有価証券報告書-第19期(平成29年12月1日-平成30年11月30日)

【提出】
2019/02/28 9:55
【資料】
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【項目】
100項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「アウトソーシングの力で企業変革を支援し、社会課題を解決する」を経営理念として掲げ、事業活動を通じて、様々な社会課題やそれらに付随する企業課題を解決することを目標としております。ソーシャルビジネスの推進を通じて新たな社会的価値を創造していくとともに、世の中にとって必要不可欠な企業グループとなることを目指してまいります。
(2)経営戦略等
当社グループは、「強い特徴を持ち、常に新たな価値を提供し成長し続けるNo.1アウトソーシング・プロバイダーとなる」ことを中期的なビジョンとし、ソーシャルビジネスを通じて、新たな社会価値を提供することを目標としております。また、経営面では、異なる事業領域に複数の収益事業を持つ事業ポートフォリオ戦略を推進し、外部環境の変化に強い企業グループとなることで、持続的な成長の実現を目指しております。
① 安定収益の確保
中長期的な成長基盤の構築を実現するために、高い成長が期待できる市場への集中展開を図るとともに、付加価値の高いサービスの提供を通じて、お客様との強固な関係の確立を目指していきます。特に、アウトソーシングサービスにおいては、安定収益が期待できるストック型のシェアリングサービスの拡大を図ってまいります。同サービスは、複数の顧客企業が当社のサービスを共同利用する形となっており、継続取引が前提となっているだけでなく、特定の顧客に依存することのない点において、高い安定性が期待できます。
② 新たな収益機会の獲得
主力事業においても発展的に事業構造の変革を進めてまいります。アウトソーシングサービスについては、独自性の高いストック型サービスの開発、人材派遣サービスにおいては、自動化への代替が難しい高スキルの領域や、保育や介護、看護など、人手を必要とする領域の開拓を進めてまいります。また、新規事業開発への投資や、M&Aによる新たな事業領域の創出にも取り組んでまいります。M&Aについては、事業シナジーが高く、当社グループの持つノウハウを活用することで、より一層の成長もしくは事業再生が可能な事業を対象としていきます。
③ ITの積極活用による生産性向上
ITの積極活用によって生産性の向上に取り組み、仕事の進め方・業務のあり方の見直しだけでなくAI(機械学習)やRPA(ロボットによる業務自動化)等、最新技術の導入についても積極的に進めてまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、売上高営業利益率を、重要な経営指標と位置付けており、売上高営業利益率10%の達成を中期的な目標としております。
(4)経営環境
当社グループは、主にアウトソーシングサービスを提供するビジネスソリューション事業と、人材派遣サービスを提供する人材ソリューション事業の2つの事業セグメントにより構成されていますが、それぞれに所属するサービスの事業領域が異なるため、主力3サービスの経営環境について記載いたします。
① 人材派遣サービス(人材ソリューション事業)
人材派遣市場は、2008年のリーマンショック以降、縮小が続いていましたが、2013年以降回復傾向にあり、サービス業など一部の職種においては、リーマンショック前と同水準、あるいはピーク時を上回る状況となっています。有効求人倍率についても、2018年9月には1.64倍まで上昇し、1974年1月以来の高水準を記録するなど、人材の不足感が足元ではより一段と強まっており、人材派遣需要も非常に高い水準にあります。また、政府が推進する「働き方改革」では、長時間労働の是正が喫緊の課題となっており、企業は1人当たりの最大労働時間を減らす一方で労働力確保のために人材サービスを活用する動きが高まっております。
② 障がい者雇用支援サービス(ビジネスソリューション事業)
障害者雇用促進法で定められた、企業の障がい者の雇用率(法定雇用率)は、2018年4月に2.0%から2.2%となり、2020年4月にはさらに2.3%への引き上げが決定しています。法定雇用率の引き上げ決定に伴い大手企業を中心に障がい者の採用は活発化していますが、採用が集中する身体障がい者の新規雇用は非常に難しくなっております。そのような中、当社グループが提供する障がい者雇用支援サービスは、知的障がい者及び精神障がい者の雇用創出を得意としており、企業からの引き合いが非常に強まっております。
③ ロジスティクスアウトソーシングサービス(ビジネスソリューション事業)
国内ECの市場は、ネット通販の普及に伴い高い成長を持続しており、経済産業省の発表によると、2016年度においては15兆円を超え、2020年度には20兆円台まで拡大する見通しとなっております。また、宅配便料金の値上げや人件費の高騰など物流コストは上昇傾向にあることから、物流業務のアウトソーシングを検討する企業が増加しており、当社グループが提供する通販商品の発送代行サービスについても需要が非常に高まっています。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループでは、前述の経営目標を達成し、持続的な成長を実現するために、中期的に以下の重点課題に取り組んでおります。
① 安定的な収益基盤の強化
当社グループでは、持続的な成長を実現するためには安定的な収益基盤の強化が必要であると考えております。主力事業については、既存の事業領域において継続的に収益を確保しつつ派生事業の開発にも取り組み収益構造の多様化を進めてまいります。また、長期的視点での成長基盤の確立に向けて新規事業分野の創出にも取り組んでまいります。新規事業については、安定収益が期待できるストック型のシェアリングサービスの開発・拡大を図ってまいります。
② 収益源の多角化
当事業年度の当社連結売上に占める株式会社エスプールヒューマンソリューションズ(主に人材派遣サービス)の売上高の割合は、70.2%となります。また、株式会社エスプールヒューマンソリューションズと株式会社エスプールプラス(障がい者雇用支援サービス)のセグメント営業利益合計が報告セグメントの営業利益合計に占める割合が非常に高くなっております。主力2事業については今後も成長が見込まれるものの、依存度が極端に高くなることは、経営の健全性の観点からも課題であると認識しております。ロジスティクスアウトソーシングサービスや、採用支援サービスを始めとする新規事業を拡大することで、ポートフォリオ経営の推進と更なる経営の健全化を図ってまいります。
③ ダイバーシティの推進
当社グループは、女性を始めとする多様な人材が長期的に活躍することで企業の競争力を高め、持続可能な競争力を持つ企業体になることを目指しております。誰もが活躍できる環境を整備することで組織力の向上を図り競争力を高めていくために、IT投資等による生産性向上に取組むと共に、多様な働き方を支える環境の整備を進めてまいります。
④ 優秀な人材の確保及び育成
「社員の成長が会社の成長につながる」という方針のもと、当社グループのビジョンと共鳴する優秀な人材を適時採用するとともに、持続的な成長を支える人材を育成するための研修活動を強化してまいります。また、真のアウトソーシング・プロバイダーとして、新しい顧客価値を創造できる次世代を担うリーダーの育成にも注力してまいります。
当連結会計年度においては、主力2事業が好調を持続し、障がい者雇用支援サービスにおいては、ストック収入が増加して人材派遣サービスの収益力に並ぶ水準にまで成長する等、安定益な収益基盤の強化については大きく進捗しております。また、ダイバーシティの推進については、専門部署を設置して社内業務のIT化を進める等、多様な働き方と生産性向上の実現について一定の成果が見られました。
一方で収益源の多角化については、ロジスティクスアウトソーシングと採用支援サービスを注力事業に据え拡大に取り組むものの、運営面に課題が残り収益化は次期以降に持ち越しとなりました。翌連結会計年度においては、これら2サービスの収益化を早急に目指すとともに、残りの3つの重点課題についても、より高い次元での実現を目標に引き続き努力してまいります。