有価証券報告書-第60期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2025/06/20 10:17
【資料】
PDFをみる
【項目】
181項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。
ア 財政状態及び経営成績の状況
(業績等の概要)
当連結会計年度における我が国経済は、物価高の影響により個人消費が伸び悩む一方、企業収益の改善や設備投資の持ち直し等により、緩やかな景気回復が継続しました。先行きにつきましては、春闘の賃上げなど雇用・所得環境の改善が期待できるものの、他方で、米国の相互関税導入等通商政策による影響や国内物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響等が懸念されます。
警備分野においては、政府の「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」に示されているように、昨年1月に発生した令和6年能登半島地震等を念頭に、自然災害からの復旧・復興に取り組むことはもとより、防犯対策の強化等に取り組むとされているほか、サイバー空間の脅威、高齢者、女性、子ども等の社会的弱者の安全・安心への懸念、街中での犯罪や事故の増加、インフラ老朽化などを背景に、警備業界に対する社会の期待は高まっており、当社グループに対しては、警備を含むトータルでの安全・安心に関するサービス提供が求められております。加えて、2022年以降、刑法犯認知件数が増加傾向にあるほか、全国で相次ぐ強盗事件や一部外国人による犯罪の発生等を受けて国内の体感治安が悪化しており、安全・安心を提供する当社グループの役割は増大していると言えます。
このような情勢の中、当社グループは、持続可能な社会への貢献を目指し、社会の安全・安心に関するサービス(セキュリティ事業、FM事業等、介護事業、海外事業)を行う事業者として、適切にサービス提供を継続してまいりました。中期経営計画「Grand Design 2025」に掲げておりますとおり、「社会の多様な安全・安心ニーズに対応する強靭な綜合安全安心サービス業」を目指して、リスクが多様化する中で拡大するお客様と社会の安全・安心ニーズに応えるべく、警備・設備・介護等の多様なサービス機能を組み合わせた新たなサービス提供に取り組んでおります。また、物価上昇が続く中、コスト上昇に対応するためお客さまに価格改定をお願いしております。
以上のような取組みを続ける中、当連結会計年度における当社グループの連結業績は、前期と比較して改善し、売上高は551,881百万円(前年同期比5.8%増)、営業利益は40,201百万円(前年同期比5.6%増)、経常利益は43,107百万円(前年同期比4.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は27,105百万円(前年同期比1.8%増)となりました。
当社グループの連結損益計算書を項目別に対前年度で比較すると、次のとおりであります。
項目前連結会計年度当連結会計年度前年同期比
金額百分比金額百分比増減額増減率
(百万円)(%)(百万円)(%)(百万円)(%)
売上高521,400100.0551,881100.030,4805.8
売上原価396,26476.0420,92676.324,6616.2
売上総利益125,13524.0130,95423.75,8194.7
販売費及び
一般管理費
87,05616.790,75216.43,6964.2
営業利益38,0787.340,2017.32,1225.6
営業外収益6,0351.26,0711.1350.6
営業外費用2,9440.63,1650.62207.5
経常利益41,1697.943,1077.81,9384.7
特別利益9450.21,5510.360564.0
特別損失2650.19260.2661249.1
法人税等13,4282.614,7252.71,2979.7
非支配株主に帰属する当期純利益1,7900.31,9010.31106.2
親会社株主に帰属する当期純利益26,6305.127,1054.94741.8

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比較して30,480百万円増加し、551,881百万円(前年同期比5.8%増)となりました。
売上原価につきましては、従業員の処遇改善等により労務費が14,206百万円、経費が9,826百万円増加したことにより、420,926百万円(前年同期比6.2%増)となりました。
販売費及び一般管理費につきましては、給料諸手当が2,089百万円増加したことにより90,752百万円(前年同期比4.2%増)となりました。
経常利益につきましては、営業利益の増加に伴い1,938百万円増加し、43,107百万円(前年同期比4.7%増)となりました。
