有価証券届出書(新規公開時)

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2020/02/17 15:00
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事業等のリスク

当社の事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。中には当社として必ずしも重要なリスクとは考えていない事項も含まれておりますが、投資判断上、もしくは当社の事業活動 を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点からリスク要因として挙げております。
当社はこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の事項及び本項以外の記載もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。また、これらは投資判断のためのリスクを全て網羅したものではなく、更にこれら以外に も様々なリスクを伴っていることにご留意いただく必要があると考えます。
また、当社は、医薬品等の開発を行っていますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、各パイ プラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベ ンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高い と考えられており、当社への投資はこれに該当します。
なお、文中の将来に関する記載は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 医薬品の研究開発、医薬品業界に関するリスク
① 新薬開発の不確実性
当社は、抗体医薬品開発を行っておりますが、一般に医薬品開発の成功確率は、他産業と比較して極めて低いものとされています。また、一般的に、医薬品開発の研究開発期間は多額の研究開発投資と基礎研究段階から承認取得に至るまで長期間を要すると考えられています。
そのため、基礎研究及び非臨床試験において高い効果が期待される新規抗体医薬品候補が見つかったとしても、その後の臨床試験により、期待した効果が得られない場合、重篤な副作用が生じた場合、当局の審査において承認が得られない場合などには、研究開発の遅れ、研究開発計画の延期や研究開発の中止になる可能性があります。このことから医薬品の研究開発には多くの不確実性が伴い、当社の現在及び将来の開発品についても同様の不確実性のリスクが内在しております。研究開発が遅れた場合や追加試験が必要となる場合には、計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となる可能性がありますし、その資金調達の実現自体にも不確実性があります。また、ライセンス契約の存続期間が特許権の有効期間が終了するまでの期間としているものも有り、ライセンス契約中にマイルストーンが達成できずに、当初想定した投資回収額を回収できないリスクもあります。このようなリスクが顕在化した場合には、当社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 法的規制及び医療保険制度について
医薬品業界は、各国において薬事法をはじめとする事業規制法、医療保険制度並びにその他関係法令等により様々な規制を受けております。当社においては、現行の医薬品に関する日本をはじめとした先進国での承認基準や薬事規制を前提として事業計画を策定しておりますが、これらの基準及び規制は技術の発展や市場の動向等に応じて適宜改定がなされるものであります。
開発に長期間を要する医薬品開発においては、開発期間にこれらの基準及び規制、制度等が改定・変更される可能性があります。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 抗体医薬品市場について
当社は、主に抗体医薬品の開発を行っております。当社は、抗体医薬品市場が安定的に成長すると見込んでおりますが、抗体医薬品と競合する低分子医薬品、中分子医薬品、核酸医薬品及び再生・細胞医療の開発等により想定どおりに市場が拡大しない場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 技術革新について
当社が属する医薬品産業は、技術革新が著しく早いため、当社は創薬基盤技術を継続的に発展させるべく、研究開発を積極的に実施しております。
しかしながら、急激な技術革新等により新技術への対応に遅れが生じた場合や当社が保有する技術・ノウハウが陳腐化する場合、また、必要な技術進歩を常に追求するために多額の費用と時間を要する場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 競合について
当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。
