有価証券届出書(新規公開時)

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2019/11/20 15:00
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128項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
当社は、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、別段の記載がない限り、本書提出日現在において当社が独自に判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
1.事業環境に関するリスク
(1) 業界及び顧客動向について
当社は、製薬企業を対象とした事業を行っているため、製薬業界の事業環境及び製薬企業の経営方針の影響を強く受けることが考えられます。取引中の製薬企業が合併・統合する場合、取引を行うCRO事業者の選別が行われる可能性があります。また、その他の理由による製薬企業の経営方針の転換によりCRO事業者の選定方針が変更になる可能性もあります。これらのような製薬企業の経営方針等の変更が行われた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) CRO事業にかかる法規制、行政動向について
当社のCRO事業は、主に製薬企業となる依頼者から医薬品の開発にかかわる業務を受託しておりますが、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:医薬品医療機器等法)及びそれに関連する厚生労働省令等により規制されます。臨床試験においては、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」、「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」(GCP;Good Clinical Practice)、「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令」(GPSP;Good Post-marketing Study Practice)、「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」(GVP;Good Vigilance Practice)を確実に実施していることが求められます。当社の事業計画は、これらの現行の薬事関連法規等を前提に作成しておりますが、法規制の強化や、行政施策が変更される可能性があります。これにより既存の受託事業の組織体制の変更が必要となる場合、その変更に速やかに対処できず受託が中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となるリスクがあり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 人材派遣事業にかかる法規制、行政動向について
当社が提供する各サービスは、製薬企業から受託して業務を行うことを主軸としていますが、製薬企業に当社の人材を派遣して製薬企業の中で業務を行う形態も取っています。この場合、1986年7月施行の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(現:「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」以下、「労働者派遣法」という。)の適用を受けます。労働者派遣法では、労働者派遣事業者に対し適正な事業運営の確保を求めていますが、事業主としての欠格事由に該当した場合や、法令に違反する場合は、事業認可の取り消しや業務停止命令を命ずる旨を求めています。現在までに欠格事由に該当する事実や業務停止命令を受ける法令違反の事実はありませんが、万一これに該当することがあれば、労働者派遣事業を行えない等、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 競合について
当社の事業領域であるCRO事業において、競合企業が存在しております。また、当該事業分野が成長市場であること及び参入障壁が必ずしも高いとは言えないことから、今後、さらなる他社の新規参入により競争が激化する可能性があります。
当社では、引き続き顧客のニーズを汲んだサービスの提供を進める方針でありますが、競合企業の営業方針、価格設定及び提供するサービス等は、当社が属する市場に影響を与える可能性があり、これらの競合企業に対して効果的な差別化を行うことができず、当社が想定している事業展開が図れない場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) システム障害について