特別利益の増加は、負ののれん発生益が392百万円、事業損失引当金戻入額が289百万円増加した結果であります。
特別損失の増加は、段階取得による差損が448百万円、投資有価証券売却損が293百万円増加した結果であります。
親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、経常利益の増加に伴い474百万円増加し、27,105百万円(前年同期比1.8%増)となりました。
なお、包括利益につきましては、30,556百万円減少の24,550百万円(前年同期比55.4%減)となりました。退職給付に係る調整額の期中変動額が27,463百万円、その他有価証券評価差額金が3,236百万円減少した結果であります。
セグメントごとの経営成績の状況につきましては、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ア 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりであります。
(連結貸借対照表項目の比較分析)
当社グループの連結貸借対照表を項目別に対前年度で比較すると、次のとおりであります。
項目前連結会計年度当連結会計年度前年同期比
金額構成比金額構成比増減額増減率
(百万円)(%)(百万円)(%)(百万円)(%)
資産の部流動資産252,06144.1256,72244.84,6601.8
固定資産319,40255.9315,67955.2△3,722△1.2
資産総額571,463100.0572,402100.09380.2
負債の部流動負債100,48917.6108,89219.08,4038.4
固定負債93,21916.387,50915.3△5,710△6.1
負債総額193,70933.9196,40134.32,6921.4
純資産の部総額377,75466.1376,00065.7△1,754△0.5

当連結会計年度末の資産総額は、前連結会計年度末と比較して938百万円増加し、572,402百万円(前年同期比0.2%増)となりました。うち流動資産は、4,660百万円増加の256,722百万円(前年同期比1.8%増)、固定資産は3,722百万円減少の315,679百万円(前年同期比1.2%減)となりました。
流動資産の増加につきましては、警備輸送業務用預金が7,357百万円、原材料及び貯蔵品が1,659百万円増加した一方、現金及び預金が8,329百万円減少した結果であります。
固定資産の減少につきましては、繰延税金資産が3,555百万円減少したことが主たる要因であります。
当連結会計年度末の負債総額は、前連結会計年度末と比較して2,692百万円増加し、196,401百万円(前年同期比1.4%増)となりました。うち流動負債は、8,403百万円増加の108,892百万円(前年同期比8.4%増)、固定負債は5,710百万円減少の87,509百万円(前年同期比6.1%減)となりました。
流動負債の増加につきましては、短期借入金が5,510百万円、未払法人税等が2,194百万円増加した結果であります。
固定負債の減少につきましては、繰延税金負債が3,860百万円、リース債務が1,220百万円減少した結果であります。
当連結会計年度末の純資産の部総額は、前連結会計年度末と比較して1,754百万円減少し、376,000百万円(前年同期比0.5%減)となりました。
イ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は60,018百万円(前年同期比13.2%減)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度前年同期比
(%)
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
(自 2024年4月1日
至 2025年3月31日)
営業活動によるキャッシュ・フロー56,06342,647△23.9
投資活動によるキャッシュ・フロー△16,913△15,550△8.1
財務活動によるキャッシュ・フロー△21,503△36,30968.9
現金及び現金同等物に係る換算差額△5668-
現金及び現金同等物の増加額
(△は減少)
17,591△9,144-
現金及び現金同等物の期首残高51,57169,16234.1
現金及び現金同等物の期末残高69,16260,018△13.2

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動の結果増加した資金は42,647百万円(前年同期比23.9%減)であります。資金の主な増加要因は、税金等調整前当期純利益43,732百万円、減価償却費による資金の内部留保20,103百万円であります。これらに対し、資金の主な減少要因は、法人税等の支払10,671百万円、退職給付に係る資産の増加6,897百万円であります。
