有価証券報告書-第10期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 16:36
【資料】
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【項目】
88項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、事業活動の基礎となる「ENEOSグループ理念」を次のとおり定めています。
0102010_001.png当社グループは、この「ENEOSグループ理念」の実現のために、基幹事業の強化・イノベーションの推進・グローバルな事業展開を図ります。あわせて、これらを推進していくうえで欠かせない高い倫理観とチャレンジ精神を持った人材を育成し、国際的な競争力を有するアジアを代表するエネルギー・素材企業グループを目指します。
(2)第1次中期経営計画(2017年度から2019年度まで)の成果
当社は、第1次中期経営計画を「抜本的な変革の実行プラン」と位置づけ、「基幹事業の収益力強化」、「キャッシュ・フローと資本効率の重視」及び「経営基盤の強化」を基本方針とし、諸施策に取り組みました。第1次中期経営計画における各事業の主な取組みは、次のとおりです。
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これらの取組みに加え、当社グループの長期的な事業ポートフォリオの指針として長期ビジョンを策定し、2019年5月に公表しました。長期ビジョンでは、2040年の当社グループの「ありたい姿」として、「アジアを代表するエネルギー・素材企業」、「事業構造の変革による価値創造」及び「低炭素・循環型社会への貢献」を掲げています。なお、「長期ビジョン」の詳細は、「(3)長期ビジョンの策定」をご参照ください。
第1次中期経営計画の最終年度である当連結会計年度の業績は、在庫影響(総平均法及び簿価切り下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益及びROEは目標値に届かなかったものの、3か年累計でのフリーキャッシュ・フロー及び当連結会計年度のネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は目標を達成し、一定の財務基盤を確立しました。
0102010_003.png今後、当社は、第1次中期経営計画の遂行により構築した財務基盤を土台として、長期ビジョン策定時に分析した長期グローバルトレンド及び2040年の社会シナリオを踏まえ、長期ビジョンに掲げる「ありたい姿」の実現に向けて取り組んでいきます。その実現に向けた第一歩として、「(4)グループ運営体制及び商号の変更」を実施し、また、第2次中期経営計画を遂行していきます。
(3)長期ビジョンの策定
当社グループは、世界的な低炭素社会形成に向けた動きの加速、IoT・AI等の普及によるイノベーションの急速な進展、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめ企業に求められる社会的責任の高まりなど、過去に例を見ない社会環境・事業環境の変化に直面しています。加えて、国内の燃料油需要は、年々減少し、2040年には現在の約半分となることが想定されます。このように事業環境の先行きに対する不安が増しつつある一方、当社グループには、その事業特性上、長期的展望に基づく戦略的な投資が不可欠であることから、未来を見据えたビジョンの構築が必要です。
そのため、当社は、「長期グローバルトレンド」を分析して「2040年の社会シナリオ」を想定した上で、同年における当社グループの「ありたい姿」とその実現のための「事業の将来像」を描き、これらを「2040年当社グループ長期ビジョン」として取りまとめ、2019年5月に公表しています。(一部改訂、2020年5月20日)
・「長期グローバルトレンド」と「2040年の社会シナリオ」
「長期グローバルトレンド」としては、低炭素・循環型社会の形成に向けた取り組みが進み、デジタル革命の進展と相まって、人々のライフスタイルは大きく変化することが予想されます。こうした潮流の下、世界の一次エネルギー需要は、非化石エネルギーの割合が増加し、世界の石油化学製品需要・銅地金需要は、アジアの新興国の経済成長を背景に拡大すると見込まれます。
このような「長期グローバルトレンド」を踏まえると、「2040年の社会シナリオ」としては、安価な再生可能エネルギーの大量導入、EVやカーシェアリングの普及、各施設・住宅への分散型太陽光発電及び蓄電池の設置等が進むと想定されます。また、プラスチック・金属をはじめとする資源のリサイクルインフラが拡充されていくものと考えられます。さらに、これらの変化に伴い、人々の生活を快適にするべく、多様なサービス提供者が現れると思われます。
・2040年における当社グループの「ありたい姿」とその実現のための「事業の将来像」
