有価証券報告書-第10期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 16:36
【資料】
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【項目】
88項目

研究開発活動

当社グループは、グループ理念に定めた『エネルギー・資源・素材における創造と革新』を目指し、エネルギー関連と金属関連を中心に研究開発活動を進めています。当連結会計年度における研究開発活動の概要は以下のとおりです。
(1)エネルギー (研究開発費 10,344百万円)
エネルギー・素材関連の研究開発活動は、中央技術研究所と各事業カンパニーの研究開発部が連携をしながら進めています。現在の事業領域については操業安定性向上と競争力強化を主体とした研究開発を進めるとともに、新規事業の創出、拡大に向けて重点領域を設定して、研究開発を推進しています。また社外との連携にも力をいれており、大学との産学連携の推進のみならず、ベンチャーキャピタルへの出資やアクセラレータープログラムの実施等を通してベンチャー企業とも連携を図り、オープンイノベーションを促進しています。
①燃料油・化学品製造技術分野
製油所、製造所の安全・安定操業、競争力強化を目指した研究を行っています。統合シナジー創出に貢献するため、技術的な検討を進めるとともに国際海事機関(IMO)による2020年からの舶用燃料油の規制強化に対応し品質確保のための処方検討などを通じて、安定供給の体制構築を支援しました。あわせて将来の自社原料のさらなる有効活用(ケミカルシフト)に向けたプロセスや要素技術の開発、非化石エネルギー源の利用拡大に資するセルロース系バイオエタノール等も開発しています。
②機能材分野
機能材分野では、透明性と高耐熱性を両立した透明ポリイミド用モノマー「エネハイド™」、麻里布製油所の高品位コークスを原料としたリチウムイオン電池(LiB)用負極材、優れた抗酸化性能を持つレアカロテノイド類を含む健康食品素材「AdoniCare™」、次世代高速通信を可能にする低誘電液晶ポリマー、当社不織布「ミライフ®」をしわ加工する保温性不織布、ナノインプリント技術を活用した無機波長板「Nanoable®Waveplate」など、独自技術による新規商品の開発を推進しています。
また、次世代自動車、次世代住宅、ニュートリションを戦略領域と設定し、自動車の電動化・軽量化・知能化に寄与する素材や部材、住宅の省エネ・健康・快適に寄与する素材や部材、さらに、健康食品、飼料、化粧品などの素材の開発を推進しています。
③潤滑油分野
潤滑油分野では、環境配慮型自動車用潤滑油の開発、安全・環境を考慮した工業用潤滑油の開発、フロンを代替する新冷媒用の冷凍機油の開発、産業用・環境配慮型グリースの開発、グローバル商品の開発、商品の付加価値向上に資する添加剤の開発を推進しています。
④水素分野
水素分野では、水素エネルギー社会を見据えた水素の製造・貯蔵・輸送・供給に関する一連の技術開発を推進しています。あわせて、水素ステーションの整備推進を目指し、建設及び運営コストダウンに寄与する技術開発に取り組んでいます。
⑤低炭素エネルギー分野
将来に向けた再生可能エネルギーの主力電源化に資する技術として、余剰電力を大規模、長期の貯蔵に適する物質に変換し、長距離の輸送を可能とする技術の開発を進めています。一例として、再生可能エネルギーから得られた電力で直接トルエンを電解水素化することで、貯蔵・輸送が簡単な有機ハイドライド(メチルシクロヘキサン)を低コストで得る技術を商業化に向けて開発しています。この有機ハイドライドから取り出した水素は「CO2フリー水素」ということが出来ます。
また、持続可能な未来社会実現に向けたイノベーション推進のため、早稲田大学との包括連携活動に関する協定書を締結し、CO2からの燃料・化学品製造技術の開発といった「CO2削減に向けた革新技術の研究」に取り組んでいます。
さらに、循環型社会の実現に向け、プラスチック資源に関する高度循環技術として「プラスチックの化学原料化再生プロセスの開発」に取り組んでいます。
⑥デジタル技術分野
デジタル技術を活用して自社の業務効率化に生かしていくことを目指した研究を行っています。具体的には、プラントデータを活用した運転効率化、画像解析による安全・安定操業支援などの研究を推進しています。一例として、AI技術の産業応用に向けた先進的な検討を推進している世界的なトップランナーである株式会社Preferred Networksと戦略的な協業体制の構築に合意し、主にプラント自動運転や素材探索においてAI技術を活用した革新的事業創出に取り組んでいます。またデジタル技術を活用した新たなビジネス創出につなげることも想定し、ベンチャー企業などとの情報収集・交換を活発化させています。
(2)石油・天然ガス開発
該当事項はありません。
(3)金属 (研究開発費 9,867百万円)
①資源・製錬分野
資源・製錬分野では、低品位銅鉱を対象とした独自の浸出技術であるJXヨウ素法、初生硫化銅鉱を対象とした湿式製錬技術である日鉱塩化法の開発を推進しており、JXヨウ素法については、チリでのリーチング実証試験で効果を確認しています。湿式製錬技術についても、豪州パースのパイロットプラントでの各種銅鉱石・金鉱石を用いた実証試験を完了しています。ここで得られた結果を基に、現在次のステップとなる実鉱山適用への検討を進めています。
②環境リサイクル分野
環境リサイクル分野では、リサイクル原料から回収する貴金属及びレアメタル等の金属種拡大のための技術開発や、銅製錬工程からの有価金属回収工程の効率化を推進しています。廃電池リサイクルについても、対象廃電池の更なる拡大と低コストを目指したプロセス開発を進めています。
③薄膜材料分野
薄膜材料分野では、高純度化技術及び材料組成・結晶組織の制御技術をベースに、半導体・電子部品用途向け製品に関する開発を進めています。半導体用ターゲット、フラットパネルディスプレー用ターゲット、磁気記録膜用ターゲット等の各種スパッタリング用ターゲットや、その他電子材料における新規製品開発及び関連プロセスの技術開発に継続的に取り組んでいます。
④機能材料分野
機能材料分野では、コネクタ等の用途に、精密な組成制御、独自の圧延加工プロセス及びユーザーニーズに適合した評価技術を用いて、強度・導電性・加工性・耐久性に優れた高機能銅合金の開発を進めています。次世代材料として、コルソン系及びチタン系新規銅合金の開発等、更なる高機能製品化に取り組んでいます。また、プリント配線板材及びシールド材用途では、屈曲性、エッチング性、密着性等の高い機能を付加した銅箔等の開発・バージョンアップを進めています。
⑤基盤技術開発
分析及びシミュレーションについて最先端技術の導入・開発を進め、それらを駆使することにより技術開発の促進・効率化を図っています。
これらに、その他の事業における研究開発費735百万円を加えた当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は、20,946百万円です。