有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/11/18 15:00
【資料】
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【項目】
139項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針について
当社グループでは、当社クライアントとのコミュニケーション・ブランディングのパートナーとしてのあり方を明確にする目的で、「必要なヒトに、必要なコトを。」という企業ビジョンを制定しております。また、このビジョンを達成するために求められる事業上の施策を明確化する目的で、中長期経営戦略を定めております。当社グループの中長期経営戦略では、それぞれのインターネットサービスをユーザー接点強化の「場」として展開したうえで、親和性の高いビジネスモデルを掛け合わせることで収益構成を多角化し、それらのビジネスモデル同士を掛け合わせていく事でインターネットサービスの枠を超えた事業展開を行っていく事を計画しています。これらの事業展開のフェーズを3つのフェーズに分けて設定しています。
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①場の創出
特定の興味・関心事項に関する情報配信に特化したインターネットサービスやSNSメディアという“場”を創出する事で、単なるユーザー規模拡大ではなく特定の興味・関心事をもったユーザーリーチの網羅性と独自性を強化していきます。現在は、地方テレビ局など地域のメディア企業への展開を進めております。今後は、地域的な拡大に加え、SNSやIoTなど、新たな情報発信手法にも対応してまいります。また、効率性や収益性を優先し自社によるサービス展開のみならず、他社とのアライアンスや他社のサービス支援を通してサービスネットワークの展開を推進してまいります。
②ビジネスモデルの多角化
インターネットサービス運営から得たユーザーやコンテンツ情報を活かして、広告ビジネスモデルのみならず、それぞれのサービスのユーザーと親和性の高い収益モデルを展開してまいります。消費者が商品に対して感じる価値が、純粋な機能面から商品のイメージやブランド価値に移行している中で、当社グループのノウハウである商品の特性を多種多様なコンテンツを通して表現する力を活用したサービスを展開してまいります。例えば購買興味の強い領域が特定できているサービス上では、ウェブコンテンツの発信に加えて関連する領域におけるECサービス展開を開始しております。
③事業間シナジーの創出
それぞれのインターネットサービスに紐付いたビジネスモデルを連携させていく事で、ユーザーの生活機会にあわせたサービスを展開していく事を計画しています。また、情報を発信する人を育成していく施策の展開や、それらの連携を地域産業や自治体と連携して進める事で、収益機会を最大化する事も実施してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループでは、収益規模を持続的に拡大させていく事と、効果的なリソース配分がなされている事の両面を担保していく観点から、売上高や売上総利益ならびに営業利益を特に重視しております。2019年3月期にかけて、サービス毎の業務内容を明確に規定し、それぞれのプロセスごとにKPIを設定して業務の型化と効率化を進めたことで、特にメディアマネジメントサービスにおける利益率の改善を達成いたしましたが、今後は、これまでの取組みに加え、提供するサービスをシステム化して行く事で、事業構造の更なる効率化を図っていく方針です。また、当社グループの事業成長の進捗は、前出の通りウェブサービスの拡大状況から把握できることから、運営インターネットサービス数や、それらのサービスから創出される売上高推移を主なKPIとして重視しております。
(3)経営環境について
我が国におけるインターネット利用者数は前年に引き続き増加を続けており、総務省が発表した「平成30年通信利用動向調査の結果」によると、2018年にインターネットの普及率は79.8%に達しました。その中でも、20代から30代では、スマートフォン保有率が全国で9割を超えてきており、これにより室内だけでなく、外出先でインターネットを利用することが日常的に行われている事が見て取れます。また、10代から50代のインターネットの利用率が9割を超える結果となっており、利用率の増加に伴い利用用途も多様化している事が想定され、検索以外の手段で情報取得をする人々が増加していることが示唆されています。
広告業界におきましては、2018年(暦年)の「2018年 日本の広告費」(株式会社電通)によると、日本の総広告費は6兆5,300億円(前年比2.2%増)と、7年連続で前年実績を上回りました。従来からの主力媒体であるマスコミ四媒体の広告費は2兆7,026億円と4年連続減となった一方で、インターネット広告市場は、1兆7,589億円(前年比16.5%増)となり、また、インターネット広告媒体費は1兆4,480億円(前年比18.6%増)と、広告市場が従来型のメディアからインターネットメディアへと変遷している事が示唆される内容となりました。
