有価証券報告書-第16期(2023/04/01-2024/03/31)

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2024/06/21 16:48
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149項目

研究開発活動

当社グループの研究開発活動は、当社のモビリティ&テレマティクスサービス分野、セーフティ&セキュリティ分野、エンタテインメント ソリューションズ分野の各事業分野及びその他分野に含まれる未来創造研究所、イノベーションデザインセンター、DXビジネス開発部によって行われています。
当社グループの当連結会計年度における基礎技術の研究開発に係る費用は20億円、量産設計に係る費用は174億円、総額は194億円です。
*モビリティ&テレマティクスサービス分野
市販国内ナビゲーションでは、ドライバーの安心・安全な運転をサポートする「音声操作」に対応し、ナビゲーション機能やエンタテインメント機能を声で操作可能なモデルを商品化しました。
市販国内スピーカーでは、同軸(コアキシャル)ツィータ一体型スピーカーにおいてハイレゾ音声対応モデルを商品化しました。
市販ドライブレコーダーでは第3弾となる「ミラレコ」を商品化しました。フロントカメラのセパレート化、接続ケーブルの一体化で装着性の自由度を高めるとともに、後方急接近警告機能や斜め後方障害物検知機能等を備え、安心・安全なドライブをサポートします。また12V型の大型IPS液晶を採用し、後方視界を拡大し安全性を向上させました。
海外用品では、KENWOODブランドのディスプレイオーディオを、米国を代表する商用トラックメーカーであるDaimler Trucks North America LLC(以下「ダイムラー・トラック社」)専用に開発し、供給開始しました。
電気自動車の再生バッテリーを利用したポータブル電源「IPB01G」を日産自動車株式会社、フォーアールエナジー株式会社と共同開発し、商品化しました。
当連結会計年度の主な研究開発活動及び製品開発の成果は、以下のとおりです。
(1)大画面9V型の高精細HDパネルを搭載し、ハイレゾ音源再生に対応する、AVナビゲーションシステム「彩速ナビ」の最上位シリーズ「TYPE M」として、「MDV-M910HDF」(フローティングモデル)及び「MDV-M910HDL」(インダッシュモデル)を開発、商品化しました。
(2)「ビクタースタジオ」共同チューニングの第二弾として、高解像サウンドをさらに進化させた市販向けカスタムフィット・スピーカーのハイエンドモデル「XSシリーズ」を開発、商品化しました。
(3)デジタルルームミラー型ドライブレコーダー「DRV-EM4800」を開発、商品化しました。
(4)国内用品車両メーカー向けに、客先要求仕様に対応したナビゲーション、ディスプレイオーディオ、カーオーディオ、ドライブレコーダー、リアカメラなどの車載製品を開発しました。
(5)海外用品にて、ダイムラー・トラック社専用にKENWOODブランドのディスプレイオーディオを開発し供給開始しました。6.95インチのタッチパネルモニターを搭載し 「Apple CarPlay」や「Android Auto™」、デジタルラジオ 「SiriusXM」 及びアメリカ海洋大気庁が24時間体制で気象予報や気象警報などを伝える「NOAAウェザーラジオ」に対応しました。さらに、最大4個のカメラ入力に対応し、車両周辺の安全確認のサポートを実現しました。
(6)多数の商用車を管理するフリート会社向けに、AI処理能力の強化とLTE通信多バンド化に対応した通信型ドライブレコーダー「STZ-DR20J」を開発、提供しました。
(7)通信型ドライブレコーダー「STZ-DR10」「STZ-DR30」のバージョンアップを行い、Vieureka株式会社が提供する遠隔での保守・管理が可能なクラウド型ツール「Vieureka Managerサービス」に対応しました。これにより複数端末に対して、ソフトウエアのアップデート、ログや端末情報の収集、設定値の変更等を遠隔にて一元管理できるようになりました。
