有価証券報告書-第187期(2024/04/01-2025/03/31)
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
1.会社の経営の基本方針
当社グループでは、都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行及び国際輸送の6つの事業を主要な事業領域と位置付け、グループ経営機能を担う当社(純粋持株会社)の下、阪急電鉄㈱、阪神電気鉄道㈱、阪急阪神不動産㈱、㈱阪急交通社及び㈱阪急阪神エクスプレスの5社を中核会社として、グループ全体の有機的な成長を目指しています。

当社グループは、鉄道事業をベースに住宅・商業施設等の開発から阪神タイガースや宝塚歌劇など魅力溢れるエンタテインメントの提供に至るまで、多岐にわたる分野において、それまでになかったサービスを次々と提供することにより、沿線をはじめ良質な「まちづくり」に貢献するとともに、社会に新風を吹き込み、100年以上の長い歴史の中で数々の足跡を残してきました。そして、これらの活動等を通じて、暮らしを支える「安心・快適」、暮らしを彩る「夢・感動」を絶えずお客様にお届けしてきました。今後も、グループの全役員・従業員が、お客様の日々の暮らしに関わるビジネスに携わることに強い使命感と誇りを持ち、そうした思いを共有し、一丸となって業務にあたっていく上での指針として、以下のとおり「阪急阪神ホールディングス グループ経営理念」を制定しています。
2.サステナビリティ宣言
当社グループでは、2020年5月に発表した「阪急阪神ホールディングスグループ サステナビリティ宣言」に基づき、ESG(環境・社会・企業統治)に関する取組を着実に推し進めています。
このサステナビリティ宣言では、当社グループがサステナブル経営を進める上での基本方針や6つの重要テーマ等を定めており、これをベースに、これからもお客様や地域社会等との信頼関係を構築しながら、持続的な成長を図り、ひいては持続可能な社会の実現につなげていきます。
なお、サステナブル経営の推進にあたり、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」(※1)及び「国連グローバル・コンパクト」(※2)への対応として、2021年5月に賛同の意を表明しています。
※1 「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」…2015年に、G20の要請を受け、金融安定理事会の作業部会として設置されたものであり、投資家等の適切な投資判断に資するよう、企業等に対して、気候変動に伴うリスクと機会の特定、その財務的な影響の試算、気候変動に対応する事業戦略等を開示することを推奨しています。
※2 「国連グローバル・コンパクト」…1999年の世界経済フォーラムで提唱された企業の行動規範であり、企業等に対し、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野において、10原則を遵守し実践するよう要請しています。
<サステナビリティ宣言の概要>基本方針
<サステナビリティ宣言の位置づけ>
3.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1) 長期経営構想の策定について
① 策定の背景
当社グループは、100年以上にわたって「安全・安心・快適な移動を実現する」「まちの魅力を高める」「エンタテインメントで彩る」ことを通じて沿線価値を高め、沿線外へもフィールドを拡げるとともに、先見性・創造性を持ち、時代を先取りする精神と柔軟な発想で、一歩先のより良い暮らしを提案し続けてきました。当社グループでは、2022年に策定した長期ビジョンの実現に向け、2022~2025年度を計画期間とする中期経営計画のもと、各取組は順調に推移していますが、当社グループを取り巻く環境の変化はこれまでの想定以上に加速し、ステークホルダーからの期待・要請も様々な形で高まっており、こうした変化は今後もスピードを増していくことが考えられます。そのため、当社グループがこれまで提供してきた価値や強みをベースに、グループを取り巻く環境の変化を踏まえて、現行の長期ビジョンをブラッシュアップし、「未来のありたい姿」と現状とのギャップを埋めていくために、「長期経営構想」を策定しました。
