有価証券届出書(新規公開時)

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2019/11/18 15:00
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71項目
(1)経営成績等の状況の概要
第6期事業年度及び第7期第3四半期累計期間における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
第6期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
当事業年度におけるわが国経済は、政府の経済政策や日銀の金融緩和政策等を背景に、企業業績の向上や雇用・所得環境の改善が進み、景気は緩やかな回復基調で推移しました。しかしながら、日本国内で多発した自然災害による景気への影響や米国の通商政策の変化による世界経済への影響が懸念されるなど、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような環境の中、当社は、機能性ペプチドの多様な機能に着目した研究開発を進めるとともに、医薬品、化粧品、医療機器等、広範な分野での事業展開に取り組んでまいりました。
機能性ペプチドSR-0379については、2018年7月に、導出先である塩野義製薬株式会社において、皮膚潰瘍(褥瘡(じょくそう)及び糖尿病性潰瘍)を対象とした第Ⅱ相臨床試験が開始されました。
抗体誘導ペプチドについては、これまで大阪大学及び大日本住友製薬株式会社等との共同研究により研究開発を進めてまいりました。その成果として、2018年3月に、大日本住友製薬株式会社との間で抗体誘導ペプチドFPP003のオプション契約を締結するに至りました。当社は、今後初期臨床試験の実施を予定しており、その後、同社よりオプション権が行使された場合には、北米における独占的開発及び販売権を付与いたします。
抗体誘導ペプチドFPP003については、乾癬及び強直性脊椎炎を対象とした前臨床試験を開始いたしました。なお、強直性脊椎炎を対象とした研究開発については、2018年4月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が公募した「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択され、同機構の支援により前臨床試験を実施しております。
また、2018年9月には、香川大学、大阪大学及び京都府立医科大学と共同提案した家族性大腸腺腫症に対するワクチン開発の研究課題が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が公募した「医療分野研究成果展開事業・産学連携医療イノベーション創出プログラム セットアップスキーム(ACT-MS)」に採択され、産学連携にて共同研究を実施しています。
その他の研究テーマとしては、富士フイルム株式会社との間でヒトパピローマウイルスに関する抗ウイルス薬の共同研究を推進いたしました。
また、2018年7月に、フューチャー株式会社との間で抗体誘導ペプチドを効率的に開発するAIの共同研究契約を締結しました。最先端のAIを活用し、新規の抗原配列を予測する探索システムを構築することにより、抗体誘導ペプチドの活性や開発スピードの向上を目指しております。
株式会社ファンケルとの間で2016年6月より化粧品に配合する機能性ペプチドの共同開発を進めてまいりました。その成果として、2018年3月に同社より同成分が配合された「マイルドクレンジングシャンプー」が発売され、また同年6月には「ボリュームアップシャンプー」が発売されました。
以上の結果、当事業年度の業績は、事業収益355,866千円(前期比251.7%増)、営業損失14,413千円(前期は営業損失198,362千円)、経常損失8,744千円(前期は経常損失193,706千円)、当期純損失11,937千円(前期は当期純損失204,061千円)となりました。なお、事業費用の総額は370,280千円(前期比23.6%増)であり、そのうち事業原価は5,154千円(前期は実績なし)、研究開発費は194,746千円(前期比47.2%増)、その他の販売費及び一般管理費は170,378千円(前期比1.9%増)となりました。
なお、当社は医薬品等の研究開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの情報は記載しておりません。
第7期第3四半期累計期間(自 2019年1月1日 至 2019年9月30日)
当第3四半期累計期間におけるわが国経済は、消費税増税を控えながらも企業収益や雇用環境の改善が続き、緩やかな回復基調で推移いたしました。一方、海外経済の不確実性や米国発の通商政策等の影響により、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような環境の中、当社は、機能性ペプチドの多様な機能に着目した研究開発を進めるとともに、医薬品、化粧品、医療機器等、広範な分野での事業展開に取り組んでまいりました。
機能性ペプチドSR-0379については、導出先である塩野義製薬株式会社により皮膚潰瘍を対象疾患とした第Ⅱ相臨床試験が実施され、当第3四半期累計期間において終了いたしました。
抗体誘導ペプチドFPP003については、2019年4月にオーストラリアにて乾癬を対象疾患とした第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験を開始いたしました。これまでに被験者の組み入れを進めております。
また、強直性脊椎炎を対象疾患とした開発については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、臨床試験を実施するために必要な非臨床試験を実施いたしました。
