四半期報告書-第8期第2四半期(平成30年4月1日-平成30年6月30日)

【提出】
2018/08/07 15:12
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【項目】
26項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
(1)業績の状況
再生医療業界においては、2018年5月に、大阪大学による他家iPS細胞由来心筋細胞シートの移植に関する臨床研究の実施が条件付きにて承認されたことが大きな話題となりました。当社の共同研究先である理化学研究所等による他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植の臨床研究に続く、他家iPS細胞由来細胞のヒトへの投与となりますが、網膜色素上皮(RPE)細胞と比べて心筋シートの移植においては必要となる細胞量が多いこと、免疫抑制剤を数か月にわたり使用する予定であること、また心疾患は日本人の死因の第2位であり患者数も多いこと等の点から、一層慎重な臨床応用が求められると同時に、再生医療の更なる広がりの可能性を実証するものとして注目を集めています。
このような状況のもと、当社は体性幹細胞再生医薬品分野及びiPSC再生医薬品分野において開発を推進いたしました。
体性幹細胞再生医薬品分野においては、パートナーである米国Athersys, Inc.(以下、アサシス社といいます。)と同年3月に締結した幹細胞製品MultiStemの独占的ライセンス権及びオプション権拡大に関する基本合意に基づき交渉を重ねた結果、同年6月までに以下の独占的ライセンス権を獲得いたしました。
-日本国内:急性呼吸窮迫症候群(ARDS)治療法の開発・販売
-日本国内:iPS 細胞由来製品(対象臓器に制限あり)と MultiStem 併用療法の開発・販売
-全世界:臓器原基の MultiStem を併用した開発・販売
-全世界:MultiStem 単体での眼科疾患治療法開発・販売
-全世界:iPS/ ES 細胞由来眼科製品と MultiStem 併用療法の開発・販売
これらのうち、ARDSを対象疾患とした治療法については、開発を開始しております。
また、同6月には、当社代表執行役の鍵本がアサシス社の取締役として指名されました。
iPSC再生医薬品分野においては、同年5月、iPS細胞由来RPE細胞製品に関し米国眼科研究所(NEI)と共同研究開発契約を締結いたしました。また同年6月、臓器原基技術の実用化の加速のため、子会社として株式会社器官原基創生研究所を設立いたしました。
以上の結果、当第2四半期累計期間の業績は、営業損失は3,301百万円(前年同期は935百万円の営業損失)、経常損失は3,320百万円(前年同期は981百万円の経常損失)、四半期純損失は3,323百万円(前年同期は342百万円の四半期純損失)となりました。
(2)財政状態の分析
①資産、負債及び純資産の状況
(資産)
流動資産は、前事業年度末と比べて4,018百万円減少し、15,269百万円となりました。これは、現金及び預金が4,253百万円減少したことなどによるものであります。
固定資産は、前事業年度末に比べて2,772百万円増加し、3,180百万円となりました。これは、投資有価証券が2,722百万円増加したことなどによるものであります。
(負債)
流動負債は、前事業年度末に比べて2,248百万円増加し、3,549百万円となりました。これは、1年内返済予定の長期借入金が1,000百万円、未払金が778百万円、前受金が565百万円増加したことなどによるものであります。
固定負債は、前事業年度末に比べて477百万円減少し、1,754百万円となりました。これは、長期借入金が586百万円減少したことなどによるものであります。
(純資産)
純資産は、前事業年度末に比べて3,017百万円減少し、13,146百万円となりました。これは、四半期純損失3,323百万円を計上したことなどによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況
当第2四半期会計期間末における現金及び現金同等物(以下、資金といいます。)は、前事業年度末と比べて4,253百万円減少し、14,787百万円となりました。
当第2四半期累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は2,263百万円となりました(前年同期は465百万円の資金の使用)。これは主に、営業損失3,301百万円の計上、未払金の増加771百万円、前受金の増加576百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は2,465百万円となりました(前年同期は1,270百万円の資金の獲得)。これは、投資有価証券の取得による支出2,391百万円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は479百万円となりました(前年同期は7,427百万円の資金の獲得)。これは、長期借入れによる収入1,500百万円、長期借入金の返済による支出1,086百万円等があったことによるものであります。