なお、警備輸送業務に係る資産・負債の増減額には、警備輸送業務用現金、及び短期借入金のうち警備輸送業務用に調達した資金等の増減が含まれております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動の結果使用した資金は15,550百万円(前年同期比8.1%減)であります。有形固定資産を14,854百万円取得した結果であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動により減少した資金は36,309百万円(前年同期比68.9%増)であります。自己株式の取得により15,000百万円、配当金の支払により13,525百万円、リース債務の返済により5,785百万円の資金が減少した結果であります。
ウ 生産、受注及び販売の実績
(生産実績)
当社グループは生産活動を行っておりませんが、当連結会計年度末日現在実施中の契約件数をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称前連結会計年度末
(2024年3月31日)
当連結会計年度末
(2025年3月31日)
前年同期比
(%)
セキュリティ事業
機械警備事業 (千件)5795912.0
HOME ALSOK事業 (千件)5055213.2
常駐警備事業 (千件)443.4
警備輸送事業 (千件)86904.6
報告セグメント計 (千件)1,1761,2082.7
FM事業等 (千件)1271302.0
介護事業 (千件)27282.7
海外事業 (千件)445.7
合計 (千件)1,3361,3712.7

(注)上記件数は、当社グループがサービスを提供している対象先の数ではなく、お客様と約定している長期契約(一定期間継続的にサービスを提供する契約)の数を集計したものであります。各セグメントに含まれる代表的なサービスは、次のとおりであります。
機械警備事業法人向けのALSOKガードシステム各種
HOME ALSOK事業個人向けのホームセキュリティ各種
常駐警備事業ご契約先施設等に警備員を配置する常駐警備
警備輸送事業現金、有価証券等を輸送する現金輸送サービス、入(出)金機オンラインシステム
FM事業等設備管理、清掃管理、電話対応、施設の維持、管理、運営業務、消防用設備の点検、AEDのレンタル等
介護事業訪問介護、デイサービス、有料老人ホーム、グループホーム等
海外事業海外子会社が実施するセキュリティ事業、FM事業等、人材派遣等

(販売実績)
販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称前連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
当連結会計年度
(自 2024年4月1日
至 2025年3月31日)
前年同期比
(%)
セキュリティ事業
機械警備事業 (百万円)168,384173,6103.1
HOME ALSOK事業 (百万円)23,07424,6616.9
常駐警備事業 (百万円)118,578123,1913.9
警備輸送事業 (百万円)69,25470,4831.8
報告セグメント計 (百万円)379,291391,9463.3
FM事業等 (百万円)75,38679,7365.8
介護事業 (百万円)50,96153,3644.7
海外事業 (百万円)15,76126,83370.2
合計 (百万円)521,400551,8815.8

(注)販売実績が総販売実績の10%以上の相手はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において判断したものであります。
ア 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営者の視点による分析・検討内容)
当連結会計年度における当社グループの連結業績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ア 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであり、売上高は、15期連続の増収で、14期連続で過去最高を更新し、利益についても増益となりました。当社グループは、M&Aの活用等によりセキュリティ事業を強化するとともに、セキュリティ事業と親和性の高いFM事業等や介護等生活支援事業を拡大し、リスクが多様化する社会の中で、拡大する安全・安心ニーズに的確に応えることに注力しております。
当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高経常利益率とROE(連結自己資本当期純利益率)を重視しております。中期経営計画「Grand Design 2025」においては、両指標とも10.0%以上を目標として掲げ、当連結会計年度は、売上高経常利益率7.8%、ROE7.9%となりました。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
売上高のセグメント別の増減
セグメントの名称前連結会計年度当連結会計年度前年同期比