(8)当社のクラウド型タクシー配車システム「CABmee」の車載アプリと、DiDiモビリティジャパン株式会社が提供するタクシー配車アプリ「DiDi」の2つのアプリを搭載した専用タブレットを開発しました。従来は別個のタブレットが必要でしたが、両アプリの受注状況を1台で確認できるようになるため、ドライバーの負担軽減、車内の省スペース化、機器の管理コスト削減に貢献します。
(9)電気自動車(日産リーフ)の再生バッテリーを利用し、使用温度範囲が広く夏場・冬場の車内での使用や保管が可能な、ポータブル電源「IPB01G」を開発、商品化しました。
当分野に係る研究開発費の金額は、119億円です。
*セーフティ&セキュリティ分野
無線システム事業では、独自の業務用デジタル無線規格「NXDN™」に対応した「NEXEDGE®」無線システム・端末や業界標準の業務用デジタル無線規格「DMR」に対応した無線システム・端末、米国の公共安全市場向けに開発されたデジタル無線規格である「P25」に対応した無線システム・端末を開発、商品化しています。
ヘルスケア事業では、高精細医用画像表示モニターを主軸とした医用画像ソリューションなどを開発、商品化しており、業務用システム事業では、業務用音響システムや映像監視システム向けに機器・ソフトウエアを開発、商品化しています。
当連結会計年度の主な研究開発活動及び成果は、以下のとおりです。
(1)世界最大規模の業務用無線通信機器/システムの展示・商談会「IWCE 2024(International Wireless Communications Expo 2024)」に出展し、業務用トライバンド対応P25デジタルデジタル無線機のフラッグシップ“Viking(バイキング)”シリーズの車載用モデルの新製品「VM8000」を発表しました。「VM8000」は、当社グループ会社のEF Johnson Technologies, Inc.が北米の公共安全市場向けに展開している “Viking”シリーズのポータブルトライバンド機「VP8000」の車載用モデルとして発売されます。「VP8000」は強固で堅牢なプラットフォームに加え、トライバンドと複数のデジタル無線規格に対応しており、無線機1台で警察・消防・救急と、学校などの民間のセキュリティとの相互通信を実現したことで、公共安全市場での受注拡大に大きく寄与しており、「VM8000」についても同様の貢献が期待されます。
(2)チャンネル増波に対応したデジタル簡易無線機(登録局対応)として、携帯型「TPZ-D563BTE」、「TPZ-D563E」及び車載型「TMZ-D504E」を発売しました。デジタル簡易無線機の登録局は、利用の簡易さから2022年末時点で約80万局まで利用者が増加し、2023年6月の制度改正により登録局は35chから97chに増波されました。携帯型「TPZ-D563BTE」「TPZD563E」は97chに対応し、多チャンネルでも高速にスキャンできる従来モデルの特長はそのままに、ストレスのない快適な運用を実現します。また、車載型「TMZ-D504E」は82chに対応し、使用シーンに合わせた選択が可能です。
(3)アマチュア無線のハンディトランシーバーである144/430MHzデュアルバンダー「TH-D75」を発売しました。本機は、新たに「D-STAR®」(※)方式の2波同時受信に加え、リフレクター・ターミナルモードに対応したほか、ボイスガイダンスの強化、スタンドアローンデジピーター機能の追加など、機能を充実させています。また、Bluetooth®対応、USB Type-CTM端子の新搭載など、実用性を追求しました。
(※):“Digital Smart Technologies for Amateur Radio”の略。日本アマチュア無線連盟が開発したアマチュア無線のデジタル通信方式で、海外でも広く普及しています。
