有価証券報告書-第180期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/14 9:50
【資料】
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【項目】
121項目
1.会社の経営の基本方針
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、都市交通、不動産、エンタテインメント・コミュニケーション、旅行、国際輸送及びホテルの6つの事業を主要な事業領域と位置付け、グループ経営機能を担う当社(純粋持株会社)の下、阪急電鉄㈱、阪神電気鉄道㈱、㈱阪急交通社、㈱阪急阪神エクスプレス及び㈱阪急阪神ホテルズの5社を中核会社として、グループ全体の有機的な成長を目指しています。
※なお、平成31年3月期より、上記の中核会社5社に加え、阪急阪神不動産㈱を当社グループの不動産事業の中核会社としています。
当社グループは、鉄道事業をベースに住宅・商業施設等の開発から阪神タイガースや宝塚歌劇など魅力溢れるエンタテインメントの提供に至るまで、多岐にわたる分野において、それまでになかったサービスを次々と提供することにより、沿線をはじめ良質な「まちづくり」に貢献するとともに、社会に新風を吹き込み、100年以上の長い歴史の中で数々の足跡を残してきました。そして、これらの活動等を通じて、暮らしを支える「安心や快適」、暮らしを彩る「夢や感動」を絶えずお客様にお届けしてきました。今後も、グループの全役員・従業員が、お客様の日々の暮らしに関わるビジネスに携わることに強い使命感と誇りを持ち、そうした思いを共有し、一丸となって業務にあたっていく上での指針として、以下のとおり「阪急阪神ホールディングス グループ経営理念」を制定しています。
阪急阪神ホールディングス グループ経営理念
使命(私たちは何のために集い、何をめざすのか)
「安心・快適」、そして「夢・感動」をお届けすることで、お客様の喜びを実現し、社会に貢献します。
価値観(私たちは何を大切に考えるのか)
お客様原点すべてはお客様のために。これが私たちの原点です。
誠実誠実であり続けることから、私たちへの信頼が生まれます。
先見性・創造性時代を先取りする精神と柔軟な発想が、新たな価値を創ります。
人の尊重事業にたずさわる一人ひとりが、かけがえのない財産です。

今後も多くのお客様をはじめとする皆様からご支持いただける企業グループとなるよう、グループの全社が、この共通の経営理念の下で力を合わせ、取り組んでいきます。
2.対処すべき課題
当社グループでは、これからの変わりゆく社会においても成長を志向する企業グループとなることを目指して、昨年「阪急阪神ホールディングスグループ 長期ビジョン2025」を策定いたしました。この長期ビジョンでは、「深める沿線 拡げるフィールド」というスローガンのもと、下記の4つの戦略を通じて持続的な企業価値の向上を図ることとし、阪急・阪神の経営統合から20年を迎える平成37年度(2025年度)において営業利益1,200億円、EBITDA(※) 2,000億円、「有利子負債/EBITDA倍率」5倍台の維持を目指すこととしております。
(※)EBITDA…営業利益+減価償却費+のれん償却費
4つの戦略
①関西で圧倒的No.1の沿線の実現
②首都圏・海外での安定的な収益基盤の構築
③ブランド価値の最大化と差別化戦略の徹底追求による競争力強化
④グループ総合力の更なる発揮と新事業領域の開拓
そうした中、当期におきましては、営業利益が1,052億円、有利子負債残高が8,668億円となった結果、財務健全性の指標である「有利子負債/EBITDA倍率」は5.4倍となり、成長に向けた投資を着実に実施しながらも、主要な経営指標については所期の目標を達成することができました。
そして、今般、長期ビジョンを実現するための初めての具体的な実行計画として、平成33年度(2021年度)までを計画期間とする中期経営計画を策定いたしました。本計画においては、平成37年度の営業利益目標1,200億円の達成に向け、まずは中間目標年度となる平成33年度に営業利益1,100億円を安定的に計上できる企業グループとなることを目指して、長期ビジョンに定める4つの戦略に沿った施策を推し進めてまいります。
また、財務方針としては、4つの戦略に則った成長投資に重点を置いて資金を配分していく一方で、「有利子負債/EBITDA倍率」も重視することで、財務体質の健全性を引き続き維持してまいります。