以上の「長期グローバルトレンド」と「2040年の社会シナリオ」を前提に、当社グループが将来にわたって社会に必要とされる企業集団であるための要素を検討し、2040年における当社グループの「ありたい姿」を定めました。当社グループは、この「ありたい姿」を実現するため、安全・環境・健康を最優先に考えるとともに、多様性に富んだグローバル人材の育成・登用やICT(情報通信技術)活用による業務品質の劇的向上等により、企業風土の変革を図ってまいります。なお、2019年5月の長期ビジョンの発表以降、自動運転などによる省エネや分散型電源を活用したエネルギーサービス、CO2フリー水素といった具体的施策を検討する過程で、低コストを可能とする技術革新が前提ではあるものの、これらの取り組みの追求により、将来的に自社排出分のCO2に対するカーボンニュートラルの実現も不可能ではないと考え、目標として追加しました。
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当社グループは、長期ビジョンに掲げる「ありたい姿」の実現のための「事業の将来像」を礎とした、第2次中期経営計画を実行することにより、成長戦略の追求とキャッシュ・フロー重視経営との両立による持続的な企業価値の向上を図り、すべてのステークホルダーの期待に応えていきます。なお、第2次中期経営計画の詳細は、「(6)対処すべき課題」をご参照ください。
(4)グループ運営体制及び商号の変更
・グループ運営体制の変更
当社グループは、長期ビジョンに掲げた「ありたい姿」を実現するため、従来にも増して意思決定と業務執行の迅速化を図り、変化の激しい事業環境に対応していく必要があります。そのため、当社は、抜本的な構造変革を進めることとし、2020年6月25日以降、現在の純粋持株会社の下に3つの中核事業会社を有する体制を改め、グループで最も重要なJXTGエネルギー株式会社と当社の経営を実質的に統合して運営する体制に変更しました。
具体的には、当社とJXTGエネルギー株式会社のそれぞれの法人格は残すものの、役員を極力兼任させ、意思決定機関を集約し、実質的にひとつの事業持株会社として運営します。一方、JX石油開発株式会社及びJX金属株式会社については、当社グループの一翼を担う重要な事業会社との位置付けは変わらないものの、当社が定める経営方針の下、大幅な権限委譲を進め、それぞれの事業特性に応じて、より自律性・機動性・独立性を高めた業務執行体制とします。
・商号の変更
当社は、グループ運営体制の変更に伴い、当社の商号を「ENEOSホールディングス株式会社」に、JXTGエネルギー株式会社の商号を「ENEOS株式会社」にそれぞれ変更する方針を2019年11月28日開催の取締役会において決議し、定款変更の議案を2020年6月25日開催の第10回定時株主総会に付議し、承認を得ました。
「ENEOS」は、2001年にSSの新たなブランドとして誕生して以来、ブランド統一やエネルギー事業の領域拡大を経て、現在は、約1万3,000か所の「ENEOSサービスステーション」「ENEOSでんき」「ENEOS都市ガス」等を通じて全国的に広く認知されています。このブランド名を当社及びエネルギー事業のグループ会社の商号並びにグループ名に冠することにより、高い知名度や信用力を活かして成長事業の育成・新規事業の創出を推進し、もって、「アジアを代表するエネルギー・素材企業」への成長・発展と「ENEOS」のグローバルブランド化を目指します。
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(5)ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組み
・ESGを重視した経営
当社グループは、すべての事業活動の根本となる「ENEOSグループ理念」の下、この理念を実現するために実践すべき具体的な基準を定めた14項目からなる「ENEOSグループ行動基準」を制定しています。当社グループは、この行動基準を踏まえて「高い倫理観」「コンプライアンス」「安全・環境」「人権」「人材育成」「健康」「品質」「社会貢献」の8項目を積極的に取り組むべきCSR活動の重点分野として定め、ESGを重視した企業経営を行っています。
当連結会計年度においては、ESGを重視した企業経営によって持続的成長・企業価値向上を図るため、2019年4月1日付で「ESG推進部」を設置し、環境・社会・ガバナンスに関する取組みを強化しました。
・具体的な取り組み
[環境]
当社グループは、長期ビジョンにおいて「低炭素・循環型社会への貢献」を掲げており、その実現に向けては、2030年度環境目標及び中期環境経営計画を策定し、これに沿った環境活動を推進しています。具体的には、サプライチェーン全体におけるCO2排出量を削減すべく、製造面では製油所・製錬所等での高効率・省エネ設備の導入推進と装置運転の最適化を図り、販売面では環境配慮型商品の販売拡大に取り組んでいるほか、廃棄物最終処分率の低減を目指して、事業全般で廃棄物の再生利用化や分別を徹底しています。また、エネルギー事業においては再生可能エネルギーや水素、石油・天然ガス開発事業においてはCO2-EOR、金属事業においては環境リサイクルにそれぞれ取り組んでいます。
