有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/04/28 15:00
【資料】
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【項目】
160項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
1)経営方針
グループ理念において、以下のように示されております。
(1)ミッション
「私たちメイホーグループは、グループに集う仲間と共に、地域社会を支える企業が培ってきた技術や信用を、互いに認め、補完しあい、共に成長することで、永続的発展的な企業を創り、全従業員のしあわせを追求します。同時に、地域の文化伝統を重んじ、企業価値の向上、雇用の創出を通じて、地域社会の発展に貢献します。」
(2)バリュー
「私たちメイホーグループは、地域を支える企業を結び、経営効率化・人材・業務連携をサポートする企業支援プラットフォームを通じて”地域のサポーターとなる企業”を育成します。」
(3)ビジョン
「私たちメイホーグループは、実業を営む”地域のサポーター企業”を結ぶ全国ネットワークを築き、地域社会を共に支えていきます。」
(4)ウェイ
① 人生二度なし
私たちは自分の一生について真剣に考えます
② 良知を判断基準とする
私たちは心から納得できることを基本に行動します
③ 高い山に登る
私たちは現状維持を衰退と考え、上へ上へと登り続けます
④「ために」から「共に」
私たちは滅私奉公を否定し、しあわせを共創します
⑤ 常に現状を革新する
私たちは一人ひとりが熱意を持ち、自らが中心となって行動します
2)経営環境
(1)社会環境
日本経済は、比較的堅調な企業収益や雇用・所得環境の改善が続くなか、各種政策効果もあって2019年7月から9月においては緩やかな回復基調が続きましたが、2019年10月に実施された消費税増税により消費マインドが低下するなかで、新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年4月には全国で緊急事態宣言が発出され各地で外出自粛要請や営業自粛要請が出されたこと等の影響もあり、足元においては経済活動全般が大きく停滞し先行きについて予断を許さない厳しい状況にあると判断しております。
(2)事業環境
① グループ全体の事業環境
当社グループでは、M&Aを積極的に推進しており、2015年4月以降、建設関連サービス事業5社、人材関連サービス事業3社、建設事業3社、介護事業1社の計12社のM&Aを実施し、吸収合併もしながら、事業の多角化を行ってきました。今後も地域のサポーターとして、地域企業支援プラットフォームを提供しながら当社グループ入りする企業を増加していく計画であります。従いまして、まずは、わが国のM&Aの状況を概観します。
中小企業庁がまとめた「2020年版 中小企業白書」によれば、わが国において、経営者の高齢化や後継者不足を背景に、2016年以降、毎年4万件を超える中小企業が休廃業・解散しております。この内、2019年に休廃業・解散した企業をみると、61.4%の企業が黒字でありました。
培ってきた技術や従業員などといった中小企業の貴重な経営資源を、次世代の意欲ある経営者に引き継いでいくことが重要であると考えられます。
他方で、M&Aの状況をみると、M&A関連の統計を公表している株式会社レコフがまとめた「2019年のM&A回顧」によれば、わが国のM&A件数は、2019年には4,000件を超え、3年連続で過去最高を更新しております。その内、日本企業同士のM&Aが3,000件となっており、今後もM&Aは活発化していくと予想されます。
中小企業のM&Aの目的をみると、事業の承継、従業員の雇用の維持の順で多くなっております。中小企業の経営者年齢の分布を踏まえて考察すると、当面の間、後継者がいない経営者の事業承継目的のM&Aは増加するものと考えられます。
以上のことから、事業承継ニーズは依然として高い状態が続き、当社グループはその受け皿となり、短期的な視点でなく、永続的にともに発展していくことをビジョンとして掲げ、当該企業とその地域の活性化に貢献していけるものと考えております。
② セグメント別の事業環境
a.建設関連サービス事業
建設関連サービス事業は、発注者の約8割を行政(国、都道府県、自治体など)が占めております。当社グループでは、事業の発注を受け、土木、建築工事に関わる調査計画、設計、施工管理、維持点検等の「建設コンサルタント業務」の提供を行うとともに、発注者である行政の組織の中で、公共工事の発注に伴って発生する工事の監督、積算や検査などの業務を職員(公務員)に代わって行う「発注者支援サービス」も提供しております。
2020年度の我が国の建設投資は、全体で前年度比3.4%減の63.16兆円となる見通しであります。このうち、政府投資が25.62兆円(同3.1%増)、民間投資が37.54兆円(同7.3%減)と推計されております(国土交通省 「2020年度建設見通し」より)。
一般社団法人建設経済研究所が2021年1月に公表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」によれば、2021年度は、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響により民間建設投資が減少するとともに、政府建設投資は、前年度と比べて微減となる見通しであります。行政を主な顧客としている建設関連サービス事業の業績は政府建設投資の動向の影響を受けやすいため、2021年度は同感染症の影響は軽微と見込んでおります。
なお、上記見通しを前提として、当社の中長期的な見通しとしましては、老朽化が進む社会インフラの維持修繕工事の需要が予測されることから、我が国の建設投資額は、過去10年の名目建設投資額の平均である55兆円程度の水準で安定的に推移するものと予測しております。
b.人材関連サービス事業
