有価証券報告書-第29期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/25 15:53
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【項目】
125項目

対処すべき課題

当社グループは、事業コンセプトとして標榜する「neo EMS」をより高度に発展させていくことが事業成長と企業価値の向上に繋がると認識しております。そして、そのためには国内、海外のいずれにおいてもこれまで以上に事業間連携を高め、確実に事業規模を拡大していくことが必要であると考えておりますので、先ずは規模拡大につながる事業課題を的確に解決していくことに当面のプライオリティーを置くことといたします。よって、会社の対処すべき課題としては「IS事業の海外展開とEMS事業とのシナジー」、「EMS事業の再構築と高付加価値化」の2点を掲げ、その実現を目指してまいります。
①IS事業の海外展開とEMS事業とのシナジー
当社グループは、主力のIS事業の国内マーケットでの事業成長に対して、メーカー各社が進めるグローバルな中長期生産拠点戦略を展望し、十分なる対策を立案していかねばならないと認識しております。そして、その対策の前提として、国内メーカーが進める生産拠点の海外シフトが、当社の提供する製造派遣、製造請負サービスのマーケット自体も縮退傾向を前提としなければならない点、一方で海外にシフトした生産拠点において日本においても進んだ労働コストの変動費化が進むことから、製造派遣、製造請負といった日本で普及したビジネスモデルが普及することが想定される点、以上2点を十分に考慮する必要があると考えております。
日本国内では、一昨年、労働者派遣法の改正がなされ、当初想定されていた「製造派遣の原則禁止」については回避される結果となりましたが、国内メーカー各社は、東日本大震災等、大規模自然災害の被害を受け、その後6重苦と言われる厳しい国内経営環境の下でサプライチェーンも含めた国内生産体制のあり方、海外生産移転機能の選別等、環境対応に追われております。足下の為替動向は、円安方向に是正されておりますが、生産拠点の海外シフトの動きを止めるまでの環境変化には至っておりません。こうした状況下、当社グループは、自らが標榜する「neo EMS」の事業コンセプトに賛同する同業他社のアライアンス戦略も進め、縮退傾向にある国内マーケットにおいて合従連衡を図っていくことも検討してまいります。
こうした環境下、当社グループでは、日本のメーカー各社が生産拠点移行予定地域である中国、東南アジアにおいても日本国内と同質のサービスが提供できるよう準備を進めております。中国においては、外資企業として初めて中国国内での労務派遣(製造派遣、技術者派遣を始めとする全ての人材派遣)の許認可取得に至った中基衆合を核として、中期的には日本メーカーをターゲットとして無錫、深圳、上海といった日系メーカー出展地にて一層の事業拡充を目指してまいります。また、ベトナムにおいては、ベトナム国初の製造請負の許認可を有するnmsベトナムを中心に製造請負事業を積極的に拡大してまいります。こうした日本メーカーに対するモノづくり力を前提とした対応こそがメーカー各社からの信頼を得て、メーカーの戦略的パートナーとなりうる道であると当社グループは考えており、これまで以上に高品質なマニュファクチャリングサービスを提供していくことで事業規模の拡大を図っていく所存です。
さらには、IS事業の国内、海外の事業戦略に付加価値をより高める展開としてEMS事業とのコラボレーションを考えております。中国であれば、中基衆合とTKRグループの東莞EMS工場及び志摩グループの深圳来料加工工場との連携が「neo EMS」の成否を占う重要な戦略と位置づけております。中基衆合の深圳分公司にて広東省中心に製造派遣事業を積極展開する一方、その人材の教育機能を東莞EMS工場、深圳来料加工工場に担当させ、加えて派遣先の生産変動に対してそのバッファリング機能も両工場に持たせることで中国内での「neo EMS」の実現を目指します。なお、当該事業戦略の他の海外地域での展開については、中国での成功事例をもとに水平展開してまいりたいと考えております。
②EMS事業の再構築と高付加価値化