2019年5月には、気候変動がもたらすリスク及び機会の財務的影響を把握し、開示することを促す「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同する署名を行いました。エネルギー・素材の安定供給を果たす企業の責務として、TCFD提言の趣旨に沿った情報開示に努めます。
[社会]
当社グループは、ENEOSグループ理念における使命である「地球の力を、社会の力に、そして人々の暮らしの力に。」を実現するため、社内外でかかわりのある様々なステークホルダーが抱える問題の解決に貢献すべく、安全・人権・人材育成・健康・健全な職場環境・品質・サプライチェーンマネジメント・社会貢献に関する各種対策に取り組んでいます。
人権の分野においては、「ENEOSグループ行動基準」に人権尊重の基本原則を定め、人権研修の実施、ハラスメント防止をテーマにしたeラーニングの実施、相談窓口の運営等に取り組んでいます。当連結会計年度は、グループ各社がそれぞれの事業特性に応じた人権意識の啓発活動に取り組んだほか、人権デュー・ディリジェンスや全役員・従業員を対象にした当社グループ意識調査を実施しました。
また、社会貢献の分野においては、地域社会との信頼関係構築や次世代育成支援を目的として、ENEOS童話賞・ENEOS児童文化賞・ENEOS音楽賞に関する活動に継続的に取り組み、また、国内外の事業拠点における様々な地域イベントにも協賛しています。
[ガバナンス]
当社グループは、コーポレートガバナンスの強化とコンプライアンスの推進に努め、透明性の高い経営と公正な事業活動を通じて、企業価値向上の実現に取り組んでいます。
当連結会計年度においては、長期ビジョンを踏まえ、さらなる意思決定と業務執行の迅速化を図り、変化の激しい事業環境に対応するため、2019年11月に、グループ運営体制の変更を決定しました。
また、取締役会は、2019年11月から2020年1月にかけて全取締役を対象にアンケートを行い、取締役会の実効性を評価しました。その結果、長期ビジョン・第2次中期経営計画の議論に多くの時間を充てたことや、前連結会計年度の実効性評価を踏まえて社外取締役への事前説明を早期化したことなどが評価された一方、取締役会の監督機能の強化、業務執行と監督との分離等について、さらなる改善に向けた課題が示されたことから、引き続き、改善に取り組みます。
・ESG説明会の開催
2019年12月、当社は、アナリストや機関投資家を招き、初の試みとして、ESG関連に特化した説明会を開催しました。同説明会においては、当社がESGを経営の根幹に位置付けていること、将来の社会課題を踏まえた事業戦略を立案・遂行していることなどについて説明し、参加者と活発な議論を行いました。引き続き、当社グループにおけるESG経営について、積極的な情報発信に努めます。
・第三者からの評価
当社のESGに関する取組みについては、下表のとおり第三者から評価を受けました。<2020年3月31日時点>
項 目評価元特 徴
FTSE4Good Index SeriesFTSE RussellFTSE Russell独自の評価基準により、「環境」「社会」「ガバナンス」の3つの分野から企業の持続可能性を評価するものであり、ESG情報を重視する投資家の主要な選択基準の1つとなるもの
FTSE Blossom Japan IndexFTSE Russell日本企業を対象としてESG課題への取組みを評価するもので、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESGの取組みに基づいた投資を行うために選定しているインデックスの1つ
MSCI日本株女性活躍指数(WIN)MSCI社日本企業を対象として女性の雇用、昇進等の性別多様性への取組みを評価するもので、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESGの取組みに基づいた投資を行うために選定しているインデックスの1つ
MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズMSCI社日本企業を対象としてESGに関する取組みが優れた企業を選別するもので、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESGの取組みに基づいた投資を行うために選定しているインデックスの1つ
SNAMサステナビリティ・インデックスSNAM社ESGに優れた約300銘柄を毎年選定し、損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント株式会社が年金基金や機関投資家向けに運用する「SNAMサステナブル運用」に用いられるもの
攻めのIT経営銘柄2019経済産業省及び
東京証券取引所
東京証券取引所の上場会社の中から、新たな価値の創造、経営革新、収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組んでいる企業を選定するもの
