有価証券報告書-第5期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/25 15:23
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【項目】
82項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で、各種政策の効果もあり、緩やかな回復基調で推移いたしました。一方、米国の金融政策の動向が為替相場や株式市場に影響を及ぼす局面があるなど、海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響には、予断を許さない状況が続いております。
当社グループが属する住宅関連業界におきましては、新設住宅着工戸数並びに中古マンション、中古戸建住宅の成約件数は、前年並みの水準で推移しております。また、低水準の住宅ローン金利や政府による住宅取得支援策が継続しており、住宅ローンの実行件数については安定的に推移しております。
このような状況のもと、当連結会計年度の当社グループの新規融資実行件数は、前連結会計年度後半から成長が顕著となっている当社独自の商品である「ARUHIスーパーフラット8・9」及び銀行代理業者としての変動金利商品の販売が好調に推移しており、新規の住宅ローン実行件数については前年同期と比較して19.7%増加となりました。一方、前連結会計年度から継続して借換需要が減少傾向となっていることに加え、投資用マンションローンの実行が減少したことなどにより、当連結会計年度における融資実行合計件数は、前年同期と比較して3.8%増加となりました。
営業収益については、融資実行業務では、オリジネーション・フィー売上が融資実行件数の推移に伴い、8.1%増加であった一方、ファイナンス業務では、当社独自の商品である「ARUHIスーパーフラット8・9」が好調であることなどから貸付債権流動化関連収益が58.4%増加するなど、当連結会計年度の営業収益は23,844百万円(前年同期比16.7%増)となりました。一方、ファイナンス業務の増収に伴う金融費用の増加、新規融資実行の継続した成長に向けた人材の確保、積極的なプロモーション活動などの戦略的な費用が増加したことに加え、従来の国際会計基準(以下「IAS」という。)第39号「金融商品:認識及び測定」を置き換えた国際財務報告基準(以下「IFRS」という。)第9号「金融商品」を適用したことに伴う影響(△295百万円)もあり費用は増加しましたが、税引前利益は6,264百万円と前年同期比20.5%増加となりました。当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益は4,312百万円(同9.6%減)となりました。税引前利益の増加にもかかわらず、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益が減少している要因は、前連結会計年度において、1,240百万円の繰延税金資産を認識したことによります。
なお、当社グループは住宅ローン事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は13,479百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,775百万円の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは3,498百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ5,863百万円の支出増加となりました。これは主に、税引前利益が6,264百万円となり、回収サービス資産償却費1,531百万円などのキャッシュの増加要因があった一方で、営業貸付金の増加額7,999百万円や貸付債権流動化関連収益のうち、当連結会計年度にキャッシュとして回収しなかった3,566百万円などのキャッシュの減少要因があったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは957百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ569百万円の支出増加となりました。これは主に、無形資産の取得による支出が956百万円となったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは7,230百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ11,848百万円の収入増加となりました。これは主に、短期借入金の純増額7,100百万円や長期借入による収入8,120百万円のキャッシュの増加要因があった一方で、長期借入金の返済による支出2,852百万円や流動化に伴う借入債務の減少額1,844百万円などのキャッシュの減少要因があったことによります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社グループの事業の性格上、受注状況の記載に馴染まないため、記載しておりません。
c.販売の実績
①販売実績
当連結会計年度における販売実績の内訳は次のとおりです。なお、当社グループは住宅ローン事業の単一セグメントであるため、業務別に記載を行っております。
(単位:百万円(前年同期比を除く。))
業務当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
前年同期比
融資実行業務12,955108.1%
債権管理回収業務2,850119.2%
保険関連業務1,201127.8%
ファイナンス業務6,623134.4%
その他業務213115.6%
合計23,844116.7%

(注)販売実績の内訳には、消費税等は含まれておりません。
②融資実行業務売上
当連結会計年度における融資実行業務売上の内訳は、次のとおりです。
(単位:百万円(前年同期比を除く。))
区分当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
前年同期比
新規借入12,128120.8%
投資用マンションローン37531.6%
借換45259.3%
合計12,955108.1%

