有価証券報告書-第17期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号、以下、「連結財務諸表規則」)第93条の規定により、国際会計基準(以下、「IFRS」)に準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたって、採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
(2)経営成績の分析
(%表示は対前期増減率)
当社グループは、革新的サイバニクス技術を駆使して、『人』+『サイバー・フィジカル空間』の融合、すなわち、人とテクノロジーが一緒になって支え合うテクノピア・サポートの未来社会「Society5.0/5.1」の実現、サイバニクス産業の創出による社会変革・産業変革を目指しています。
「サイバニクス産業」創出の推進
当社グループは、IoH/IoT(ヒトとモノのインターネット)、ロボット、AIによるサイバニクス技術で医療、福祉、生活、職場、生産を繋ぎ、社会が直面する課題解決を実現する「サイバニクス産業」という人・ロボット・情報系が複合融合した新産業の創出を事業としています。当社の先端技術の独自性と優位性は、医療、福祉、生活、職場、生産の分野において、人の内的情報(脳神経情報・生理情報など)に加えて、人の外的情報(行動情報・生活情報など)や環境情報をスーパーコンピュータで一体的に繋げる点にあります。これにより、当社のデバイスやインタフェースで得られた全てのIoH/IoTビッグデータ(脳神経系、生理系、身体系、行動系、生活系、環境系)の集積・解析・AI処理等を実現してまいります。当社グループは、「サイバニクス産業」の創出の加速に向けて、研究・製品開発、事業推進並びに事業連携を同時並行で進めています。
事業推進の状況
《新型コロナウイルス感染症による影響》
当連結会計年度においては、上期の国内ロボケア事業やドイツでの治療サービス事業の一時的な休止、新規の商談・契約・出荷の一時的な遅延(特に医療機関向け)や、空港向けのHAL®腰タイプ作業支援用のレンタル減少による、売上への短期的な影響がありました。
一方で、当社グループは、新型コロナウイルス感染症という新たな社会課題や社会構造の変化を、「サイバニクス産業」を加速させる機会と捉え、「遠隔」「在宅」「デジタル」をキーワードとして、『人』+『サイバー・フィジカル空間』の融合を推進しています。新型コロナウイルス感染症の影響に伴う外出自粛による運動機会喪失による身体機能の低下リスクを抱える高齢者のフレイル対策として、2020年4月に非接触型の新しい在宅サービス「自宅でNeuro HALFIT」を開始し、2020年11月にはHAL®がクラウドとデータ連動することで生体電位信号や姿勢情報を可視化するHALモニターや専門スタッフによる遠隔でのオンラインサポートを追加しました。また、次世代型清掃ロボット(CL02)については除菌剤噴霧ユニットや紫外線照射ユニットなどの除菌機能を追加し、2020年3月の羽田空港への導入に続き、成田空港、公共施設、オフィスビル等で稼働しております。
《医療分野》
当社グループは、世界初の装着型サイボーグHAL®を利用した脳・神経・筋系の機能改善・機能再生を促進するサイバニクス治療を、グローバルな標準治療とする取り組みを進めています。
医療用HAL®「下肢タイプ」については、日本国内において、緩徐進行性の神経筋難病疾患の使用成績調査が2020年11月に完了し(実施医療機関20施設、対象患者218名、総治療6,486回)実際の臨床現場における使用においても、極めて高い有効性と安全性を示す結果が得られました。脳卒中患者への適応拡大に向けた医師主導治験は2020年12月に完了し、治験データの解析作業が進行中です。

欧州においては、新たにスペイン、スイス、セルビアの3カ国で導入されました。米国においては、米国食品医薬品局(FDA)より、既に承認済みの脊髄損傷に加えて、2020年10月に脳卒中及び神経筋難病に対しても臨床上の効果効能と安全性が認められ、医療機器承認を取得しました。さらに、アジア太平洋(APAC)の主要国での医療機器化を推進し、中核拠点であるマレーシアに続き、タイ、インドネシア、シンガポール、台湾(脊髄損傷のみ)、オーストラリアにおいて脳卒中、脊髄損傷、神経筋難病等の幅広い疾患で新たに医療機器承認・認証を取得するとともに、サイバニクス治療の普及が加速しています。
HAL®「単関節タイプ」については、2019年10月に欧州における医療機器の認証を取得していますが、2020年7月に日本でも医療機器としての認証を取得し、同年8月には脳血管疾患などのリハビリテーションに対して運動量増加機器として保険適用が決定しました。欧州や日本に続いて、米国やAPACの主要国(タイ、インドネシア、台湾、オーストラリアなど)でも医療機器化の準備を進めています。

