有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/04/25 15:01
【資料】
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【項目】
110項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)不動産市況等の影響について
当社グループの事業は全て不動産に関連する事業であることから、不動産市況、住宅関連税制、住宅ローン金利水準等による購買者の需要動向ならびに建築資材等の原材料の価格動向等により業績において強い影響を受けております。
また、当社グループは北九州市を中心に、沖縄県を除く九州全域と山口県を地盤とした地域密着型の事業展開を行っており、今後においても、当該地域における営業エリア拡大により業績の向上を図る方針であります。このことから、同地域の経済環境、雇用環境、地価の動向及び自然災害等により業績に影響を受ける可能性があります。
(2)有利子負債について
当社グループは、原則として、プロジェクト案件ごとに用地の取得資金と開発費用等そのプロジェクトの推進に必要な資金を、プロジェクトの期間に応じた金融機関からの借入金により調達しており、下表のとおり有利子負債依存度が高い水準で推移しております。なお、当社グループにおいて、「短期借入金」、「1年内償還予定の社債」、「1年内返済予定の長期借入金」、「リース債務」、「社債」、「長期借入金」が有利子負債に該当いたします。
決算期総資産(百万円)有利子負債(百万円)有利子負債依存度(%)
第46期事業年度17,29611,54266.7
第47期事業年度17,01110,74563.2
第48期事業年度23,81415,02463.1
第49期連結会計年度27,98317,51562.6
第50期連結会計年度25,99716,42863.2

また、運転資金については、原則として手持資金で賄うこととしておりますが、資金繰り弾力化のため、一部金融機関からの借入を実施しております。
近年においては、低金利の継続により、金利負担は比較的低水準で推移しておりますが、将来において金利が上昇した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、今後の金融政策の方針が変更した場合、プロジェクトの進捗や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)業績の偏重について
不動産業界においては、一般に、物件の引渡し(売上計上)時期は3月頃に集中する傾向があります。また、マンション分譲事業においては、その性質上、竣工時に当該マンションのほとんどの住戸が引き渡されるため、月次または四半期等で見た場合、売上が特定の時期に偏る傾向があり、当社グループにおいては現状それが9月にあたります。今後は特定の時期に偏らないよう仕入や工期を調整するように進めてまいりますが、調整が想定通り進まない場合、四半期毎の業績が不安定になる可能性があります。
(4)法的規制について
当社グループの属する不動産業界は、「宅地建物取引業法」「建築基準法」「国土利用計画法」「都市計画法」等、不動産取引や建築に関わる多数の法令、及び各自治体で定められる建築に関する条例等の法的規制を受けております。また、連結子会社の株式会社リビングサポートにおきましては、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」等による法的規制を受けております。このため、将来におけるこれらの法的規制の改廃、新法の制定等により、事業計画を見直す必要が生じる場合や、これらの法的規制等に定める事項に抵触した場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社においては宅地建物取引業免許が、株式会社リビングサポートにおいては管理業務主任者免許が、各々の事業活動において必要不可欠な免許です。現時点では、免許または登録の取消事由・更新欠格事由(※下表枠外に記載)に該当する事実は存在しておりませんが、今後、何らかの理由により免許及び登録の取消・更新欠格による失効等があった場合には、当社グループの主要な事業活動に支障をきたし、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの有する免許、許可及び登録については、以下のとおりであります。
会社名法令名免許・許可・登録等有効期限
大英産業㈱宅地建物取引業法宅地建物取引業免許
国土交通大臣免許(1)
第008700号
宅地建物取引主任士(138名)
2019年11月11日
大英産業㈱建築士法一級建築士事務所登録
福岡県知事登録
第1-60140号
一級建築士(4名)
二級建築士(18名)
2020年12月12日
大英産業㈱建設業法一般建設業許可
福岡県知事許可
(般-28)第98911号
一級施工管理技士(3名)
二級施工管理技士(5名)
2022年2月16日
㈱リビングサポートマンションの管理の適正化の推進に関する法律国土交通大臣(2)
第937105号
管理業務主任者(6名)
2020年12月16日

※許認可等の取消事由について
a.宅地建物取引業者免許の取消事由は、宅地建物取引業法第66条に定められております。
b.一級建築士事務所登録の取消事由は、建築士法第26条に定められております。
c.建設業許可の取消事由は、建設業法第29条に定められております。
d.マンション管理業者登録の取消事由は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律第83条に定められております。
(5)瑕疵担保責任について
