有価証券報告書-第29期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/25 15:53
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事業等のリスク

当社グループの事業等に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりであります。なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、本書提出日(平成26年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。
① 法的規制等について
当社グループの主力事業であるIS事業は、取引先構内での製造請負事業と製造派遣事業にて構成されております。製造請負事業につきましては、管轄省庁の許認可を必要としておらず、労働省告示第37号にて示される労働者派遣との区分に則り、事業を推進しております。一方、製造派遣事業は、労働者派遣法に準拠して厚生労働大臣への届出を必要とする事業となっております。「製造派遣の原則禁止」を盛り込んだ労働者派遣法改正法案は、結果的に当該条文が削除されて平成24年4月に公布されました。当初より製造派遣が常用型派遣にのみ認められると予想されていた当該法案がその必要性を求めなくなったことで、多くの同業者の努力義務のハードルが低くなりました。当社グループの場合、これまでも常用型雇用を基本としてまいりましたので、当該法案の決着にはいずれにしてもあまり影響を受けることはございません。
元来、当社グループでは、IS事業の推進にあたっては請負化を事業方針としており、担当業務の特質、取引先の意向等を勘案し、取引先と十分に協議を行った上で各地方労働局より発布されている「適正請負にかかる自主点検ガイドライン」に準拠した入念なチェックを実施する等、遵法に対応しております。
しかしながら、労働局等所轄官庁が当社取引先及び当社グループの運用実態に対して基準を満たしていないと結論付けた場合には、取引先及び当社グループに対する是正勧告、業務改善命令、事業停止命令等の行政指導が発せられる恐れがあります。そうした指導を受けた場合、当社グループの経営、業績にも重大な影響が及ぶ可能性があります。また、現行法令の改正やその運用方法の見直し等により、請負会社に対する規制強化が図られた場合には、取引先及び業務請負会社である当社グループに対して、より高度なコンプライアンス体制が求められる可能性があります。
② 取引先企業の生産変動について
当社グループの主力事業であるIS事業における製造派遣、製造請負、CS事業及びEMS事業における製造受託においては、当社取引先メーカーの生産状況に合わせてソリューションサービスを提供しております。当社グループは、メーカーの意向に従って増産、減産といった生産変動に対応することでメーカー側のコスト構造をより変動費化する役割を担っております。現在、当社グループの最も取引量の多い取引先業種は、エレクトロニクス分野のメーカーでありますが、当該業界の企業は、国内に留まらず全世界に製品を出荷しており、出荷先の景気動向が生産数量に大きな影響を及ぼす状況となっております。また近年のデジタル化技術の進展に伴い、製品ライフサイクルの短縮化とコストダウンスピードの迅速化が求められており、生産変動は頻繁に生じております。さらに取引先メーカーは、労働者派遣法改正、為替変動、コストダウン要請等の課題も抱えており、グローバルな視点での生産拠点最適化を模索しており、生産拠点自体の統廃合も戦略的、機動的に行なわれております。
こうした取引先の生産動向の変化や生産拠点戦略の変更等は、今後も規模の大小を問わず常に生じるものと考えられます。取引先企業の大規模且つ急激な生産変動が生じた場合には、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
③ 現場社員の育成・確保について
平成26年3月31日現在、当社グループにおいては6,200人を超える現場社員を雇用しておりますが、取引先からのニーズ、給与水準他を総合勘案した結果、その大半を20代前半から30代前半にかけての若年層にて構成しております。しかしながら、我が国の若年人口は、出生率の低下もしくは少子化によって昭和60年代から減少しており、今後、この傾向は長期にわたって続くことが厚生労働省人口問題研究所などによって予測されております。また、若年ゆえの職業意識の欠如、技能スキル・経験の不足等、生産性向上の障害となる事象も散見され、絶え間ない指導・育成体制の構築が求められております。こうした若年人口の減少傾向下での若年現場社員確保策として、当社グループは携帯電話を活用した応募サイトを活用する等の新しい採用ルートを開発し、人材確保の改善を図っております。また、若年現場社員の職業意識の向上と技能スキル向上等につながる人事制度(評価制度、給与制度、表彰制度、教育制度、他)を構築し、社員育成を図っていくことを計画しております。
