有価証券報告書-第9期(平成27年3月1日-平成28年2月29日)

【提出】
2016/05/30 15:22
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【項目】
121項目

対処すべき課題

(1) 対処すべき課題
厳しい経営環境のなか競争に勝ち残り、ビジョンとして掲げる小売業界のリーディングカンパニーとしての地位確立に向け、2016年度は「2014~2016年度 中期経営計画」の最終年度として、連結営業利益500億円を達成するとともに、2017年度からスタートする次期中期経営計画での大きな飛躍に繋げる1年と位置付け、以下の取り組みを進めてまいります。
■マルチリテイラーとしての競争力・収益力の抜本的強化
百貨店を中心とした競争力のある事業で構成される小売グループを目指し、これまでパルコ、スタイリングライフ・ホールディングス、フォーレストの株式取得を進め、また、昨年4月には、千趣会を持分法適用関連会社化するなど、事業の幅を広げてまいりました。各事業での革新に取り組むとともに、グループシナジー創出をはかり、グループ全体の競争力・収益力を強化してまいります。
(百貨店事業)
「新百貨店モデル」の確立を目指し、各店舗の地域特性に合わせたマーケット対応力の強化、収益性向上に向けた運営体制の見直しを推進してまいります。2016年度には、松坂屋名古屋店などの重点店舗での改装を中心に、マーケット変化に対応した幅広いお客様に支持される売場づくりにより、店頭の魅力化に取り組んでまいります。また、新たにご来店されたお客様にカード会員となっていただく取り組みを強化しております。カード情報の分析をもとに、それぞれのお客様の嗜好に合わせた情報をタイムリーかつ適切に提供することにより再来店を促進し、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)による固定客づくりを進めてまいります。
百貨店事業の強みである富裕層マーケットへの対応では、新規外商口座の開拓強化を継続するとともに、そのニーズを捉えた品揃え、接客サービス両面での充実に取り組んでまいります。また、今後とも増加が予想される訪日外国人のお客様への対応でも、優良顧客向けサービスの導入など、より一層の強化をはかってまいります。
(パルコ事業)
今年8月から建替えのため休業する渋谷パルコ、11月に閉店する千葉パルコの影響を、「都心型」「コミュニティ型」それぞれの店舗別政策の推進、ICTを活用した情報発信や、インバウンド対応を含めたテナントMDの改編で補いつつ、都市部の深耕と店舗優位性の拡大に取り組んでまいります。
今年初夏に仙台パルコの新館、秋には広島で2店舗目となるゼロゲートがオープンいたします。また、2017年秋に建替えオープンする松坂屋上野店新南館へのパルコ業態の出店のほか、ゼロゲートの京都、三宮への出店など次年度以降の成長に向けた開発計画推進にも取り組んでまいります。
また、関連事業につきましても、新規案件の取り組み強化及び外部展開の拡大を推進してまいります。
(千趣会との業務提携推進)
マルチリテイラーとしての強みを活かすため、大丸松坂屋百貨店、千趣会のプライベートブランドを共同で企画し、相互に展開する取り組みとして、今年3月から千趣会のブランド「Kカラット」の実店舗を大丸松坂屋百貨店へ出店するとともに、大丸松坂屋百貨店のブランド「ソフール」を千趣会のECサイトで展開しております。
今後は、オリジナル・ファッションブランドとして「Kカラット」の売上拡大に向け、自社の店舗やサイトにとどまらず、路面店、外部商業施設、外部ECサイトへの出店を目指してまいります。また、千趣会の強みであるブライダル、ベビー・マタニティ分野でも共同の取り組みを進め、シナジーの創出をはかってまいります。
■オムニチャネル・リテイリングの推進
大丸松坂屋百貨店、パルコ、千趣会などの多様なチャネルを活用し、オムニチャネル・リテイリングを推進してまいります。2016年度は、千趣会のノウハウ活用による百貨店のWEB通販事業の基盤強化を早期に実現するとともに、大丸松坂屋百貨店と千趣会が共同でマーケティング、商品企画、プロモーション、顧客情報活用などを行い、店舗、ウェブの垣根を越えた商品、サービスを提供することにより、多様化する顧客ニーズ、購買スタイルへの対応をはかってまいります。加えて、展開商品の拡大や、「Kカラット」に続く新しい共同ブランドの開発に向けた取り組みも推進してまいります。
■店舗を核に地域とともに成長するビジネスモデルの構築(アーバンドミナント戦略)
グループ店舗の立地するエリアが厳しい地域間競争に勝ち残るため、大丸松坂屋百貨店、パルコ、大丸コム開発などが一体となって街づくりを進め、賑わいを創出し地域とともに成長する「アーバンドミナント戦略」を推進してまいります。
(銀座六丁目10地区市街地再開発(銀座再開発プロジェクト))
銀座再開発プロジェクトは、東京都中央区銀座にある「松坂屋銀座店」跡地を含む2つの街区で構成された敷地面積約9,080㎡を一体的に整備する再開発事業です。
