有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/05/21 15:00
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120項目
(1) 経営成績等の状況
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
第21期事業年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
当事業年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善が続いていましたが、消費税率引き上げによる消費マインドの影響や、米中貿易摩擦、イギリスのEU離脱、中東地域を巡る情勢等国際情勢に端を発する世界情勢の下振れリスク、これらに加え、年明け以降、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により経済活動が抑制され、景気は急速に減速し、国内外経済に与える影響の長期化・深刻化への懸念が高まっており、先行きにはより一層の不透明感が広まっております。
このような環境の中、当社は、さい帯血採取協力病院への情報提供及び、新聞等紙媒体を通じたマーケティング活動を深耕する事により、「細胞バンク事業」の拡大に注力して参りました。
この結果、売上高は、1,676,456千円と前年同期と比べ526,598千円(45.8%)の増収、営業利益は、382,327千円と前年同期と比べ166,441千円(77.1%)の増益、経常利益は、382,533千円と前年同期と比べ166,280千円(76.9%)の増益、当期純利益は、277,485千円と前年同期と比べ134,650千円(94.3%)の増益となっております。
また、総資産は、3,564,700千円と前事業年度末と比べ751,289千円(26.7%)増加しております。これは主に保管(売上)検体数増加により現金及び預金が559,852千円(22.7%)、売掛金が100,568千円(56.3%)増加したこと、自動細胞分離装置等の取得により工具、器具及び備品が45,850千円(18.9%)増加したことによるものであります。負債は、2,304,862千円と前事業年度末と比べ473,803千円(25.9%)増加しております。これは主に顧客から長期保管料として受け取っている前受金が422,553千円(25.8%)、未払法人税等が22,918千円(37.6%)増加したことによるものであります。その結果、純資産は、1,259,838千円と前事業年度末と比べ277,485千円(28.2%)増加しております。
なお、当社は、「細胞バンク事業」の単一セグメントのため、セグメントごとの記載を省略しております。
第22期第3四半期累計期間(自 2020年4月1日 至 2020年12月31日)
当第3四半期累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により急速に悪化しております。海外についても、同感染症拡大に伴い各国政府等による営業規制を含むロックダウンが広がるなど急速に悪化しており、世界経済全体で総じて厳しい状況にあります。
このような環境の中、当第3四半期累計期間において当社は、活動が制限される状況下ではありますが、さい帯血採取協力施設への情報提供を継続しつつ、より多くの妊産婦への認知度向上を目的に、Webを通じたマーケティング活動に注力して参りました。
この結果、売上高は、1,064,575千円、営業利益は、90,721千円、経常利益は、95,954千円、四半期純利益は、60,800千円となっております。
また、総資産は、3,795,432千円と前事業年度末と比べ230,731千円(6.5%)増加しております。これは主に細胞処理センターの新設工事開始により建設仮勘定が373,323千円増加したこと、クオリプス社等への投資により投資有価証券を105,100千円取得したことにより現金及び預金が253,250千円(8.4%)、保管(売上)検体数減少により売掛金が32,304千円(11.6%)減少したことによるものであります。負債は、2,474,793千円と前事業年度末と比べ169,931千円(7.4%)増加しております。これは主に顧客から長期保管料として受け取っている前受金が275,577千円(13.4%)増加したものの、未払法人税等が83,806千円減少したことによるものであります。その結果、純資産は、1,320,638千円と前事業年度末と比べ60,800千円(4.8%)増加しております。
なお、当社は、「細胞バンク事業」の単一セグメントのため、セグメントごとの記載を省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
第21期事業年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末と比べ559,852千円(32.7%)増加し、2,273,750千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果得られた資金は、667,859千円(前事業年度は390,933千円の獲得)となりました。これは主に、増加要因として、年間保管(売上)検体数の増加により税引前当期純利益の計上382,533千円、前受金の増加422,553千円があった一方で、減少要因として、売上債権の増加100,568千円、法人税等の支払93,794千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果使用した資金は、108,007千円(前事業年度は184,363千円の使用)となりました。これは主に、減少要因として、自動細胞分離装置、検体保管容器の購入により有形固定資産の取得による支出59,239千円、細胞処理センターの入居、虎ノ門オフィスの開設により敷金及び保証金の差入による支出39,839千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動は発生がありませんでした。
③ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当社は、生産活動を行っておりませんので該当事項はありません。
b 受注実績
当社は、受注生産を行っておりませんので該当事項はありません。
c 販売実績
第21期事業年度及び第22期第3四半期累計期間の販売実績は次のとおりであります。なお、当社は「細胞バンク事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