当社グループの不動産事業については、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、新築住宅(分譲マンション含む)の構造上主要な部分及び雨水の浸水を防止する部分について住宅の引渡しから10年間の瑕疵担保責任を負っております。その他の部分については、「宅地建物取引業法」により住宅の引渡日から最低2年間について瑕疵担保責任を負っております。加えて「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」により、住宅の瑕疵担保責任履行のための資金の確保が義務付けされております。万が一、当社グループの販売した物件に重大な瑕疵があるとされた場合には、その直接的な原因が当社グループ以外の責任によるものであっても、当社グループは、売主としての瑕疵担保責任を負うことがあります。完成工事補償引当金の計上や保証制度の活用など対策は打っておりますが、何らかの事情により当社グループが責任を負うことにより、想定外の補償工事費用の計上や当社の信用力の低下が発生した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(6)完成工事補償引当金について
お客様へ物件を引き渡した後に補修工事を行う場合や、完成工事の瑕疵担保責任に備える目的の引当金を計上しております。販売棟数の増加に伴い必然的に利益圧縮に繋がることに加え、不測の施工不良等により実際に多額の補修工事が発生した場合、引当金の計上額(販売費及び一般管理費)が増加し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)個人情報の漏洩について
当社グループでは、事業の性質上、常時多数のお客様の個人情報をお預かりしている状況にあります。個人情報については、プライバシーマークを取得し、個人情報保護基本規程等に基づいて厳重に管理しております。また、社内では個人情報保護委員会を設け、当社グループの従業員等に対する定期的な教育・研修等により情報管理の重要性の周知徹底を行っております。しかし、これらの対策にもかかわらず個人情報が外部に漏洩した場合には、社会的信用が著しく低下する上に、多額の損害賠償金等が発生し、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)人材の確保及び育成について
当社グループでは、継続的な成長を達成するために、優秀な人材の採用と教育が重要であると考えております。
当社グループとしては、積極的な事業展開により求職者にとって魅力的な企業となるべく努力をしてまいりますが、必要な人材の確保及び育成が計画通りに進まない場合や当社グループの予想を大幅に上回るような退職者が発生した場合、当社グループの事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)土地仕入について
当社グループでは、主要事業が全て土地に関連する事業のため、事業用地の仕入が各プロジェクトの成否において生命線となります。立地条件、地積、地盤、周辺環境、権利関係、収支計画等について事前に調査・検討し、その結果を踏まえた上で仕入を行っております。しかし、競合等により仕入価格が上がった場合、プロジェクトの収益が計画どおりに確保できない、あるいは仕入中止によりプロジェクトを断念する等、当社グループの事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、用地取得時に予想できない土壌汚染や地中埋設物が発見された場合や、工事進捗に影響する近隣住民との問題が解決できなかった場合、プロジェクトの遅れや追加費用の発生により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)建築費用等について
当社グループの分譲マンションはRC造です。RC造は耐震性・耐火性・防音に優れる反面、他の工法より建築費用がかかる傾向があります。元々、近年の建築需要の増加により建築費用が上昇していることも重なり、当社グループの物件の建築費用は高騰しております。建築費用の大部分はゼネコンとの工事請負契約時に確定しているため、その点も考慮した上で収支計画は立案されておりますが、基本的に物件価格に転嫁されるため、購入者の購入検討価格が周辺相場を大幅に上回る結果となる場合は、計画通りに販売が進まない、または値引き等により販売価格が低くなるなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
分譲住宅や注文住宅においては、主材料に木材を使用していることから、木材相場の急騰や、想定通りの調達が順調に行かない場合、当社グループの事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)建築の外部委託及び工程監理について
当社グループは、マンションや住宅を新築しております。また、中古住宅を購入の上、リフォーム工事を行っております。マンション及び中古住宅のリフォームの建築工事は自社で行わず、全面的に外部に委託しております。このことは、自社の固定人件費の抑制に繋がっており、不況時においては、経営リスクを軽減する反面、好況時においては、外部委託先の確保が十分にできなくなり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、住宅建築工事においては、外部に分離発注する形態にて工事委託を行っておりますが、一部、当社グループの㈱大英工務店が携わっております。将来の住宅業界における工事職人不足は顕在化しており、当社委託先の職人が減少した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
各現場工程監理につきましては、各事業担当者にて、より慎重を期して行っておりますが、不測の事態等により工事の遅延等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)販売の外部委託について