特に当社グループが標榜する請負化推進は、労働者派遣法の改正に対しても有効な処方箋でありますが、有能なモノづくり人材を確保することが大前提となるため、一定水準の現場社員の育成、確保が一層求められていくものと考えます。
以上を踏まえ、当社グループは請負化を推進し、モノづくりにより深く関与していく過程で現場社員の確保・育成のための施策を的確に展開してまいります。しかしながら、当該施策が目論見どおり機能せず、当社グループの求める人材の確保や育成が計画通りに進まない場合においては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 労働災害等のリスクについて
当社グループの推進するIS事業、CS事業、EMS事業は、取引先メーカーの工場構内、自社テック、自社工場等において、製造請負、製造派遣、製造受託を行なっております。製造受託は勿論、取引先メーカーの工場構内で行なう製造請負においては、取引先メーカーとの業務請負契約によって生産量や生産期限、品質あるいは取引先企業の備品を使用するにあたっての備品管理といった領域まで責任を負っております。一方、製造派遣は法律上、人材を取引先メーカーに派遣し、派遣した人員の指揮命令等の労務管理が派遣先に委ねられる形態となっております。
製造受託、製造請負の取引形態と製造派遣の取引形態では、業務を遂行する現場社員が労働災害に見舞われた場合において責任主体が異なり、製造派遣においては取引先メーカーがその損害についての責任を負うのに対し、製造受託、製造請負は当社グループが責任を負うこととなります。
当社グループは、こうした労働災害の責任を問われることが多くとも、モノづくりを主体的に行なうことのできる製造請負を積極的に展開しております。労働災害に関しましては、基本的に労働保険の適用範囲内で解決されるものと考えておりますが、当社グループの瑕疵が原因で発生した労働災害において、被災害者が労働保険の適用を超えて補償を要求する等、訴訟問題に発展した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ MBOファンドが筆頭株主であることについて
当社グループは、ベンチャーキャピタルである株式会社ジャフコが運営する「ジャフコ・バイアウト2号投資事業有限責任組合」及び「JAFCO Buyout No.2 Investment Limited Partnership(Cayman)L.P.」の2つのMBOファンドから出資を受け、平成16年10月にMBOを実施いたしました。その後、当社グループがジャスダック証券取引所(現東京証券取引所 JASDAQ(スタンダード))への上場を果たしたこともあり、平成26年3月31日現在の当該2ファンドによる合計株式保有比率は合計37.3%に低下することとなりましたが、依然として筆頭株主の地位にあります。
当該2ファンドは、純投資を目的とする投資ファンドであることから、今後もキャピタルゲインの極大化を使命として売却時期を模索してくることになります。当該2ファンドの解散期限は、平成26年12月31日であり、当該時期が近づけば一層売却インセンティブが高まり、現行の経営体制の存続是非を問うことなくキャピタルゲインだけを追求する場面が到来することも想定されます。
このように現在の当社筆頭株主である当該2ファンドの特性を踏まえた時、株主構成が劇的に変化することも予想され、結果として、現行の経営体制が変更されることも想定されます。その場合、当社グループのビジネスモデル、経営体制をはじめ当社企業価値等に大きな変化が生じる可能性があります。
⑥ 取引先メーカー及び応募者等の情報管理について
当社グループは、当社グループが展開する事業の特性上、取引先メーカーの生産計画や新製品の開発にかかわる機密性の高い情報に接することがあります。また、6,200人を超える現場社員を維持、増加させる過程で生じる応募者及び退職者を含めた社員の個人情報を知りうる立場にあります。従いまして、これらの情報管理はきわめて重要であると認識しております。
取引先メーカーから得る企業情報に関しては、当社社員に対して入社時における秘密保持の誓約書を提出させ、その上で当社グループと取引先メーカーとの間で業務委託契約を締結し、機密情報の管理の徹底を図っております。