競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合、当社の事業の優位性は低下する可能性があります。競合他社による新薬の登場により当社の臨床試験において被験者の登録が停滞し臨床試験が遅延する可能性、目標被験者数に届かず臨床試験が中止となる可能性があります。また、この場合、当社の事業において多額の資金が必要となる可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、競合する新薬の開発が先行し、又は競合新薬が上市されたことにより、事業性が大きく毀損されたとライセンス・アウト先製薬企業が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性や、ライセンス契約解消に至る可能性があります。上市に至った場合においても、他社が同様の効果や、より安全性のある製品を販売した場合、適切な薬価が付かず、当初想定したロイヤリティが得られない等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 医療費の抑制策について
日本政府は、今後の人口の高齢化及びそれに伴うさらなる医療費の増加を抑制するため、薬価の引き下げ、ジェネリック医薬品の使用推進などの施策を行っております。また、日本のみならず米国や諸外国においても、同様の傾向がみられます。今後の医療費抑制の政策に関する動向によっては、上市した医薬品に想定した適切な薬価が付かず、想定したロイヤリティが得られない等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 副作用に関するリスクについて
当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任などの損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しております。
しかしながら、最終的に当社が負担すべき損害賠償額の全額について保険金が支払われない可能性があります。その場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これ以外にも、当社への損害賠償が結果として認められなかった場合であっても、また、損害賠償額の全額が保険で補償された場合であっても、損害賠償請求がなされたという事実により、当社に対してネガティブなイメージをステークホルダーに持たれ、その結果、研究開発中の医薬品候補物質及び上市後の医薬品に対する信頼性が損なわれ、その後の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて
当社は、東京本社と名古屋ラボに研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、または、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があり、その場合には当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、下記⑨に記載のとおり、当社は、当社の研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社及び外部委託先において地震、水害等の自然災害・治安不安などの発生により、設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 外部委託先との連携について
当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から主に以下の業務の一部を専門機関に委託しております。
・原薬・製剤(治験薬)の製造・評価試験
・薬理効果試験・毒性試験等の非臨床試験
・臨床試験のモニタリング・データマネジメント・統計解析
委託先とは今後も取引を継続してまいりますが、委託先における自然災害等の不測の事態等により、原薬の安定供給や適時なサービス業務を受けられなくなる可能性があります。この場合には当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
上記の委託及び上記以外の業務に関する委託において、当社にとって不利な契約改定が行われた場合又は予期せぬ事情により契約が終了した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、外部委託先は日本国内のみならず外国の企業にも委託しております。今後も日本・外国を問わず、研究開発において最善の企業・医療機関等に業務の委託を行う予定であります。
外国の企業に業務を委託するに際して、コンサルタントを利用し、コミュニケーションを密にして情報収集に努めるなどトラブルを回避するための措置を講じておりますが、外国における法令等及びその解釈などの法的規制又は商取引慣行などにおいて現地の委託先と問題が生じる可能性、国際税務上の問題又は戦争・紛争などの治安不安などにより事業運営に制約を受ける可能性があります。この場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業遂行上のリスク
① 経営上の重要な契約等について