売場面積約46,000㎡(約13,900坪)の商業施設や、1フロア貸室面積約6,100㎡(約1,850坪)の大規模なオフィスなどから構成される、銀座地区最大級かつワールドクラスクオリティの大規模複合施設として2017年4月の開業を目指しております。
(松坂屋上野店南館建替え計画)
松坂屋上野店では、2014年春に本館の改装を完了し、2017年秋の完成を目指して、百貨店、パルコ、TOHOシネマズ、オフィスなどで構成する新南館を建設中です。松坂屋上野店が位置する御徒町地区では店舗周辺の自社物件を中心に開発を進めており、今後とも地域と一体となり来街者の増加、賑わいの創出に取り組んでまいります。
(大丸心斎橋店本館建替え計画)
大阪・心斎橋地区の新たな賑わい創出と地域のさらなる活性化に向け、大丸心斎橋店本館の営業を昨年末に一時休止し、本館建替え工事に着手いたしました。新本館は地下3階、地上11階建ての建物に約40,000㎡の売場を展開し、2019年秋の開業を目指しております。また、2021年春には本館・北館を接続、一体化させ、回遊性の向上をはかってまいります。併せて、グループ一体での店舗周辺開発により、引き続き地域の活性化を推進してまいります。
(宇田川町15地区開発(渋谷パルコ建替え計画))
昨年12月に渋谷パルコパート1、パート3を含む宇田川町15地区、敷地面積約5,380㎡の都市再生特別地区の都市計画を決定し、同地区にてオフィス商業複合施設の開発を予定しております。店舗を起点に街の回遊性を高め、賑わいの創出、ファッションや演劇文化の育成、情報発信を推進してまいります。
(名古屋栄地区)
松坂屋とパルコが隣接する名古屋栄地区では、パルコが2014年10月に名古屋ゼロゲート、昨年3月に「PARCO midi」を開業するなど、同地区での面の拡がりを創出するとともに、松坂屋名古屋店、名古屋パルコともマーケット変化に対応した改装計画を進めております。今後も、地域活性化に向けた開発と店舗競争力の強化に取り組んでまいります。
■財務戦略の強化
中長期的な企業価値の向上を実現するため、「財務戦略」の立案と推進の強化に取り組んでまいります。具体的には、売上高や営業利益といった収益視点とともに、バランスシートや資本コストを意識した資産効率、資本効率の視点による経営管理をより一層強化し、フリー・キャッシュフローの創出とROEの向上を基軸とした財務施策を実践してまいります。また、財務体質の改善と金融資本市場の動向を踏まえ、成長戦略を推進するための原資を機動的に確保するとともに、開発案件、店舗改装投資、M&Aに対する投資判断基準や、不採算・低収益事業に対する撤退基準を明確にし、グループとして最適な経営資源配分を実施してまいります。
■コーポレートガバナンスの強化
最良のコーポレートガバナンス実現によるグループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、昨年12月に「コーポレートガバナンス方針書」を制定し、開示いたしました。また、同日にコーポレートガバナンス報告書も併せて開示いたしました。
方針書の中では、コーポレートガバナンス・コードで開示が求められている原則(「グループ理念」、「コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方」、「取締役・監査役・執行役員の人事・報酬」など)を含め「株主との関係」、「情報開示」、「取締役会等の役割・責務」など当社グループのコーポレートガバナンスのあるべき姿について記載しております。また、役員選任基準、役員報酬の決定方針、政策保有株式に関する基本方針などの情報も併せて開示しております。
今後は、1)社外役員の知見のさらなる活用、議案の経営戦略議論への集中による取締役会の実効性向上、2)人事・報酬委員会強化、経営人材強化による経営人事機能の向上を重点課題として取り組んでまいります。
■グループビジョン・次期中期経営計画の策定
2017年度以降のさらなるグループ成長に向け、将来のあるべき姿・方向性を示す新たなグループビジョン、及び次期中期経営計画の策定を進めてまいります。
(2) 株式会社の支配に関する基本方針
① 基本方針の内容
当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社グループの財務及び事業の内容や当社グループの企業価値の源泉を十分に理解し、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保し、これを向上していくことを可能とする者であることが必要であるものと考えております。
当社は、当社が上場会社であることから、当社の株主の在り方については、一般的には金融商品取引所における自由な市場取引を通じて決まるものであり、特定の株主又は特定の株主グループによって当社株式の一定規模以上の取得行為(以下「大量取得行為」といいます。)が行われる場合であっても、当該大量取得行為が当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであれば、一概にこれを否定するものではなく、これに応じるか否かについては、最終的には株主の皆さまのご判断に委ねられるべきものと考えております。
