訂正有価証券報告書-第139期(2023/04/01-2024/03/31)
② 戦略
A 気候変動関連のリスク・機会の特定
気候変動に伴うリスク(物理的リスク・移行リスク)と機会については、短期(3年)、中期(10年)、長期(30年)の時間軸で、定性的な分析を行っております。
B 機会
脱炭素社会への移行に伴い、資金需要への対応や新たな金融商品やサービスの提供など、お客さまの気候変動への対応を積極的に支援することで、お客さまの事業基盤が強化され、結果として当行の収益機会の拡大、持続的な成長につながるものと考えております。
こうした考えのもと、2022年10月より導入した新たな事業性評価「つなぐプロセス」などによる、お客さまとの対話、ゴール・ニーズの共有、サステナブルファイナンスなどのソリューションの提供に取組んでいます。
C シナリオ分析
物理的リスク及び移行リスクについて、複数の温度帯シナリオを用いて、各シナリオ下における当行の与信費用の増加額を推計しました。以下のとおり、いずれの分析においても、当行財務への影響は限定的であるとの結果となりました。
<物理的リスク>物理的リスクについては、気候変動に起因する自然災害の大半を占め、国内で発生確率の高い水害による影響を分析しました。分析にあたっては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の8.5シナリオ(4℃シナリオ)を前提に、ハザードマップを利用して推計した「当行が保有する担保不動産の価値毀損額」及び「浸水に起因するお客さまの事業停滞日数」から、2050年までの当行の与信費用の増加額を試算いたしました。
分析の結果、2050年までの与信費用の増加額は最大で43億円となりました。
<移行リスク>TCFD提言で気候関連の財務影響を受けやすいとされるセクターのうち、気候変動への影響度と当行のエクスポージャーという観点から、分析対象セクターを選定しております。
今年度より、「自動車」及び「エネルギー(電力、石油・ガス)」セクターに加え、新たに「陸運」セクターを分析対象として選定いたしました。
2℃以下シナリオを基に、シナリオの予測データやセクターごとに設定したモデル企業の公開情報等を活用して、脱炭素社会への移行に伴うお客さまの財務悪化による与信費用の増加額を試算いたしました。
なお、地域の基幹産業のひとつである「自動車」セクターの分析においては、モデル企業以外の取引先についても、取扱製品等の影響度に応じた売上予想に基づいて与信費用増加額を試算するなど、分析結果の精緻化に取り組んでおります。
分析の結果、2050年までの与信費用の増加額は累計で154億円となりました。
D 炭素関連資産の状況
当行の与信残高に占める炭素関連資産の割合は、約24.6%となっております。
(「エネルギー」「運輸」「素材・建築物」「農業・食料・林業製品」セクター向けエクスポージャー。2024年3月末の貸出金、支払承諾、外国為替、私募債等の合計。ただし、水道事業、再生可能エネルギー発電事業を除く)
<自動車セクターへの取組み>[取組みの背景]
群馬県は、製造品出荷額の約4割を自動車などの輸送機器が占めていることなどから、自動車産業は、地域経済の中核を担っております。
また、自動車産業を取り巻く環境は、電動化の急速な発展など大きく変化しており、地域のサプライヤーも取扱製品の電動化対応や、製造過程における温室効果ガス排出量削減、さらには部品点数減少に伴う新分野への進出、業態転換など、さまざまな対応を迫られつつあります。
このような背景から、当行においても自動車セクターを重要なセクターのひとつとして捉えております。
[自動車セクターへのサポート態勢の拡充とエンゲージメントの実施]
自動車関連産業の持続可能性の向上に向け、自動車メーカーOBの招聘などによるサポート態勢の拡充や県内サプライヤーのデータベースの構築、SUBARU系サプライヤーを中心とした、各社の保有技術・設備や特性などの個社別ヒアリングを実施いたしました。ヒアリング結果をもとに個社別データシートを作成、ポジショニングマップにまとめ、お客さまのサポートに活用しております。