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
増減率
(%)
セキュリティ事業
機械警備事業168,38432.3173,61031.55,2263.1
HOME ALSOK事業23,0744.424,6614.51,5866.9
常駐警備事業118,57822.7123,19122.34,6133.9
警備輸送事業69,25413.370,48312.81,2281.8
セキュリティ事業計379,29172.7391,94671.012,6553.3
FM事業等75,38614.579,73614.44,3505.8
介護事業50,9619.853,3649.72,4034.7
海外事業15,7613.026,8334.911,07170.2
合 計521,400100.0551,881100.030,4805.8

セグメント別の主要な変動要因は次のとおりであります。なお、当連結会計年度より、報告セグメントを従来の「セキュリティ事業」、「綜合管理・防災事業」及び「介護事業」から「セキュリティ事業」、「FM事業等」、「介護事業」及び「海外事業」に変更しております。これに伴い、各セグメントの前年同期比につきましては、前年同期の数値を変更後の報告セグメントの区分に組み替えたうえで算出しております。
セキュリティ事業につきましては、売上高は391,946百万円(前年同期比3.3%増)、営業利益は40,327百万円(前年同期比4.5%増)となりました。
機械警備事業においては、法人向けサービスとして、ライブ画像確認を標準装備し、画像蓄積や遠隔地からのオプションを充実させ、お客様の省人化ニーズにも貢献する「ALSOK-G7(ジーセブン)」の販売を推進しており、今後お客様のニーズに合わせてその活用範囲を更に拡大してまいります。昨年7月には、「ALSOK ITレスキュー」と「ALSOK設備レスキュー」のサービス提供エリアを全国に拡大しました。これらのサービスは、ALSOKの機械警備の既存インフラを活用し、IT機器やビルの設備等に障害等が発生した際にガードマンが駆けつけて専門家による業務支援のもと原因究明や応急措置等を行うサービスです。また、ソーラーパネルの点検、各種施設の点検・調査等ドローンを活用した事業の拡大に取り組んでいるほか、今年4月には、お客様が運用するシステムの脆弱性の有無を検査する「脆弱性診断」サービス及び、実際の脅威を模した疑似攻撃を行うことで脅威に対する対策状況を評価する「ペネトレーションテスト」サービスの提供を開始し、サイバーセキュリティ事業の拡大にも取り組んでおります。
HOME ALSOK事業においては、「HOME ALSOK Connect」の販売拡大もあり、受注を伸ばしました。この商品は、強盗事件の増加等体感治安が悪化する中で幅広いお客様に安全・安心を提供するものであり、異常の際にALSOKが駆けつける従来型の「オンラインセキュリティ」に加え、ご依頼に応じてALSOKが現場確認するサービスをオプションとして月額料金を抑えた「セルフセキュリティ」のプランを用意しており、セルフセキュリティはいつでもオンラインセキュリティにアップグレードが可能です。昨年5月には、スムーズなスマホ認証による警備の開始/解除操作を可能とし、スマホ忘れ防止機能を搭載した、「HOME ALSOK Connect」用コントローラー「スマホゲート」の提供を開始し、更なる販売拡大に努めております。その他、高齢者向け見守りサービス「HOME ALSOK みまもりサポート」等の販売も推進しております。
常駐警備事業においては、訪日外国人等を受け入れる空港施設の警備、生産拠点の国内回帰に伴う警備等へ対応しております。また、「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)関連では、会場警備やパビリオン各館等の警備などを複数受注しており、アバターによる来場者対応を含め、当社グループを挙げて対応してまいります。今後については、DX等による更なる常駐警備の省人化・効率化のほか、「東京2025世界陸上競技選手権大会」等への対応にも注力してまいります。
警備輸送事業においては、金融機関の店舗統廃合等により国内のATM台数は減少している一方、現金管理業務の効率化ニーズは依然根強く、ATM綜合管理サービスや入(出)金機オンラインシステム等の販売を推進しております。また、入出金機オンラインシステムを活用して自治体の派出窓口業務を自動化する「税公金受付システム」を提供しております。その他、昨年7月に行われた新紙幣発行に向けた機器のリプレース等を推進してまいりました。引き続き、地域金融機関等の業務効率化・コスト低減など様々なアウトソースニーズを捉え、サービス提供の拡大に努めてまいります。
FM事業等につきましては、売上高は79,736百万円(前年同期比5.8%増)、営業利益は9,164百万円(前年同期比10.0%増)となりました。2024年12月には株式会社カンソー及びその子会社を新規連結し、大阪地区での事業基盤を拡充しております。引き続きファシリティマネジメント業務等の拡大に取り組むとともに、サステナビリティへの取組み強化の一環としてEV充電設備の販売、設置工事や保守メンテナンス等を提供してまいります。