《福祉分野》
当社グループは、主に高齢者の要介護度の改善や重度化防止及び加齢により身体機能が低下するフレイル予防や自立維持に向けて、歩行運動に対応した「下肢タイプ」、肘・膝・足首の関節運動に対応した「単関節タイプ」、体幹運動に対応した「腰タイプ」など様々な種類のHAL®自立支援用を展開しています。
(施設型サービスの展開)
HAL®を使用した脳・神経・筋系の機能改善を促す「Neuro HALFIT」プログラムを提供するロボケア事業は、当社グループ並びに各地域の事業パートナーとの協働により、全国16箇所で展開しています。また、2020年11月には、エムスリーグループの株式会社ワイズと事業提携し、同社が運営する生活期の保険外リハビリ最大手「脳梗塞リハビリセンター」でもHAL®単関節タイプ・腰タイプを利用した専用プログラムをご利用いただけるようになりました。

(個人向けサービス「自宅でNeuro HALFIT」の展開)
2020年4月より個人向けレンタルとして非接触型の新しい在宅サービス「自宅でNeuro HALFIT」の提供を開始しました。本サービスの本格展開にあたり、2020年11月には、サイバーダインのクラウドとデータ連動することで身体動作を指令する生体電位信号や姿勢情報等を可視化するHALモニターによって、装着者自身が視覚的にフィードバックを得ることができるだけでなく、セラピストやトレーナーなどの専門スタッフによる遠隔でのオンラインサポートが可能になりました。同時に、当該サービスのオンラインストア「CYBERDYNE STORE」をオープンし、個人の利用者様へのアクセスを容易にいたしました(2021年3月末時点で累計契約134件)。今後更なる認知度向上と普及を図ってまいります。
《生活・職場分野》
(作業支援用HAL)
防塵・防水対応の「HAL®腰タイプ作業支援用(LB03)」は、作業者の腰部負荷低減による労務環境改善に向けて空港、建設、物流などの大口ユーザーへの導入を進めています。また、令和2年7月豪雨で甚大な被害を受けた熊本県及び大分県のボランティアの方の作業負荷軽減のため、更に12月の大雪被害で通行止めとなった関越自動車道でのNEXCO東日本のグループ会社の作業員の方の除雪作業の負荷軽減のため、HAL®腰タイプ作業支援用を無償貸与し、災害復旧活動に貢献しています。

(自律走行ロボット)
世界最高水準のSLAM技術による高速自律走行を実現した次世代型清掃ロボット(CL02)は、商業施設やオフィスビル及び国際空港で本格運用されています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に対応して、2020年3月にCL02に消毒液噴霧器を搭載した自律走行ロボットの展開を開始し、羽田空港・成田空港、公共施設、オフィスビル等で運用されています。2020年5月には日本信号株式会社との協業を開始し、駅や駅ビルなどの交通インフラ施設にCL02の展開を進めています。さらにエレベータを自動昇降するためのマルチベンダー対応エレベータ連動ユニットを開発し、2020年8月に株式会社東急コミュニティーと共同実証を開始しています。

研究・製品開発の状況
疾病の予防・早期発見を目的とした小型バイタルセンサーについては、動脈硬化・不整脈を早期に捉えることを目的とした手のひらサイズの動脈硬化計に対してユーザビリティを高める新機能追加などを進めています。また、心電等の各種バイタル情報の小型センシングデバイスや、微細血管情報のリアルタイム解析のための光音響イメージングの研究開発を進めています。
また、当社グループは、高齢者や障がい者向けの自立支援ロボットとしては、歩行機能を維持向上するための衣服型HAL、バイタル・環境情報を取得しつつ会話機能を備えてADL(日常生活動作)を維持向上するための見守り・コミュニケーションロボット、歩行困難な方のためのパーソナルモビリティロボットなどの研究開発を進めています。さらに、サイバニクス技術を搭載した各種サイバニクスデバイスから得られたIoH/IoTビッグデータの集積・解析・AI処理等を行う統合サイバニクスシステムの開発も進めており、2020年11月にはサイバーダイン・クラウドをリリースしました。
なお、川崎市の殿町国際戦略拠点(キングスカイフロント)において、HALの臨床研究に加えて、再生医療や創薬などのバイオ系の研究を推進するサイバニクスイノベーションベースA棟を2020年12月に着工しました(2022年2月の竣工を予定)。
製品稼働状況について