当社の経営上重要な契約の概要は、「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」に記載しておりますが、当該契約が期間満了、又は契約の相手方の経営状態の悪化や経営方針の変更による契約解除その他の理由による終了、もしくは当社にとって不利な改定が行われた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 大学との共同研究に係る費用負担に関するリスク
当社は、医薬品シーズの探索を目的として、藤田医科大学をはじめとする複数の大学との共同研究を行っておりますが、共同研究に係る費用の一部については当社が負担しております。また、共同研究の進捗状況に応じて、追加的な費用を負担する場合もあります。
当社は、今後も大学との共同研究に積極的に取り組む方針であり、相応の共同研究費を負担する予定でありますが、共同研究に係るテーマなどの状況により、当社が予定していない費用負担が発生することになった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 会社組織について
当社は、本書提出日現在、取締役6名、監査役3名及び従業員18名の小規模な組織であり、内部管理体制も当該規模に応じたものであります。今後の事業拡大に伴い、内部管理体制の充実を図る方針でありますが、必要な人員を確保できない場合、当社の今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
④ 特許について
当社は、様々な知的財産権を実施しており、これらは当社所有の権利であるか、又は適法に使用許諾を受けた権利であるものと認識しております。また、これらについては登録済みとなっているものと審査中のものがあります。
本書提出日現在、出願している全ての発明について、特許が成立するとは限らず、出願中の特許が成立しない可能性があります。また、優れた技術が出現した場合には、当社が実施する特許権に包含される技術が陳腐化する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。
他社において優れた特許・発明が成立する可能性は常に存在しており、当社の特許が成立しても、他社の特許・発明により、当社の特許が無力化される可能性が潜在しています。天然物に関連する特許については、日本・米国・欧州の特許庁において共通したガイドライン等が合意され発行されておりますが、これとは別のガイドライン等を発行する国があり、国によって法令・ガイドラインが異なり複雑な状況となっている場合があります。また国によってその法令・ガイダンス等における解釈や事実認定の方法・解釈が異なる場合があり、他国において当社が申請した特許が想定どおりに取得・登録されない可能性があります。日本を含め他国においても、解釈等により、第三者が当社に通知・補償・支払いをすることなく当社の特許及びそれに関連すると考えられている技術を利用し、研究開発、医薬品・薬剤の製造販売をする可能性があります。
なお、上記について、現在、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障もしくは支障をきたす可能性のある特許権等は、調査した限りにおいて存在しておりません。
また、当社が実施許諾を受けた権利の契約が期間満了、又は契約の相手方の経営状態の悪化や経営方針の変更による契約解除その他の理由による終了、もしくは当社にとって不利な改定が行われる可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 訴訟及びクレームについて
当社は、その事業が第三者の特許権等に抵触することを未然に防止するため、特許事務所と連携の上、特許調査を適時実施しております。また、本書提出日現在において、当社の事業に関する特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟及びクレームが発生している事実はありません。
しかしながら、万が一、第三者との法的紛争が生じた場合には、この解決に時間及び多大な費用を要する可能性があります。特に第三者の特許権等を侵害して事業を行っていた場合、当該第三者の差止請求権や損害賠償請求権行使、高額な実施料の請求等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、製造物関連、環境関連、労務関連その他に関する訴訟が提起される可能性もあり、これらの結果、当社の社会的信用が失墜し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 職務発明について
当社における職務発明の取扱いに関しては、発明・考案に関する規程を制定・運用し、当該規程に従い発明者に対して相当の対価を支払うこととしております。
しかしながら、発明者との間で職務発明の対価の相当性についての係争やトラブル等が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 風評上の問題の発生について
当社は、開発における安全性の確保、法令遵守、知的財産権管理、個人情報管理等に努めております。しかしながら、当社に関してマスコミ報道などにおいて事実と異なる何らかの風評上の問題が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 災害等の発生に関する不確実性について
