有価証券報告書-第28期(令和2年7月1日-令和3年6月30日)

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2021/09/29 15:40
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しておりますので、前連結会計年度の数値及び対前期増減率については記載しておりません。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)拡大の影響により、国内及び国外の経済活動が引き続き大きく制限を受け、景気の先行きは依然として不透明な状況が続きました。
このような環境の中、当社は「自治体を通じて人々に新たな価値を提供し、会社及び従業員の成長を追求する」という企業理念のもと事業を展開しており、創業以来、広告事業で自治体に還元した財源確保額は約84.4億円(創業から当連結会計年度まで累計)、エネルギー事業における経費削減は約325億円(サービス開始時から当連結会計年度までに落札した案件の契約期間における経費削減見込み額)を実現し、全国の自治体ひいては住民の皆様へ貢献してまいりました。
2020年8月11日、当連結会計年度を初年度とする3か年の中期経営計画である[HOPE NEXT 3]を公表し、その実現に向けて中期的な成長を視野に捉え事業活動を推進してまいりました。しかしながら、2020年12月中旬から2021年1月下旬にわたり、JEPXでの電力取引価格の高騰が続き、当社業績の中心を担うエネルギー事業に多大なる影響を与えました。
当社の強みは、長年の事業活動を通じて築き上げてきた自治体とのリレーションと、法制度の制定・改正等に基づく「様々な分野における事業化再現性」、また、自治体領域という事業ドメインに基づく「ビジネスの拡大展開における再現性」にあります。これら2段階のフェーズを通じて、既存3事業の成長及び新規事業創出を目指しております。具体的には、広告事業を「利益創出事業」と位置付け、規模適正化による収益性改善を継続しつつ、業績が第4四半期に偏重する傾向を中期的に緩和することで、事業全体におけるコスト効率化と受注単価の向上を図っております。エネルギー事業におきましては、当社の「成長エンジン」として、取引規模の拡大と同時に収益性の安定化を図り、特に短中期的な戦略として、入札による契約獲得を軸とした既存の成長戦略の継続に加えて、個別相対取引による固定的な価格での電力調達とJEPXにおける時価での電力調達を適切にミックスすることで電力仕入価格の変動リスクへの対応を図ってまいりましたが、今回のJEPXの取引価格高騰を受け、方針転換を余儀なくされております。ジチタイワークス事業(旧メディア事業)におきましては、対自治体プロモーション市場について、官民連携や競争促進の余地が大きく、潜在的であると捉えていることから、自治体情報を最上流でキャッチできるポジションの確立を目指し、コンテンツ拡充・情報発信力の強化と情報キャッチアップ力の向上により『ジチタイワークス』ブランドの価値を確固たるものにすることで、市場の顕在化の促進を図っております。その先に、当社を中心とした自治体情報の循環によるさらなる官民連携の促進、また、自治体情報データベースを活用した、事業の強化・支援・創造が可能になると考えております。これを実現するための施策として、さらなるコンテンツ制作体制の充実と、BtoGソリューション(旧BtoGマーケティング)の推進、官民協働を支援するweb上のプラットフォームである「ジチタイワークスHA×SH(ハッシュ)」の運営推進等多面的な展開を進めております。
以上の結果、当社の当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
(財政状態)
当連結会計年度末における資産合計は、10,964,536千円となりました。
当連結会計年度末における負債合計は、13,462,924千円となりました。
当連結会計年度末における純資産合計は、△2,498,387千円となりました。
詳細については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ロ.財政状態の分析」をご参照ください。
(経営成績)
売上高は34,615,567千円、営業損失は6,895,420千円、経常損失は6,935,626千円、親会社株主に帰属する当期純損失は6,978,950千円となりました。
詳細については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 イ.経営成績の分析・評価」をご参照ください。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
a.広告事業
広告事業におきましては、自治体から様々な媒体の広告枠を入札により仕入れ民間企業に販売するSR(SMART RESOURCE)サービス、また、主に自治体が住民向けに発行する冊子について、当社が広告枠を募集し、自治体には冊子マチレットを無償で寄贈するSC(SMART CREATION)サービスを提供しており、事業規模の適正化を推進してまいりました。当社の主要媒体であるマチレットは現在、婚姻・子育て・介護・空き家対策・エンディングノート・おくやみの6テーマを主として全国展開しております。
当連結会計年度のSRサービスの代表例としては、気象庁のホームページ広告運用事業が挙げられます。この事業においては、株式会社ジーニーと業務提携し同社との共同開発による独自の広告配信システムを提供しており、今後全国の自治体においても展開可能な仕組みになっております。
また、「SMART FR CONSULTING」サービスを新たに提供開始し、広告募集支援から媒体創出・活用コンサルティング領域に進出いたしました。「SMART FR CONSULTING」のFR はFinancial Resources(=財源)の略で、自治体の財源確保のため今後は単なる広告提案に留まらない、幅広い総合提案を目指していきたい、という思いを込めております。2021年6月のサービス開始以降、すでに福岡市から受託をしております。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は1,719,457千円、セグメント利益は328,200千円となりました。