当社グループは、一部物件の販売活動を外部業者に委託しております。これにより、当社グループのみで販売する場合に比べて、より多くの物件を同時に販売できる反面、販売手数料等の増加により当社グループのみで販売するケースに比べ、利益率が悪くなります。今後外部業者への委託割合が増加した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)現金及び預金残高の増減について
マンション事業においては、その性質上、竣工引渡時に一斉に売上代金を回収するため、一時的に現金及び預金の残高が大幅に増加し、その後の数ヶ月間で工事代金の最終金決済やプロジェクト資金の返済が行われるため、大幅に減少いたします。現時点での中期経営計画においては、マンションの竣工時期が特定月に偏っているため、特にその変動額が大きくなっております。
このことは、当社グループも熟知しておりますが、直近2~3年間での竣工計画は確定しているため、改善は難しい状況です。既に、竣工時期に偏りがないような用地仕入、ならびにゼネコンとの工事請負契約締結のスケジュール組みに着手しておりますが、想定通り進まない場合、当社グループの財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(14)競合について
当社グループは、現在マンション事業については、福岡県を中心に沖縄県を除く九州全域で、住宅事業については、福岡県全域と山口県・佐賀県の一部で事業展開しております。首都圏等に比較すると少ないものの、大手マンションデベロッパー・ハウスメーカーから個人事業者に至るまで大小様々な競合他社が多数存在しており、大変厳しい競争にさらされております。今後においても新規大手の参入や異業種からの参入も増える可能性があり、さらに競争が激化することが想定されます。これにより、物件の仕入価格の上昇(原価の高騰)や、販売価格の下落(売上の減少)が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)人口動向について
当社グループの事業エリアである九州・山口エリアは、総人口の減少と少子高齢化が進んでおり、今後、その傾向はますます強くなることが想定されます。このことにより、特に住宅事業の主な購入者層である20~30代の子育て世代は、減少していくことが確実視されます。今後は、従来の北九州近郊から事業エリアを広げて顧客を確保することや、高齢者向けの事業を展開するなどの対策を中長期的に検討しなければなりませんが、対策がうまくいかなかった場合、売上が低下し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)住宅業界の技術革新について
近年、耐震・耐火・省エネなどの高付加価値を持つ住宅に対するニーズが高まっています。特に「スマートハウス」は、IT技術と連動することで快適な住空間を制御できる住宅であり、大手ハウスメーカーを中心に、様々な新商品が市場に投入される傾向にあります。少子高齢化の構造的な問題を抱える住宅業界においては、高付加価値商品の提供が生存競争上の大きなポイントとなりますが、業界またはお客様の望む技術革新のスピードに当社グループが対応できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)大規模自然災害について
地震、暴風雨、洪水等の自然災害、戦争、テロ、火災等の人的災害が発生した場合、当社グループが所有する棚卸資産の価値が著しく低下、または過去に竣工した物件に対する予想外の補償工事費用等が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(18)棚卸資産の評価損処理について
当社グループでは事業の性質上、棚卸資産が総資産に占める割合は2018年9月期において65.6%と非常に高い水準にあります。会社方針により竣工在庫を抑制するよう努めており、完成在庫である販売用不動産だけであれば、総資産の16.6%と比較的少ない水準ではありますが、何らかの理由により不動産の市場価値が下落した場合は、評価損処理が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(19)消費税率の引き上げによる影響について
消費税は2019年10月に10%への引き上げが閣議決定されております。今後の経済状況によって、再延期になる可能性は残されておりますが、実際に引き上げが実施された場合、消費者の購入意欲の低下により、一時的に販売が落ち込み、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(20)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社グループは、業績向上に対する役職員の意欲や士気を喚起するとともに、優秀な人材を確保し当社グループの企業価値向上に資することを目的とし、ストック・オプション制度を導入し、新株予約権を発行しております。本書提出日現在、新株予約権による潜在株式残数は307,500株であり、発行済株式総数2,940,000株の10.5%に相当します。今後、この新株予約権が行使された場合には、当社グループの1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
(21)訴訟について
当社グループでは、過去に引き渡した一部分譲マンションの購入者より、瑕疵工事に伴う損害賠償請求の裁判を起こされており、現在係争中であります。損害賠償支払に備えて、合理的な方法で訴訟損失引当金を計上しておりますが、今後の判決において想定外の金額の損害賠償が申し渡された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、判決内容によっては今後同様の裁判を起こされて、さらなる訴訟損失引当金の計上や損害賠償により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。