また、社員の入退社の際に得る個人情報に関しては、入社前の採用活動段階よりその取り扱いには十分に留意しており、採用候補者に対しては採用試験の合否結果判明後の履歴書等の保管または廃棄にかかる対応方法について本人の意思確認をする等、個人毎の情報管理の徹底を図っております。
このように当社グループでは、秘匿性の高い企業情報、個人情報の情報管理に万全を期していると考えておりますが、何らかの要因で当社グループから取引先メーカーの企業情報や個人情報が漏洩した場合には、当社グループの信用が失墜し、業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 為替レートの変動
当社グループは、当社の子会社である中国法人、株式会社志摩電子工業の子会社である香港法人、マレーシア法人及び株式会社テーケィアールの子会社である香港法人、中国法人、マレーシア法人がいずれも海外連結子会社となることから、各法人の現地通貨建て財務諸表については、収益、費用、資産、負債、資本に関して米国ドル、香港ドル、中国人民元、マレーシアリンギット等を円換算して連結財務諸表を作成することとなります。当社グループにおける海外通貨取引は、仕入、製造、販売といった一連の製造プロセス全般に関わるものであり、取引の量、時期等が為替レートの変動によって日本円換算の財務諸表に直接変動を与えることとなります。
当社グループでは、こうした為替レートの変動に対して、グループ内外国通貨の融通を行なう、取引先との間で同一通貨での仕入、販売を実施することを前提とする、為替予約を実施する等、為替変動のリスクを最小限となるようヘッジ手段を実行する予定としておりますが、急激な為替変動が生じた時には、当社グループの業績に影響を与える場合があります。
⑧ カントリーリスク
当社グループは、当社の子会社である中国法人、株式会社志摩電子工業の子会社である香港法人、マレーシア法人及び株式会社テーケィアールの子会社である香港法人、中国法人、マレーシア法人が海外現地法人であること、また株式会社志摩電子工業の香港法人と来料加工スキームにて繋がる中国委託工場を有すること等から海外各国の独自のビジネス環境を前提として事業展開を進めております。
当社グループが進める海外事業は、主としてEMS事業であり、SMTラインを始めとする各種設備を設置し、ラインオペレーター等のローカルスタッフを雇用し、部材の仕入、実装、組立、出荷といった一連の製造プロセス全てを有するものであります。よって、各国の政治、経済の諸条件変更、各種法制度の見直し等、ビジネス環境に大きな変動が生じるおそれがあります。
当社グループは、こうした事業遂行上の環境変化に対して各国の行政窓口、取引先、各種専門家等から常に最先端の情報収集を行なっておりますが、政治、経済の予期せぬ変化はもとより、予想を超える天災害、労働争議、デモ、紛争、疫病他に起因する事業環境に大幅な変化をもたらすような事態が生じた時には、当社グループの業績に影響を与える場合があります。
⑨ 大規模な自然災害
当社グループは、「neo EMS」の事業戦略コンセプトに則り、IS事業、CS事業、GE事業、EMS事業を日本国内はもとより海外においてもアジア中心に拠点展開をしております。製造派遣、製造請負、技術者派遣という製造アウトソーシングビジネス(IS事業、GE事業)は、クライアントメーカー各社の工場、研究所、設計開発センター等への現場社員の提供を前提としており、CS事業の進める製造受託に関しては、自社テックでの受託を前提としております。また、EMS事業にて行なう基板実装、組立業務に関しては、自社工場にて生産受託を行なっております。
このように当社グループの事業は、生産機能を有する拠点での現場社員の就業を前提としたビジネスモデルであることから、当該拠点機能の損壊、または当該拠点にて就業する現場社員の生活基盤となる住居の損壊等をもたらすような大規模な自然災害が生じた場合において、生産稼動停止、就業維持困難といった状況に至る可能性を有しております。
当社グループの展開する拠点は、日本国内においては東北地方、関東地方、中部地方、関西地方、中国地方、九州地方と日本各地に点在しており、また海外においても中国華南地区、ベトナム、マレーシアと複数国にまたがっております。しかしながら、一地域(一国)全てにわたるような大規模且つ激甚な自然災害が発生した場合、クライアントメーカーの生産機能が著しく低下することが予想され、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ M&A等、アライアンス戦略展開にかかるリスク