当社では、情報管理の社内システムのセキュリティ対策やシステムの監視等を行い、安定的に運用できるように対策を講じておりますが、ITインフラ機器の障害、コンピューターウイルスへの感染、その他不測の事態が生じることにより、システムトラブルが発生した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(6) 自然災害について 当社は、東京本社、神戸データセンター、沖縄データセンターの3か所に事業所を設けております。これらの地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。どこかの事業拠点で大規模な災害が発生した場合でも、その他の拠点で業務を継続できる体制を取っておりますが、自然災害の規模、状況によっては、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
2.事業内容及び当社サービスに関するリスク
(1) 特定のサービスへの依存について
当社のCRO事業は、特定のサービス「安全性情報管理」が中核となっており、当社の2018年3月期、2019年3月期における売上高はそれぞれ77.2%、77.7%となっています。さらなる成長を図るにあたっては、今後も安全性情報管理サービスの取引の拡大に努めると同時に、安全性情報管理サービスへのプラットフォームの導入による利便性向上を図っていく方針です。また、ドキュメントサポート、開発サポートサービスにおいても、同様のビジネスモデルで新規顧客の獲得を目指しています。しかし、これらの事業の競合企業のサービスとの差別化が想定通りに進まなかった場合や安全性情報管理サービスにおける競合企業との競合激化等が、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定の顧客への依存について
当社のこれまでの成長は、当社サービスが顧客である製薬企業から評価されることで、取引の拡大を伴う形で長年にわたり継続してきた結果であると考えております。売上高は、上位3社の合計で44.0%を占めているため、結果として特定の製薬企業への依存度が高くなっております。これらの製薬企業が、合併・統合及びその他の理由で経営方針を転換した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
相手先第36期事業年度
販売高(千円)割合(%)
中外製薬㈱327,10018.3
グラクソ・スミスクライン㈱231,89713.0
日本イーライリリー㈱226,06912.6
合計785,06644.0

(3) 継続契約の満了について
当社のサービスを導入した企業が、当社サービスを継続利用することで生じる受注残及び更新売上げにつきましては、増加傾向にありますが、当社サービスの市場競争力の低下や大手製薬企業のグローバル本社による委託先選定方針の変更等によって契約の満了が増加し、受注残及び更新売上が減少した場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 個人情報管理について
当社は、当社社員の採用に関連して個人情報を取り扱っております。当社は、個人情報の外部漏洩の防止はもちろん、不適切な利用等の防止のため、個人情報の管理を重要事項と捉え、アクセスできる社員を限定すると共に、個人情報保護規定等を制定し、全従業員を対象として社内教育を徹底する等、同法及び関連法令並びに当社に適用される関連ガイドラインを遵守し、個人情報の保護に積極的に取り組んでおります。
しかしながら、当社が保有する個人情報等につき漏洩、不正使用等が生じる可能性が完全に排除されているとはいえません。従いまして、何らかの理由でこれらの事態が起こった場合、当社に対する業務上の信用の低下等によって、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 顧客情報の管理について
当社は、提供するサービスに関連して顧客及び受託業務に係わる機密情報を取り扱っております。保有する情報資産についてのセキュリティ管理については、情報管理規程を定め、全従業員を対象として社内教育を徹底するなど厳格な管理体制を確立しています。しかしながら、こうした管理体制が機能せず、何らかの理由でこれらの情報が流出した場合には、委託者である製薬企業から損害賠償請求を受ける可能性があるとともに、当社に対する業務上の信用の低下等によって、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 受託サービスについて
当社は、製薬企業の業務を受託する際の見積額に関して、各工程や人員の適正性を十分検討して決定しておりますが、受託時に適正な採算が見込まれると判断した受託案件であっても、管理の問題、想定外の作業工数の増加等の理由により不採算案件となることがあり、その場合、受注損失の計上や納期遅延に伴う損害の賠償等、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
3.組織体制に関するリスク
(1) 人材の確保や育成について
当社は、継続的な事業拡大のためには、優秀な人材の確保、育成及び定着が重要であると考えています。しかしながら、当社が求める優秀な人材が適時に確保・育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合には、安定した業務運営及び事業拡大等に支障が生じることや、採用コストが計画から乖離すること等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 内部管理体制について