当社が事業活動を行っている地域において、自然災害や火災等の事故災害等が発生した場合、当社の設備等に大きな被害を受け、その一部又は全部の稼働が中断し、研究開発が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 配当政策について
当社は創業以来、株主に対する剰余金の分配を実施しておりません。
株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ剰余金の分配を検討する所存でありますが、当面は研究開発活動の継続的な実施に備えた資金の確保を優先し、配当は行わない方針であります。
⑩ 資金使途に関する事項
当社が今回の株式上場において公募増資により調達する資金の使途につきましては、主として既存パイプラインの研究開発費用に充当するほか、新規のパイプラインの研究開発・導入にも充当していく方針であります。ただし、急激な外部環境の変化などに対応するために現時点における資金使途以外の使途に充当する可能性があります。また、当社の計画どおりに使用したとしても、計画どおりの効果を上げられない可能性もあります。
(3) パイプラインについて
当社の開発するパイプラインは、上市までに数多くの開発課題を解決していく必要があります。各パイプラインが抱えるリスクは以下のとおりです。
① PPMX-T001について
PPMX-T001は、中外製薬株式会社に抗GPC3抗体の特許を受ける権利等を譲渡し、譲渡後の研究開発は中外製薬株式会社が実施しており、当社は研究開発に関与しておらず、当社の費用負担はありません。また、契約上定められた中外製薬株式会社からの情報連絡は、マイルストーンイベントの発生及び開発中止の決定がなされた場合のみであり、その他の開発状況に係る、当社の情報取得は公開情報に限定されます。
単剤での開発は、第Ⅱ相試験で、主要評価項目が未達となり、その後の研究開発の予定は公表されておりません。一方、アデゾリズマブとの併用で第Ⅰ相試験を行い、患者での有効性が確認されたことが学会発表されており、更に2016年にBispecific抗体ERY974(抗GPC3-抗CD3)の第Ⅰ相試験が開始され、2019年8月に終了しておりますが、上市までに長期間を要すると考えられます。
今後、以下に記載する理由により、開発が遅延又は中止となる可能性があります。
・臨床試験実施中に疾患領域において競合する新薬が上市される等の理由により、必要となる被験者数を適時に獲得できない場合
・主に安全性等に起因する理由に基づく規制当局による当該試験の中断又は中止命令が出る場合
・中外製薬株式会社が当該臨床試験の方針を変更した場合
・中外製薬株式会社が医薬品候補物質の有効性及び安全性が認められる臨床試験成績が得られなかったと判断した場合
・外部環境の変化
この場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性が生じる可能性があります。
また、中外製薬株式会社との契約の存続期間は、対象となる抗GPC3抗体の有効期間であり、当該特許権の有効期間が2022年とされております。このため、契約期間中にマイルストーンが達成できずに、想定した回収額を得られない可能性があります。中外製薬株式会社の判断により、特許権の有効期間を5年延長する可能性がありますが、5年延長の申請を実施しても当局に受理されない可能性があります。
② PPMX-T002について
当社及び富士フイルムRIファーマ株式会社(現 富士フイルム富山化学株式会社)がPPMX-T002に関する権利を、富士フイルム株式会社に使用許諾しており、富士フイルム株式会社が使用許諾後の研究開発費を負担します。
米国で第Ⅰ相試験を拡大し、日本の厚生労働省の定める第Ⅱ相試験相当を実施中ですが、上市までに長期間を要すると考えられます。
今後、以下に記載する理由により、開発が遅延又は中止となる可能性があります。
・臨床試験実施中に疾患領域において競合する新薬が上市される等の理由により、必要となる被験者数を適時に獲得できない場合
・主に安全性等に起因する理由に基づく規制当局による当該試験の中断又は中止命令が出る場合
・富士フイルム株式会社が当該臨床試験の方針を変更した場合
・富士フイルム株式会社が医薬品候補物質の有効性及び安全性が認められる臨床試験成績が得られなかったと判断した場合
・外部環境の変化
この場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性が生じる可能性があります。
③ PPMX-T003について
PPMX-T003は、日本でPV(真性多血症)治療薬としての第Ⅰ相試験を実施中です。研究開発費は、当社が負担で進めており、その後製薬企業へライセンス・アウトし開発を委ねる予定です。現時点でライセンス・アウトの臨床試験のフェーズ、ライセンス・アウト先及び契約内容は未定であり、上市までに長期間を要すると考えられます。
今後、以下に記載する理由により、開発が遅延又は中止となる可能性があります。
・臨床試験実施中に疾患領域において競合する新薬が上市される等の理由により、必要となる被験者数を適時に獲得できない場合
・主に安全性等に起因する理由に基づく規制当局による当該試験の中断又は中止命令が出る場合
・臨床試験において期待する有効性及び安全性を示すデータが得られない場合
・研究開発の後期を担うライセンス・アウト先が見つかるのに想定を大幅に越える時間がかかる、又は見つからない場合