(3)経営方針・経営戦略等
当第2四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期累計期間において新たに発生した事業上及び財務上の対処すべき課題はありません。
(5)研究開発活動
当第2四半期累計期間においては、体性幹細胞再生医薬品、iPSC再生医薬品の各分野において開発体制を強化したほか、以下のとおり研究開発を推進いたしました。
当第2四半期累計期間における研究開発費の総額は、2,890百万円(前年同期は626百万円)であります。なお、当該費用は、国内におけるRPE細胞製品の共同開発先である大日本住友製薬株式会社(以下、大日本住友製薬といいます。)による開発費用の負担分を控除した後の金額になります。
①体性幹細胞再生医薬品分野
当第2四半期累計期間において、アサシス社の創製した幹細胞製品MultiStemを用いた日本国内における脳梗塞急性期に対する治療法の承認取得に向け、有効性及び安全性を検討するプラセボ対照二重盲検第Ⅱ/Ⅲ相試験(治験名称:TREASURE試験)の実施に努めました。なお、アサシス社は、同製品を用いて欧米にて脳梗塞急性期を対象とした第Ⅲ相試験(治験名称:MASTERS-2)を実施しており、2018年7月より被験者組み入れが開始されました。
またアサシス社との提携拡大により、MultiStemを用いた日本国内における急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を適応疾患とした新規治療法の開発を開始いたしました。
アサシス社は、欧米にてARDS患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験を実施中であります。当社は、アサシス社の治験計画も参考にしながら、救命・呼吸器科のキーオピニオンリーダー(KOL)の先生方と意見交換の上、早期の治験開始を目指し、準備を進めております。
②iPSC再生医薬品分野
当第2四半期累計期間において、眼科分野及び肝疾患分野において開発を進めました。
(i)眼科分野
iPS細胞由来RPE細胞を用いた加齢黄斑変性の治療法開発にむけて治験への準備を国内外にて進めてまいりました。
国内においては、当該製品の適応疾患である加齢黄斑変性の疾患モデル動物での有効性評価や、移植用デバイスの検討等を進め、治験開始に向けて規制当局との相談を重ねております。大日本住友製薬との合弁会社であるサイレジェンにおいては、大日本住友製薬が新たに大阪府吹田市に建設した再生・細胞医薬製造プラントSMaRT内の施設において、製造体制の構築に向けた準備を進めております。
海外においては、欧米での治験に使用することを想定したiPS細胞のマスターセルバンクの製造が完了しており、2018年5月よりそのiPS細胞マスターセルバンクを用いて、米国眼科研究所(NEI)との共同研究開発を開始いたしました。NEIは米国国立衛生研究所(NIH)に属する、眼科分野の専門研究所です。本共同研究開発では、当社が他家iPS細胞マスターセルバンクを提供し、NEIはそのiPS細胞を用いてGMPに準拠した製造方法にてiPS細胞由来RPE細胞シートを作製し、その作製された細胞製品が加齢黄斑変性の治療法として使用可能かを評価します。その結果を参考にしながら、当社は米国における臨床試験の実施にむけた検討を進めてまいる予定です。
(ⅱ)肝疾患分野
公立大学法人横浜市立大学との、機能的なヒト臓器を創り出す3次元臓器に関する共同研究では、肝臓原基の製造に向けて共同研究を進めております。肝臓原基は、肝細胞に分化する前の肝前駆細胞を、細胞同士をつなぐ働きを持つ間葉系幹細胞と、血管をつくりだす血管内皮細胞に混合して培養することで形成されますが、これらの構成細胞の製造と品質に関してデータ取得を進めております。また、同年6月には、臓器原基技術の実用化の加速のため、子会社として株式会社器官原基創生研究所を設立いたしました。同社においては、肝臓分野に限らず、プラットフォーム技術である臓器原基技術の幅広い実用化の推進を目指してまいります。
(ⅲ)次世代にむけた研究活動
次世代のiPS細胞として期待される、HLA型に関わりなく免疫拒絶のリスクの少ないiPS細胞の開発を目指し、米国Universal Cells, Inc.と同社の持つ遺伝子編集技術を基に共同研究を進めております。
なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。