訂正有価証券報告書-第27期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2015/05/18 15:10
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132項目

研究開発活動

当社グループでは、空間情報コンサルティング事業において、国際航業㈱の技術開発センターと同社の各事業部門が連携して、新技術・新商品に関する研究開発活動を行っております。
その体制は、技術開発センターの各研究室が中心となって基礎研究を行い、応用技術の開発、新製品の開発及び既存商品の機能強化等については、個別の研究開発案件に基づきプロジェクトチームを編成し取り組んでおります。
当連結会計年度に支出した研究開発費は、基礎研究費、応用技術の開発、新製品の開発及び既存商品の機能強化等総額1億8千4百万円となっております。
主な研究開発活動の内容
コンピュータネットワーク社会における空間情報の利活用を大きなテーマとして研究開発活動を進めているほか、環境、防災、社会資本の整備・維持管理などに関わる個別テーマについての研究開発活動も進めております。
(1) 空間情報の利活用に関するもの
① 基礎研究
○地理情報の規格化に関する研究
地理情報の流通促進と利用拡大を目的に、ISO(国際標準化機構)による地理情報標準専門委員会(ISO/TC211)、JIS化推進委員会などに委員として参加し、地理情報規格化及びその応用に関する研究を行っております。研究成果は、事業部門が行う空間情報コンサルティング、新商品開発、さらには社内の技術者教育に役立てられております。また、平成25年度には研究担当者が、国土地理院長による「測量関連事業貢献者」表彰を受賞しました。
○空間情報デザインに関する研究
ユビキタス空間情報社会といわれる今日、ユニバーサルデザイン(健常者,障がい者の区別無く理解できるデザイン)やパーソナリゼイション(ユーザーの個性を尊重するデザイン)の視点が一層重要になっております。本研究では、複雑化する空間情報をよりシンプルに提供する仕組みを主な研究対象としております。また、屋内空間情報サービスの実現に向けて、屋内空間データの作成手法と可視光通信技術やIMES(インドアGPS)、Wi-Fi等を利用した測位技術および空間情報解析の基礎研究を推進しております。
○デジタルセンシング技術に関する研究
空間情報産業に展開する国際航業㈱のコアコンピタンスである、空間データ取得のためのデジタルセンシング技術の高度化に取り組んでおります。衛星、航空機、MMS(車両)、地上設置、船舶等の様々なプラットフォームに搭載されたレーダ、超多波長計測、ステレオ計測、波形記録型レーザスキャナ、音波計測などの各種最新センサによる、最先端の空間デ-タ取得技術の基礎検討と最新機器導入を進めております。とくに、超小型衛星やUAV(小型無人飛行機)など、次世代プラットフォームの技術検討に、積極的に取り組んでおります。
○写真測量技術に関する研究
さまざまなセンサを用いたデジタルセンシングにより取得された空間データから、地形・地物の位置や属性などの空間情報を効率的に抽出する基礎技術の研究開発に取り組んでおります。写真測量技術をベースにした空間情報の抽出に関する研究開発では、とくに、異なる時期に取得された、あるいは異なるプラットフォームで取得された、画像データと点群データを統合的に処理することにより、効率的に高精度な空間情報を抽出する基礎技術の研究開発に重点を置いて技術開発を進めております。
② 応用技術開発
○リモートセンシング技術の開発
デジタルセンシングにより得られる空間データをソリューションサービスで活用するため、リモートセンシングを中核とした応用技術の高度化に取り組んでおります。空間データの高次解析による各応用分野に最適な地理空間情報の抽出、エンドユーザーに届ける付加価値ソリューションに至るまで、トータルかつ実用的な空間情報ハンドリング技術とその成果を活用した応用商品の創出に取り組んでおります。とくに、波形記録型レーザやレーダの利活用技術の開発に重点的に取り組み、複数の特許出願を行っております。また、超小型衛星など、次世代衛星リソースのモニタリング事業での利活用研究も行っております。
○3次元モデリング技術の開発
世界中の建設業界がBIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)を活用し始めています。当社はこれらを有効活用するため、さらには、これらの3次元モデルをグリーン・コミュニティを支えるインフラのコアとするために、精密3次元空間情報の低価格化を目指しております。その実現に向けて、センシングやモニタリング技術を最大限に活用し、高性能で低価格な地理空間情報を構築する生産技術の開発を行っています。具体的には、3次元モデリングツールの独自開発や、高度な画像認識技術を用いた空間情報の自動抽出技術の開発などを行っています。これらの技術を基盤として、BIM/CIMなどの3次元モデルを空間情報で繋げて、スマートシティーの運営や、高度なアセットマネジメントに活用していただきたいと考えております。
(2) 環境に関するもの
① 基礎研究
○環境に関する先端計測技術の研究