(4)HF帯アマチュア無線機のフラッグシップモデル「TS-990」(2013年2月発売)の発売10周年を記念した記念モデルとして、HF/50MHz帯 トランシーバー「TS-990」TRIOモデルを当社公式オンラインストア「JVCケンウッドストア」にて3セット限定で発売し、多数の応募への厳正な抽選の結果、完売しました。記念モデルは、特別仕様としたHF/50MHz帯トランシーバー「TS-990S」と外部スピーカー「SP-990」(別売オプション)をセットにしたものです。「TS-990S」及び「SP-990」のフロントパネルバッジにKENWOODブランド前身の“TRIO”ロゴを採用し、「TS-990S」の起動時メインスクリ-ンに“TRIO”ロゴを表示しています。
(5)遠隔・在宅読影のニーズに対応し、高輝度・高解像度・高品質表示を実現する21.3型300万画素カラー液晶モニター「CL-S301」を商品化しました。ノートPCやモバイル端末とUSB Type-CTMケーブル1本の接続で映像信号伝送と電源給電を実現したことで、在宅においても医療施設と同等の効率的な読影が可能になります。
(6)鉄道事業者の運行管理を支援するHDハイブリッド・ワイドダイナミックレンジカメラ「TK-HD9801」を開発、商品化しました。高画質なアナログHD方式に加えて、HD高画質でのネットワーク伝送にも対応し、ハイブリッドな映像出力を低遅延で実現しました。遠隔地での監視や記録にも対応し、リモート接続による保守サービスなど多彩な運用を実現します。
(7)国内業務用音響システム向けに、ネットワーク機能を搭載したプログラムチャイムユニット「PA-DA700」、IPオーディオユニット「PN-AP200」を開発、商品化しました。遠隔からの設定や音源更新に対応し、ネットワークによる利便性や拡張性を高め、システム規模拡張により建物の複合化・大型化に対応可能な非常・業務放送システムの提案を強化します。
(8)業務用音響システム向けに、小型化と高出力化を両立させた非常・業務放送用スピーカー6モデルを開発、商品化し、ラインアップを強化しました。天井露出型の防滴タイプは清浄度クラス1(JIS B 9920-1)を満たしクリーンルームへの設置が可能で、高効率埋込型は業界初の非常放送1W/L級に対応しています。
当分野に係る研究開発費の金額は、48億円です。
*エンタテインメント ソリューションズ分野
エンタテインメント ソリューションズ分野は、原音原画再現を探究しコンテンツ制作者の意図を忠実に再現するための商品開発を行っています。また、隣接市場や新規市場に向けての商品やソリューションの開発を行いました。
当連結会計年度の主な研究開発活動及び成果は、以下のとおりです。
(1)プロジェクター事業では更なるブランドステータスの向上のため、製品アップデートや新製品導入を行いました。業務用製品では、新開発の8K対応D-ILAデバイスを搭載した「DLA-VS8000G」を開発し、シミュレーション・トレーニング分野の展示会「I/ITSEC 2023」で発表しました。ホームシアター製品では、8K映像表示対応D-ILAプロジェクター「DLA-V90R/V80R/V70R」及びネイティブ4K対応 D-ILAプロジェクター「DLA-V50」の計4モデルに対応する、当社独自の「Frame Adapt HDR」機能を第二世代に進化させる最新ファームウエアを開発、公開しました。
(2)耳をふさがないリスニングスタイル”nearphones”シリーズの第二弾として完全ワイヤレスイヤホン「HA-NP50T」を開発、商品化しました。先行モデルに対して大幅な小型・軽量化を図り、新発想のショートタイプのイヤーフックにより、つけていることを忘れるような軽くて快適な着け心地を実現しました。
(3)木を振動板とする当社独自の「ウッドコーンスピーカー」シリーズとして、6cmフルレンジユニットを開発し、コンパクトコンポーネントシステム「EX-DM10」に搭載、商品化しました。「EX-DM10」は一体型オーディオの最小モデルですが、自然で美しい響きと豊かで広がりのある音楽空間を実現しました。