医療用HAL®下肢タイプは、主にAPAC向けレンタルの増台により、2021年3月末時点で臨床試験用も含め国内外あわせて351台(内、国内レンタル契約81台)が稼働中です。HAL®単関節タイプは、医療用の増加により、2021年3月末時点で391台(内、個人向けレンタル契約8台)が稼働中です。
HAL®福祉用等の下肢タイプは、耐用年数経過機体の廃棄があり、2021年3月末時点の稼働台数は342台となっています。また、HAL®腰タイプ介護・自立支援用は、旧モデル廃棄があったものの、個人向けレンタルが増加し、2021年3月末時点で1,074台(内、個人向けレンタル契約58台)が稼働中です。
HAL®腰タイプ作業支援用は、主に空港向けのレンタル減少により、2021年3月末時点の稼働台数は459台となっています。また、清掃ロボット及び搬送ロボットは、2021年3月末時点において141台が稼働中です。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上収益は、新型コロナウイルス感染症の影響によりトレーニングサービス売上等が減少したものの、商品及び製品の販売売上等の増加により、1,875百万円(前年同期比4.6%増加)を計上しました。売上総利益は1,283百万円(同1.3%減少)となりました。
研究開発費は前年度に引き続き新製品の自社開発及び受託研究事業の実施により689百万円(同15.1%減少)を計上、その他の販売費及び一般管理費は1,471百万円(同10.7%減少)を計上しました。
その他の収益は、受託研究事業収入などにより181百万円(同30.6%増加)を計上、その他の費用4百万円(同75.4%減少)を計上した結果、営業損失は700百万円(同32.6%減少)を計上しました。
また、金融収益は投資有価証券評価益などにより770百万円、CEJファンドに係る損益359百万円、法人所得税費用は繰延税金費用などにより479百万円等を計上した結果、親会社の所有者に帰属する当期損失は59百万円(同61.4%減少)を計上しています。
なお、当社は独自技術を持ったスタートアップ企業との業務提携や資本提携を行なっており、当該非上場株式についてIFRS第9号「金融商品」に基づき公正価値を算定しています。当連結会計年度において、公正価値を算定した結果、投資有価証券評価益1,465百万円を「金融収益」及び「CEJファンドに係る損益」に含めて計上しました。また、当該評価に関する税金費用502百万円を「法人所得税費用」として計上、CEJファンドの外部投資家持分への振替額325百万円を計上した結果、「当期利益」に与える影響額は638百万円となります。
(3)財政状態の分析
① 資産
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末比311百万円増加し、48,119百万円となりました。これは主として、現金及び現金同等物が2,932百万円、棚卸資産が24百万円、使用権資産が24百万円減少したものの、その他の金融資産(非流動)が2,399百万円、有形固定資産が653百万円、その他の流動資産が194百万円増加したことによるものです。
② 負債
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末比783百万円増加し、4,332百万円となりました。これは主として、リース負債(非流動)が33百万円、その他の流動負債が188百万円減少したものの、CEJファンドにおける外部投資家持分が715百万円、繰延税金負債が279百万円増加したことによるものです。
③ 資本
当連結会計年度末における資本は、前連結会計年度末比473百万円減少し、43,786百万円となりました。これは、その他の資本の構成要素が418百万円、親会社の所有者に帰属する当期損失の計上に伴い利益剰余金が59百万円減少したことによるものです。
(4)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ2,932百万円減少し6,704百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、775百万円の資金流出(前連結会計年度は215百万円の資金流出)となりました。これは主に、税引前利益を408百万円、減価償却費及び償却費を463百万円計上したものの、金融収益を770百万円、CEJファンドに係る損益を359百万円を計上し、その他に前連結会計年度の法人事業税(資本割)や固定資産税の納付等による資金流出が生じたことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、2,794百万円の資金流出(前連結会計年度は244百万円の資金流出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出1,716百万円、有形固定資産の取得による支出1,070百万円を計上したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、617百万円の資金流入(前連結会計年度は1,304百万円の資金流入)となりました。これは主に、CEJファンドにおける外部投資家からの払込による収入680百万円によるものです。