ここ3か年の営業利益は、平成27年度が1,103億円、平成28年度が1,041億円、平成29年度が1,052億円でありましたが、大規模な施設用地の売却益など一時的な利益を除くと、実質的には1,000億円水準で推移しております。それを上記の方針で推し進めることにより、平成33年度には、営業利益1,100億円、EBITDA1,800億円を安定的に計上するとともに、「有利子負債/EBITDA倍率」5.9倍を目指してまいります。
なお、平成30年度におきましては、大規模な施設用地の売却益などが一時的に生ずるため、営業利益は1,100億円、「有利子負債/EBITDA倍率」は5.4倍となる見通しです。
このほか、当社グループでは、社会貢献活動や環境に配慮した事業活動の推進、コンプライアンスの重視、リスクマネジメントの徹底等についてもグループを挙げて取り組み、企業の社会的責任を果たしてまいります。
3.株式会社の支配に関する基本方針
(1)当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保・向上させていくためには、「中・長期的視点に立った安全対策への積極的な取組等の社会的使命の遂行」、「中・長期的な事業成長を目指した大規模開発の推進」、「沿線に関わる行政機関・周辺住民その他の関係当事者との信頼関係の維持」、「当社グループの各コア事業相互の有機的なシナジーを最大限発揮することによる総合力の強化」等に重点を置いた経営の遂行が必要不可欠であり、これらが中・長期的に確保され、向上させられるのでなければ、当社の企業価値・株主共同の利益は毀損されることになると考えております。従って、当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、これらの点を十分に理解し、当社の企業価値・株主共同の利益を中・長期的に確保・向上していくことを可能とする者である必要があると考えております。
当社は、当社株式について大量取得行為がなされる場合であっても、これが当社の企業価値・株主共同の利益に資するものであれば、これを一概に否定するものではありません。しかしながら、株式の大量取得行為の中には、その目的等から見て企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が買付の条件等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社が買付者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買付者との交渉を必要とするもの等、対象会社の企業価値・株主共同の利益に資さないものも少なくありません。
特に、当社グループは、数多くのグループ関連企業から成り立ち、事業分野も都市交通事業、不動産事業、エンタテインメント・コミュニケーション事業、旅行事業、国際輸送事業及びホテル事業といったコア事業を中心として、幅広い範囲に及んでおります。従って、外部者である買付者からの買付の提案を受けた際に、当社の有形無形の経営資源、将来を見据えた施策の潜在的効果、各事業分野の有機的結合により実現され得るシナジーその他当社の企業価値を構成する要素を十分に把握したうえで、当該買付が当社の企業価値・株主共同の利益に及ぼす影響を短期間で適切に判断することは、必ずしも容易ではないものと思われます。
こうした事情に鑑み、当社取締役会は、当社株式に対する不適切な買付により企業価値・株主共同の利益が毀損されることを防止するためには、買付に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提案するために必要な情報や時間を確保したり、株主の皆様のために買付者と交渉を行うこと等を可能とすることで、当社の企業価値・株主共同の利益に反する買付行為を抑止できる体制を平時において整えておくことが必要不可欠と考えております。
(2)当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組
① 企業価値向上に資する取組
当社グループは、出発点である鉄道事業において、都市と都市、都市と郊外を、高速・高密度輸送で結ぶことにより、人々の生活圏を大きく拡大すると同時に、住宅、商業施設から阪神タイガースや宝塚歌劇に至るまでの多岐にわたる分野において、新たなサービスを次々と提供し、社会に新風を吹き込んでまいりました。