平成23年3月の東北地方太平洋沖地震による東京電力福島第一発電所の事故がもたらした放射能汚染への対策業務への対応として、当社は同年秋、京都大学原子炉実験所が開発したGPS連動型放射線自動計測システムKURAMAを導入し、道路を中心に放射線計測を実施しております。また、平成25年9月に行った、原子力発電分野で幅広い技術を有する、環境・エネルギー分野のコンサルティング・エンジニアリング大手のAMEC社 (本社英国)との業務提携により、さらに広範できめ細かな放射線計測にも挑戦し始めております。
② 応用技術開発
○地球温暖化防止のための森林調査技術開発
国連の気候変動枠組条約での対策検討が進み、その一つとして、REDD+など途上国における森林保全の取り組みも進展している中、森林の経年変化や二酸化炭素吸収能力を定量的に評価する技術の確立が、国内外を問わず注目されております。グリ-ン・コミュニティ創出に取り組む国際航業㈱では、そのための有効な手法である、航空機搭載型レーザスキャナやレーダセンサによる樹木成長量や材積の把握、航空機搭載型超多波長センサを用いた樹種分類、国レベルの広域森林情報整備に必要となる大量の衛星データの高速処理技術などについて研究開発を行い、急速に進展するREDD+事業の業績拡大等に大きく寄与しております。また、REDD+に関しては、開発成果や事業への適用例をとりまとめ、この分野で本邦初の書籍「概説REDD+」をアスキー・メディアワークスより出版し、弊社主催で「REDD+と民間セクターの可能性」と題したセミナーを開催し多数のご参加を頂くなど、好評を博しております。
(3) 防災(安全・安心な社会)及び社会資本の整備・維持管理に関するもの
① 基礎研究
○斜面災害に関する解析技術の開発
斜面防災関連技術の基礎研究として、昨年度に引き続き、航空機搭載型等のレーザスキャナ計測による地形モデル構築手法のさらなる高精度化を図り、これまでにない忠実度をもつ細密地形モデルと、3D-GIV(地表面変動解析システム)、ELSAMAP(カラー標高傾斜図)作成システムなどの最先端特許技術の改良を進めております。また、道路・鉄道路線等における斜面災害軽減のため、先端的計測技術を用いた調査および危険度評価方法の確立に向けた検討を進めております。
○地震・津波防災に関する解析技術の開発
航空機搭載型レーザスキャナデータによる地形解析および数値シミュレーション技術などの最先端技術と、地形判読技術などの既存技術の融合によって、洪水ハザードマップ作成や道路・鉄道等の斜面防災、地震・津波・火山防災、環境調査などにおける高度な解析を行うための実用的なシステムの開発を、基礎技術研究の側面から支援しております。また、海洋レーダ観測技術と津波シミュレーション技術の融合による沿岸防災システムの構築に向けた研究を進めております。
② 応用技術開発
○斜面災害に関する応用技術の開発
先端的な地盤変動抽出手法である3D-GIVを、東北・四国地方の砂防事業に適用し、技術的信頼性を実証することができております。また、平成25年10月の伊豆大島豪雨災害に際しては、航空写真撮影・航空機搭載型レーザスキャナの地形計測等による迅速な状況把握に取り組み、関係機関へのリアルタイムな情報提供に寄与しております。
○GPSを用いた新しい防災モニタリング事業の開拓
国際航業㈱の独自のGPSを用いた地盤変位モニタリング事業(shamen-net事業)は、今日オンリーワンの技術として高く評価され、土木工事現場や災害現場の監視システムとして利用されております。しかし衛星測位もGPSのみに頼る時代から、準天頂衛星などのGPS以外の衛星を相互利用する時代(GNSS時代)に移行しようとしている中で、更にshamen-netの技術を発展させ、また普及させるために、shamen-net事業を発展させた新しい防災モニタリング事業の開拓に取り組んでおります。
○アセットマネジメントのための技術開発
社会資本施設の老朽化が進み構造物維持管理への要請が益々高まる中、特色ある診断・管理技術の開発・高度化の研究に取り組んでおります。具体的には、MMS(Mobile Measurement System)に搭載されたレーザ・画像センサによる道路・河川構造物の点検技術や、非破壊検査技術として赤外線画像法によるコンクリート構造物・路面などの剥離診断に取り組み、アセットマネジメント事業の開拓と拡大に活用しております。また、これらの技術の適用分野拡大への試験研究や手法改良、新たな計測技術や情報管理の仕組み等の開拓に取り組んでおります。
(4) 環境エネルギーに関するもの(応用技術開発)
○再生可能エネルギーの導入に関わる空間情報解析技術の開発
固定価格買取制度が開始されたことに伴い、再生可能エネルギーの大幅な導入拡大が見込まれる中、導入支援、大量導入時の電力需給の安定化、さらには施設の維持管理に関する情報提供が求められております。その中で、当社は、航空写真やレーザ点群データから自動的に抽出した建物等、各種の3次元地理空間情報と気象情報から太陽光発電量を推定しGIS上に展開する技術の開発を実施してきております。その技術を活用し、平成26年3月、公益財団法人東京都環境公社に対して、全国初の試みとなる、住民が自宅の屋根の太陽光発電への適合度を確認できる「東京ソーラー屋根台帳」を納入しております。
(5) その他
空間情報コンサルティング事業全般に関わる技術の向上や交流を主な目的として、①技術シンポジウムの開催、②国の関連研究機関などへの研修派遣、③学識経験者などを講師とする専門分野の研究会活動や海外でのワークショップなどを、国際航業㈱の技術開発センターが中心となって継続的に実施しております。