また、広告形態としては、予約型広告以上に運用型広告の市場は成長しており、媒体費全体における運用型広告の構成比は79.5%と、全体の広告予算の約5分の4を占めるに至りました。また、前年に引き続きブランド価値毀損に対して配慮するブランドセーフティへの関心の高まりや、広告表示回数やクリック数等の広告結果指標を操作する事により、広告に対する費用対効果を偽る取引等のアドフラウド問題への対処なども注目されており、各メディアや検索エンジン、大手SNSといったプラットフォーマー側ではその対応策が進んでおります。
こうした市場環境のもと、当社グループは引き続き大手出版社とのリレーションシップを強化し、メディアの新規支援開始を含む取り組み強化等、クライアントとの関係構築と強化に努めました。当社グループが提供するサービスは、雑誌出版社向けにウェブサービス支援を提供する企業としてシェアが高い状態を維持しておりますが、未だサービス提供対象となり得る出版社は多く存在します。また、本邦の人口分布状況を勘案すると、地域に広がるインターネット広告市場はウェブへの広告市場の移行も勘案すると今後大きな規模となる可能性が高く、当社グループにおいて注力していく領域の一つであります。今後は、地域に多く存在するテレビ局や新聞社といった潜在クライアントであるメディア企業に対して、ウェブサービス構築・運営から収益化までを一気通貫でサポートできるユニークなポジショニングとノウハウを活かし、地域広告市場への展開を強化していく方針です。加えて、メディア業界の変化に伴う新規事業への取り組みとして、質の高いメディア面に対して長期広告出稿契約を獲得するなど、収益環境の安定化に向けた取り組みも強化していく方針です。
(4)対処すべき課題
①業界動向について
個人および法人のインターネット活用の場面が拡大したことに伴い、インターネット広告市場も拡大しております。しかし、インターネット広告業界は、広告領域の他の事業同様に景気変動の影響を直接的に受ける性格を有しております。そのため当社は、新たな業界動向を察知し、外部環境の変化に対応できる臨機応変な組織構築を行ってまいります。
また、インターネット広告業界の中で、予約型広告の市場成長をしのぐスピードで運用型広告市場の成長が顕著となっております。かかる事業環境の中、当社は子会社であるData Tailor株式会社とも連携し、広告枠の効果的な配置による収益機会最大化と、収益性の高いメディアの制作・運用ノウハウの強化や改善を行っていく方針です。
②競合環境の変化について
当社収益の大半は、広告主によるインターネット媒体出稿費用に直接あるいは間接的に依存する比率が高いのが現状です。昨今のインターネットメディアの増加により、メディア間での競合が激化し当社の広告受注単価あるいは受注数に影響が出る場合には、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため当社グループは、継続した広告メニューの改善・開発を、広告主や媒体社との意見交換を頻繁に実施しつつ継続していくとともに、サービス間で連携しSNSやオウンドメディアの運用、コンテンツマーケティングやEC関連ソリューションの提供など、広告獲得以外の価値をクライアントに提供する活動にも注力してまいります。
③ブランドセーフティへの対応について
インターネット広告を行う際には、数多くの広告配信ネットワークやメディアから広告が配信される事から、適切なコントロールがなされていない場合、広告主が表示を想定していない、コンテンツの質が低いメディアに広告が表示される可能性があります。かかる事象が発生する事で、広告を実施した事によって広告主のブランド毀損が発生する可能性があるため、このようなブランド価値毀損が発生しうる広告掲載を防止する、ブランドセーフティが意識されるようになってきており、広告主が不適切な広告媒体を避けたり、アドネットワークを配信ネットワークとしての質に注目し選別するなどの動きが注目されつつあります。その中で、当社グループはコンテンツ制作体制を強化し、コンテンツに対する社内レビュー体制の強化や、専門家の監修強化を通して、コンテンツの質向上に取り組んでいます。
④特定の経営陣への依存緩和について
当社グループの代表取締役社長である藤田誠は、2007年の創業以来当社の代表を務めております。同氏は、インターネットサービス事業に関連する豊富な経験と知識を有しており、当社の事業戦略の決定に重要な役割を果たしております。当社では、取締役会や、事業運営に必要な定例会議の実施を通した情報共有や幹部の育成、組織の強化を行う事や、適宜権限の委譲を行っていく事で、同氏に過度に依存する体制を緩和していく方針です。
⑤内部管理体制について
当社グループは現在、成長段階であり、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であります。そのため、当社グループは経営の公正性・透明性を確保するための更なる内部管理体制強化に取り組んでおり、定期的な内部監査の実施によるコンプライアンス体制の強化などを行っていく方針です。
⑥人材の確保及び育成について
当社グループは、今後想定される事業拡大や新規事業の展開に伴い、継続した人材の確保が必要であると考えております。特に、新規事業を立ち上げ、拡大・成長させていくための事業開発力・マネジメント能力を有する人材や、コンテンツ制作のスキルを有する人材の確保に努めるとともに、人事・教育体制の整備を進め人材の定着と能力の底上げに努めております。