(5)生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりです。
(注)1.単一セグメントであるため、セグメント別の生産実績は記載していません。
2.金額は、製造原価及び自社製作資産により表示しています。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりです。
(注)1.単一セグメントであるため、セグメント別の受注実績は記載していません。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりです。
(注)1.単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績は記載していません。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3.外部顧客への売上収益のうち、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しています。
(6)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績に重要な影響を与える要因について
本書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりです。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、現在、運転資金及び開発投資等の資金需要に対しましては、自己資金を充当することを基本としています。当連結会計年度末時点において、事業活動の維持に必要な手元資金を保有しており、充分な流動性を確保していると考えています。
③ 経営者の問題意識と今後の方針について
当社の経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案し、社会貢献を前提として企業価値を最大限に高めるべく努めています。具体的には本書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
④ 新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響について
新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響に関して、当社が会計上の見積りを行うにあたり置いた仮定については、本書「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
⑤ 経営上の重要な非財務指標
当社グループでは、経営上の重要な非財務指標として、HAL®等の稼働台数を活用しています。
当社グループの主たる収益源は、HAL®等のレンタル・保守に係る売上であり、レンタル・保守契約に係る売上は、レンタル期間にわたり収益が計上されるため、翌会計年度以降にわたる継続的な収益計上が見込まれます。
当社グループは、恒常的な業績や将来の見通しを把握することを目的として、HAL®等の稼働台数を取締役会へ報告しています。
(単位:台)

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号、以下、「連結財務諸表規則」)第93条の規定により、国際会計基準(以下、「IFRS」)に準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたって、採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
(2)経営成績の分析
(%表示は対前期増減率)
| 売上収益 | 営業利益 | 税引前利益 | 親会社の所有者に 帰属する当期利益 | |||||
| 百万円 | % | 百万円 | % | 百万円 | % | 百万円 | % | |
| 2021年3月期 | 1,875 | 4.6 | △700 | - | 408 | 348.9 | △59 | - |
| 2020年3月期 | 1,792 | 4.8 | △1,039 | - | 91 | - | △152 | - |
