のコイルセンターで現地通貨安が進んだことからドル建ての債務に対する為替差損が拡大したことなどにより、セグメント利益は若干の増加にとどまりました。
金属原料事業の売上高は前連結会計年度に比べ横ばいの131,188百万円、セグメント利益は546.4%増(約6.5倍)の2,217百万円となりました。インドネシアのニッケル鉱石の禁輸措置による中国のニッケル銑鉄不足からニッケル地金の代替需要が発生したことや、ステンレス母材、高炉メーカー向け合金鉄の販売増などがあったものの、ステンレススクラップやニッケルスクラップ類の売上が価格の下落やステンレス生産の停滞による販売減により減少し、結果として売上高は前連結会計年度並みとなりました。また、利益面では、商品価格の下落などから販売収益は低下しましたが、前連結会計年度において急激な円安進行により発生した多額の為替差損が、比較的穏やかに推移した当連結会計年度では減少したことから、増益となりました。
非鉄金属事業の売上高は前連結会計年度に比べ1.5%減の82,081百万円、セグメント利益は26.0%減の848百万円となりました。アルミニウムのスクラップ加工や脱酸材製造の正起金属加工㈱を新規に連結子会社としたことや、銅、亜鉛、貴金属類のスクラップ販売を拡大したものの、各種商品市況の下落により、売上高は減少となりました。また、利益面では、販売価格が国際価格に連動して下落基調にある一方で、経済の停滞からスクラップの発生が減少したため、数量確保のために割高な仕入れもせざるを得ず収益性が悪化した他、アルミニウムの対日プレミアムの急落による利幅の縮小なども利益を押し下げました。
食品事業の売上高は前連結会計年度に比べ3.5%増の90,671百万円、セグメント利益は87.1%減の75百万円となりました。新規連結した米国で水産物販売を手掛けるSEATTLE SHRIMP & SEAFOOD COMPANY, INC.の売上高が加算されましたが、国内の水産物消費は低調な状態が続き、価格も前連結会計年度より低い水準にあったことから、売上高は若干の増加に留まりました。一方、利益面では、親会社での販売は、海外産地では弱含みの品種が多かったものの、円安の影響もあり国内価格が下げ止まったことから収益性は改善しましたが、北米でのエビ市況の下落によりSEATTLE SHRIMP & SEAFOOD COMPANY, INC.が最終赤字となったことから、減益となりました。
石油・化成品事業の売上高は前連結会計年度に比べ35.7%減の276,450百万円、セグメント利益は20.4%減の1,974百万円となりました。前連結会計年度に急落した原油価格は、当連結会計年度に入っても、中国経済の低迷や米国での在庫増加、産油国間の生産調整の不調、投資家の商品市場回避の動きなどから更に下落し、連動して石油製品の価格も下落しました。需要面では海運市況の低迷による舶用石油需要の減少や、国内景気減速や燃料転換による産業用燃料販売の減少、更に暖冬による灯油消費の減少などが収益を押し下げました。
海外販売子会社の売上高は前連結会計年度に比べ1.1%減の177,617百万円、セグメント損失は708百万円となりました(前連結会計年度は59百万円の損失)。前連結会計年度に比べ、円安水準にあったにも関わらず、シンガポールで扱っている舶用石油が原油価格の下落や海上輸送の停滞により売上高を減少させた他、各地域での非鉄金属販売でも価格下落が影響しました。また、米国で日本製鋼材などへのアンチダンピング措置が発動され、輸入取引が停滞した他、タイの非鉄金属事業でも価格下落の影響により収益性を落としました。
その他の事業の売上高は前連結会計年度に比べ7.0%増の67,254百万円、セグメント利益は85.1%増の1,375百万円となりました。機械事業でのレジャー機械の完工収入の他に、産業機械分野での拡販も寄与しました。また、利益面では、木材事業において、欧州材供給のタイト化により市況が上昇したことなどから、収益性が改善しました。
(2) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、売上高の減少に伴う売上債権の減少やたな卸資産の圧縮などにより、前連結会計年度末比7.9%減の599,694百万円となりました。
負債は、仕入債務やコマーシャル・ペーパーの減少などにより、前連結会計年度末比12.8%減の443,555百万円となりました。そのうち、有利子負債は、前連結会計年度末比12.8%減の237,552百万円となり、当連結会計年度末のネット負債倍率は、1.4倍となりました。
純資産は、その他有価証券評価差額金などの減少はあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益からの利益剰余金の積み上げなどにより、前連結会計年度末比9.4%増の156,139百万円となりました。この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末の21.7%から25.8%に上昇しました。
② キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて51,308百万円多い53,098百万円の収入となりました。これは、石油製品などの単価下落による売上高の減少により、売掛金やたな卸資産が減少し、運転資金の回収が進んだことなどによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて3,246百万円少ない10,446百万円の支出となりました。これは、企業買収やアライアンス構築のための出資など投資有価証券の取得による支出は依然として増加しており、出資先への貸付実行による支出も発生したものの、流通センター不動産の売却収入が発生したことなどによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度が19,339百万円の収入であったことに対し、当連結会計年度においては41,751百万円の支出となりました。これは、運転資金需要の減少に伴い、コマーシャル・ペーパーや短期借入金の返済が進んだことなどによるものであります。
③ 財務政策
当社グループは、運転資金及び投融資資金につきましては、銀行借入による調達を主としておりますが、安定的かつ機動的な流動性確保のため、資金調達ソースの多様化を図り、資本市場における社債並びにコマーシャル・ペーパー発行による調達も随時行っております。
銀行借入につきましては、運転資金の調達には、主に変動金利の長期借入金を利用することで安定的な資金を確保するとともに、日常の資金需要の変動については短期借入金により対応しております。なお、海外の連結子会社は、それぞれ現地において銀行借入を利用しております。また、設備投資などの長期資金については、海外分も含めて原則として日本において長期借入金により調達しております。当連結会計年度末現在の短期借入金残高は56,412百万円であり、主な通貨は日本円であります。長期借入金残高は1年以内の返済予定額10,322百万円を含めて139,743百万円であります。
社債につきましては、主に運転資金の調達を目的に利用しており、当連結会計年度末現在の社債発行残高は、普通社債40,136百万円であります。当社は市場環境や財政状態の変化に対応した機動的な社債発行を可能にするため、発行登録制度を利用しており、当連結会計年度末現在の国内公募普通社債発行登録枠の未使用枠は、40,000百万円であります。
当社グループは総合的な企業価値の向上と持続的な企業成長を標榜しており、事業の拡大に必要な資金需要に対応した効率的な資金調達を図り、健全な財務バランスを追求していく方針であります。