介護事業につきましては、施設等の入居率の堅調な推移が業績向上に寄与し、売上高は53,364百万円(前年同期比4.7%増)、営業利益は1,497百万円(前年同期比14.3%増)となりました。その他、昨年9月26日付にて、当社と東京科学大学(旧東京医科歯科大学)及び株式会社エヌジェイアイの共同出資による看護・介護分野の研究開発・人材育成を行う株式会社科学的看護・介護研究機構が事業を開始いたしました。引き続き介護支援ロボット活用等DXによる介護業務の高度化、効率化をすすめ、介護事業の統一ブランド『ALSOKの介護』のもとサービス拡充に努めてまいります。
海外事業につきましては、M&Aの効果もあり、売上高は26,833百万円(前年同期比70.2%増)となり、現地法人ベースでは黒字を確保しているものの、本社費やのれんを考慮すると、547百万円の営業損失(前年同期は649百万円の営業損失)となりました。引き続き、日本で培ったノウハウをもとに、国ごとに最適な商品・サービスを提供し、お客様の海外事業をサポートしていくとともに、積極的な事業展開を図ってまいります。
当社グループは、社会の安全・安心に関するサービスを行う事業者としての責務を果たしつつ、新技術の活用や生産性の向上等に引き続き取り組み、今後も拡大する社会の安全・安心ニーズに的確に応えてまいります。
(資本の財源及び資金の流動性)
①財務規律に関する基本的な考え方
中期経営計画「Grand Design 2025」では、中期的な財務目標として、ROE10%以上を目標としております。ROEの向上に向けては、安定配当を維持しつつ、中期的に連結売上高経常利益率を10%以上まで高めることを目標に収益性を拡大することが基本的な方針であります。なお配当性向の目安については、40%から50%としております。
こうした中、当社グループの最近5連結会計年度末における自己資本比率は安定的に推移しており、株主と債権者双方にバランスよく配慮し、財務規律の維持に努めた結果と考えております。
(最近5連結会計年度末における自己資本比率)
2021年3月期2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期
自己資本比率
[連結](%)
55.359.058.660.259.1

②資金需要の動向及び資金調達の方法並びにそれらに係る経営者の認識
当社グループにおける自己資金の主たる源泉は、セキュリティ事業を中心としたお客様からの月額料金の収受であり、先行きが見通しやすい安定的な収入を毎月得られております。こうした安定的な自己資金を所与として資金の支出を計画していることから、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しております。また、外部からの資金調達についても、こうした安定的な自己資金の状況や最近の自己資本比率の動向、主要な金融機関との良好な関係により、安定的に実施できると考えております。
このような資金の源泉に対し、当社グループの主要な資金需要及び資金調達の方法については、次のとおりです。
(運転資金需要)
当社グループにおける運転資金需要のうち主なものは、労務費や外注費を中心とする売上原価、人件費を中心とする販売費及び一般管理費、及び警備輸送業務における入(出)金機オンラインシステムによる売上金の入金処理等のための現金であります。
売上原価や販売費及び一般管理費の支払資金については、年間を通して安定的に需要が生じるものが多く、自己資金を充当することを基本としておりますが、必要に応じて金融機関からの短期借入を実施することとしております。
入(出)金機オンラインシステムによる売上金の入金処理等のための資金については、自己資金及び金融機関からの短期借入を併用して対応することとしております。当該短期借入は、当座貸越を通じて、資金需要に即して実行できるものとなっております。売上金の入金処理の金額は、前日にお客様が入(出)金機に売上金を投入した金額となり、日々大きく変動しますが、特に月曜日や国民の祝日の後の営業日においては、その前日までの休日に投入された売上金にもあわせて対応する必要があることから、入金処理金額が増加し、金融機関からの借入への依存度も結果的に高まる傾向にあります。
(投資目的の資金需要)
当社グループにおける投資目的の資金需要のうち主なものとして、M&Aが挙げられます。これについては、まずは自己資金を充当することを基本としながら、必要に応じて金融機関からの短期借入や長期借入を実施し、対応することとしております。
このほか、機械警備に係る警報機器の経常的な取得も設備投資に含められております。警報機器の取得は、1件当たりの金額が少額で、受注に伴って生じるため、運転資本を構成する棚卸資産と類似の性格も有すると考えており、年間を通じて安定的に資金需要が生じることから、運転資金需要と同様に自己資金をもって対応することを基本としております。
