四半期報告書-第5期第3四半期(平成27年7月1日-平成27年9月30日)

【提出】
2015/11/12 13:15
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【項目】
21項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
なお、当社は、前第3四半期累計期間については四半期財務諸表を作成していないため、前年同四半期累計期間との比較分析は行っておりません。
(1)業績の状況
当第3四半期累計期間のわが国経済は、中国経済の減速や米国利上げ観測の影響等により新興国経済の先行き懸念が出てきていますが、良好な企業収益や雇用・所得の改善などを背景に、穏やかな景気回復基調が続きました。
再生医療業界においては、再生医療等製品の実用化に関して2つの大きな進展が見られました。1つ目は、平成26年11月に施行された改正薬事法(医薬品医療機器等法)に基づき、他社が再生医療等製品として初めて承認申請を行っていた2製品につき、平成27年9月に厚生労働省より製造販売承認が与えられたことです。2製品のうち1つは、日本初の他家(他人の細胞)由来の再生医療等製品であり、もう1つの製品は法改正で新設された条件及び期限付承認を取得しています。2製品ともに承認申請から1年以内という迅速な承認であり、再生医療等製品の実用化を積極的に推進する日本政府の姿勢を裏付ける内容となっております。
2つ目は、平成27年10月に当社の共同研究先である国立研究開発法人理化学研究所(以下「理化学研究所」といいます。)をはじめとする関係機関より、自家(患者さん本人の)iPS細胞を用いた世界初の臨床研究に関して平成27年9月に1年が経過し、その経過観察結果が良好と発表されたことです。今回の臨床研究は、滲出型加齢黄斑変性の新規治療法開発を目的として、自家iPS細胞から作製した網膜色素上皮(以下「RPE」といいます。)細胞シートを網膜下に移植した際の安全性を確認することを主目的とするものであり、発表では「安全性の確認を主目的とした本臨床研究第一症例目の結果は術後1年経過の現時点では良好と評価できる」と報告されました。当社が国内において大日本住友製薬株式会社(以下「大日本住友製薬」といいます。)と共同開発を行っている加齢黄斑変性の治療法(以下「当社治療法」といいます。)は、他家iPS細胞を原材料としており、自家iPS細胞から作製した今回の臨床研究とは異なりますが、iPS細胞から作製したRPE細胞を患者さんのRPE細胞と置き換えるという治療コンセプトは同じであるため、今回の臨床研究の第一症例にて、1年目の安全性が確認され、視力の悪化が抑えられているというデータが得られたことは、当社治療法に対する支援材料と考えています。
このように再生医療等製品の実用化に向けた国内における取組みが進む中で、当社はiPS細胞を培養・分化誘導して作製した人体組織と同等の機能を持つ細胞医薬品(iPSC再生医薬品)という新しいカテゴリーの医薬品を開発から承認取得、製造販売まで一貫して行う体制の構築を目指しています。国内においては共同開発のパートナーである大日本住友製薬と他家iPS細胞由来RPE細胞を懸濁液としたiPSC再生医薬品の開発を進めており、平成27年8月に大日本住友製薬は、京都大学iPS細胞研究所から再生医療用iPS細胞の親株を受領しました。当社は、大日本住友製薬とともに今後、この再生医療用iPS細胞を培養・分化誘導して、RPE細胞を作製し、平成29年中に加齢黄斑変性を対象とした治験を開始すべく、準備を進めております。
以上の結果、当第3四半期累計期間の業績は、売上高は76,333千円、営業損失は705,586千円、経常損失は611,042千円、四半期純損失は582,030千円となりました。なお、売上高の構成は、欧州での眼科手術補助剤BBG250の売上に係るロイヤルティ収入及び再生医療事業の取組みに関するコンサルティング収入からなります。
(2)財政状態の分析
(資産)
流動資産は、前事業年度末と比べて7,540,854千円増加し、9,604,865千円となりました。これは、新規上場に伴う公募増資及びオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資等により現金及び預金が7,599,509千円増加したことなどによるものであります。
固定資産は、前事業年度末に比べて86,674千円増加し、1,194,451千円となりました。これは、株式会社サイレジェンへの追加出資150,000千円などによるものであります。
(負債)
流動負債は、前事業年度末に比べて545,339千円増加し、1,021,279千円となりました。これは、大日本住友製薬が負担する開発費用に係る前受金の受領873,394千円などによるものであります。
固定負債は、前事業年度末に比べて767千円減少し、30,411千円となりました。
(純資産)
純資産は、前事業年度末に比べて7,082,958千円増加し、9,747,626千円となりました。これは、新規上場に伴う公募増資及びオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資により資本金及び資本剰余金がそれぞれ3,846,888千円増加したこと、四半期純損失582,030千円を計上したことなどによるものであります。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期累計期間において、当社が対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当第3四半期累計期間においては、開発人員の増強を行い、開発体制の強化を推進したほか、以下のとおり、iPSC再生医薬品分野及び化合物医薬品分野について、研究開発を推進いたしました。
当第3四半期累計期間の研究開発費の総額は、375,532千円であります。なお、当該費用は、国内におけるRPE細胞製品の共同開発先である大日本住友製薬による開発費用の負担分を控除した後の金額になります。
① iPSC再生医薬品分野
当第3四半期累計期間においては、iPS細胞由来のRPE細胞を用いた治験への準備が国内外で進捗しました。
国内においては、CPC(細胞培養センター:Cell Processing Centerの略)でのiPS細胞を用いたRPE細胞の製造最適化作業が最終段階に入っております。また、RPE細胞の凍結保存方法に関する研究を踏まえて、実用化に向けての検討が進んでおります。加えて、本製品の適応疾患である加齢黄斑変性の疾患モデル動物での有効性評価が進行しております。一方、治験に使用するiPS細胞については大日本住友製薬においてマスターセルバンク(※)の作製が開始されております。
また、海外においては、海外での治験に用いるRPE細胞の受託製造会社に対する、当社が国内で確立したRPE細胞への分化誘導方法の移管が完了し、品質管理試験の条件検討も含めて最適化を進めております。
※ マスターセルバンクとは、RPE細胞の原料となるiPS細胞を培養して増殖させた後に小分け貯蔵したものをいいます。
② 化合物医薬品分野
当第3四半期累計期間においては、欧州で販売されている眼科手術補助剤(HLM0022)の日本での製造販売承認(HLM0021)に向けた取組みを進めました。具体的には、HLM0021については、国内の原薬受託製造会社において安定性試験に向けた原薬の必要量の一部の製造を完了いたしました。また、HLM0021の製剤についても、HLM0022の製剤を製造している欧州の受託製造会社において製造体制の準備が進んでおります。
なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。