疼痛領域の抗体誘導ペプチドについては、2019年2月に塩野義製薬株式会社との間で共同研究契約を締結いたしました。同社の疼痛領域に関するノウハウと当社のペプチド創薬に関するノウハウを生かし、新規開発化合物の創出に向けて探索研究を進めております。
当第3四半期累計期間において、塩野義製薬株式会社の開発マイルストーン、大日本住友製薬株式会社の開発マイルストーン及び株式会社メディパルホールディングスの開発支援金を事業収益に計上しました。
以上の結果、当第3四半期累計期間の業績は、事業収益301,417千円、営業損失132,395千円、経常損失78,797千円、四半期純損失80,975千円となりました。なお、事業費用の総額は433,813千円であり、そのうち事業原価は11,391千円、研究開発費は295,657千円、その他の販売費及び一般管理費は126,763千円となりました。
なお、当社は医薬品等の研究開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの情報は記載しておりません。
② キャッシュ・フローの状況
第6期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、税引前当期純損失8,744千円を計上したものの、新株式の発行により459,247千円を調達したこと等により、前事業年度末に比べ445,376千円増加し、当事業年度末には1,239,307千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は11,736千円(前事業年度は308,623千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失8,744千円の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は2,134千円(前事業年度は実績なし)となりました。これは、研究用機器の取得に伴う有形固定資産の取得による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は459,247千円(前事業年度は実績なし)となりました。これは、新株式の発行による収入によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は研究開発を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績は記載しておりません。
b.受注実績
当社は研究開発を主体としており、受注生産を行っておりませんので、受注実績は記載しておりません。
c.販売実績
当社は医薬品等の研究開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの情報は記載しておりません。第6期事業年度及び第7期第3四半期累計期間の販売実績は以下のとおりであります。
第6期事業年度
(自 2018年1月1日
至 2018年12月31日)
第7期第3四半期累計期間
(自 2019年1月1日
至 2019年9月30日)
金額(千円)前年同期比(%)金額(千円)
事業収益 合計355,866251.7301,417

(注)1.最近2事業年度及び第7期第3四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先第5期事業年度
(自 2017年1月1日
至 2017年12月31日)
第6期事業年度
(自 2018年1月1日
至 2018年12月31日)
第7期第3四半期累計期間
(自 2019年1月1日
至 2019年9月30日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
塩野義製薬㈱200,00056.2100,00033.2
㈱メディパルホールディングス100,00098.8100,00028.1100,00033.2
大日本住友製薬㈱6170.650,00014.1100,00033.2

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりましては、決算日における資産及び負債、会計期間における収益及び費用について会計上の見積りを必要としております。この見積りに関しては、過去の実績、適切な仮定に基づいて合理的に計算しておりますが、実際の結果と相違する場合があります。
② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態
第6期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
(資産)
当事業年度末における流動資産は1,369,786千円となり、前事業年度末に比べ522,847千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金445,376千円、貯蔵品48,104千円、前渡金43,249千円の増加によるものであります。
当事業年度末における固定資産は7,229千円となり、前事業年度末に比べ32千円増加いたしました。これは主に、研究用フリーザー2,134千円を取得したものの、減価償却費1,619千円を計上したことによるものであります。
この結果、総資産は1,377,016千円となり、前事業年度末に比べ522,879千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は211,109千円となり、前事業年度末に比べ73,552千円増加いたしました。これは主に、未払金27,781千円、前受金37,500千円の増加によるものであります。
この結果、負債合計は211,109千円となり、前事業年度末に比べ73,552千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は1,165,906千円となり、前事業年度末に比べ449,327千円増加いたしました。これは主に、第三者割当増資により資本金及び資本準備金がそれぞれ230,632千円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は84.67%(前事業年度末は83.90%)となりました。