② 全体像と戦略
当社グループは、これまで積み重ねてきた提供価値を土台に、これからも新たな価値の創造にグループ一体で取り組み、あらゆるフィールドにおいて次々と新しい「お客様の喜び」を実現していきます。とりわけ、重要なフィールドである沿線においては、様々な分野における技術革新の進展やインバウンド需要の高まりといった環境変化の中でも、快適で魅力的な都市空間を創出し続け、さらにそうした「まちづくり」をグローバルに展開していきたいと考えています。そして、サステナブルで良質な商品・サービスを提供し、お客様に選ばれ続けることで、「誰もが自分らしい生活を送れるように、サステナブルな行動を自然と選択できる」社会の実現も目指していきます。
こうした「未来のありたい姿」の実現に向けた当社グループの取組を「長期経営構想」と位置付け、事業・財務・人材の各戦略を策定し、グループガバナンスの強化等にも取り組みながら、ありたい姿の実現に向けて、中長期的な成長と資本効率の向上の両立を図っていきます。
<事業戦略>これまで当社グループは、先人たちの努力の積み重ねと沿線への集中的な投資により、沿線での圧倒的な競争優位の確立とキャッシュの創出を両立してきました。加えて、ここ数年は、今後の少子高齢化に伴い沿線からのキャッシュの創出力が低下していくことを見据えて、海外不動産事業への投資等、投資先の多様化にも努めてきました。しかしながら、沿線の事業環境は今後もさらに厳しくなることが予想され、今後は、「沿線の価値を高め、沿線での競争優位性をさらに高める取組」と「成長市場を開拓し、投資の重点配分によってキャッシュ創出力をより高める取組」を同時に進めることが求められます。そのための事業戦略として、「圧倒的No.1の沿線の実現」「コンテンツの魅力の最大化と新コンテンツの開拓」「エリアを超えた展開(首都圏・海外)」「ビジネスソリューションへの注力」の4つの方向性を定めて経営資源を配分し、沿線を中心とした既存のフィールドの深掘りと、成長の見込まれる新たなフィールドでの挑戦を続けることで、グループ全体で成長し、お客様や地域・社会の期待に応えていきます。
<財務戦略>上記の事業戦略を推進し、中長期的な成長を実現するとともに、資本効率の向上に向けて、バランスシートをコントロールしつつ必要な投資を実施していきます。そのために、グループのポートフォリオにおける事業の役割を整理し、投資効果の最大化に向けて全社視点で資金を配分していきます。
都市交通事業及び不動産賃貸・開発事業は、大規模プロジェクト(※1)の成果も含めて安定的に資金を創出し、新事業領域を含む将来の高ROIC(※2)が期待される事業に資金を供給します。グループの成長に向けては、成長性と事業の拡張性が見込まれる不動産事業(グローバル)、住宅事業、ホテル事業、情報サービス事業、旅行事業等に重点的にリソースを配分することで規模の拡大と利回りを追求し、新事業領域についても、規模の拡大と高利回りの実現に貢献できるよう育成していきます。また、スポーツ事業、ステージ事業、放送・通信事業及び国際輸送事業についても、引き続きグループ全体の利回り向上に貢献することを目指していきます。
また、中長期的な成長を実現するとともに、株主還元の充実等を通じて、資本効率の向上に向けたバランスシートのコントロールも行っていきます。具体的には、2025年度より、年間配当金の下限を1株当たり100円とする安定的な配当の実施と、総還元性向(※3)50%を目安にキャッシュフローの状況を踏まえた弾力的な自己株式の取得に取り組むことを基本方針とします。
※1 大規模プロジェクト…「芝田1丁目計画(大阪新阪急ホテル・阪急ターミナルビルの建替え、阪急三番街の全面改修等)」や「なにわ筋線連絡線・新大阪連絡線計画」等
※2 ROIC…投下資本利益率。企業が事業活動のために投じた資本に対して、どれだけ利益を出しているか、資本コストに見合う収益性があるかを示す指標
※3 総還元性向…親会社株主に帰属する当期純利益に対する年間配当金総額と自己株式取得額の合計額の
割合