b.エネルギー事業
エネルギー事業におきましては、「電気もジェネリック」という新たな価値の提案により、自治体の経費削減を支援していきたいという思いのもと、「GENEWAT(ジェネワット)」というサービスブランドで電力小売事業を展開しております。当連結会計年度においては、当社グループの成長ドライバーとして、事業規模のさらなる拡大を狙い、落札件数を大きく増加させました。また、2020年10月にはホープエナジーを設立しております。しかしながら、2020年12月中旬から2021年1月下旬にわたるJEPXでの価格高騰、また2021年1月においては、その価格高騰を起因とする多額の不足インバランス料金の発生により電力の仕入価格が大きな影響を受けました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は32,663,973千円、セグメント損失は6,924,860千円となりました。
c.メディア事業
メディア事業におきましては、2021年7月より「ジチタイワークス事業」へ名称変更を行います。約3年半にわたる行政マガジン『ジチタイワークス』の発行で自治体職員の皆様への認知度が向上していることから、次なるステップに向けて事業コンセプトを明確にすることを目的としたものです。今後『ジチタイワークス』は、当社グループの官民連携を推進する様々なサービスを総称するブランドの名称となり、「自治体で働く“コトとヒト”を元気に。」が新コンセプトとなります。
ジチタイワークス事業では、当社グループが今まで培った自治体とのリレーションを活用し、自治体と民間企業のニーズを繋ぐBtoGソリューションの積極的な展開や、当社グループオリジナルのメディアとして、自治体職員の仕事につながるヒントやアイデア、事例などを紹介する冊子『ジチタイワークス』の発行を継続的に行ってまいりました。当連結会計年度においては、自治体職員向けに「ジチタイワークス無料名刺」サービスを2021年6月より開始しております。当該サービスは、自治体職員の大多数が名刺を自前で作成しているという調査結果から、当社グループサービスメニューとして誕生したものです。公務員個人に向けたアプローチを強化することで、「公務員プラットフォーム構想」実現に向けた動きを加速しております。
また、「新型コロナワクチン接種体制:医師・薬剤師採用確約サービス」(エムスリーグループ提供)を支援する株式会社チェンジとの協業により、地方での新型コロナウイルス感染症ワクチン接種における医師採用支援を行っております。当社の自治体リレーションを活かしたBtoGソリューションのサービスを活用したもので、これまで医療人口僅少地を中心に当社より6自治体を紹介し医師採用が決定しており(2021年6月21日時点)、地方での医師採用網のカバー率向上に貢献しております。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は228,944千円、セグメント利益は58,425千円となりました。
d.その他
その他には、主にマチイロ・ジチタイワークスHA×SH(ハッシュ)など他の報告セグメントに含まれないサービスを含めております。なお、ジチタイワークスHA×SH(ハッシュ)については、当社メディア事業部が事業運営を行っておりますが、当該サービスは現段階において投資的フェーズであることから、その他に区分しております。
当連結会計年度における売上高は3,191千円、セグメント損失は47,821千円となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,921,974千円となりました。
当連結会計年度中に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、2,847,320千円となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失6,935,626千円の計上、売上債権の増加3,707,409千円、未払消費税等の減少601,057千円、法人税等の支払額428,964千円があった一方で、営業保証金の減少181,714千円、仕入債務の増加8,543,004千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、4,057千円となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入25,027千円があった一方で、有形固定資産の取得による支出8,720千円、無形固定資産の取得による支出12,176千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、3,475,382千円となりました。これは主に、短期借入金の純増加517,000千円、長期借入れによる収入200,000千円、株式の発行による収入500,182千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入2,777,582千円があった一方で、長期借入金の返済による支出411,952千円、配当金の支払額89,492千円があったことによるものであります。
また、資本の財源及び資金の流動性については次のとおりです。
a.資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、仕入費用及び外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。
b.財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、主に内部資金又は借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、短期借入金又は長期借入金、当座貸越契約、社債で調達しております。当連結会計年度末における有利子負債の残高は、短期借入金、長期借入金及び社債の1,899,610千円となっております。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産実績を定義することが困難であるため、記載を省略しております。