セグメントの名称第21期事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
第22期第3四半期累計期間
(自 2020年4月1日
至 2020年12月31日)
販売高(千円)前年同期比(%)販売高(千円)
細胞バンク事業1,676,456145.81,064,575
合計1,676,456145.81,064,575

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しております。
2.販売実績の3つの構成の「技術料」、「保管料」、「その他」別の売上は次のとおりであります。
構成第21期事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
第22期第3四半期累計期間
(自 2020年4月1日
至 2020年12月31日)
販売高(千円)前年同期比(%)販売高(千円)
技術料1,338,980158.0786,686
保管料264,569111.8215,365
その他72,906110.962,523
合計1,676,456145.81,064,575

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項については、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたっては、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、これらについては、過去の実績や現在の状況等を勘案し、合理的と考えられる見積り及び判断を行っております。ただし、これらには見積り特有の不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、当社が財務諸表を作成するにあたり採用した重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
② 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の目標とする経営指標は、年間保管(売上)検体数と自己資本比率であります。
経営成績の分析
第21期事業年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
(売上高)
当事業年度の売上高は、前事業年度に比べ526,598千円増加の1,676,456千円(前事業年度比45.8%増)となりました。これは主に、国内外でさい帯血を利用した臨床研究が進展したことにより、医療従事者への信頼度が向上したことや、新聞広告、Web対策等のマーケティングを強化し知名度が向上したことにより施設のPR強化に繋がり、当社の経営指標である年間保管(売上)検体数が前年同期比2,593検体(同55.9%増)増加したことによるものであります。今期の目標年間保管(売上)検体数は6,761検体、実績は7,232検体であり、目標値を達成しております。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は、前事業年度に比べ154,652千円増加の543,833千円(同39.7%増)となりました。これは主に、さい帯血の分離処理検体数が増加したことによるものであります。この結果、当事業年度の売上総利益は、前事業年度に比べ371,945千円増加の1,132,622千円(同48.9%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ205,503千円増加の750,294千円(同37.7%増)となりました。これは主に、営業活動の強化に伴い人件費が134,108千円、広告宣伝費が14,679千円、荷造運送費が9,451千円、旅費交通費が7,482千円、オフィスの新規開設等により賃借料が14,139千円増加したことによるものであります。この結果、当事業年度の営業利益は、前事業年度に比べ166,441千円増加の382,327千円(同77.1%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当事業年度の営業外収益は、前事業年度に比べ176千円減少の228千円(同43.5%減)となりました。これは主に、助成金収入が194千円減少したことによるものであります。また、当事業年度の営業外費用は前事業年度に比べ14千円減少の23千円(同37.7%減)となりました。これは主に、租税公課が37千円減少した一方で、投資有価証券評価損が23千円増加したことによるものであります。この結果、経常利益は、前事業年度に比べ166,280千円増加の382,533千円(同76.9%増)となりました。
(特別損益、当期純利益)
当事業年度において特別損益の計上はありません。また、法人税等を105,047千円計上しました。この結果、当期純利益は277,485千円(同94.3%増)となりました。
第22期第3四半期累計期間(自 2020年4月1日 至 2020年12月31日)
(売上高)
当第3四半期累計期間の売上高は、1,064,575千円となりました。これは主に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により活動が制限される状況下ではありますが、さい帯血採取協力施設への情報提供を継続しつつ、より多くの妊産婦への認知度向上を目的に、Webを通じたマーケティング活動に注力したことによるものであります。その結果、当社の経営指標である保管(売上)検体数は当第3四半期累計期間において4,305検体となりました。
(売上原価、売上総利益)
当第3四半期累計期間の売上原価は、364,041千円となりました。これは主に、さい帯血の分離処理検体数が減少したことによるものであります。この結果、売上総利益は、700,533千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当第3四半期累計期間の販売費及び一般管理費は、609,811千円となりました。これは主に、営業活動の強化に伴い広告宣伝費が増加したことによるものであります。この結果、営業利益は、90,721千円となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当第3四半期累計期間において、営業外収益を5,233千円計上しました。これは主に、助成金収入が増加したことによるものです。この結果、経常利益は、95,954円となりました。
(特別損益、四半期純利益)