当社グループは、革新的サイバニクス技術を駆使して、『人』+『サイバー・フィジカル空間』の融合、すなわち、人とテクノロジーが一緒になって支え合うテクノピア・サポートの未来社会「Society5.0/5.1」の実現、サイバニクス産業の創出による社会変革・産業変革を目指しています。
「サイバニクス産業」創出の推進
当社グループは、IoH/IoT(ヒトとモノのインターネット)、ロボット、AIによるサイバニクス技術で医療、福祉、生活、職場、生産を繋ぎ、社会が直面する課題解決を実現する「サイバニクス産業」という人・ロボット・情報系が複合融合した新産業の創出を事業としています。当社の先端技術の独自性と優位性は、医療、福祉、生活、職場、生産の分野において、人の内的情報(脳神経情報・生理情報など)に加えて、人の外的情報(行動情報・生活情報など)や環境情報をスーパーコンピュータで一体的に繋げる点にあります。これにより、当社のデバイスやインタフェースで得られた全てのIoH/IoTビッグデータ(脳神経系、生理系、身体系、行動系、生活系、環境系)の集積・解析・AI処理等を実現してまいります。当社グループは、「サイバニクス産業」の創出の加速に向けて、研究・製品開発、事業推進並びに事業連携を同時並行で進めています。
事業推進の状況
《新型コロナウイルス感染症による影響》
当連結会計年度においては、上期の国内ロボケア事業やドイツでの治療サービス事業の一時的な休止、新規の商談・契約・出荷の一時的な遅延(特に医療機関向け)や、空港向けのHAL®腰タイプ作業支援用のレンタル減少による、売上への短期的な影響がありました。
一方で、当社グループは、新型コロナウイルス感染症という新たな社会課題や社会構造の変化を、「サイバニクス産業」を加速させる機会と捉え、「遠隔」「在宅」「デジタル」をキーワードとして、『人』+『サイバー・フィジカル空間』の融合を推進しています。新型コロナウイルス感染症の影響に伴う外出自粛による運動機会喪失による身体機能の低下リスクを抱える高齢者のフレイル対策として、2020年4月に非接触型の新しい在宅サービス「自宅でNeuro HALFIT」を開始し、2020年11月にはHAL®がクラウドとデータ連動することで生体電位信号や姿勢情報を可視化するHALモニターや専門スタッフによる遠隔でのオンラインサポートを追加しました。また、次世代型清掃ロボット(CL02)については除菌剤噴霧ユニットや紫外線照射ユニットなどの除菌機能を追加し、2020年3月の羽田空港への導入に続き、成田空港、公共施設、オフィスビル等で稼働しております。
《医療分野》
当社グループは、世界初の装着型サイボーグHAL®を利用した脳・神経・筋系の機能改善・機能再生を促進するサイバニクス治療を、グローバルな標準治療とする取り組みを進めています。
医療用HAL®「下肢タイプ」については、日本国内において、緩徐進行性の神経筋難病疾患の使用成績調査が2020年11月に完了し(実施医療機関20施設、対象患者218名、総治療6,486回)実際の臨床現場における使用においても、極めて高い有効性と安全性を示す結果が得られました。脳卒中患者への適応拡大に向けた医師主導治験は2020年12月に完了し、治験データの解析作業が進行中です。

欧州においては、新たにスペイン、スイス、セルビアの3カ国で導入されました。米国においては、米国食品医薬品局(FDA)より、既に承認済みの脊髄損傷に加えて、2020年10月に脳卒中及び神経筋難病に対しても臨床上の効果効能と安全性が認められ、医療機器承認を取得しました。さらに、アジア太平洋(APAC)の主要国での医療機器化を推進し、中核拠点であるマレーシアに続き、タイ、インドネシア、シンガポール、台湾(脊髄損傷のみ)、オーストラリアにおいて脳卒中、脊髄損傷、神経筋難病等の幅広い疾患で新たに医療機器承認・認証を取得するとともに、サイバニクス治療の普及が加速しています。
HAL®「単関節タイプ」については、2019年10月に欧州における医療機器の認証を取得していますが、2020年7月に日本でも医療機器としての認証を取得し、同年8月には脳血管疾患などのリハビリテーションに対して運動量増加機器として保険適用が決定しました。欧州や日本に続いて、米国やAPACの主要国(タイ、インドネシア、台湾、オーストラリアなど)でも医療機器化の準備を進めています。

《福祉分野》
当社グループは、主に高齢者の要介護度の改善や重度化防止及び加齢により身体機能が低下するフレイル予防や自立維持に向けて、歩行運動に対応した「下肢タイプ」、肘・膝・足首の関節運動に対応した「単関節タイプ」、体幹運動に対応した「腰タイプ」など様々な種類のHAL®自立支援用を展開しています。
(施設型サービスの展開)
