有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/04/25 15:01
【資料】
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【項目】
110項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「元気な街、心豊かな暮らし」を経営理念としております。本社のある北九州市を中心に、マンション事業は沖縄県を除く九州全域と山口県、住宅事業は福岡県全域と山口県・佐賀県の一部を商圏とし、お求めやすい価格と高い品質の両立を実現した住宅の販売とアフターサポートを通して、お客様の暮らしにおける物心両面の充実と、街づくりを通して地域の活性化をもたらす地域密着型経営を基本として事業を展開しております。
上記方針を活かしながら、持続的な成長へ結びつけるため収益性の向上及び財務体質の強化を推進し、株主・顧客・取引先・地域社会から真に信頼され、必要とされる企業となることを目指しております。
(2)経営環境ならびに中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
当社グループが属する不動産業界におきましては、日本銀行による低金利政策や、住宅取得支援関連施策の継続を背景に需要の下支えが期待できるものの、建築コストは依然高止まりが続いており、建設労働者不足や良質な分譲用地取得の競争激化、それに伴う地価の上昇が起こる中、2019年10月には消費税増税を控え、長期的には少子高齢化が進むに従い新築住宅市場は縮小していくことが見込まれるなど、事業環境としては楽観視できない状況にあります。
このような環境の中で、当社グループは今後の成長を推進する上で下記の項目を重要な経営課題として認識しており、対処に努めていく所存であります。
①マンション事業
マンション分譲事業におきましては、プロジェクト用地の安定確保が当面の課題です。建築費の高止まり状態が続いており、それに伴ってマンション用地の取得が厳しさを増しています。建築費の高騰は結果的に販売価格の上昇に結び付きますが、ゼネコンの競合による建築費の抑制は難しく、競合他社の供給が衰えないこともあり、より高い精度で用地選定を行う必要があり、今後の事業環境は楽観視できない状況であります。今後は土地情報網の拡大と、用地選定基準の厳格化により、販売価格が周辺相場より高くてもお客様に選んで頂ける好条件の用地を安定して仕入れられる体制の構築を進めてまいります。
賃貸マンション販売事業におきましては、不動産投資を検討されている方との接触機会の創出と、投資して頂ける方に対する金融機関からの融資の取り付けが課題です。土地・建物を含めた高額になる商品を保有できる資金力を持つ個人・法人と接触すること自体が困難であり、また、購入の意思があったとしても、昨今の金融機関の審査基準の厳しさから融資が承認されず、購入を断念せざるを得ないケースが増えております。今後は顧客を開拓する方策を検討し、課題解決に取り組む所存ですが、当面は事業環境が芳しくないため、金融機関の動向等を注視しながら積極的な展開は控える所存であります。
タウンハウス分譲事業におきましては、商品特性の認知向上が課題です。タウンハウス自体の事例が多くないため、生活イメージを想起しづらく、充分に購入意欲が喚起できていない状況であります。住まいの形態としてのタウンハウスへの認知度向上に取り組み、立地と価格のメリットだけでなく、具体的な生活イメージの想起促進を行ってまいります。
マンション総合管理事業におきましては、他の管理会社と比してもご満足頂ける競争力をつける事が当面の課題であります。当社が分譲した物件の管理を充実させながら、将来的に他社物件の管理獲得へ乗り出すことができるような体制の構築を意識して、顧客満足度やサービス内容の向上を図ってまいります。
②住宅事業
分譲住宅事業におきましては、ブランド力向上と既存顧客との関係構築が当面の課題です。土地仕入価格や建築費の高騰、大手競合の参入、住宅設備仕様に対する世間の関心の高まりなどがあり、現在のお求めやすい価格帯の商品群だけではお客様の満足を得ることが難しくなってまいりました。より幅広い顧客層を獲得するため、当連結会計年度より新商品としてデザイン性の高い高価格帯のフランチャイズ住宅「オーガニックハウス」の販売を開始いたしました。また、既存顧客との関係構築のため、長期設備保証の導入や引渡後の定期訪問等のアフターサービス体制の充実を図ることで、新規のお客様もさることながら、既存のお客様との関係性を高めることで、購入者を紹介して頂いたり、将来的なリフォームや住み替え、売却などのご要望を頂くという、一人のお客様から生涯に亘って住まいに関する「生涯顧客価値(LTV)」の獲得を目指した体制の構築を行ってまいります。
注文住宅事業におきましては、規格型注文住宅の知名度の向上、商品ラインナップの拡充が当面の課題です。規格型注文住宅ならではの価格メリットとプランの選択肢の広さ、バランスの良さをより訴求することで、分譲住宅ではご満足頂けないお客様を獲得いたします。そのために、当事業の適正な価格帯を設定するのと同時に商品ラインナップを充実させてまいります。
不動産流通事業におきましては、仕入の安定確保が当面の課題です。当事業は、自社で買い取った物件をリフォームし、付加価値を付けた上で転売するものであるため、仕入価格を抑えることが粗利の確保に直結します。周辺相場を反映した値付けと粗利確保を両立させるために、適正な価格での仕入が安定的にできる物件情報網の整備と、適正な相場観を持ち、かつ、仕入・施工・販売といった事業全体を総合的にマネジメントできる人材の育成を行っております。また、現在は北九州市を中心に福岡都市圏及び熊本市内において展開しておりますが、今後はその他の県への進出も視野に入れたエリア展開を検討してまいります。
土地分譲事業におきましては、取引先の確保が当面の課題です。当事業は、原則として同価格帯の競合他社ではなく、大手ハウスメーカーや工務店等の建設会社で注文住宅建設を予定しているお客様へ土地販売を行っております。この手法で販売を行った場合、当社分譲住宅の販売機会の喪失を防ぐことができる反面、取引先が限定されてしまうという問題があります。今後はより多くの大手ハウスメーカーや工務店といった取引先と密接な関係を構築し、課題の解消に努めてまいります。
現状では、マンション事業及び住宅事業の中でも、マンション分譲事業と分譲住宅事業が当社グループの総売上の約80%を占めています。今後は、大きな景気変動下でも揺るぎない経営体質の保持のため、これらの分譲2事業の他に第3の柱となる事業の育成に注力することにより、経営の更なる安定化を目指してまいります。
また、当社のマンション事業及び住宅事業では、お客様に対する不動産の販売を住宅支援機構もしくは金融機関の住宅ローンを活用し、行うことが一般的であります。昨今、取り沙汰されている住宅ローンに関する過剰融資問題については、当社は不正や偽装によるお客様との契約書差替えその他の過剰融資を誘導するような行為は行っておりません。当社では、住宅ローンに関する過剰融資もしくはそれに類するお客様に対する全てのサービス等に社内規制を設け、2016年より運用に着手しており、当社のみならず当社の提携販売代理会社へ周知を図っております。当社では、今後も引き続き、コンプライアンス重視の観点より、自社内でのリスク管理体制を充実させ、内部監査室、独立役員等による会議体への参加にて社内での牽制機能を強化するとともに、当社のみならず提携販売代理会社の社員にも顧問弁護士による定期的な勉強会を実施してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
企業を継続的に安定成長させるためには、利益の確保が重要であることから、当社は売上高経常利益率を重要な経営指標として認識しております。また、財務体質の改善は以前からの当社の大きな経営上の課題であることから自己資本比率についても重要な経営指標として認識しております。