当社グループは、今後もM&A、アライアンスも含めた事業拡大戦略を展開してまいります。こうした状況下、平成22年7月の志摩グループ(株式会社志摩電子工業及び同社の子会社である香港法人、マレーシア法人、香港法人の製造委託先である中国委託工場)の買収、平成23年7月のTKRグループ(株式会社テーケィアール及び同社の子会社である国内法人3社、マレーシア法人2社、香港法人2社、中国法人)との経営統合によって、当社単独で進めてきた人材ビジネスを中心とした業容とは様変わりしており、設備投資型のEMS事業を展開する両社グループを当社グループに収めたことによって、連結財務諸表においても連結貸借対照表、連結損益計算書ともに大幅に数値規模が拡大しております。
当社グループは、「neo EMS」の事業戦略コンセプトの下で人材ビジネスの持つ機動的な人材供給力と設計開発、基板実装、製品組立といったモノづくり力の融合を図ることを標榜しており、4つの事業セグメントの事業シナジーを極限まで追求しております。また、設備投資型事業を展開する志摩グループ、TKRグループの経営についても当社本体から取締役を派遣し、両者グループの重要意思決定にも深く関与し、当社グループとして整合性を保持しながら経営を進めてまいります。しかしながら、志摩グループ、TKRグループの不測の業績動向や当社との想定事業シナジーが当初の目論見どおりにマネジメントできないことも完全には否定できず、その場合においては、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 請負化推進にかかる請負事業者責任
当社グループの主力事業であるIS事業は、過去から一貫してモノづくり分野に深く関わり、人材派遣ビジネスと比して付加価値の高いサービスである製造請負を標榜してまいりました。特に過去数年間において当該請負事業を推進するにあたっての障害となった偽装請負報道、2009年問題、派遣社員切り報道、労働者派遣法改正法案等が取り沙汰された局面においてさえも、当社グループはクライアントメーカー各社に対するソリューションとして請負化を常に提案し続けてまいりました。こうした請負化推進活動においては、専門組織を設置し、例外的な事業所(契約間もない取引先、少人数職場等、請負化が現実的に難しい事業所)を除くほぼ全ての事業所にて請負化を達成することを請負化方針としております。この結果、業界団体からは当社グループの請負事業所を「製造請負優良適正事業者」として認定される等、一定の評価を受けてまいりました。
当社グループの請負化は、前述の請負化プロセスの中で生産特性を詳細に分析し、各種重要指標をチャート化し、きめ細かくスケジュールを立案しながら、法的要請事項も満たしながら実現してまいります。請負化によって、生産性の向上が自らの付加価値につながる等、生産活動の改善も引き続き実施いたします。しかしながら、人材派遣に比して享受できる利益が大きい分、リスクも相応に生じることとなり、特に製造請負事業の遂行にあたり、顧客企業の設備の破損、不良品の発生等が生じた場合には、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 常用雇用維持にかかる業績への影響
当社グループは、「neo EMS」の事業戦略コンセプトの下で開発、設計から修理、CS(カスタマーサービス)に至る全ての製造プロセスにおいてワンストップに製造アウトソーシングサービスを提供することを標榜しており、特にメーカー各社の様々なニーズを捉え、必要な人材を機動的に供給する人材サプライチェーンマネジメントを確立しております。そして、単なる人材ビジネスでは成しえない高付加価値な人材を養成すべく、製造にかかわる人材の多能工化、専門化を目指し、その教育施設として自社工場(テック、EMS工場)を活用しております。また、この「neo EMS」における人材の高付加価値化には作業習熟、専門教育、高度業務の経験等が必要不可欠となるため、当社は常用雇用(期間の定めのない無期雇用)を大前提としております。これにより、当社グループ社員は、企業ロイヤルティーが高く、長期スパンで技能を蓄積し、多分野業務への対応力を有することになります。
当社グループは、「neo EMS」の下で機動的に人材を動かす(常に稼動させる)ことを第一とし、稼動できない期間は自社工場にて教育研修を受けるという仕組みで高付加価値人材を確保する戦略を展開しており、これが請負化推進の基本戦略にも繋がっております。しかしながら、常用雇用を維持することは、過去に生じたリーマンショック級の経済活動の縮退局面が生じた場合において、自社工場自体が雇用維持を前提とした弾力的雇用調整機能を発揮できないケースも想定され、結果的に当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。