また、個社別ヒアリングを行った各社の経営層に対し、外部環境についての情報提供やヒアリング結果の還元、課題の共有、課題に対するサポートなどのエンゲージメントを実施しております。
エンゲージメントの開始にあたっては、環境省が実施した「令和4年度ESG地域金融促進事業」の支援先金融機関に採択され、お客さまへの還元資料作成等の支援を受けました。
今後も、外部機関との連携を強化し、お客さまの脱炭素化や電動化への対応など、中長期的な伴走支援に、外部機関とも連携して取り組んでまいります。
なお、構築したデータベースやヒアリング結果は、自動車セクターにおける、移行リスクのシナリオ分析に活用するなど、分析の高度化にも取り組んでおります。
[取組みの概要]

A 気候変動関連のリスク・機会の特定
気候変動に伴うリスク(物理的リスク・移行リスク)と機会については、短期(3年)、中期(10年)、長期(30年)の時間軸で、定性的な分析を行っております。
リスクと機会 | 概要 | 時間軸 | |||
リスク | |||||
物理的リスク | |||||
信用リスク | ・水害等に伴う不動産担保(建物)の毀損 | 短期~長期 | |||
・お客さまの事業施設が被災することによる事業停滞・業績悪化 | 短期~長期 | ||||
オペレーショナル・リスク | ・当行事業施設が被災することによる事業中断 | 短期~長期 | |||
移行リスク | |||||
信用リスク | ・気候変動に関する規制や税制等の強化によるお客さまの業績悪化 | 中期~長期 | |||
・低炭素・脱炭素製品への移行コストの増加や消費者の製品嗜好の 変化等への対応の遅れなどによるお客さまの業績悪化 | 短期~長期 | ||||
風評リスク | ・当行が十分な情報開示を行っていないと判断された場合の当行の レピュテーションの低下 | 短期~長期 | |||
機会 | |||||
ビジネス機会の増加 | ・脱炭素社会への移行を支援するための新たな金融商品やサービス の提供機会の増加 | 短期~長期 | |||
・気候変動に伴う災害対策のための公共事業や企業の設備資金需要 等の増加 | 短期~長期 | ||||
コスト削減 | ・当行営業拠点の省資源・省エネルギー化による事業コストの低下 | 短期~長期 |
B 機会
脱炭素社会への移行に伴い、資金需要への対応や新たな金融商品やサービスの提供など、お客さまの気候変動への対応を積極的に支援することで、お客さまの事業基盤が強化され、結果として当行の収益機会の拡大、持続的な成長につながるものと考えております。
こうした考えのもと、2022年10月より導入した新たな事業性評価「つなぐプロセス」などによる、お客さまとの対話、ゴール・ニーズの共有、サステナブルファイナンスなどのソリューションの提供に取組んでいます。
C シナリオ分析
物理的リスク及び移行リスクについて、複数の温度帯シナリオを用いて、各シナリオ下における当行の与信費用の増加額を推計しました。以下のとおり、いずれの分析においても、当行財務への影響は限定的であるとの結果となりました。
<物理的リスク>物理的リスクについては、気候変動に起因する自然災害の大半を占め、国内で発生確率の高い水害による影響を分析しました。分析にあたっては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の8.5シナリオ(4℃シナリオ)を前提に、ハザードマップを利用して推計した「当行が保有する担保不動産の価値毀損額」及び「浸水に起因するお客さまの事業停滞日数」から、2050年までの当行の与信費用の増加額を試算いたしました。
分析の結果、2050年までの与信費用の増加額は最大で43億円となりました。
シナリオ | IPCC/RCP8.5(4℃シナリオ) 想定される主な動き:規制の導入が鈍く、地球温暖化がさらに進む |
分析対象 | 国内に本店を置く融資先中小企業 |