b.仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年7月1日
至 2021年6月30日)
前期比(%)
広告(千円)575,172-
エネルギー(千円)39,422,988-
メディア(千円)--
小計(千円)39,998,161-
その他(千円)--
合計(千円)39,998,161-

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.広告事業及びメディア事業に係る外注費については、記載を省略しております。
3.2021年6月期より連結財務諸表を作成しているため、対前期増減率については記載しておりません。
c.受注実績
当社は受注生産が僅少であるため、記載を省略しております。
d.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
サービスの名称当連結会計年度
(自 2020年7月1日
至 2021年6月30日)
前期比(%)
広告(千円)1,719,457-
エネルギー(千円)32,663,973-
メディア(千円)228,944-
小計(千円)34,612,376-
その他(千円)3,191-
合計(千円)34,615,567-

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.主要な販売先については、相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。
3.2021年6月期より連結財務諸表を作成しているため、対前期増減率については記載しておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項については合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。
なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りのうち、重要なものは以下のとおりであります。
(たな卸資産)
当社のたな卸資産の評価については、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合、簿価切下げの方法によりたな卸資産の評価損を計上しております。
将来の市場環境に重要な変動が生じた場合、たな卸資産の評価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.経営成績の分析・評価
広告事業におけるSRサービスの収益性改善、エネルギー事業における供給件数の順調な増加、メディア事業におけるジチタイワークス誌面リニューアル等による売上高増加により、売上高は34,615,567千円となりましたが、前述のとおりJEPXの市場価格の高騰の影響を大きく受けた結果、売上総損失は5,841,847千円となりました。販売費及び一般管理費は1,053,572千円となりました。結果として、営業損失は6,895,420千円となりました。
営業外損益(純額)は40,206千円の損失となりました。これは、主に株式交付費及び支払利息が多額に発生したためであります。
以上の結果、経常損失は6,935,626千円となりました。
法人税等は、主に均等割額の発生及び繰延税金資産の取り崩し等により、43,323千円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純損失は6,978,950千円となりました。これにより、1株当たり当期純利益は△1,109.09円となりました。
ロ.財政状態の分析
a.資産
当連結会計年度末における総資産合計は10,964,536千円となりました。流動資産は10,396,997千円となり、主な内訳は現金及び預金1,932,991千円、受取手形及び売掛金7,336,855千円、商品及び製品427,497千円、流動資産のその他501,928千円であります。また、固定資産は567,539千円となり、主な内訳は無形固定資産のその他55,922千円、敷金及び保証金458,279千円であります。
b.負債
当連結会計年度末における負債合計は13,462,924千円となりました。流動負債は12,880,045千円となり、主な内訳は買掛金11,290,446千円、短期借入金950,000千円、1年内返済予定の長期借入金366,952千円であります。また、固定負債は582,879千円となり、主な内訳は社債100,000千円、長期借入金482,658千円であります。
c.純資産
当連結会計年度末における純資産合計は、上記親会社株主に帰属する当期純損失6,978,950千円の計上により、2,498,387千円の債務超過となりました。株主資本は△2,530,939千円となり、主な内訳は資本金1,959,676千円、資本剰余金1,913,476千円、利益剰余金△6,333,191千円であります。 以上の結果、自己資本比率は、△23.1%となりました。
ハ.経営成績に重要な影響を与える要因
当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、法的規制等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した経営課題への対応、及び内部管理体制の強化を通して、リスクの低減に努めてまいります。
ニ.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおり、売上高成長率、売上高営業利益率及び従業員一人当たりの売上総利益を経営指標としております。
当連結会計年度においては、前述のとおりエネルギー事業の売上原価高騰の影響を大きく受け、売上高営業利益率は△19.9%、従業員一人当たりの売上総利益は△35,297千円となりましたが、広告事業及びメディア事業における収益性の改善、またエネルギー事業の事業規模適正化によるリスクの極小化を図ることで、引き続きこれらの指標について、改善・向上されるよう取り組んでまいります。