HAL®を使用した脳・神経・筋系の機能改善を促す「Neuro HALFIT」プログラムを提供するロボケア事業は、当社グループ並びに各地域の事業パートナーとの協働により、全国16箇所で展開しています。また、2020年11月には、エムスリーグループの株式会社ワイズと事業提携し、同社が運営する生活期の保険外リハビリ最大手「脳梗塞リハビリセンター」でもHAL®単関節タイプ・腰タイプを利用した専用プログラムをご利用いただけるようになりました。

(個人向けサービス「自宅でNeuro HALFIT」の展開)
2020年4月より個人向けレンタルとして非接触型の新しい在宅サービス「自宅でNeuro HALFIT」の提供を開始しました。本サービスの本格展開にあたり、2020年11月には、サイバーダインのクラウドとデータ連動することで身体動作を指令する生体電位信号や姿勢情報等を可視化するHALモニターによって、装着者自身が視覚的にフィードバックを得ることができるだけでなく、セラピストやトレーナーなどの専門スタッフによる遠隔でのオンラインサポートが可能になりました。同時に、当該サービスのオンラインストア「CYBERDYNE STORE」をオープンし、個人の利用者様へのアクセスを容易にいたしました(2021年3月末時点で累計契約134件)。今後更なる認知度向上と普及を図ってまいります。
《生活・職場分野》(作業支援用HAL)
防塵・防水対応の「HAL®腰タイプ作業支援用(LB03)」は、作業者の腰部負荷低減による労務環境改善に向けて空港、建設、物流などの大口ユーザーへの導入を進めています。また、令和2年7月豪雨で甚大な被害を受けた熊本県及び大分県のボランティアの方の作業負荷軽減のため、更に12月の大雪被害で通行止めとなった関越自動車道でのNEXCO東日本のグループ会社の作業員の方の除雪作業の負荷軽減のため、HAL®腰タイプ作業支援用を無償貸与し、災害復旧活動に貢献しています。

(自律走行ロボット)
世界最高水準のSLAM技術による高速自律走行を実現した次世代型清掃ロボット(CL02)は、商業施設やオフィスビル及び国際空港で本格運用されています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に対応して、2020年3月にCL02に消毒液噴霧器を搭載した自律走行ロボットの展開を開始し、羽田空港・成田空港、公共施設、オフィスビル等で運用されています。2020年5月には日本信号株式会社との協業を開始し、駅や駅ビルなどの交通インフラ施設にCL02の展開を進めています。さらにエレベータを自動昇降するためのマルチベンダー対応エレベータ連動ユニットを開発し、2020年8月に株式会社東急コミュニティーと共同実証を開始しています。

研究・製品開発の状況
疾病の予防・早期発見を目的とした小型バイタルセンサーについては、動脈硬化・不整脈を早期に捉えることを目的とした手のひらサイズの動脈硬化計に対してユーザビリティを高める新機能追加などを進めています。また、心電等の各種バイタル情報の小型センシングデバイスや、微細血管情報のリアルタイム解析のための光音響イメージングの研究開発を進めています。
また、当社グループは、高齢者や障がい者向けの自立支援ロボットとしては、歩行機能を維持向上するための衣服型HAL、バイタル・環境情報を取得しつつ会話機能を備えてADL(日常生活動作)を維持向上するための見守り・コミュニケーションロボット、歩行困難な方のためのパーソナルモビリティロボットなどの研究開発を進めています。さらに、サイバニクス技術を搭載した各種サイバニクスデバイスから得られたIoH/IoTビッグデータの集積・解析・AI処理等を行う統合サイバニクスシステムの開発も進めており、2020年11月にはサイバーダイン・クラウドをリリースしました。
なお、川崎市の殿町国際戦略拠点(キングスカイフロント)において、HALの臨床研究に加えて、再生医療や創薬などのバイオ系の研究を推進するサイバニクスイノベーションベースA棟を2020年12月に着工しました(2022年2月の竣工を予定)。
製品稼働状況について
医療用HAL®下肢タイプは、主にAPAC向けレンタルの増台により、2021年3月末時点で臨床試験用も含め国内外あわせて351台(内、国内レンタル契約81台)が稼働中です。HAL®単関節タイプは、医療用の増加により、2021年3月末時点で391台(内、個人向けレンタル契約8台)が稼働中です。
HAL®福祉用等の下肢タイプは、耐用年数経過機体の廃棄があり、2021年3月末時点の稼働台数は342台となっています。また、HAL®腰タイプ介護・自立支援用は、旧モデル廃棄があったものの、個人向けレンタルが増加し、2021年3月末時点で1,074台(内、個人向けレンタル契約58台)が稼働中です。