しかしながら、大量取得行為の中には、その目的等からして当社グループの企業価値に対する明白な侵害をもたらすもの、株主の皆さまに当社株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、当社取締役会や株主の皆さまが大量取得者の提案内容等について検討し、又は当社取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないものなど、当社グループの企業価値を毀損する重大なおそれをもたらすものも想定されます。
このような当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益に資さない大量取得行為を行う者(以下「大量取得者」といいます。)は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者としては不適切であり、当社は、このような大量取得行為に対しては、大量取得者による情報提供並びに当社取締役会による検討及び評価といったプロセスを確保するとともに、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の毀損を防止するため、当社取締役会及び株主の皆さまが大量取得者の提案内容を検討するための十分な時間を確保することこそが、株主の皆さまから当社経営の負託を受けた当社取締役会の責務であると考えております。
② 基本方針の実現に資する取組み
当社グループは、大丸・松坂屋の創業以来、その企業理念、伝統精神である「先義後利(義を先にして利を後にする者は栄える)」、「諸悪莫作 衆善奉行(諸悪をなすなかれ、多くの善行を行え)」、「人の利するところにおいて、われも利する」に基づき、永年にわたって呉服商、百貨店業を営んでまいりました。
当社は、当社グループの企業価値の源泉は、これらの理念、精神に基づくことにより築き上げられてきた、お客さま及び社会との信頼関係にあるものと考えております。
そこで、当社は、これらの理念、精神に共通する「お客さま第一主義」、「社会への貢献」を体現するため、当社グループの基本理念として「時代の変化に即応した高質な商品・サービスを提供し、お客さまの期待を超えるご満足の実現を目指す」、「公正で信頼される企業として、広く社会への貢献を通じてグループの発展を目指す」ことを掲げ、この基本理念に基づき、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保及び向上に資するため、当社グループのビジョンである「百貨店事業を核とした、質・量ともに日本を代表する小売業界のリーディングカンパニーの地位の確立」を目指し、さまざまな施策に取り組んでおります。
③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを
防止するための取組み
当社は、現在のところ、大量取得者が出現した場合の具体的な取組み、いわゆる買収防衛策について特にこれを定めてはおりません。
しかしながら、大量取得者が出現した場合には、当社グループの企業価値の毀損を防止するため、大量取得者の属性、大量取得行為の目的、大量取得者が提案する財務及び事業の方針、株主の皆さま及び当社グループのお客さま・お取引先さま・従業員・当社グループを取り巻く地域社会その他のステークホルダーに対する対応方針など、大量取得者に関するこれらの情報を把握した上で、当該大量取得行為が当社グループの企業価値に及ぼす影響を慎重に検討する必要があるものと考えます。
したがって、このような場合には、当社は、当社社内取締役から独立した立場にある社外役員及び有識者をメンバーとする独立委員会を設置し、その勧告意見を踏まえた上で、当該大量取得者が前記の基本方針に照らして不適切な者であると判断されるときは、必要かつ相当な対抗措置を講じることにより、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を確保する所存であります。
④ 具体的な取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由
当社グループで策定するさまざまな施策は、当社グループの基本理念に基づいて策定されており、当社グループの企業価値の源泉であるお客さま及び社会との信頼関係の更なる構築を目指すものであります。したがって、これらの施策は、基本方針の内容に沿うものであり、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資するものであると考えております。
また、基本方針に照らして不適切な者であると判断される大量取得者に対して必要かつ相当な対抗措置を講じることについては、当社社内取締役からの独立性が確保されている独立委員会の勧告意見を踏まえて判断することにより、その判断の公正性・中立性・合理性が担保されており、当社グループの企業価値・株主共同の利益を損なうものではないとともに、当社の会社役員の地位の維持をその目的とするものではないと考えております。