<人材戦略>当社グループの成長の源泉は人材であり、「長期経営構想」の実現に向けて、多様かつ有能な人材を確保したうえで、成長分野をはじめとした有望領域に積極的に投入し、グループの成長を図るとともに、これらの人材をグループの将来を担う人材として計画的に育成していきます。また、従業員の処遇の向上を図るほか、従業員のロイヤリティの向上に向けた施策を実施するなど、人的資本に対する投資を続けていきます。併せて、「一人ひとりの活躍」を実現し、従業員一人ひとりが多様な個性や能力を発揮できる企業風土の醸成に向けて、働きがいの向上や労働環境の整備を図るとともに、健康経営やダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいきます。
上記の各戦略を推進することで、遅くとも2030年度までにROE8%を持続的に達成できる企業となり、さらにその先の2040年度にかけて従来の延長線上にはない成長を遂げ、お客様から評価され、従業員も誇れる企業グループであり続けること、持続的な価値創造の好循環を創出し、投資家の皆様の期待に応えていくことを目指していきます。
③ 環境保全の推進の取組について
持続可能な社会の実現に向けて、ステークホルダーの関心が高い社会課題である「地球環境問題」について、脱炭素の取組に加え、近年注目されている生物多様性・自然資本の保護や資源循環についても取組の方向性を明示し、新たにKPIを設定したうえで、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでいきます。
また、2050年度の温室効果ガス排出量の実質ゼロに向け、新たな削減目標を、グローバルで求められる水準を踏まえ、「2035年度△60%(2019年度比)」とします。
④ 経営指標
当社グループは「未来のありたい姿」に向けた、財務面での2030年度の目標として「ROE8%の達成」を掲げ、上記の各種取組を進めていきます。
また、非財務面では、「安全・安心の追求」、「一人ひとりの活躍」、「環境保全の推進」といった重要テーマごとに目標を設定し、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいきます。
具体的な経営指標(財務・非財務)については下記のとおりです。

(2) 2025年度業績予想等について
2025年度については、都市交通事業をはじめ、各事業において諸費用が増加するものの、不動産事業において分譲収入の増加や海外不動産事業の伸長等を見込むことにより、事業利益は1,180億円、親会社株主に帰属する当期純利益は750億円、EBITDAは1,930億円と予想しています。そして、ROEは7.1%、「ネット有利子負債/EBITDA倍率」は7.1倍、D/Eレシオは1.3倍となる見通しです。
また、2025年度の株主還元については、上記の株主還元に係る基本方針を踏まえ、年間配当金を1株当たり60円から100円(中間配当金50円、期末配当金50円)に引き上げることを予定しています。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
1.会社の経営の基本方針
当社グループでは、都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行及び国際輸送の6つの事業を主要な事業領域と位置付け、グループ経営機能を担う当社(純粋持株会社)の下、阪急電鉄㈱、阪神電気鉄道㈱、阪急阪神不動産㈱、㈱阪急交通社及び㈱阪急阪神エクスプレスの5社を中核会社として、グループ全体の有機的な成長を目指しています。

当社グループは、鉄道事業をベースに住宅・商業施設等の開発から阪神タイガースや宝塚歌劇など魅力溢れるエンタテインメントの提供に至るまで、多岐にわたる分野において、それまでになかったサービスを次々と提供することにより、沿線をはじめ良質な「まちづくり」に貢献するとともに、社会に新風を吹き込み、100年以上の長い歴史の中で数々の足跡を残してきました。そして、これらの活動等を通じて、暮らしを支える「安心・快適」、暮らしを彩る「夢・感動」を絶えずお客様にお届けしてきました。今後も、グループの全役員・従業員が、お客様の日々の暮らしに関わるビジネスに携わることに強い使命感と誇りを持ち、そうした思いを共有し、一丸となって業務にあたっていく上での指針として、以下のとおり「阪急阪神ホールディングス グループ経営理念」を制定しています。
