有価証券報告書-第14期(2025/04/01-2026/03/31)
③戦略
当社グループは、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に貢献するため、CO₂排出量(Scope1,2)の削減を着実に進め、さらにScope3を含むサプライチェーン全体のCO₂排出量の削減にも積極的に取り組みます。また、新たに拡張する鹿沼事業所第2工場を始めとした製造事業所のスマートファクトリー化と拠点全体の省エネ化によるエネルギー利用効率向上と生産性の両立にも取り組み、社会の脱炭素化に貢献していきます。
これらを達成するために、2028年度までにCO₂排出量(Scope1,2)を2019年度比で38%削減、Scope3は排出量の削減目標を設定し削減施策を実行へ移すことを目標としております。
また、当社グループでは2050年を見据えた長期的な視点から、気候変動に伴うリスクと機会を特定するため、2℃未満シナリオと4℃シナリオの2つを考慮したシナリオ分析を実施しております。これに基づき、順次対象事業カテゴリーの範囲を拡大し、事業への影響評価や対応策の検討を進めております。
A.シナリオ分析対象カテゴリー
当社グループでは、CO₂排出量に大きな影響を与える主要な事業カテゴリーを優先して、2021年度からシナリオ分析を実施しております。2025年度は新たに「精密接合用樹脂」関連の事業カテゴリーを分析対象に追加し、これにより当社グループの6つの事業カテゴリー(反射防止フィルム(ARF)、異方性導電膜(ACF)、光学弾性樹脂(SVR)、二次保護ヒューズ、フォトニクス、精密接合用樹脂)のシナリオ分析を完了いたしました。
取り組み状況とCO2排出量(Scope1,2)カバー率(連結)
B.シナリオの設定
気候変動に関する政府間パネル(以下、IPCCという。)や国際エネルギー機関(以下、IEAという。)が提示する将来的なシナリオに基づき、当社グループへの影響を考察し、財務インパクト試算および移行リスク・機会への対応の取り組みについて検討いたしました。
C.財務インパクト試算
2025年度の当社の成長戦略、環境目標との連動性についてTCFDガイドラインに基づき、以下の3つの時間軸を設定して分析を行いました。
・短期:2028年度(現中期経営計画最終年度)
・中期:2030年度(中長期のCO2削減目標年度)
・長期:2033年度(次期中期経営計画最終年度(想定))
そのうち、短期にあたる2028年度について、設定シナリオ別の違いによって、コスト増加および事業機会の変化が当社業績にどのような影響を及ぼし得るか、主な影響とその要因を整理し下図に示します。
2028年度における設定シナリオ別 財務インパクトの試算

・2℃未満シナリオに基づく財務インパクト試算結果
現中期経営計画における事業利益は、現中期経営計画の公表値をベースに、2℃未満シナリオに基づく追加的な影響を反映した結果、0.9%の増益となると試算しております。前年の試算では0.7%の減益としていましたが、直近の国際機関による予測や事業活動の進展を踏まえ、財務インパクトを更新いたしました。
本試算では、炭素税の導入やエネルギー・材料費の変動などによるコスト増加(移行リスク)が想定される一方、環境配慮材の拡大などによる売上増加(移行機会)を反映しております。主な要因は以下のとおりです。
・材料費の見直し:レアメタルなどの材料については、供給量の拡大が見込まれ、単価上昇リスクが
緩和※2
・事業機会の拡大:環境配慮材の導入対象を拡大し、製品価値向上による増益を試算に反映
移行リスクの主な要因は、炭素税の導入による事業運営コストの増加です。
また、国際的な気候変動シナリオや業界動向(最終製品市場を見据えたお客さまの視点に基づくリスク・機会)を分析し、第三者の助言も踏まえて、移行機会を整理いたしました。検討の結果、以下の機会を特定しております。
・EVおよびEV生産拡大に貢献する製品※3の需要拡大
・環境配慮による製品の付加価値向上と売上増加
このほか、当社グループのフォトニクス技術は、データセンターの電力消費削減への貢献が期待されています。現在、国際機関が提示する将来シナリオとの整合性を調査しており、確認でき次第、当該技術の販売機会を「移行機会」として財務インパクト試算に反映することを検討しております。