当連結会計年度後1年間における資本的支出を含む設備投資計画は、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
(株主還元の方針)
当社グループでは、株主に対する利益還元を経営の重要政策として位置づけ、内部留保の充実を図りながら、業績に裏付けられた成果の配分を行うことを基本方針としております。具体的な利益還元の手法としては、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本的な方針としており、現在は配当性向40%から50%を目安に安定配当を維持することを目指しております。なお、自己株式取得についてもキャッシュ・フローの動向等を見ながら機動的に実施しております。
(手許資金)
警備輸送業務用現金以外の現金及び預金については、当社グループの資金繰りの実務上明確に最低限維持すべき手許資金の目安を定めてはいないものの、支出に係る資金需要が年間を通して安定的に生じるものが多いことから、月商の1~2か月程度の維持が適切であると認識しております。
警備輸送業務用現金については、当座貸越を通じて、実需に即して調達することとしております。
(先行きの資金需要の動向及び資金調達方法に係る経営者の認識)
当連結会計年度における警備輸送業務を除いた資金需要については、おおむね自己資金の範囲で対応いたしました。当連結会計年度後1年間についても、現時点ではこれまでの資金需要の傾向から大きな変化を見込んでいないことから、同様に自己資金の範囲で対応することが基本となると認識しております。
③当連結会計年度におけるキャッシュ・フロー及び資金調達の状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 イ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
また、当連結会計年度末日時点における負債による資金調達の状況につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 ⑤連結附属明細表」における社債明細表及び借入金等明細表に記載のとおりであります。なお、同日末時点における主要な借入先別の借入金額は、株式会社みずほ銀行が3,554百万円、株式会社三井住友銀行が1,375百万円、株式会社武蔵野銀行が1,000百万円、株式会社三菱UFJ銀行が993百万円となっております。
イ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり、重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
また、当社グループは、連結財務諸表の作成上、固定資産の減損会計、各種引当金の見積り計算、繰延税金資産の回収可能性の判断等に対し、現在入手可能な前提に基づく合理的な見積りを反映させておりますが、将来、これらの見積りと大きな差が生じる可能性があります。
重要な会計方針のうち、見積りや仮定等による影響が大きいと考えている項目は、次のとおりであります。
(固定資産の減損)
固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」(2002年8月9日)及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第26号 2009年3月27日最終改正)に基づき、減損処理の要否を判定しております。将来の企業環境等の変化等により、回収可能価額が帳簿価額を下回ることとなった場合には、減損処理が必要となる可能性があります。
①のれん及び顧客関連資産
(のれん及び顧客関連資産の価値の源泉)
当連結会計年度末におけるのれん29,873百万円は、過去の企業結合により発生したものであり、その主たる発生原因は、結合後企業が当社グループに加入したことにより、同社に期待される超過収益力であります。一部ののれんについては、結合後企業ではなく、当社などにおいて発現されることが期待されるシナジー効果が発生原因となっております。
また、一部の企業結合においては、企業結合時における既存の顧客との契約に係る価値を算定し、顧客関連資産としてのれんとともに計上しております。
(将来キャッシュ・フローの基礎となる事業計画)
当社グループにおけるのれんに係る減損要否の検討は、のれん発生の原因である超過収益力やシナジー効果が将来にわたって発現するかに着目して行っており、平時においてはのれんを発生させた結合後企業の事業計画(当社などに発現が期待されるシナジー効果の計画を含む。)に沿って利益やキャッシュ・フローが計上されているかを毎月モニタリングしております。こうした下、設定された事業計画の達成が危ぶまれる状況など減損の兆候が認められる場合には、事業計画の合理性について見直すこととしております。そしてこのように見直された事業計画に基づく割引前将来キャッシュ・フローによって、減損損失を認識するかを決定し、認識する場合においては割引将来キャッシュ・フローで算定する使用価値に基づき減損損失を測定することとしております。