現在では、純粋持株会社である当社のもと、阪急電鉄㈱、阪神電気鉄道㈱、㈱阪急交通社、㈱阪急阪神エクスプレス、㈱阪急阪神ホテルズの5つの中核会社を中心に、「『安心・快適』、そして『夢・感動』をお届けすることで、お客様の喜びを実現し、社会に貢献すること」を使命として、事業を推進しております。
当社グループは、上記(1)でも述べましたとおり、都市交通事業、不動産事業、エンタテインメント・コミュニケーション事業、旅行事業、国際輸送事業及びホテル事業の6つの事業領域をコア事業と位置付け、具体的には、以下の取組を行っております。
まず、都市交通事業では、関西圏において一大交通網を形成する、鉄道、バス、タクシー等の都市交通輸送を担っており、沿線となる京阪神エリアにおいて、安全・快適かつ利便性の高い輸送サービスの提供に取り組んでおります。特に、鉄道におきましては、他社との相互直通運転を通じて、より広域的なネットワークの構築に努めるとともに、ICカードの普及・拡大を図るほか、高架化工事を始めとする大規模工事や、駅バリアフリー化工事等につきましても、着実に推進しております。また、沿線を中心として、コンビニエンスストア・化粧品雑貨店等の小売業等、幅広い展開を図っており、駅ナカの魅力向上に取り組んでおります。
次に、不動産事業では、商業施設やオフィスビルの賃貸とマンション事業を主な収益基盤として、阪急三番街、阪急西宮ガーデンズ、グランフロント大阪、ハービスOSAKA等の商業施設を始め、大阪梅田を中心とした沿線におけるこれまでの開発実績等を背景にした「沿線価値創造力」を強みとして、これまでに集積したノウハウを活用し、安心で快適な街づくりを進めるとともに、「梅田1丁目1番地計画(大阪神ビルディング及び新阪急ビルの建替計画)」など、より沿線に賑わいをもたらす魅力ある大規模開発を着実に推進しております。
エンタテインメント・コミュニケーション事業では、全国的な人気・知名度を誇る「阪神タイガース」を中心とするスポーツ事業や「宝塚歌劇」を中心とするステージ事業に代表される事業を営んでおりますが、これまで培ってきた独自コンテンツを強化しながら、多彩なライブエンタテインメントを提供することで、全国のお客様に「夢・感動」をお届けしております。
旅行事業では、充実した内容で豊富な品揃えの基幹ブランド「トラピックス」を始めとする募集型企画旅行や業務渡航を取り扱っております。
国際輸送事業では、高度なIT技術とグローバルネットワークを駆使して、多種多様な輸送モードを効率的に組み合わせた高品質な総合物流サービスを提供しております。
最後に、ホテル事業では、フルサービス型ホテルから宿泊主体型ホテルまで幅広い業態のホテルを展開しておりますが、首都圏と近畿圏の国内二大マーケットに直営ホテルが集中する強みを活かし、さらなる競争力の強化を図っております。また、国際的な高級ホテルチェーンと提携して経営する「ザ・リッツ・カールトン大阪」につきましては、お客様の高い評価を得ております。
以上のとおり、当社グループは、各コア事業を通じて、輸送サービスの充実、良質な住宅・オフィスの提供や、商業施設の開発等に代表される沿線におけるより良い街づくり、当社グループ独自のエンタテインメント、さらには、旅行、国際輸送、ホテル等、暮らしに関するサービスを総合的に提供し、阪急・阪神の沿線価値を高めることにより、当社グループの持続的成長を図ることができると考えております。
さらに、当社グループでは、取り巻く事業環境が大きく変わっていく中でも、成長する企業グループとなることを目指して、長期的にありたい姿とそれに向けて取り組むべき方向性・戦略を示すものとして「阪急阪神ホールディングスグループ 長期ビジョン2025」を策定いたしました。この長期ビジョンでは、阪急・阪神の経営統合から20年を迎える平成37年度(2025年度)をターゲットにして、「深める沿線 拡げるフィールド」というスローガンのもと、今後の事業環境の変化を見据えながら、次の4つの戦略を定めています。
・関西で圧倒的No.1の沿線の実現
・首都圏・海外での安定的な収益基盤の構築
・ブランド価値の最大化と差別化戦略の徹底追求による競争力強化
・グループ総合力のさらなる発揮と新事業領域の開拓