これらの移行リスク・機会への対応策については、当社グループの生産・事業部門と組織横断的な議論を重ねながら、今後の取り組みにつなげていきます。
・4℃シナリオに基づく財務インパクト試算結果
現中期経営計画における事業利益は、現中期経営計画の公表値をベースに、4℃シナリオに基づく追加的な影響を反映した結果、7.5%減少すると試算しております。前年の試算では7.9%の減益としていましたが、直近の国際機関による予測や事業活動の進展を踏まえ、財務インパクトを更新いたしました。主な要因は以下のとおりです。
・炭素税単価の見直し:炭素税単価がさらに上昇すると予測
・材料費の見直し:レアメタルを含む材料については、供給量の拡大が見込まれ、単価上昇リスクが
緩和※2
事業機会については、EVの普及の遅れに伴い、EV関連製品の売上機会は減少すると想定する一方、当社製品が関わる「車載ディスプレイの大型化」や「自動運転技術の高度化」への影響は限定的と見ています。
物理リスクについては、気象災害の激甚化による洪水リスクに着目し、ハザードマップを基に、洪水による想定被害額を約5.2億円と試算しました。物理リスクの影響を含めると、現中期経営計画における事業利益は、計画値から8.5%減少すると試算しております。
※2 IEAなどの将来予測を基に当社にて検討
※3 反射防止フィルム(ARF)、二次保護ヒューズ、フォトニクス
D.気候関連のリスク・機会と主な取り組み
抽出したリスクや機会は、気候変動や規制の変化、技術革新などの社会的変化の視点から整理し、それぞれに対する対応策を以下のとおり検討しております。重要度は「影響度」と「発生可能性」の2軸で評価し、特に重要と判断したものは中期経営計画に反映し、さらに検討を進めております。
※1 期間:短期:2028年度(現中期経営計画最終年度)、中期:2030年度(気候変動に関する中期目標年度)、
長期:2033年度(次期中期経営計画最終年度(想定))
※2 財務的影響:小:10億円未満、中:10億円以上、大:40億円以上
※3 FEMS:Factory Energy Management System(工場エネルギーマネジメントシステム)
当社グループは、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に貢献するため、CO₂排出量(Scope1,2)の削減を着実に進め、さらにScope3を含むサプライチェーン全体のCO₂排出量の削減にも積極的に取り組みます。また、新たに拡張する鹿沼事業所第2工場を始めとした製造事業所のスマートファクトリー化と拠点全体の省エネ化によるエネルギー利用効率向上と生産性の両立にも取り組み、社会の脱炭素化に貢献していきます。
これらを達成するために、2028年度までにCO₂排出量(Scope1,2)を2019年度比で38%削減、Scope3は排出量の削減目標を設定し削減施策を実行へ移すことを目標としております。
また、当社グループでは2050年を見据えた長期的な視点から、気候変動に伴うリスクと機会を特定するため、2℃未満シナリオと4℃シナリオの2つを考慮したシナリオ分析を実施しております。これに基づき、順次対象事業カテゴリーの範囲を拡大し、事業への影響評価や対応策の検討を進めております。
A.シナリオ分析対象カテゴリー
当社グループでは、CO₂排出量に大きな影響を与える主要な事業カテゴリーを優先して、2021年度からシナリオ分析を実施しております。2025年度は新たに「精密接合用樹脂」関連の事業カテゴリーを分析対象に追加し、これにより当社グループの6つの事業カテゴリー(反射防止フィルム(ARF)、異方性導電膜(ACF)、光学弾性樹脂(SVR)、二次保護ヒューズ、フォトニクス、精密接合用樹脂)のシナリオ分析を完了いたしました。
取り組み状況とCO2排出量(Scope1,2)カバー率(連結)
| 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | |
| 取り組み状況 | ・TCFD賛同 ・反射防止フィルム(ARF) | ・異方性導電膜(ACF) ・光学弾性樹脂(SVR) ・二次保護ヒューズ | ・無機光学素子(現 フォトニクス) | ・フォトニクス | ・精密接合用樹脂 |