HAL®腰タイプ作業支援用は、主に空港向けのレンタル減少により、2021年3月末時点の稼働台数は459台となっています。また、清掃ロボット及び搬送ロボットは、2021年3月末時点において141台が稼働中です。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上収益は、新型コロナウイルス感染症の影響によりトレーニングサービス売上等が減少したものの、商品及び製品の販売売上等の増加により、1,875百万円(前年同期比4.6%増加)を計上しました。売上総利益は1,283百万円(同1.3%減少)となりました。
研究開発費は前年度に引き続き新製品の自社開発及び受託研究事業の実施により689百万円(同15.1%減少)を計上、その他の販売費及び一般管理費は1,471百万円(同10.7%減少)を計上しました。
その他の収益は、受託研究事業収入などにより181百万円(同30.6%増加)を計上、その他の費用4百万円(同75.4%減少)を計上した結果、営業損失は700百万円(同32.6%減少)を計上しました。
また、金融収益は投資有価証券評価益などにより770百万円、CEJファンドに係る損益359百万円、法人所得税費用は繰延税金費用などにより479百万円等を計上した結果、親会社の所有者に帰属する当期損失は59百万円(同61.4%減少)を計上しています。
なお、当社は独自技術を持ったスタートアップ企業との業務提携や資本提携を行なっており、当該非上場株式についてIFRS第9号「金融商品」に基づき公正価値を算定しています。当連結会計年度において、公正価値を算定した結果、投資有価証券評価益1,465百万円を「金融収益」及び「CEJファンドに係る損益」に含めて計上しました。また、当該評価に関する税金費用502百万円を「法人所得税費用」として計上、CEJファンドの外部投資家持分への振替額325百万円を計上した結果、「当期利益」に与える影響額は638百万円となります。
(3)財政状態の分析
① 資産
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末比311百万円増加し、48,119百万円となりました。これは主として、現金及び現金同等物が2,932百万円、棚卸資産が24百万円、使用権資産が24百万円減少したものの、その他の金融資産(非流動)が2,399百万円、有形固定資産が653百万円、その他の流動資産が194百万円増加したことによるものです。
② 負債
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末比783百万円増加し、4,332百万円となりました。これは主として、リース負債(非流動)が33百万円、その他の流動負債が188百万円減少したものの、CEJファンドにおける外部投資家持分が715百万円、繰延税金負債が279百万円増加したことによるものです。
③ 資本
当連結会計年度末における資本は、前連結会計年度末比473百万円減少し、43,786百万円となりました。これは、その他の資本の構成要素が418百万円、親会社の所有者に帰属する当期損失の計上に伴い利益剰余金が59百万円減少したことによるものです。
(4)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ2,932百万円減少し6,704百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、775百万円の資金流出(前連結会計年度は215百万円の資金流出)となりました。これは主に、税引前利益を408百万円、減価償却費及び償却費を463百万円計上したものの、金融収益を770百万円、CEJファンドに係る損益を359百万円を計上し、その他に前連結会計年度の法人事業税(資本割)や固定資産税の納付等による資金流出が生じたことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、2,794百万円の資金流出(前連結会計年度は244百万円の資金流出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出1,716百万円、有形固定資産の取得による支出1,070百万円を計上したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、617百万円の資金流入(前連結会計年度は1,304百万円の資金流入)となりました。これは主に、CEJファンドにおける外部投資家からの払込による収入680百万円によるものです。
(5)生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