今後につきましては、「長期ビジョンの実現に向けた第一歩を踏み出す期間」と位置付け、長期ビジョンに定める4つの戦略に着手することといたします。また、財務面では、長期ビジョンの実現に向けて営業利益及びEBITDAのさらなる伸長を図っていくことを念頭に、上記の4つの戦略に則った成長投資に重点を置いて資金を配分することとしており、当社グループは、これらの戦略や財務方針に基づき、今後とも中長期的な視点に立って持続的な成長を図ってまいります。
② コーポレート・ガバナンスの強化に対する取組
a.コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
当社では、「お客様を始めとする皆様から信頼される企業でありつづける」ために、コーポレート・ガバナンスを強化していくことが重要であると認識しており、経営の透明性・健全性を一層高めることや、法令等の遵守、適時適切な情報開示等を通じて、その充実を図っております。
b.コーポレート・ガバナンスに関する施策の実施状況
(a) 取締役・取締役会
当社及び当社グループの経営方針及び経営戦略や経営計画等に関わる重要事項については、グループ経営会議の審議を経て、当社取締役会において決定するものとしております。グループ会社がグループ経営の観点から重要な事項を実施する場合においては、事前に当社の承認を得ることを求め、また、グループ会社が当社に適時報告する体制を整備しております。さらに、原則として全てのグループ会社に、いわゆる「内部統制システム」の構築に関する基本方針を整備するよう指導しております。
また、当社取締役会は、取締役9名(うち2名が社外取締役。但し、平成30年3月31日時点)から構成されますが、中核会社を始めとする主要なグループ会社から選出された取締役に、豊富な経験と実績を有する社外取締役を含めた構成とするとともに、取締役の任期を1年としております。
なお、当社は、上記社外取締役2名を、後記の社外監査役3名とともに、独立役員として指定し、上場証券取引所に対し届け出ております。
(b) 監査役・監査役会
当社では、有識者(法律専門家・学識経験者)を社外監査役に選任するとともに(監査役5名のうち3名が社外監査役。但し、平成30年3月31日時点)、監査役の職務を補助する体制として専任スタッフを配置して、当社及びグループ会社の業務及び財産の状況を調査し、取締役の職務執行を監査しております。
また、グループ各社の監査役について、監査権限を会計監査に限定せず、業務監査権限まで付与するとともに、当社の監査役と密に連携し、情報の共有を図っております。
(c) その他
コンプライアンス経営の確保等を目的に、当社及びグループ会社の役職員に加え、取引先も利用可能な内部通報制度として、内部相談受付窓口及び外部の弁護士を窓口とする外部相談受付窓口からなる「企業倫理相談窓口」を設置するなどの施策を実施しております。
(3)当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の非更新(廃止)
平成27年6月16日開催の定時株主総会でご承認いただいた「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の基本方針」(以下「本基本方針」といいます。)及び同日開催の当社取締役会で決議いたしました「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)(以下「本プラン」といいます。)につきましては、平成30年6月13日開催の定時株主総会(以下、「本総会」といいます。)終結の時をもって、いずれも有効期間が満了しました。
当社は、国内外の機関投資家をはじめとする株主の皆様のご意見や買収防衛策を巡る近時の動向、当社を取り巻く経営環境の変化を注視しつつ、慎重に検討した結果、平成30年5月15日開催の取締役会において本基本方針及び本プランを継続せず、廃止することを決議し、本総会において、買収防衛策に関する定款の規定を削除いたしました。
なお、当社は、本基本方針及び本プラン廃止後も、引き続き企業価値・株主の共同の利益の確保・向上に向けた取組を進めるとともに、当社株式について、大量取得行為を行い又は行おうとする者に対しては、大規模買付行為の是非を、株主の皆様が適切に判断するために必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて取締役会の意見等を開示し、株主の皆様の検討のための時間の確保に努める等、金融商品取引法、会社法その他関係法令に基づき、適切な措置を講じてまいります。