阪急阪神ホールディングス グループ経営理念 | |
使命(私たちは何のために集い、何をめざすのか) | |
「安心・快適」、そして「夢・感動」をお届けすることで、お客様の喜びを実現し、社会に貢献します。 | |
価値観(私たちは何を大切に考えるのか) | |
お客様原点 | すべてはお客様のために。これが私たちの原点です。 |
誠実 | 誠実であり続けることから、私たちへの信頼が生まれます。 |
先見性・創造性 | 時代を先取りする精神と柔軟な発想が、新たな価値を創ります。 |
人の尊重 | 事業にたずさわる一人ひとりが、かけがえのない財産です。 |
行動規範(「価値観」を守り、「使命」を果たしていくために、私たちはどのように行動するのか) | |
1. 私たちは、出会いを大切にし、お客様の立場に立って最善を尽くします。 | |
2. 私たちは、法令遵守はもとより、社会的責任を自覚して行動します。 | |
3. 私たちは、仕事に責任と誇りを持ち、迅速にやり遂げます。 | |
4. 私たちは、目先のことのみにとらわれず、中長期的な視点で考えます。 | |
5. 私たちは、現状に満足することなく、時代の先を見据えて取り組みます。 | |
6. 私たちは、思いやりの心を持ち、お互いを認め合います。 | |
7. 私たちは、活発にコミュニケーションを行い、風通しのよい職場をつくります。 | |
8. 私たちは、グループ全体の発展のために力を合わせます。 |
2.サステナビリティ宣言
当社グループでは、2020年5月に発表した「阪急阪神ホールディングスグループ サステナビリティ宣言」に基づき、ESG(環境・社会・企業統治)に関する取組を着実に推し進めています。
このサステナビリティ宣言では、当社グループがサステナブル経営を進める上での基本方針や6つの重要テーマ等を定めており、これをベースに、これからもお客様や地域社会等との信頼関係を構築しながら、持続的な成長を図り、ひいては持続可能な社会の実現につなげていきます。
なお、サステナブル経営の推進にあたり、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」(※1)及び「国連グローバル・コンパクト」(※2)への対応として、2021年5月に賛同の意を表明しています。
※1 「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」…2015年に、G20の要請を受け、金融安定理事会の作業部会として設置されたものであり、投資家等の適切な投資判断に資するよう、企業等に対して、気候変動に伴うリスクと機会の特定、その財務的な影響の試算、気候変動に対応する事業戦略等を開示することを推奨しています。
※2 「国連グローバル・コンパクト」…1999年の世界経済フォーラムで提唱された企業の行動規範であり、企業等に対し、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野において、10原則を遵守し実践するよう要請しています。
<サステナビリティ宣言の概要>基本方針
~暮らしを支える「安心・快適」、暮らしを彩る「夢・感動」を、未来へ~ 私たちは、100年以上積み重ねてきた「まちづくり」・「ひとづくり」を未来へつなぎ、地球環境をはじめとする社会課題の解決に主体的に関わりながら、すべての人々が豊かさと喜びを実感でき、次世代が夢を持って成長できる社会の実現に貢献します。 |
6つの重要テーマ | 取組方針 |
① 安全・安心の追求 | 鉄道をはじめ、安全で災害に強いインフラの構築を目指すとともに、誰もが安心して利用できる施設・サービスを日々追求していきます。 |
② 豊かなまちづくり | 自然や文化と共に、人々がいきいきと集い・働き・住み続けたくなるまちづくりを進めます。 |
③ 未来へつながる暮らしの提案 | 未来志向のライフスタイルを提案し、日々の暮らしに快適さと感動を創出します。 |
④ 一人ひとりの活躍 | 多様な個性や能力を最大限に発揮できる企業風土を醸成するとともに、広く社会の次世代の育成にも取り組みます。 |