| CO2排出量(Scope1,2) カバー率 | 35% | 56% | 69% | 75% | 89% |
B.シナリオの設定
気候変動に関する政府間パネル(以下、IPCCという。)や国際エネルギー機関(以下、IEAという。)が提示する将来的なシナリオに基づき、当社グループへの影響を考察し、財務インパクト試算および移行リスク・機会への対応の取り組みについて検討いたしました。
| 設定シナリオ | 概要 | 参照シナリオ |
| 2℃未満 シナリオ | 脱炭素への取り組みが進展した結果、産業革命前の水準からの平均気温上昇が今世紀末までに2℃未満に抑えられている。脱炭素社会、循環型社会の実現に向けた動きが加速する。 | ・IEA World Energy Outlook Announced Pledges Scenario ・IEA World Energy Outlook Net Zero Emissions by 2050 ・IPCC AR6 WG1 SSP1-1.9 ・IPCC AR6 WG1 SSP1-2.6 など |
| 4℃シナリオ | 脱炭素への取り組みが進展せず、産業革命前の水準からの平均気温上昇が今世紀末までに 2℃を超える。 | ・IEA World Energy Outlook Stated Policies Scenario ・IPCC AR6 WG1 SSP5-8.5 など |
C.財務インパクト試算
2025年度の当社の成長戦略、環境目標との連動性についてTCFDガイドラインに基づき、以下の3つの時間軸を設定して分析を行いました。
・短期:2028年度(現中期経営計画最終年度)
・中期:2030年度(中長期のCO2削減目標年度)
・長期:2033年度(次期中期経営計画最終年度(想定))
そのうち、短期にあたる2028年度について、設定シナリオ別の違いによって、コスト増加および事業機会の変化が当社業績にどのような影響を及ぼし得るか、主な影響とその要因を整理し下図に示します。
2028年度における設定シナリオ別 財務インパクトの試算

・2℃未満シナリオに基づく財務インパクト試算結果
現中期経営計画における事業利益は、現中期経営計画の公表値をベースに、2℃未満シナリオに基づく追加的な影響を反映した結果、0.9%の増益となると試算しております。前年の試算では0.7%の減益としていましたが、直近の国際機関による予測や事業活動の進展を踏まえ、財務インパクトを更新いたしました。
本試算では、炭素税の導入やエネルギー・材料費の変動などによるコスト増加(移行リスク)が想定される一方、環境配慮材の拡大などによる売上増加(移行機会)を反映しております。主な要因は以下のとおりです。
・材料費の見直し:レアメタルなどの材料については、供給量の拡大が見込まれ、単価上昇リスクが
緩和※2
・事業機会の拡大:環境配慮材の導入対象を拡大し、製品価値向上による増益を試算に反映
移行リスクの主な要因は、炭素税の導入による事業運営コストの増加です。
また、国際的な気候変動シナリオや業界動向(最終製品市場を見据えたお客さまの視点に基づくリスク・機会)を分析し、第三者の助言も踏まえて、移行機会を整理いたしました。検討の結果、以下の機会を特定しております。
・EVおよびEV生産拡大に貢献する製品※3の需要拡大
・環境配慮による製品の付加価値向上と売上増加
このほか、当社グループのフォトニクス技術は、データセンターの電力消費削減への貢献が期待されています。現在、国際機関が提示する将来シナリオとの整合性を調査しており、確認でき次第、当該技術の販売機会を「移行機会」として財務インパクト試算に反映することを検討しております。
これらの移行リスク・機会への対応策については、当社グループの生産・事業部門と組織横断的な議論を重ねながら、今後の取り組みにつなげていきます。
・4℃シナリオに基づく財務インパクト試算結果
現中期経営計画における事業利益は、現中期経営計画の公表値をベースに、4℃シナリオに基づく追加的な影響を反映した結果、7.5%減少すると試算しております。前年の試算では7.9%の減益としていましたが、直近の国際機関による予測や事業活動の進展を踏まえ、財務インパクトを更新いたしました。主な要因は以下のとおりです。