顧客関連資産に係る減損の検討は、のれんに係る減損の検討と併行して行っており、設定された事業計画に沿って利益やキャッシュ・フローが計上されているかをもって減損の兆候の有無の判定を実施するとともに、減損の兆候が認められる場合は、見直された事業計画に基づき、減損損失の認識・測定の手続を実施することとしております。
事業計画には、次に掲げる重要な仮定を考慮しております。これらについては、その性質上、何らかの見積り・前提を設定した上での判断を伴うものであり、当該見積り・前提は、減損の兆候の有無の判断、認識するか否かの判定、又は測定する減損損失金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
・セキュリティ事業、FM事業等及び海外事業を営む会社
受注の状況、人員計画、売上高の成長率
・介護事業を営む会社
区分考慮する重要な仮定
在宅介護事業職員1人当たりの売上高、既存拠点の利益率、人員計画等
施設介護事業新規施設の開設状況、施設の入居率、人員計画等
高齢者向け住宅事業新規施設の開設状況、施設の入居率、人員計画等

当連結会計年度においては、いずれののれん・顧客資産についても今のところ減損損失を計上する必要はないと判断しております。
なお、事業計画は、当社の個別財務諸表に計上されている結合後企業に係る関係会社株式の評価を検討する際にも活用しております。当該関係会社株式の回収可能性が認められなくなった場合には、当社の損益計算書上、評価損が計上されることとなります。
(割引率)
使用する割引率については、当社グループの大部分の会社がグループ内借入を通じて当社とほとんど同様の条件で資金調達が可能であると考えられることから、当社の上場以来の株価や金利に係るヒストリカル・データに基づき算出した年限別の加重平均資本コストをのれんの残存償却期間に応じて使用することとしております。株価が大きく上昇したり金利が高騰した場合は、加重平均資本コストが高く算出されることを通じ割引将来キャッシュ・フローが少額となることから、測定される減損損失金額が多額となる可能性があります。
②その他の有形・無形固定資産
(将来キャッシュ・フローの基礎となる事業計画)
のれん及び顧客関連資産以外の有形・無形固定資産についても、事業計画に基づく利益やキャッシュ・フローの状況をもって、減損処理の必要性を判定しております。
有形・無形固定資産に係る減損要否の検討に際しては、経営の実態に即して資産のグルーピングを行っております。主な資産のグルーピングの方法は、次のとおりであります。
区分主な勘定科目資産のグルーピングの方法
ガードセンター設備
契約先設置警備用機器
防災設備等
建物及び構築物
機械装置及び運搬具
これらの資産については、エリア別にサービスを展開し、投資意思決定を行っている経営実態に即して管理会計単位を設定している状況に鑑み、当該管理会計単位を資産グループとして設定しております。具体的には、当社については「第3 設備の状況 2 主要な設備の状況 (1)提出会社の状況」が示す本社及び各地域本部を1つの資産グループとし、子会社及び関連会社については個社を1つの資産グループとしております。
介護施設リース資産介護施設については、各施設が独立してサービスを展開し、投資意思決定を行っている経営実態に即し、単独の管理会計単位として設定されている状況に鑑み、個々の介護施設を1つの資産グループとしております。

各資産グループに係る事業計画には、のれん及び顧客関連資産の場合と同様、重要な仮定を含めるに際して何らかの見積り・前提を設定しており、当該見積り・前提は、減損の兆候の有無の判断、認識するか否かの判定、又は測定する減損損失金額に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(割引率)
のれん及び顧客関連資産の場合と同様、使用する割引率については、当社の上場以来の株価や金利に係るヒストリカル・データに基づき算出した年限別の加重平均資本コストを使用することとしております。このため、株価や金利動向によっては、加重平均資本コストが高く算出され、測定される減損損失金額が多額となる可能性があります。
(退職給付会計)
当社及び当社の関係会社においては、確定給付型の企業年金制度や退職給付制度が設けられております。在籍している従業員数の少ない一部の連結子会社を除き、これらの制度に係る退職給付債務及び年金資産の算定手続きについては、数理計算上の仮定を置いたうえで実施しております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待運用収益率、退職一時金選択率、死亡率、退職率、予想昇給率が含まれます。当社グループは、設定したこれらの数理計算上の過程について、直近の実績など現在把握可能な各種のデータを勘案して合理的に判断したものと考えておりますが、実績との間に差異(数理計算上の差異)が生じた場合においては、その発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主として10年)による定額法により発生の翌連結会計年度より費用処理することとするため、当社グループの営業費用等に重要な影響を与える場合があります。