当社グループは、製造分野における広範且つ付加価値の高いアウトソーシングサービスを提供することを目指し、IS事業を単なる製造派遣事業から請負力に優位性を有する事業体にレベルアップさせ、自社工場にて受託型のアウトソーシングを提供できるCS事業を開始し、さらに志摩グループ、TKRグループとEMS企業をグループに迎え入れることにより、その地歩を固めてまいりました。これは、日本のメーカー各社の製造アウトソーシングに対するニーズの多様化と高度化がその背景にあることは言うまでもありません。製造派遣事業が発展してきた過去においては、製造現場をメーカー側でマネジメントすることが大前提でありましたが、現在は、生産ラインを製造請負業者に委託したり、製造工程の一部を外部委託したりと多様で且つ難易度の高い製造アウトソーシングサービスを求められるようになってまいりました。これに際し、当社グループも事業コンセプトとして「neo EMS」を標榜し、人材ビジネスとEMSビジネスの融合による高度な製造アウトソーシングサービスを提供できる体制を国内、海外にて構築し始めております。
こうした戦略の推進にあたり、現在、EMS事業自体にも再構築が求められ、これまで以上の高付加価値化を迫られる状況となっております。国内におけるEMS事業は、現在の国内製造アウトソーシングの置かれている環境において、日本メーカーの進める国内生産拠点の海外シフトが大きな影響を及ぼしております。即ち、海外生産が進むことにより、国内に多品種少量生産の受け皿ニーズが生じる一方で大量生産製品は、海外生産拠点との製造コスト勝負を強いられる状況にあります。為替相場が1ドル100円程度の円安水準に是正された現在においても、国内生産量の減少傾向に歯止めがかかる状況でない中では、当社グループの国内EMS事業についても競争力を維持できる適正規模を求め、且つ存続条件となる多品種少量生産への対応力を高めていくことが必要であると認識しております。それゆえに、国内に複数箇所にわたり拠点展開しているEMS事業の統廃合を進める必要性を認識しており、先ずは昨年10月に大手総合電機メーカーより譲り受けた水沢工場の生産性を高めるべく、当社グループの東北地区の生産拠点の統合を検討してまいります。
一方、海外での当社グループのEMS事業は、現在の主たる展開地域を中国、マレーシアとしており、日系メーカーのアジア圏での製造が中国及びASEANを主軸とする状況には適応しております。しかしながら、一昨年の中国内での尖閣諸島問題を巡るデモ活動が日系メーカーに「チャイナ+1」の視点でアジア拠点戦略の見直しを促すこととなったことを受け、当社グループにおいても中長期スタンスに立脚した中国生産拠点体制の再構築が求められております。当社グループの中国における事業戦略は、前述のとおり中基衆合の進める労務派遣サービスと志摩グループ、TKRグループの進めるEMS事業の融合を前提としていること、また中国が世界の製造機能において重要な役割を果たしていること等を鑑みれば、今後も中国での製造アウトソーシングサービスは積極的に展開していく必要があります。こうした前提の下、当社グループの中国内でのEMS事業としてのあるべき姿を模索し、志摩グループの委託する深圳来料加工工場と東莞に立地するTKRグループの中宝華南電子の統合についても戦略的に検討してまいりたいと考えております。また、マレーシアについても同様であり、志摩グループとTKRグループで3拠点を有している現状を踏まえ、適正な拠点戦略を構築してまいります。
このように国内、海外においてEMS事業の再構築を進めるとともに、今後、一層の競争力を付加していくためには、当社グループではEMS事業の高付加価値化が必要であると認識しております。即ち、基板実装、製品組立といった製造工程の一部を受託する下請的なEMS体質からの脱却を図り、一定のテクノロジー分野にて製品開発力をも有するEMS企業として、メーカー各社に対して高度なものづくり提案のできる体制を構築してまいります。当社グループでは、昨年10月に大手総合電機メーカーより電源、チューナー、TVボード、トランスといった技術分野の事業を譲り受けました。今後もこうしたテクノロジーの一層の高度化を目指し、日系メーカー各社が進める事業構造改革の中で譲渡対象となる事業につき、当社中長期のEMS事業としての戦略に照合させながら、事業譲受を進めてまいりたいと考えております。尚、その推進にあたっては、時間を短縮するためのアライアンス戦略(M&A、パートナー企業との事業提携、他)も積極的に駆使してまいります。