当社は今後の事業拡大に対応するため、人員増加を図り、内部管理体制を更に強化する必要があると認識しております。しかしながら、事業の拡大や人員の増加に対して適切かつ十分な組織対応がとれず、内部管理体制の構築に遅れが生じた場合には、事業遂行及び拡大に制約が生じ、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) コンプライアンスについて
当社は、コンプライアンスマニュアルを定め、役職員に対して定期的に教育研修を行うなど、法令遵守の周知徹底を図っております。またコンプライアンス・リスク管理委員会を置き、発生しうるリスクの発生防止と発生したリスクへの対応等を定期的に協議し共有化を図っておりますが、役職員の故意又は過失による法令違反が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償を負うこととなり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 特定の人物への依存について
代表取締役社長である谷口晴彦は、当社の事業展開において経営方針や事業戦略の決定等、当社の事業活動全般において重要な役割を果たしております。現在、当社では経営体制の強化、人材の育成を行う等により、同氏への過度な依存の脱却に努めておりますが、何らかの理由により同氏による当社の業務遂行が困難となった場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
4.その他
(1)親会社が支配権を有することに伴うリスク
当社は、自らの経営責任を負って独立した事業経営を行っておりますが、当社の親会社であるWDBホールディングス株式会社(東京証券取引所市場第一部に上場)は当社の議決権の100%(本書提出日現在)を所有しており、当社は同社の連結子会社となっております。親会社においては、当社の株式公開後においても、連結関係を維持するために必要となる当社株式を継続的に所有する方針であります。
親会社は当社の株主総会における取締役の任免等を通じて当社の経営判断に影響を及ぼし得る立場にあることから、議決権の行使にあたり、親会社の利益は当社の他の株主の利益と一致しない可能性があります。また、親会社の経営方針の変更や経営状態の悪化等により、問題が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)親会社グループとの関係について
①親会社の影響力について
現状、当社の事業展開にあたっては、親会社であるWDBホールディングス株式会社の「関係会社管理規程」に基づき、業務執行における報告事項及び事前承認事項が定められておりますが、2019年6月24日付で、WDBホールディングス株式会社との間で、当社株主としての権利を除き、当社が東京証券取引所マザーズ市場に株式上場する日をもって当該「関係会社管理規程」の適用除外とする旨の覚書を締結しており、「関係会社管理規程」に定められている報告事項及び事前承認事項は解消されます。
②親会社グループにおける当社の位置付けについて
親会社グループは、化学・バイオ分野を中心とした理学系研究職派遣、機械・電子分野を中心とした工学系技術職派遣を行う「人材サービス事業」、医薬品・医薬部外品等の基礎研究における実験業務と臨床試験以降の開発業務の代行・支援を行う「CRO事業」、ガスインジェクション装置などの製造・販売や、インターネットを利用した新たなビジネスモデルを創出する「その他事業」、親会社グループの支援を行う「グループ戦略補助事業」からなります。
当社は、親会社グループにおけるCRO事業に属しており、安全性情報管理サービスを主軸とした医薬品・医療機器の開発支援を行っております。グループ全体の中核事業は人材サービス事業(売上高構成 89.4% 2019年3月期)であり、CRO事業は8.8%(2019年3月期)で中核事業には当たりません。また、グループの兄弟会社でCRO事業に属するWDB臨床研究株式会社、株式会社コーブリッジ、WDBケミカルラボラトリー株式会社は、医薬品開発の流れに対して、各社の専門領域の分野に特化してそれぞれ独立した業務展開を行っており、当社はグループ内の一事業部門としての位置づけではなく、CRO事業各社とは棲み分けを行った展開をしております。現時点において、これら親会社グループ、CRO事業各社との間に競合関係は生じておらず、今後も競合等が想定される事象はないものと当社は認識しております。
しかしながら、将来において親会社の事業戦略や当社の位置付け等に著しい変更が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、医療業界、製薬企業の変化、市場、競合他社の変化に対して対応した事業展開を行うにあたって、自社独自の判断による機動的な投資と資金調達力の強化、社会的信用力の獲得による顧客層の拡大と優秀な人材の確保の機会の増大が重要であると判断し、上場を選択しております。
③取引関係について