当第3四半期累計期間において、特別損失を961千円計上しました。これは主に、固定資産を除却したことによるものです。また、法人税等を34,192千円計上しました。この結果、四半期純利益は60,800千円となりました。
キャッシュ・フローの分析
第21期事業年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の資本の財源及び資金の流動性については、営業活動により得られた資金を財源として運営しており、外部からの資金調達はありません。
また、主な運転資金需要は、さい帯血の分離等に使用する材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用の支払いのほか、設備投資などであります。
財政状態の分析
第21期事業年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
当事業年度末の総資産は前事業年度末に比べ751,289千円増加の3,564,700千円(前事業年度末比26.7%増)、負債は前事業年度末に比べ473,803千円増加の2,304,862千円(同25.9%増)、純資産は前事業年度末に比べ277,485千円増加の1,259,838千円(同28.2%増)となりました。
主な増減要因は、次のとおりであります。
(流動資産)
当事業年度末における流動資産は、前事業年度末に比べ672,336千円増加の3,348,168千円(同25.1%増)となりました。これは主に、保管(売上)検体数増加により現金及び預金が559,852千円、売掛金が100,568千円増加したことによるものであります。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産は、前事業年度末に比べ78,953千円増加の216,532千円(同57.4%増)となりました。これは主に、有形固定資産及び無形固定資産が新規取得に伴い58,125千円増加したものの、減価償却により30,696千円減少し、また、新拠点開設に伴い敷金及び保証金が38,292千円増加したことによるものであります。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債は、前事業年度末に比べ470,756千円増加の2,301,815千円(同25.7%増)となりました。これは主に、新規契約者数の増加により前受金が422,553千円、利益増加により未払法人税等が22,918千円、それぞれ増加したことによるものであります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債は、前事業年度末に比べ3,046千円増加の3,046千円となりました。これは役員退職慰労金の増加によるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ277,485千円増加の1,259,838千円(同28.2%増)となりました。新規契約数の増加により現金及び預金が559,852千円、売掛金が100,568千円、前受金が422,553千円、利益増加により未払法人税等が22,918千円、当期純利益の計上により利益剰余金が277,485千円増加した結果、当事業年度末における当社の経営指標である自己資本比率は、前事業年度末に比べて0.4ポイント増加し、35.3%となりました。今期は、目標値を達成しておりますが、積極的な設備投資を継続していることなどを踏まえると、未だ安定的な収益構造構築の途上にあるものと認識しております。
第22期第3四半期累計期間(自 2020年4月1日 至 2020年12月31日)
当第3四半期会計期間末の総資産は前事業年度末に比べ230,731千円増加の3,795,432千円(前事業年度末比6.5%増)、負債は前事業年度末に比べ169,931千円増加の2,474,793千円(同7.4%増)、純資産は前事業年度末に比べ60,800千円増加の1,320,638千円(同4.8%増)となりました。
主な増減要因は、次のとおりであります。
(流動資産)
当第3四半期会計期間末における流動資産は、前事業年度末に比べ247,945千円減少の3,100,222千円(同7.4%減)となりました。これは主に現金及び預金が253,250千円、売掛金が32,304千円減少したことによるものであります。
(固定資産)
当第3四半期会計期間末における固定資産は、前事業年度末に比べ478,676千円増加の695,209千円(同221.1%増)となりました。これは主に建設仮勘定が373,323千円、投資有価証券が105,100千円、建物が19,300千円増加したものの、繰延税金資産が11,729千円減少したことによるものです。
(流動負債)
当第3四半期会計期間末における流動負債は、前事業年度末に比べ167,809千円増加の2,469,625千円(同7.3%増)となりました。これは主に前受金が275,577千円増加したものの、未払消費税等が42,890千円、未払法人税等が83,806千円、賞与引当金が16,926千円減少したことによるものであります。
(固定負債)
当第3四半期会計期間末における固定負債は、前事業年度末に比べ2,121千円増加の5,168千円(同69.6%増)となりました。これは役員退職慰労引当金の増加によるものであります。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ60,800千円増加の1,320,638千円(同4.8%増)となりました。新規契約数の増加により前受金が275,577千円、利益剰余金が四半期純利益の計上により60,800千円増加した結果、当第3四半期会計期間末における当社の経営指標である自己資本比率は、前事業年度末に比べて0.5ポイント減少し、34.8%となりました。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」をご参照下さい。
④経営者の問題意識と今後の方針について
当社の主事業である「細胞バンク事業」においては、近年その需要が急激に高まって来ており、保管検体数が増加しております。しかしながら、本書提出日現在、比較的人口(お産数)が多い地区(関東・東海・近畿・九州)を中心に営業活動を行っており、今後は、認知度が低い地域での認知度を高める必要があると考えております。そのため、人員の増強、組織の強化が重要な経営課題のひとつと捉えており、今後も専門知識を持った優秀な人材を継続的に採用、また育成を行い、組織を強化して参ります。
また、保管検体数の増加に伴い、将来の大幅な検体増に備え、新たな細胞処理・細胞保管施設の増強についても進めるため、内部留保を充実させ、自己資本比率を高めて参ります。