⑤ 環境保全の推進 | 脱炭素社会や循環型社会に資する環境保全活動を推進します。 |
⑥ ガバナンスの充実 | すべてのステークホルダーの期待に応え、誠実で公正なガバナンスを徹底します。 |
<サステナビリティ宣言の位置づけ>

(1) 長期経営構想の策定について
① 策定の背景
当社グループは、100年以上にわたって「安全・安心・快適な移動を実現する」「まちの魅力を高める」「エンタテインメントで彩る」ことを通じて沿線価値を高め、沿線外へもフィールドを拡げるとともに、先見性・創造性を持ち、時代を先取りする精神と柔軟な発想で、一歩先のより良い暮らしを提案し続けてきました。当社グループでは、2022年に策定した長期ビジョンの実現に向け、2022~2025年度を計画期間とする中期経営計画のもと、各取組は順調に推移していますが、当社グループを取り巻く環境の変化はこれまでの想定以上に加速し、ステークホルダーからの期待・要請も様々な形で高まっており、こうした変化は今後もスピードを増していくことが考えられます。そのため、当社グループがこれまで提供してきた価値や強みをベースに、グループを取り巻く環境の変化を踏まえて、現行の長期ビジョンをブラッシュアップし、「未来のありたい姿」と現状とのギャップを埋めていくために、「長期経営構想」を策定しました。
② 全体像と戦略
当社グループは、これまで積み重ねてきた提供価値を土台に、これからも新たな価値の創造にグループ一体で取り組み、あらゆるフィールドにおいて次々と新しい「お客様の喜び」を実現していきます。とりわけ、重要なフィールドである沿線においては、様々な分野における技術革新の進展やインバウンド需要の高まりといった環境変化の中でも、快適で魅力的な都市空間を創出し続け、さらにそうした「まちづくり」をグローバルに展開していきたいと考えています。そして、サステナブルで良質な商品・サービスを提供し、お客様に選ばれ続けることで、「誰もが自分らしい生活を送れるように、サステナブルな行動を自然と選択できる」社会の実現も目指していきます。
こうした「未来のありたい姿」の実現に向けた当社グループの取組を「長期経営構想」と位置付け、事業・財務・人材の各戦略を策定し、グループガバナンスの強化等にも取り組みながら、ありたい姿の実現に向けて、中長期的な成長と資本効率の向上の両立を図っていきます。
<事業戦略>これまで当社グループは、先人たちの努力の積み重ねと沿線への集中的な投資により、沿線での圧倒的な競争優位の確立とキャッシュの創出を両立してきました。加えて、ここ数年は、今後の少子高齢化に伴い沿線からのキャッシュの創出力が低下していくことを見据えて、海外不動産事業への投資等、投資先の多様化にも努めてきました。しかしながら、沿線の事業環境は今後もさらに厳しくなることが予想され、今後は、「沿線の価値を高め、沿線での競争優位性をさらに高める取組」と「成長市場を開拓し、投資の重点配分によってキャッシュ創出力をより高める取組」を同時に進めることが求められます。そのための事業戦略として、「圧倒的No.1の沿線の実現」「コンテンツの魅力の最大化と新コンテンツの開拓」「エリアを超えた展開(首都圏・海外)」「ビジネスソリューションへの注力」の4つの方向性を定めて経営資源を配分し、沿線を中心とした既存のフィールドの深掘りと、成長の見込まれる新たなフィールドでの挑戦を続けることで、グループ全体で成長し、お客様や地域・社会の期待に応えていきます。
<財務戦略>上記の事業戦略を推進し、中長期的な成長を実現するとともに、資本効率の向上に向けて、バランスシートをコントロールしつつ必要な投資を実施していきます。そのために、グループのポートフォリオにおける事業の役割を整理し、投資効果の最大化に向けて全社視点で資金を配分していきます。
都市交通事業及び不動産賃貸・開発事業は、大規模プロジェクト(※1)の成果も含めて安定的に資金を創出し、新事業領域を含む将来の高ROIC(※2)が期待される事業に資金を供給します。グループの成長に向けては、成長性と事業の拡張性が見込まれる不動産事業(グローバル)、住宅事業、ホテル事業、情報サービス事業、旅行事業等に重点的にリソースを配分することで規模の拡大と利回りを追求し、新事業領域についても、規模の拡大と高利回りの実現に貢献できるよう育成していきます。また、スポーツ事業、ステージ事業、放送・通信事業及び国際輸送事業についても、引き続きグループ全体の利回り向上に貢献することを目指していきます。