・炭素税単価の見直し:炭素税単価がさらに上昇すると予測
・材料費の見直し:レアメタルを含む材料については、供給量の拡大が見込まれ、単価上昇リスクが
緩和※2
事業機会については、EVの普及の遅れに伴い、EV関連製品の売上機会は減少すると想定する一方、当社製品が関わる「車載ディスプレイの大型化」や「自動運転技術の高度化」への影響は限定的と見ています。
物理リスクについては、気象災害の激甚化による洪水リスクに着目し、ハザードマップを基に、洪水による想定被害額を約5.2億円と試算しました。物理リスクの影響を含めると、現中期経営計画における事業利益は、計画値から8.5%減少すると試算しております。
※2 IEAなどの将来予測を基に当社にて検討
※3 反射防止フィルム(ARF)、二次保護ヒューズ、フォトニクス
D.気候関連のリスク・機会と主な取り組み
抽出したリスクや機会は、気候変動や規制の変化、技術革新などの社会的変化の視点から整理し、それぞれに対する対応策を以下のとおり検討しております。重要度は「影響度」と「発生可能性」の2軸で評価し、特に重要と判断したものは中期経営計画に反映し、さらに検討を進めております。
| 分類 | 気候変動リスク/ 機会項目 | 事業への影響 | 影響を受ける期間※1 | 財務的影響※2 | 対応方針・対応策 | |
| 移行リスク (2℃未満) | 政策・ 法規制 | カーボンプライシング導入による炭素税の上昇 | ・生産コストの増加 | 短期~長期 | 小 | ・製造における省エネ化(歩留まり・ 生産性の向上) ・エネルギー生産性の向上 ・FEMS※3の導入 ・再生可能エネルギーの利用拡大や低炭素燃料への転換 ・DXによる物流効率化 ・材料調達先とのGHG排出量削減に向けた協働 |
| 温室効果ガス(以下、GHGという。)排出量削減に関する規制強化 | ・省エネ・再生可能エネルギーへの対応コストの増加 ・脱炭素化に関連する原材料の需要増加による単価上昇 | 短期~長期 | 中 | |||
| 技術 | 脱炭素・循環型社会に向けた技術の進展 | ・低炭素/脱炭素技術や資源循環への対応の遅れによる機会損失が発生 | 短期~長期 | 小~中 | ・低炭素/脱炭素関連技術の情報収集および対応 ・サプライチェーン上流とのコミュニケーションによる、バイオ、リサイクル材料関連の情報収集 ・梱包材・製品へのバイオ、リサイクル材料の導入 | |
| 評判 | 消費者の志向変化、お客さまの方針変更 | ・気候変動対応が不十分な場合、お客さまやステークホルダーが離れ、売上・シェアに直接的な影響をおよぼす可能性 | ・GHG排出量の可視化(Scope1,2,3および製品カーボンフットプリント)と移行計画の開示 | |||
| 移行機会 (2℃未満) | 政策・ 法規制 | GHG排出量削減に関する 規制強化 | ・製造工程における消費電力削減活動による環境付加価値の向上 ・環境負荷を低減する製品やサービスの需要の増大 | 短期~長期 | 小 | ・CO2排出量のインパクトと財務的効果を勘案し、優先順位を決め計画的に省エネ活動を継続 |
| 小~大 | ・EVおよびその生産拡大に貢献する製品の販売拡大 ・データセンターの省電力ニーズに伴うフォトニクス関連製品の販売拡大 | |||||
| 技術 | 脱炭素・循環型社会に向けた技術の進展 | ・脱炭素に資する技術の開発、ビジネス化 ・包装材の環境配慮素材への切り替えによる付加価値向上 | 短期~長期 | 小~中 | ・環境配慮型包装材を推進 | |
| 物理的変化 (4℃) | 急性 | 気象災害の激甚化 | ・サプライチェーン寸断、原材料供給停止 などによる操業停止 | 短期~長期 | 小 | ・BCPの強化 |
| 慢性 | 地球温暖化による平均気温の上昇 | ・気温上昇への対応コストの増加 | 短期~長期 | 小 | ・空調コストの低減の検討 | |
※1 期間:短期:2028年度(現中期経営計画最終年度)、中期:2030年度(気候変動に関する中期目標年度)、
長期:2033年度(次期中期経営計画最終年度(想定))
※2 財務的影響:小:10億円未満、中:10億円以上、大:40億円以上
※3 FEMS:Factory Energy Management System(工場エネルギーマネジメントシステム)