| 生産高(百万円) | 前年同期比(%) | |
| ロボット関連事業 | 385 | 116.2 |
| 合計 | 385 | 116.2 |
(注)1.単一セグメントであるため、セグメント別の生産実績は記載していません。
2.金額は、製造原価及び自社製作資産により表示しています。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |||
| 受注高 (百万円) | 前年同期比 (%) | 受注残高 (百万円) | 前年同期比 (%) | |
| ロボット関連事業 | 2,445 | 113.3 | 51 | 96.0 |
| 合計 | 2,445 | 133.3 | 51 | 96.0 |
(注)1.単一セグメントであるため、セグメント別の受注実績は記載していません。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
| 販売高(百万円) | 前年同期比(%) | |
| ロボット関連事業 | 1,875 | 104.6 |
| 合計 | 1,875 | 104.6 |
(注)1.単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績は記載していません。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3.外部顧客への売上収益のうち、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しています。
(6)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績に重要な影響を与える要因について
本書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりです。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、現在、運転資金及び開発投資等の資金需要に対しましては、自己資金を充当することを基本としています。当連結会計年度末時点において、事業活動の維持に必要な手元資金を保有しており、充分な流動性を確保していると考えています。
③ 経営者の問題意識と今後の方針について
当社の経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案し、社会貢献を前提として企業価値を最大限に高めるべく努めています。具体的には本書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
④ 新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響について
新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響に関して、当社が会計上の見積りを行うにあたり置いた仮定については、本書「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
⑤ 経営上の重要な非財務指標
当社グループでは、経営上の重要な非財務指標として、HAL®等の稼働台数を活用しています。
当社グループの主たる収益源は、HAL®等のレンタル・保守に係る売上であり、レンタル・保守契約に係る売上は、レンタル期間にわたり収益が計上されるため、翌会計年度以降にわたる継続的な収益計上が見込まれます。
当社グループは、恒常的な業績や将来の見通しを把握することを目的として、HAL®等の稼働台数を取締役会へ報告しています。
(単位:台)
| 稼働台数 | 2017年3月末 | 2018年3月末 | 2019年3月末 | 2020年3月末 | 2021年3月末 | ||||
| HAL®医療用 (下肢タイプ) | 188 | 257 | 291 | 310 | 351 | ||||
| HAL®福祉用等 (下肢タイプ) | 422 | 398 | 357 | 357 | 342 | ||||
| HAL®単関節タイプ | 208 | 234 | 252 | 300 | 391 | ||||
| HAL®腰タイプ 自立支援用及び 介護支援用 | 714 | 847 | 919 | 951 | 1,074 | ||||
| HAL®腰タイプ 作業支援用 | 274 | 372 | 572 | 624 | 459 | ||||
| 清掃ロボット及び 搬送ロボット | 21 | 27 | 44 | 75 | 141 | ||||
| 合計 | 1,827 | 2,135 | 2,435 | 2,617 | 2,758 |
