四半期報告書-第7期第1四半期(平成29年1月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/05/12 15:36
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【項目】
23項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
(1)業績の状況
再生医療業界においては、平成29年3月に第16回日本再生医療学会総会が開催され、「再生医療ルネサンス」というテーマのもと、研究者のみならず経済・産業界、行政など様々な立場から再生医療に関わる方々が集い、その実用化に向けた取り組みに関して発表がなされました。また、同月、理化学研究所等により、「滲出型加齢黄斑変性に対する他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞懸濁液移植に関する臨床研究」の1例目の移植手術が実施されました。他人の細胞から作製して備蓄されていたiPS細胞を用いた世界で初めての移植であり、自家(患者本人)の細胞から作る場合に比べて費用や準備期間が削減されることからiPS細胞を用いた治療法開発の実用化に向けて大きな一歩となりました。また、剤型についても、細胞シートに比べて手術の際のリスクが少ないと考えられる細胞懸濁液(浮遊液)での投与となり、治療法の普及に向けた検討が加速することが期待されます。
このような状況のもと、当社は体性幹細胞再生医薬品分野及びiPSC再生医薬品分野において開発を推進いたしました。一方、化合物医薬品分野に関しては事業譲渡を決定し、再生・細胞医療分野へ経営資源を集中させることといたしました。
さらに、平成29年2月に、株式会社ニコン(以下、ニコンといいます。)と業務・資本提携契約を締結いたしました。当社においては、再生医療分野における新規シーズの探索・開発を推進し、ニコンにおいては、それらの新規シーズを主として製造受託・画像評価の観点から支援すること等により、当社とニコンが相互に再生医療分野における更なる成長可能性を追求してまいります。
以上の結果、当第1四半期累計期間の業績は、売上高は20,965千円(前年同期比1.5%増)、営業損失は490,230千円(前年同期は2,114,905千円の営業損失)、経常損失は525,187千円(前年同期は2,128,741千円の経常損失)、四半期純損失は526,428千円(前年同期は2,131,658千円の四半期純損失)となりました。
なお、当社は、今後の企業価値の向上に必要となる資金調達を目的として、平成29年3月に、野村證券株式会社を割当先とする行使価額修正条項付第10回新株予約権を発行しております。
(2)財政状態の分析
(資産)
流動資産は、前事業年度末と比べて1,426,548千円増加し、9,500,380千円となりました。これは、現金及び預金が1,413,873千円増加したことなどによるものであります。
固定資産は、前事業年度末に比べて37,279千円減少し、1,063,869千円となりました。これは、無形固定資産が25,215千円減少したことなどによるものであります。
(負債)
流動負債は、前事業年度末に比べて93,690千円減少し、678,552千円となりました。これは、前受金が198,714千円減少したことなどによるものであります。
固定負債は、前事業年度末に比べて43,324千円減少し、2,364,983千円となりました。これは、長期借入金が43,000千円減少したことなどによるものであります。
(純資産)
純資産は、前事業年度末に比べて1,526,284千円増加し、7,520,713千円となりました。これは、資本業務提携に伴う第三者割当による新株の発行、第三者割当による新株予約権の発行などにより資本金及び資本剰余金がそれぞれ1,000,558千円増加したこと、四半期純損失526,428千円を計上したことなどによるものであります。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期累計期間において新たに発生した事業上及び財務上の対処すべき課題はございません。
(4)研究開発活動
当第1四半期累計期間においては、体性幹細胞再生医薬品、iPSC再生医薬品の各分野において開発体制を強化したほか、以下のとおり研究開発を推進いたしました。
当第1四半期累計期間における研究開発費の総額は、340,481千円(前年同期は1,980,090千円)であります。なお、当該費用は、国内における網膜色素上皮(RPE)細胞製品の共同開発先である大日本住友製薬株式会社(以下、大日本住友製薬といいます。)による開発費用の負担分を控除した後の金額になります。
①体性幹細胞再生医薬品分野
当第1四半期累計期間において、米国Athersys, Inc.(以下、アサシス社といいます。)の開発する幹細胞製品MultiStem®を用いた日本国内における脳梗塞急性期に対する治療法の承認取得に向け、各医療機関にて患者投与開始にむけて治験準備を進めました。
また、平成29年2月に、当該製品が厚生労働省より「先駆け審査指定制度」の対象品目として指定を受けました。
「先駆け審査指定制度」とは、患者に世界で最先端の治療薬を最も早く提供することを目指し、一定の要件を満たす画期的な新薬等について、開発の比較的早期の段階から先駆け審査指定制度の対象品目に指定し、薬事承認に係る相談・審査における優先的な取扱いの対象とするとともに、承認審査のスケジュールに沿って申請者における製造体制の整備や承認後円滑に医療現場に提供するための対応が十分になされることで、更なる迅速な実用化を図るものです。この制度により、優先審査・事前評価などが適用され、審査期間が6か月まで短縮される可能性があります。
さらに、アサシス社により当該製品を用いて欧米にて実施された第Ⅱ相臨床試験の結果が、外部査読者により審査される医学雑誌 “The Lancet Neurology” に掲載されました。本論文において改めて、MultiStemの脳梗塞急性期の患者さんへの投与が安全であり忍容性(※)が良好であることが示されました。また36時間以内の患者を対象とした有効性を検証する臨床試験が計画されている、と当社実施の治験についても言及されています。
(※)忍容性とは、薬物によって生じたと判断した有害作用(副作用)が、被験者にとってどれだけ耐え得るかの程度を示したものです。
②iPSC再生医薬品分野
当第1四半期累計期間において、iPS細胞由来RPE細胞を用いた加齢黄斑変性の治療法開発にむけて治験への準備を国内外にて進めてまいりました。
国内においては、当該製品の適応疾患である加齢黄斑変性の疾患モデル動物での有効性評価や、免疫拒絶反応モデルを用いた免疫抑制処方の検討等を進めております。また大日本住友製薬との合弁会社である株式会社サイレジェンにおいて、CPC(細胞培養センター:Cell Processing Centerの略)でのRPE細胞製造及び条件最適化作業が進行しております。
海外においては、RPE細胞の受託製造会社において、海外での治験に用いるRPE細胞のCPC内におけるRPE細胞培養条件の最適化検討及び欧米での治験に使用することを想定したiPS細胞のマスターセルバンクの製造等を進めております。また、公立大学法人横浜市立大学との、機能的なヒト臓器を創り出す3次元臓器に関する共同研究では、肝臓原基の製造に向けて共同研究を進めております。肝臓原基は、幹細胞に分化する前の肝臓前駆細胞を、細胞同士をつなぐ働きを持つ間葉系幹細胞と、血管をつくりだす血管内皮細胞に混同して培養することで形成されますが、これらの構成細胞の製造に関してデータ取得を進めております。
さらに、次世代のiPS細胞として期待される、HLA型に関わりなく免疫拒絶のリスクの少ないiPS細胞の開発を目指し、米国Universal Cells, Inc.と同社の持つ遺伝子編集技術を基に共同研究を進めております。
③化合物医薬品分野
当第1四半期累計期間において、BBG250を含有する眼科手術補助剤にかかる事業を株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所に譲渡することを決定し、各関係機関との調整を図りました。
なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。