(注)融資実行業務売上の内訳には、消費税等は含まれておりません。
③融資実行件数
当連結会計年度における融資実行件数は、次のとおりです。
(単位:件(前年同期比を除く。))
区分当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
前年同期比
新規借入23,486119.7%
投資用マンションローン2,05047.7%
借換1,14163.5%
合計26,677103.8%

(参考情報)
投資情報としての有用性の観点から、参考情報として実質上の存続会社である旧アルヒ株式会社の2015年3月期から2019年3月期に係る融資実行件数については、新規借入・投資用マンションローン・借換の区分別に四半期ごとの実行件数を下記に記載しております。
①新規借入
(単位:件)
第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期合計
2015年3月期3,0593,2363,5824,11613,993
2016年3月期3,9363,9764,0534,14616,111
2017年3月期3,8224,0784,2794,54316,722
2018年3月期4,4554,6305,0425,49019,617
2019年3月期5,2625,5176,1346,57323,486

②投資用マンションローン
(単位:件)
第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期合計
2015年3月期--156
2016年3月期441874679411,639
2017年3月期9491,0171,2171,1494,332
2018年3月期1,1789871,1999344,298
2019年3月期8417413141542,050

③借換
(単位:件)
第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期合計
2015年3月期8249347982,1674,723
2016年3月期8442831781,3782,683
2017年3月期3,5843,9071,3438569,690
2018年3月期6994413672901,797
2019年3月期2303282882951,141