また、中長期的な成長を実現するとともに、株主還元の充実等を通じて、資本効率の向上に向けたバランスシートのコントロールも行っていきます。具体的には、2025年度より、年間配当金の下限を1株当たり100円とする安定的な配当の実施と、総還元性向(※3)50%を目安にキャッシュフローの状況を踏まえた弾力的な自己株式の取得に取り組むことを基本方針とします。
※1 大規模プロジェクト…「芝田1丁目計画(大阪新阪急ホテル・阪急ターミナルビルの建替え、阪急三番街の全面改修等)」や「なにわ筋線連絡線・新大阪連絡線計画」等
※2 ROIC…投下資本利益率。企業が事業活動のために投じた資本に対して、どれだけ利益を出しているか、資本コストに見合う収益性があるかを示す指標
※3 総還元性向…親会社株主に帰属する当期純利益に対する年間配当金総額と自己株式取得額の合計額の
割合
<人材戦略>当社グループの成長の源泉は人材であり、「長期経営構想」の実現に向けて、多様かつ有能な人材を確保したうえで、成長分野をはじめとした有望領域に積極的に投入し、グループの成長を図るとともに、これらの人材をグループの将来を担う人材として計画的に育成していきます。また、従業員の処遇の向上を図るほか、従業員のロイヤリティの向上に向けた施策を実施するなど、人的資本に対する投資を続けていきます。併せて、「一人ひとりの活躍」を実現し、従業員一人ひとりが多様な個性や能力を発揮できる企業風土の醸成に向けて、働きがいの向上や労働環境の整備を図るとともに、健康経営やダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいきます。
上記の各戦略を推進することで、遅くとも2030年度までにROE8%を持続的に達成できる企業となり、さらにその先の2040年度にかけて従来の延長線上にはない成長を遂げ、お客様から評価され、従業員も誇れる企業グループであり続けること、持続的な価値創造の好循環を創出し、投資家の皆様の期待に応えていくことを目指していきます。
③ 環境保全の推進の取組について
持続可能な社会の実現に向けて、ステークホルダーの関心が高い社会課題である「地球環境問題」について、脱炭素の取組に加え、近年注目されている生物多様性・自然資本の保護や資源循環についても取組の方向性を明示し、新たにKPIを設定したうえで、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでいきます。
また、2050年度の温室効果ガス排出量の実質ゼロに向け、新たな削減目標を、グローバルで求められる水準を踏まえ、「2035年度△60%(2019年度比)」とします。
④ 経営指標
当社グループは「未来のありたい姿」に向けた、財務面での2030年度の目標として「ROE8%の達成」を掲げ、上記の各種取組を進めていきます。
また、非財務面では、「安全・安心の追求」、「一人ひとりの活躍」、「環境保全の推進」といった重要テーマごとに目標を設定し、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいきます。
具体的な経営指標(財務・非財務)については下記のとおりです。

(2) 2025年度業績予想等について
2025年度については、都市交通事業をはじめ、各事業において諸費用が増加するものの、不動産事業において分譲収入の増加や海外不動産事業の伸長等を見込むことにより、事業利益は1,180億円、親会社株主に帰属する当期純利益は750億円、EBITDAは1,930億円と予想しています。そして、ROEは7.1%、「ネット有利子負債/EBITDA倍率」は7.1倍、D/Eレシオは1.3倍となる見通しです。
また、2025年度の株主還元については、上記の株主還元に係る基本方針を踏まえ、年間配当金を1株当たり60円から100円(中間配当金50円、期末配当金50円)に引き上げることを予定しています。