健康経営銘柄2020経済産業省及び
東京証券取引所
東京証券取引所の上場会社の中から、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を原則1業種1社選定するもの

(注)2020年4月1日付で、損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント株式会社は、商号をSOMPOアセットマネジメント株式会社に変更しました。
(6)対処すべき課題
今後の事業環境を展望しますと、世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大が実体経済に与える影響を見通しがたい状況にあり、国内及びアジアの石油製品・石油化学製品の需要については、経済活動の停滞長期化に伴う大幅な落ち込みが懸念されます。
原油価格及び銅価格は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界的な景気悪化を背景に低迷が続くおそれがあり、とりわけ原油価格については、世界的な需要減退に加えて、米国、サウジアラビア、ロシア等産油国の生産動向によって大きく左右されるため、先行きが不透明です。
このような厳しい事業環境下、当社グループは、グループ運営体制の変更による抜本的な構造改革を推進し、足下の不確実な情勢に機動的に対応する一方、低炭素・循環型社会の到来、デジタル革命の進展及びライフスタイルの変化を見据え、長期的展望に立った施策にも取り組む必要があります。そのため、安定供給の使命を果たし続けるための基盤事業のさらなる競争力強化と、持続的な企業価値の向上を図るべく新たな成長事業の育成・強化に挑戦することが重要な課題となります。
当社グループは、これらの諸課題を踏まえ、第2次中期経営計画を策定しました。第2次中期経営計画の基本方針、財務戦略及び財務計画は、次のとおりです。
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当社グループは、「長期ビジョン実現に向けた事業戦略とキャッシュ・フローを重視した経営の両立」及び「経営基盤の強化」を基本方針として、諸施策に取り組みます。また、財務戦略としては、「基盤事業からのキャッシュ・フロー最大化」、「資産売却」及び「財務レバレッジの活用」によりキャッシュを創出し、「成長事業への戦略投資」と「株主還元」に充てる計画です。
戦略投資については、第1次中期経営計画を大きく上回る8,300億円を計画しています。想定した長期グローバルトレンドや2040年の社会シナリオが実現した将来にあっても、なお当社グループが社会から必要とされる企業集団であり続けるためには、厳格な投資管理の下、2020年度から戦略的に投資していくことが不可欠です。
また、株主への利益還元が経営上の重要課題であるとの認識のもと、中期的な連結業績の推移及び見通しを反映した利益還元の実施を基本としながら、安定的な配当の継続に努めます。第2次中期経営計画の期間中の株主還元方針は、下表のとおりです。
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第2次中期経営計画では、以上のほか、「ESG経営」「事業戦略」「オープンイノベーション」「デジタルトランスフォーメーションへの道筋」「人材育成・確保」「設備投資計画」等について方向性・考え方を定めています。
各事業における主な取組みについては、次のとおりです。
・基盤事業(石油精製販売、石油・天然ガス開発及び銅資源・製錬)
基盤事業については、安全・安定供給を確保しつつ、デジタルなどの新技術の積極導入及び最適生産体制の構築により、国際競争力を強化します。石油精製販売事業ではサプライチェーンの改革断行、石油・天然ガス開発事業では既存資産の価値最大化及び競争力強化、銅資源・製錬事業ではカセロネス銅鉱山の安定操業継続及び銅製錬事業の再編・リサイクル事業との一体運営により、各事業の競争力を向上させます。また、デジタル技術を活用した装置の自動運転や遠隔操業については、競争力強化に直結することから、重点的に取り組む方針です。
基盤事業で得たキャッシュについては、次に記載する成長事業に投入し、育成していきます。
・成長事業
(石油化学)
石油化学事業については、ケミカルリファイナリー化の推進と当社グループが強みを持つ誘導品分野への進出により、競争力・収益力を高めることを目指します。川崎、鹿島、水島及び大分の各コンビナートにおけるケミカル比率向上に向けた施策を具体化し、また、水添石油樹脂(紙おむつ向け接着剤用途)、ENB(自動車部材向け合成ゴム添加剤用途)、電線絶縁材(高圧・超高圧特殊電線用途)等の技術優位性のある製品による収益拡大を図るべく、製造能力の増強を推進します。
(素材)