・外部環境の変化
この場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、追加の資金調達の必要性が生じる可能性があります。
(4) 業績等に関するリスク
① 収益の変動及びその不確実性について
当社の収入は、研究受託及び抗体・試薬販売に伴う比較的安定した収入と、当社の導出した抗体の医薬開発に向けた製薬企業等との契約に基づく契約一時金等の収入の主な2つに分かれますが、製薬企業からの収入は研究や開発の進捗に大きく左右されることから、当社又は導出先における研究開発の進捗に遅れが生じた場合、導出先の研究開発方針に変更等が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、研究受託について、過年度においては、富士フイルムグループからの研究受託を実施していましたが、今後は富士フイルムグループからの大型の受託は見込まれず、研究受託による売上高は減少する見通しです。
また、当社の期間損益は、製薬会社への導出契約に基づく契約一時金及び研究開発の進捗に伴うマイルストーン等により大きく変動する可能性があります。
② 資金繰りについて
当社のような研究開発型の企業においては、開発期間において継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。当社においても営業キャッシュ・フローのマイナスが続いているため、増資による調達のほか、研究開発の進捗に合わせて提携先からの一時金やマイルストーンの形などで資金の確保に努める方針でありますが、何らかの理由によりこうした資金の確保が進まなかった場合においては、今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。
③ 税務上の繰越欠損金に関するリスクについて
当社は本書提出日現在において、税務上の繰越欠損金を有しており、現在は所得を課税標準とする法人税、住民税及び事業税が課されておりません。しかしながら、当社の業績が順調に推移することで繰越欠損金を上回る課税所得が発生した場合あるいは税制改正に伴い所得を課税標準とする法人税、住民税及び事業税が発生した場合には、計画している当期純利益又は当期純損失並びにキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
④ 為替レートの変動に関するリスクについて
当社は、抗体・試薬を海外への販売及び治験薬の製造等を海外への委託を実施しており、海外の取引先との間で外貨建取引を行っております。当社の今後の事業規模の拡大に伴い、外貨建取引の規模が大きくなった場合や支払サイトの長い外貨建取引を行う場合には、為替レートの変動により当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 特定の取引先に依存するリスクについて
富士フイルム株式会社(以下、「同社」という。)は、2006年1月の当社への出資に始まり、2009年1月には当社議決権の76.7%を所有する親会社となりましたが、2018年3月の当社第三者割当増資の結果、当社議決権の所有割合は、48.6%となり、大株主ではありますが、その他の関係会社になりました。
a.当社役員の同社の役職員との兼任
当社は、同社より、1名(取締役 伴寿一)を役員として招聘しております。伴寿一の招聘については、医薬品業界における豊富な知識と経験を当社の経営に活かしていただくことを目的としたものであります。
b.同社グループとの取引関係
2019年3月期における同社グループとの取引関係は以下のとおりであります。
取引先取引内容金額(千円)取引条件等の決定方法
富士フイルム株式会社研究受託
マイルストーン
特許維持費の立替
手数料の支払
25,626
180,000
19,423
77
当社が希望価格を提示し、価格交渉の上で決定しております。
FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies
U.S.A.,Inc.
研究委託1,768当社が希望価格を提示し、価格交渉の上で決定しております。
FUJIFILM Diosynth
Biotechnologies
UK Limited
研究委託
立替金の支払
18,935
1,525
当社が希望価格を提示し、価格交渉の上で決定しております。
富士フイルム和光純薬株式会社抗体販売1,020当社が希望価格を提示し、価格交渉の上で決定しております。
富士フイルム富山化学株式会社機器の購入881当社が希望価格を提示し、価格交渉の上で決定しております。
富士ゼロックス東京株式会社使用料590当社が希望価格を提示し、価格交渉の上で決定しております。
富士フイルムビジネスエキスパート株式会社業務委託715当社が希望価格を提示し、価格交渉の上で決定しております。
富士フイルムイメージングシステムズ株式会社使用料414当社が希望価格を提示し、価格交渉の上で決定しております。
富士フイルムICTソリューションズ株式会社使用料680当社が希望価格を提示し、価格交渉の上で決定しております。

また、当社の経営上の重要な意思決定において、同社グループの事前承認事項や事前報告事項は存在せず、同社からの独立性の確保という点で、同社との関係によって当社の自由な事業活動を阻害される状況にないと考えております。