(4)フリーアドレス拡大などを背景に成長が見込まれる事務機器市場及びGIGAスクール構想の実現に備える教育向けの小型ポータブル電源市場に、事務機器メーカーと協業し、安心・安全性の担保、廃棄処分までのスキーム構築により差別化した商品を開発し、市場参入を実現しました。
当分野に係る研究開発費の金額は、26億円です。
*その他
未来創造研究所は「人と時空をつないで未来を創造する」という技術開発戦略のもと、常に10年先の未来を見据えた新たな価値の創造を要素技術開発に特化することをミッションとしています。
イノベーションデザインセンターは「顧客起点でのデザイン経営」を実践する組織として、2023年10月に新設されました。稼げるビジネスの仮説を立て概念検証を行うことで「新たな価値」たるイノベーションの創出を図り、併せてイノベーティブな人財の育成、新たな知的財産網の構築を以て、社会課題解決に貢献します。
DXビジネス開発部は、新たな収益基盤の創出、ビジネスクリエーション活動をミッションとしています。
当連結会計年度の主な研究開発活動及び成果は、以下のとおりです。
(1)LCOS技術の応用である光通信用波長選択スイッチ(WSS)の価値最大化へ向けて、光空間系の次世代技術である光電融合技術(シリコンフォトニクス)の開発を推進し、事業化に向けた試作を経て様々な性能確認を実施、次世代での社会実装に向けて有効な要素技術開発成果を知的財産として権利化継続しています。
(2)製品・サービス開発におけるセキュリティテスト工数削減を目的とした、最適ファジングデータセットを量子コンピュータ技術により生成し追加検証を可能とするセキュリティツール開発や、画像中のあらゆる被写体の推論による認識を目標にした、信頼できるAIに関わる要素技術研究など、次世代コンピューティング研究開発を進めています。
(3)実空間に映像を表現する技術研究やオープンソースを使用したローカル5Gシステム開発、独自仮想空間プラットフォーム開発など、未来のデジタルツイン市場へ向けて空間再構成に必要な要素技術の研究開発を進めています。
(4)横浜未来機構主催の「YOXO FESTIVAL 2024」に「Light Talk」「HUG」「なってみ!たいよう」「イマーシブエンターテインメントシステム」のコンセプトモデルを展示しました。顧客への直接体験の提供と顧客ニーズ発掘を実施することで、新たな事業機会の可能性を検証するとともに企業価値向上に貢献しました。
(5)他社と共創した立体音響と立体映像による融合「イマーシブエンターテインメントシステム」を「CEATEC 2023」や「CP+2024」に出展しました。仮想空間における空間音響の可能性について実装実験を行い、事業機会の創出に向けた活動を実施しました。
(6)Newエンタテインメント事業におけるメタバースへの取り組みの一環として、RX Japan株式会社主催の「第1回 メタバース総合展 夏」に出展しました。メタバースワールドやコンサートホールの3D体験や、当社のVTuber(バーチャルYouTuber)として活躍中の「黒杜(くろと)えれん」や「波澄(はすみ)りお」、Victorのブランドアイコンである犬のキャラクター「ニッパー」の3DCGの紹介展示などを行いました。
(7)株式会社HIKKYが主催する世界最大のメタバースイベント「バーチャルマーケット2023 Summer」に出展、3Dアバターによるバーチャルライブや3DCG化したキャラクターを展示し、メタバース空間でのギネス世界記録™も達成しました。また「バーチャルマーケット2023 Winter」にも出展し、広瀬香美さんの3Dアバターによる「ロマンスの神様」を「VR空間体感ライブMV」スタイルで披露し、2万人がバーチャル空間に来場しました。
(8)VTuberなどの配信者が、ファン(視聴者)のアバターを配信画面に表示して配信を盛り上げるとともに、アバター用のデジタルグッズを制作・販売できる、マルチプラットフォームアバターサービス「FAN MASCOT」(ファンマスコット)の提供を開始しました。
その他の分野に係る研究開発費の総額は、20億円です。そのうち19億円は、各報告事業セグメントに配賦しています。