分析内容 | ハザードマップを利用して推計した当行担保不動産(建物・マンション)毀損額・ お客さまの業績悪化による売上減少額から、与信費用への影響を推計 |
分析結果 | 2050年までの与信費用増加額:最大で43億円 |
<移行リスク>TCFD提言で気候関連の財務影響を受けやすいとされるセクターのうち、気候変動への影響度と当行のエクスポージャーという観点から、分析対象セクターを選定しております。
今年度より、「自動車」及び「エネルギー(電力、石油・ガス)」セクターに加え、新たに「陸運」セクターを分析対象として選定いたしました。
2℃以下シナリオを基に、シナリオの予測データやセクターごとに設定したモデル企業の公開情報等を活用して、脱炭素社会への移行に伴うお客さまの財務悪化による与信費用の増加額を試算いたしました。
なお、地域の基幹産業のひとつである「自動車」セクターの分析においては、モデル企業以外の取引先についても、取扱製品等の影響度に応じた売上予想に基づいて与信費用増加額を試算するなど、分析結果の精緻化に取り組んでおります。
分析の結果、2050年までの与信費用の増加額は累計で154億円となりました。
シナリオ | NGFS/NetZero2050(1.5℃シナリオ)、IEA/NZE2050(1.5℃シナリオ)、IPCC/RCP2.6(2℃シナリオ) 想定される主な動き:気温の上昇を抑制するために、必要な規制や技術革新が導入 される |
分析対象 | 「自動車」「エネルギー(電力、石油・ガス)」「陸運」セクター |
分析内容 | ・セクターに対して想定される事業インパクトを定性的に評価 ・定性分析に基づき、セクターごとにモデル企業を選定してシナリオの予測データや公開情報等を基に将来の業績変化を予想 ・上記分析結果をセクター全体に展開し、与信費用の増加額を試算 |
分析結果 | 2050年までの与信費用増加額:累計で154億円 |
D 炭素関連資産の状況
当行の与信残高に占める炭素関連資産の割合は、約24.6%となっております。
(「エネルギー」「運輸」「素材・建築物」「農業・食料・林業製品」セクター向けエクスポージャー。2024年3月末の貸出金、支払承諾、外国為替、私募債等の合計。ただし、水道事業、再生可能エネルギー発電事業を除く)
<自動車セクターへの取組み>[取組みの背景]
群馬県は、製造品出荷額の約4割を自動車などの輸送機器が占めていることなどから、自動車産業は、地域経済の中核を担っております。
また、自動車産業を取り巻く環境は、電動化の急速な発展など大きく変化しており、地域のサプライヤーも取扱製品の電動化対応や、製造過程における温室効果ガス排出量削減、さらには部品点数減少に伴う新分野への進出、業態転換など、さまざまな対応を迫られつつあります。
このような背景から、当行においても自動車セクターを重要なセクターのひとつとして捉えております。
[自動車セクターへのサポート態勢の拡充とエンゲージメントの実施]
自動車関連産業の持続可能性の向上に向け、自動車メーカーOBの招聘などによるサポート態勢の拡充や県内サプライヤーのデータベースの構築、SUBARU系サプライヤーを中心とした、各社の保有技術・設備や特性などの個社別ヒアリングを実施いたしました。ヒアリング結果をもとに個社別データシートを作成、ポジショニングマップにまとめ、お客さまのサポートに活用しております。
また、個社別ヒアリングを行った各社の経営層に対し、外部環境についての情報提供やヒアリング結果の還元、課題の共有、課題に対するサポートなどのエンゲージメントを実施しております。
エンゲージメントの開始にあたっては、環境省が実施した「令和4年度ESG地域金融促進事業」の支援先金融機関に採択され、お客さまへの還元資料作成等の支援を受けました。
今後も、外部機関との連携を強化し、お客さまの脱炭素化や電動化への対応など、中長期的な伴走支援に、外部機関とも連携して取り組んでまいります。
なお、構築したデータベースやヒアリング結果は、自動車セクターにおける、移行リスクのシナリオ分析に活用するなど、分析の高度化にも取り組んでおります。
[取組みの概要]