第7期第3四半期累計期間(自 2019年1月1日 至 2019年9月30日)
(資産)
当第3四半期会計期間末における流動資産は1,140,884千円となり、前事業年度末に比べ228,902千円減少いたしました。これは主に、現金及び預金218,551千円、貯蔵品16,837千円の減少によるものであります。
また、当第3四半期会計期間末における固定資産は6,955千円となりました。
この結果、総資産は1,147,839千円となり、前事業年度末に比べ229,176千円減少いたしました。
(負債)
当第3四半期会計期間末における流動負債は62,908千円となり、前事業年度末に比べ148,201千円減少いたしました。これは主に、未払金29,613千円、前受金120,500千円の減少によるものであります。
この結果、負債合計は62,908千円となり、前事業年度末に比べ148,201千円減少いたしました。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は1,084,931千円となり、前事業年度末に比べ80,975千円減少いたしました。これは、四半期純損失80,975千円の計上に伴う利益剰余金の減少によるものであります。
b.経営成績
第6期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
(事業収益)
当事業年度における事業収益は355,866千円となり、前事業年度に比べ254,686千円増加いたしました。これは主に、塩野義製薬株式会社とのライセンス契約に基づくマイルストーン収入、大日本住友製薬株式会社とのオプション契約締結に伴う契約一時金収入、株式会社メディパルホールディングスとの提携契約に基づく開発支援金によるものであります。
(事業費用)
当事業年度における研究開発費は194,746千円となり、前事業年度に比べ62,422千円増加しました。また、その他の販売費及び一般管理費は170,378千円となり、前事業年度に比べ3,160千円増加しました。研究開発費の増加は、主に、研究開発活動の積極的な推進に伴う委託研究開発費、研究消耗品費、知的財産取得費の増加によるものであります。
この結果、当事業年度における事業費用は370,280千円となり、前事業年度に比べ70,737千円増加しました。
(営業損益)
当事業年度において、事業収益355,866千円、事業費用370,280千円を計上した結果、営業損失は14,413千円(前事業年度は営業損失198,362千円)となりました。
(営業外損益・経常損益)
当事業年度における営業外収益は8,182千円となり、前事業年度に比べ3,526千円増加しました。これは主に補助金収入7,140千円であり、研究開発に関するおおさか地域創生ファンドの補助金等を計上しております。また、営業外費用は2,513千円となり、前事業年度に比べ2,513千円増加しました。これは主に新株式発行に伴う株式交付費であります。
この結果、経常損失は8,744千円(前事業年度は経常損失193,706千円)となりました。
(当期純損益)
当事業年度における法人税等は3,193千円となりました。この結果、当期純損失は11,937千円(前事業年度は当期純損失204,061千円)となりました。
第7期第3四半期累計期間(自 2019年1月1日 至 2019年9月30日)
(事業収益)
当第3四半期累計期間における事業収益は301,417千円となりました。これは主に、塩野義製薬株式会社とのライセンス契約に基づくマイルストーン収入、大日本住友製薬株式会社とのオプション契約に基づくマイルストーン収入、株式会社メディパルホールディングスとの提携契約に基づく開発支援金によるものであります。
(事業費用)
当第3四半期累計期間における研究開発費は295,657千円となりました。また、その他の販売費及び一般管理費は126,763千円となりました。研究開発費の増加は、主に、研究開発活動の積極的な推進に伴う委託研究開発費、研究消耗品費の増加によるものであります。
この結果、当第3四半期累計期間における事業費用は433,813千円となりました。
(営業損益)
当第3四半期累計期間において、事業収益301,417千円、事業費用433,813千円を計上した結果、営業損失は132,395千円となりました。
(営業外損益・経常損益)
当第3四半期累計期間における営業外収益は53,597千円となりました。これは主に補助金収入53,315千円であり、研究開発に関する国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の補助金等を計上しております。
この結果、経常損失は78,797千円となりました。
(四半期純損益)
当第3四半期累計期間における法人税等は2,177千円となりました。この結果、四半期純損失は80,975千円となりました。
c.キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
d.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資本の財源については、研究開発パイプラインの優先順位を考慮しつつ財務会計面及び管理会計面からも検討を加えた上で調達資本の特性に適した資金調達方法を検討して意思決定を行っていくことで、パイプラインの充実と財務基盤の健全化を図る方針であります。
当社は、事業上必要な資金については、手元資金で賄う方針としており、事業収益が現時点では限定的であるため、第三者割当増資により調達を行っております。手元資金については、資金需要に迅速かつ確実に対応するため、流動性の高い銀行預金により確保しております。
e.経営成績等の状況に関する認識
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。