当社はWDB株式会社の事務センター・保険センターに、社員及び派遣社員の給与明細の作成及び社会保険料取扱等の業務を、WDBシステムズ株式会社(2019年8月1日付けでWDB株式会社に吸収合併)には、システム関連等の業務の委託を行っています。WDB工学株式会社からは工学系人材の派遣社員を受け入れています。これら取引については、WDBグループ各社からの独立性確保の観点も踏まえ、第三者である他社と同等の条件により、取引を行っております。
一方、過年度においては本社オフィス賃借、出向社員の出向料などのグループ間取引が生じておりましたが、これら取引の一部は解消しております。
当社は、親会社グループとの取引を削減していく方針ですが、今後も継続する取引及び新たに取引を行う場合は、その取引の合理性及び条件の妥当性については、取締役会の諮問機関である関連当事者取引検証委員会において、事業上の必要性及び他社との取引条件等を比較しその妥当性の検証を行なった上で、その意見表明に基づいて、当社にとって不利益となる場合は条件の見直し、解約を親会社と交渉を行い、取締役会で承認を行うこととしています。本書提出日時点において親会社との取引方針や取引条件に変化は生じておりませんが、今後の取引条件に変更が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
2019年3月期における当社とWDBグループとの主な取引は以下のとおりであります。
(WDBホールディングスグループとの主な取引)
種類会社等の名称所在地資本金又は出資金
(百万円)
事業の内容取引の内容取引金額
(千円)
親会社WDB
ホールディングス株式会社
兵庫県
姫路市
1,000持株会社・グループの
経営管理
事務所の賃借料(本社)
(注3)
36,696
事務所の賃借料
(神戸データセンター)
5,914
水道光熱費4,366
ブランド使用料(注4)3,143
同一の親会社を持つ会社WDB
株式会社
東京都
千代田区
450理学系研究職の登録型派遣及び人材紹介出向料(注5)72,061
出向者賃料負担(注6)1,256
消耗品費1,677
電話料金・後納料金2,130
固定資産使用に係る費用2,438
業務委託費用(注7)3,154
事務センターへの外注費5,800
WDBシステムズ株式会社(注8)兵庫県
姫路市
10データベースの構築・保守メンテナンスITインフラ外注費8,700
WDB
工学
株式会社
東京都
千代田区
200工学系研究職・技術職人材の正社員型派遣サービス人材派遣料11,107

(注)1.取引金額には消費税等は含まれておりません。
2.取引条件につきましては、市場価格等を勘案して、他の一般取引条件と同様に決定しております。
3.2019年6月に本社移転を行っており、本社の主要部分は自社賃借に切り替えております。
4.上場会社の100%子会社としての社会的信用を享受することによる対価であり、当社の上場をもって廃止する予定です。
5.2019年2月に12名が当社に転籍しております。本書提出日現在において出向者は3名であります。
6.当該取引の対象者は、2019年2月に1名が当社に転籍したことにより、1名になっております。
7.業務委託費用は、ウェブサイト制作等の役務の提供に対する費用となります。
8.WDBシステムズ株式会社は2019年8月1日付けでWDB株式会社に吸収合併されております。
④人的関係について
本書提出日現在、取締役(非常勤)である中野敏光は、親会社代表取締役社長及びWDB株式会社代表取締役社長を兼務しております。同氏については、長年の事業経験における豊富な経験をもとに、その知見の活用及び当社の事業に関する助言を得ることを目的として就任しており、当社独自の経営判断を妨げるものではなく、当社の経営執行に与える影響は限定的であると認識しております。
また、取締役会の諮問機関として関連当事者取引検証委員会及び指名報酬委員会を設置し、独立性の確保に努めるとともに、より一層の経営監視体制の強化、経営の透明性の確保が必要であると認識しており、独立役員の資格を満たす社外取締役の増員を検討しています。
また、当社はWDB株式会社から3名の出向者を受け入れております(本書提出日現在)が、いずれも当社の重要な役職には就いておりません。
(3) 新株予約権にかかる事項
当社は、当社役員及び従業員に対するインセンティブを目的として、新株予約権を付与しております。本書提出日現在、新株予約権による潜在株式数は120,000株であり、発行済株式総数2,000,000株に対する割合は6.0%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化することになり、将来における株価に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 資金使途について
当社が今回計画している上場による資金調達の使途につきましては、システム開発費、人員拡充における採用費・教育費および事業拡大に伴う人員体制の強化による増員に伴う人件費の増加分に充当する予定であります。しかしながら、当社が属する業界の急速な変化等により、当初の資金使途が変更される場合や、計画通りに資金を使用した場合であっても、想定通りの投資効果をあげられない可能性があります。