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は国際会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しておりますが、特に以下の将来に関する主要な仮定及び報告期間末における見積りは、当社の連結財務諸表に大きな影響を及ぼします。
a.繰延税金資産
資産及び負債の会計上の帳簿価額と課税所得の計算に使用される対応する税務基準額との一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る税効果については、それらを回収できる課税所得が生じると見込まれる範囲において、期末日に制定又は実質的に制定されている税法に基づいて、当該差異及び税務上の繰越欠損金の解消時に適用されると予測される税率を用いて繰延税金資産を認識しております。
b.のれんの評価
当社グループが計上するのれんについては、減損の兆候の有無にかかわらず、回収可能価額を毎年同じ時期に見積っております。当該回収可能価額の算定においては、見積将来キャッシュ・フローを使用しております。
c.金融商品の公正価値
当社グループが保有する金融商品の公正価値の見積りにおいては、観察可能な市場データに基づかないインプットを含む評価技法を使用しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産は99,398百万円となり、前連結会計年度末に比べ15,103百万円増加いたしました。これは主に譲渡までに一時的に保有するものなど営業貸付金が7,999百万円増加したことに加え、回収サービス資産など無形資産が2,957百万円増加したことなどによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は75,545百万円となり、前連結会計年度末に比べ12,594百万円増加いたしました。これは主に一時的に保有する営業貸付金の増加などに伴い借入債務が9,627百万円増加したことなどによるものであります。
(資本)
当連結会計年度末における資本は23,853百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,509百万円増加いたしました。これは当期利益が4,312百万円計上されたことに加え、IFRSの新基準を適用したことにより855百万円増加した一方、2018年3月期期末配当金784百万円及び2019年3月期中間配当金790百万円を支払ったことなどに伴い利益剰余金が3,592百万円増加したことなどによるものであります。
2)経営成績
(営業収益)
当連結会計年度の営業収益は、前連結会計年度と比較して16.7%増加の23,844百万円となりました。主な要因は新規借入件数増加に伴い融資実行業務が967百万円の増収となったこと、また当社独自の商品である「ARUHIスーパーフラット8・9」の増加に伴いファイナンス業務が1,694百万円の増収になったことなどによるものであります。
(営業費用)
当連結会計年度の営業費用は、前連結会計年度と比較して15.7%増加の16,963百万円となりました。主な要因はファイナンス業務増加に伴い金融費用が883百万円増加、積極的なプロモーション活動や人員数増加に伴い販売費及び一般管理費が1,523百万円増加したことなどによるものであります。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度と比較して9.6%減少の4,312百万円となりました。なお、税引前利益の増加にもかかわらず、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益が減少している要因は、前連結会計年度において、1,240百万円の繰延税金資産を認識したことによります。
3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
住宅ローン事業は金利動向や住宅市場の状況、人口動態、世帯動態等の市場環境に大きく影響を受けることとなりますが、当社グループはこのような事業環境の分析を踏まえて適切なセグメントに対する最適なリソース配分を行うことで、更なるシェアアップによる成長が可能であると考えております。
2)経営戦略の現状と見通し
当社グループは、住宅ローン市場の中でも成長が見込まれるセグメントへの注力、当社の強みを活かした運営を通じたシェアアップによる住宅ローン事業の中期的な成長を基盤としつつ、川上・川下領域への事業拡大を進めております。
2018年3月期を初年度とする5ヶ年の中期経営計画では、変動金利型住宅ローン市場の参入等により商品ラインナップを充実させ、全国店舗網の拡充やオムニチャネル化を通じて住宅ローン事業の成長を推進すると同時に、住宅ローン事業で構築したポジショニング、データベース、インフラを活用し、お客さまの生涯を通じて価値を提供できるよう事業領域の拡大に引き続き取り組んでまいります。
3)経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループの経営陣は、引き続き中核ビジネスである住宅ローン事業の成長を実現させることに加え、川上・川下領域をはじめとする新しい住生活関連サービスを展開して参りますが、従来のローンビジネスの枠組みを超えたプラットフォームの構築や、これらの新規事業を軌道に乗せ、継続的な事業として確立することが課題であると認識しております。このため、不動産フィンテックやロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)といった新技術を積極的に取り入れ、当社グループのプラットフォームを通じて、お客さまのニーズに合わせた高付加価値サービスの構築及び収益化に引き続き取り組んで参ります。
なお、本項目については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の記載事項もご参照ください。
c.資本の財源及び資金の流動性
1)資金需要
当社グループの資金需要は大きく分けて運転資金需要と設備資金需要の二つがあります。運転資金需要のうち、主なものは、住宅ローン事業に関わる貸付実行資金、販売費及び一般管理費となります。また、設備資金需要のうち主なものは、システム開発のための無形資産投資となります。
2)財務政策
当社グループは、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入及び融資実行した貸付金の証券化・流動化などにより資金調達を行っております。
すなわち、当社グループの主要な事業資産であります住宅ローン債権につきましては、貸付実行時は内部資金及び金融機関からの借入により資金調達を行い、貸付実行後に証券化・流動化を活用することで、有利子負債の圧縮を図っております。
このようなオペレーションを行うに当たっては、複数の金融機関からコミットメントラインを含む十分な借入枠及び証券化・流動化枠を取得するなど、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金調達が可能な状況を常に維持するよう努めております。
また、設備資金需要に対しては、内部資金のほか、リースによる調達も行っております。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指数等
中期経営計画において、以下を経営目標としており、引き続き、経営目標の達成に向け取り組んでまいります。
当連結会計年度の住宅ローン新規借入実行件数においては、当社独自の商品である「ARUHIスーパーフラット8・9」の販売が好調に推移したため、目標を達成しました。(前年比3,869件増加)
引き続き、中期経営計画の重要施策を継続的に推進してまいります。
指標CAGR目標
(2018年3月期-2023年3月期)
CAGR実績
(2018年3月期-2019年3月期)
住宅ローン新規借入実行件数15.0%19.7%
営業収益10.0%16.7%
税引前利益15.0%20.5%

e.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、住宅ローン事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報)
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
のれんの償却
日本基準では、のれんは一般的に20年を上限とした見積耐用年数にわたり償却され、その償却費は「販売費及び一般管理費」に計上されます。一方、国際会計基準ではのれんは償却されず、毎期減損テストが求められております。仮に各期末にのれんを日本基準に従い償却していた場合、1,250百万円の償却費になります。