有価証券報告書-第35期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 13:46
【資料】
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【項目】
125項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは「産業技術翻訳を通して、国内・外資企業の国際活動をサポートし、国際的な経済・文化交流に貢献する企業を目指す」ことを企業理念に掲げ、高い顧客満足度の得られるランゲージサービスを提供することにより、顧客の企業価値・競争力向上に貢献してまいります。また、すべてのステークホルダーの皆様の満足度を高め、透明性の高い経営を推進し、企業価値を向上させてまいります。
(2)経営環境
当社グループは専門特化型の翻訳サービスを提供する翻訳事業を中核に、翻訳者や通訳者などの人材を顧客企業に派遣する派遣事業、大規模国際会議や企業内会議における通訳の請負業務を行う通訳事業、国際会議・国内会議(学会・研究会)やセミナー・シンポジウム、各種展示会の誘致・企画・運営を行うコンベンション事業、通訳者・翻訳者を養成する語学教育事業を展開しております。
また、当社グループは、各事業が有する高い専門性や技術・ノウハウに加え、専門特化サービスの集合体としての強みを活かした付加価値の高いランゲージサービスを提供することで、顧客企業のグローバルコミュニケーション構築を包括的に支援しております。
翻訳業界では企業のグローバル展開を背景に市場は堅調に推移しております。近年ではAI技術の向上で機械翻訳の実用化が進んでおり人手翻訳の需要減少が懸念されておりますが、一方では 機械翻訳を活用した新しい商品・サービスの開発も進んでおり、市場環境は大きな変革期を迎えております。派遣業界では企業の人材不足を背景に需要は堅調に推移しておりますが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うテレワークの普及を背景とした顧客企業の需要の変化には引き続き注視が必要です。コンベンション、通訳業界では政府によるMICE(注1)の誘致活動の活発化に起因する国際会議や通訳機会の増加を背景に需要は堅調に推移しておりました。しかし、同感染症の世界的流行によって国際会議(学会・研究会)やセミナー・シンポジウム、各種展示会やイベントには人数制限などの開催条件が課され、ビジネスでの人の往来も入国制限により停止している状況にあり、厳しい環境が続いております。
新型コロナウイルス感染症については、ワクチン接種開始による抑え込みの動きがみられる一方、変異株の拡大懸念もあり、明確な収束の見通しが立たない状況にあります。そのため、当社グループが展開する事業のなかでも特に通訳事業とコンベンション事業については、落ち込んだ需要の回復時期を見定めることは困難であり、厳しい環境が続くと想定しております。しかし、同感染症の影響が抑え込まれれば、グローバルコミュニケーションの機会増加や企業の情報発信手段の多様化などによるランゲージサービスの需要が回復する可能性は十分にあると考えております。
当社グループはいかなる環境においても、その局面に応じた顧客ニーズに迅速かつ柔軟に対応し、グループの持続的な成長を目指してまいります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが外部環境の変化や需要を的確に捉え、持続的な成長を続けるためには中核事業である翻訳事業を中心に、人材の育成に加えICT(注2)を活用したサービスの展開が不可欠だと認識しております。
①翻訳事業の継続的成長
当社は設立以来、専門分野に特化した人手による翻訳サービスで成長してまいりましたが、積み重ねた人手翻訳での技術・ノウハウに機械翻訳や翻訳支援ツールなどの最新テクノロジーを組み合わせ、多様化・高度化する顧客ニーズに対応すべく、課題解決型の高付加価値企業となることを目指しております。これらの考えのもと、翻訳事業を中心に成長戦略を推進してまいります。
中期経営計画の重点施策である「ソリューション提案力の強化」、「言語資産の活用」においては、各種業界ごとに求められる専門性を確保しながら、翻訳支援ツールや機械翻訳を積極的に活用し、品質の安定と生産効率の向上に引き続き取り組んでまいります。また、機械翻訳の普及に伴う市場変化やコロナ禍による顧客ニーズの変化を的確に捉えた新しいサービスを開発・提供できる体制づくりを推し進め、顧客との長期的、安定的な関係の構築を目指してまいります。
さらに当社グループ自身が課題解決ビジネスの担い手となって、顧客企業における機械翻訳や翻訳支援ツールの導入、導入後の継続的なAIの追加学習、翻訳業務フローの再構築といった翻訳業務の効率化の提案を引き続き推進してまいります。効率化サイクルの実現により、追加学習時の教師データとなる人手翻訳の受注増加を図り、顧客内シェアの拡大を目指してまいります。
重点施策の「経営基盤の整備」においては、ICTを活用しながら社内業務の効率化に取り組んでまいります。また、ツール・ソフトウェアを効果的に活用するため、人材の育成と組織機構の最適化を図ってまいります。
②通訳事業およびコンベンション事業の立て直し
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の収束後に予想される顧客・市場・社会の変化に対応し、新たな提供価値を創出することを重要な課題と認識しております。同感染症拡大の影響で国際的な人の往来に対する制限継続により、当社グループが展開する通訳事業およびコンベンション事業では従来型の対面でのサービス提供が困難な状況が続いております。当社グループではオンライン通訳やオンライン会議運営支援などインターネットを活用したサービス提供の基盤構築や学会事務局業務の受託など、コロナ禍で落ち込んだ収益力の回復に取り組み、外部環境の変化に対応した事業戦略を推進してまいります。
(4)目標とする経営指標
当社グループでは、お客様にご満足いただけるサービスの提供及び収益の安定化に向けて、売上高、営業利益、当期純利益の業績目標と営業利益率、自己資本利益率(ROE)の経営指標を定め、それらの向上に取り組んでおります。
当社グループの事業が幅広い業種・業界を対象としており、新型コロナウイルス感染症の影響が今もなお継続していること、また、収束時期の見通しの判断が困難な状況にあることから、顧客動向を見極めることが困難であり、先行きの見通しが立ちにくい状況にあります。なお、次期業績目標におきましては、同感染症の影響が相当期間続くことを前提に算定しております。
(注)1.企業等が行う会議・セミナー(Meeting)や報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際会議・学術会
議(Convention)、展示会・イベント(Exhibition/Event)の頭文字をとった造語でビジネスイベント
等の総称を指します。
2.Information and Communication Technologyの略称で、情報処理および情報通信、つまりコンピュータ
やネットワークに関連する諸分野における技術・産業・設備・サービス等の総称を指します。