電子材料をはじめとする素材事業については、高機能・高付加価値製品の材料供給により社会の発展に貢献すべく、通信・デジタル、モビリティ、ヘルスケア機器、次世代電池の各分野における先端素材ニーズを捉え、社会が求める素材を適時に供給し続けることを目指します。まず、5G対応デバイスの普及やメモリー分野の回復に伴う需要増を確実に取り込むとともに、製品改良による高機能化・高付加価値化を推進します。加えて、M&A、オープンイノベーション等を積極的に活用し、「次の柱」となる事業を発掘・育成します。
(次世代型エネルギー供給・地域サービス)
次世代型エネルギー供給・地域サービス事業については、モビリティサービス、ライフサポート及びエネルギーサービスの各分野において、SSネットワークや分散型電源を活用したサービスを展開し、さらに、これらを連係させ、アプリなどを通じてお客様が望む利便性の高いサービスを提供する「ENEOSプラットフォーム」の構築を目指します。
具体的には、モビリティサービス分野では、カーシェア事業のビジネスモデル構築、SSの顧客接点を活用したカーリース事業の展開、EV経路充電サービスの検討等を進めます。また、ライフサポート分野では、提携・協業による新たなビジネスモデルの構築、ENEOSブランドの高い知名度や特約店の地域密着性を活かしたサービスを検討・拡大します。他方、エネルギーサービス分野では、「ENEOSでんき」の全国展開による顧客基盤の拡大を図るほか、環境負荷が小さいLNGを燃料とする五井ガス火力発電事業の推進、国内外の再生可能エネルギー事業の拡充により最適な電源ポートフォリオを構築します。さらに、当社グループが有する資産を有効活用したエネルギーサービスとして、自家消費支援事業(屋根借り太陽光)や分散型電源を活用したVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)の実証に取り組みます。加えて、低炭素エネルギーの供給ソースとして大きな期待が寄せられるCO2フリー水素については、各種プロジェクトへの参画を通じて、実現可能性を検討します。
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(環境対応型事業)
環境対応型事業については、製油所・製錬所を活用した廃プラスチック及び金属のリサイクルに加え、車載用リチウムイオン電池のリサイクルを推進し、循環型社会の形成への貢献を目指します。具体的には、製油所の設備を活用した廃プラスチックの油化リサイクルの実証試験や、EV普及によりニーズが高まる車載用リチウムイオン電池に含まれるレアメタルのリサイクルの事業化検討を進めます。また、中国の比亜迪(BYD)社の日本法人ビーワイディージャパン株式会社と協業し、EVバス向け蓄電池の「リース・リユース・リサイクル」循環モデルの構築を推進します。
一方、石油・天然ガス開発の分野では、知見のある東南アジアを中心に環境技術を展開し、グローバルな低炭素社会の形成に貢献することを目指します。また、CO2を回収・貯蔵するCCS技術に加え、CO2を油ガス田に圧入することで原油回収率を高めるCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素回収・有効利用・貯留)技術にも取り組みます。米国CO2-EOR事業を通じて培ったCCUS技術を活用し、国営石油会社をはじめ戦略的パートナーと協同で事業性評価を実施します。
今後、当社グループは、「アジアを代表するエネルギー・素材企業」への成長・発展を目指し、第2次中期経営計画に沿って諸施策を迅速・着実に実行し、株主還元の充実に努めるとともに、事業活動を通じたESGの取組みを一層強化します。これらを実現することにより、企業価値の持続的な向上を図っていく所存です。
・新型コロナウイルス感染拡大の影響について
第2次中期経営計画のうち、2020年度下期、2021年度及び2022年度については、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を合理的に算定することが困難なことから当影響は含まれていません。2020年度上期については、足元経済の停滞は避けられず、石油製品等における一定の需要減等の影響を織り込んでいます(*)。現時点で見込むことが困難である2020年度下期以降については、世界経済の動向、国内における需要の回復状況に応じて、その時点の業績予想や第2次中期経営計画への影響について情報開示していきます。
(*)次期の連結業績予想について(2020年5月公表)
売上高:7兆3,400億円 営業利益:1,100億円 親会社の所有者に帰属する当期利益:400億円
なお、在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益相当額は、1,650億円を見込んでいます。
また、当社グループは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、お客様、お取引先及び従業員の安全確保、そして、安定的な操業継続に向けた感染拡大防止策に取り組んでいます。具体的には、政府や各自治体の対処方針等を総合的に勘案の上、在宅勤務や時差出勤の推進、WEB会議の活用等を通じて安全対策を講じています。