割引率の設定に際しては、連結会計年度末における高格付けの国内社債や日本国債の利回りを勘案して決定しております。また、割引率の変更は、「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号 2016年12月16日最終改正)及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第25号 2015年3月25日最終改正)に基づき、前連結会計年度末に用いた割引率により算定した退職給付債務と比較して、当連結会計年度末の割引率により計算した退職給付債務が10%以上変動する場合において行うこととしております。
長期期待運用収益率の設定に際しては、直近の年金資産のアセット・アロケーションや、株式・社債などの各金融商品グループごとの過去における運用利回りの実績を勘案しております。また、長期期待運用収益率の変更は、「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号 2016年12月16日最終改正)及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第25号 2015年3月25日最終改正)に基づき、変更が翌連結会計年度以降の退職給付費用に重要な影響をもたらすと判断した場合において行うこととしております。
なお、当社及び連結子会社4社において、退職一時金制度に係る退職給付債務について、金額については適切に見積もっておりましたが、その計算結果を誤ってデータ入力したことで、過年度より退職給付に係る負債等を過少に計上していたことが2025年4月に判明しており、過去に提出した有価証券報告書における連結財務諸表及び財務諸表等に含まれる一連の誤謬を修正しております。
(繰延税金資産)
当社及び当社の関係会社各社は、個社別に法人税を申告しており、繰延税金資産の回収可能性に関する判断においては、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号 2016年3月28日改正)に基づき、当社及び当社の関係会社各社を収益力により「分類1」から「分類5」に分類しております。会社分類については、連結会計年度末における各社の状況に基づき、毎期見直しております。この分類に際しては、将来の経営環境の変化や一時差異等加減算前課税所得の見積りの上で仮定を置いており、この仮定の設定は、繰延税金資産の回収可能性の判断に重要な影響を与える場合があります。なお、将来に関する事項の見積りにおいては、固定資産の減損に関する判断において用いる事業計画に沿って検討を行うため、見積りと実績が乖離するリスクもおおむね同様と考えられます。
「分類2」から「分類5」に該当する会社については、回収可能性があると見込まれる将来減算一時差異等についてのみ繰延税金資産を計上しております。回収可能性の判断においては、十分な収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得が存在するかを最重要視しており、このほか含み益のある固定資産や有価証券を売却する等のタックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得が存在するかについては、その実行可能性が高いと見込まれるものに限定して考慮しております。また、将来減算一時差異等が解消する時期及び金額についても、解消する可能性が高いものに限定して考慮することとしており、例えば含み損に係る土地再評価差額金の場合においては、売却する契約を締結した事実を認識した場合等に限りスケジューリングに含めております。こうした回収可能性に係る一連の手続きについても、何らかの見積り・前提を設定の上で実施しているため、これらの判断は、繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
税効果会計に適用する税率については、「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第27号 2016年3月14日)に基づき、決算日時点において国会で成立している税法に規定されている税率を使用しております。このため、税率の変更が行われる場合においては、繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当社の繰延税金資産のほとんどは、日本国内に属する会社に係る将来減算一時差異等を源泉とするもので構成されているほか、連結会社間の移転価格に関する不確実性は、ほとんど該当がないものと評価しております。