人材関連サービス事業は、日本国内においての、技術者派遣、製造業派遣を主要事業としております。また警備事業や、カンボジアにおいて、日本で受託した図面作成等業務をアウトソーシング先として受ける事業を行っております。また、カンボジアに設立した現地法人において、技能実習生候補の募集、教育、日本への送り出し手配を行っております。
パーソル総合研究所・中央大学が2018年10月に発表した「労働市場の未来推計2030」によれば、2030年には、7,073万人の労働需要に対し、6,429万人の労働供給しか見込めず、「644万人の人手不足」と推計されております。産業別に見ると、特に大きな不足が予測されるのは、サービス業、医療・福祉業など現在も人手不足に苦しむ業種であり、これらの業種は、少子高齢化やサービス産業化の進展により今後も大きな需要の伸びが予測され、労働供給の伸びがそれに追いつかないと考えられております。
このような人手不足のもと、労働供給に関しては、少子高齢化が急速に進む日本において、しばらくは若い労働力の増加は見込めないことから、新たな労働力として期待されているのが、女性とシニアであります。
また、厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況(2020年10月末現在)」によれば、2020年10月末現在の外国人労働者数は約172万人となり、2007年に届出が義務化されて以降、過去最高を更新しました。また外国人労働者を雇用する事業所数は約26.7万か所となり、外国人労働者数と同様に、過去最高を更新しました。一方で外国人労働者数の増加率は前年13.6%から9.6ポイントの大幅な減少、外国人労働者を雇用する事業所数の増加率は前年12.1%から1.9ポイントの減少となっており、新型コロナウイルス感染症の影響等により雇用情勢に厳しさが見られる中、外国人労働者についても影響が生じているものとみられております。
外国人労働者の増加要因を在留資格別にみると、「専門的・技術的分野の在留資格」は、前年比で30,486人(9.3%)増加し、「技能実習」については、同18,378人(4.8%)の増加となっております。これらの在留資格による外国人労働者は一貫して増加しており、当社では、今後も外国人労働者に対する需要は増加するものと予測しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響は今のところ軽微ではありますが、日本国内においては雇止めや自宅待機を余儀なくされるなど、また外国人送り出し機関を設置しているカンボジアにおいては、同国からの要請により事業活動を制限されるなどの影響が出始めております。
c.建設事業
建設事業においては、道路工事などのインフラ関連工事や法面工事等の専門工事を全般的に行っております。
2020年度の我が国の建設投資は、全体で前年度比3.4%減の63.16兆円となる見通しであります。このうち、政府投資が25.62兆円(同3.1%増)、民間投資が37.54兆円(同7.3%減)と推計されております(国土交通省 「2020年度建設見通し」より)。
一般社団法人建設経済研究所が2021年1月に公表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」によれば、2021年度は、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響により民間建設投資が減少するとともに、政府建設投資は、前年度と比べて微減となる見通しであります。建設事業は建設関連サービス事業同様、行政を主な顧客としており、業績は政府建設投資の動向の影響を受けやすく、2021年度は同感染症の影響は軽微と見込んでおります。
なお、上記見通しを前提として、当社の中長期的な見通しとしましては、老朽化が進む社会インフラの維持修繕工事の需要が予測されることから、我が国の建設投資額は、過去10年の名目建設投資額の平均である55兆円程度の水準で安定的に推移するものと予測しております。
老朽化する社会インフラ維持修繕工事の需要増が予測されている中、特に地方で建設業を営む事業者の高齢化と後継者不足に起因する休廃業が増加する傾向にあります。年間の休廃業・解散した企業の件数について、株式会社東京商工リサーチの「2020年「休廃業・解散企業」動向調査」をみると、2020年(1-12月)に全国で休廃業・解散した企業は、49,698件(前年比14.6%増)となり、2000年に調査を開始して以降、最多を記録しました。2020年に倒産した企業は、コロナ禍での政府や自治体、金融機関の資金繰り支援策が奏功し、7,773件(前年比7.2%減)と2年ぶりに減少しただけに対照的な結果となっております。休廃業・解散した企業の件数を産業別に見ると、建設業は8,211件(全体の16.5%)で、サービス業他の15,624件(全体の31.4%)に次ぐ件数となっており、同調査からも建設業における休廃業・解散が進展していることが伺えます。この現状を改善するためにも、当社グループがその受け皿となり、地方のインフラ、地方の雇用、地方の技術を守り、地方の活性化を担っていく考えであります。
d.介護事業
介護事業においては、通所介護(デイサービス)、認知症対応型通所介護(認知症専用デイサービス)、居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)を行っております。
総務省の調べによると、日本の総人口は、長期の人口減少過程に入っており、2030年に人口1億1,662万人、2060年には8,674万人にまで減少すると見込まれております。
内閣府が公表した「令和2年版 高齢社会白書」によると、65歳以上人口は、「団塊の世代」が65歳以上となった2015年に3,347万人となり、「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には3,677万人に達すると見込まれております。このように総人口が減少する中で65歳以上の者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、2065年には約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上という超高齢社会が到来すると推計されております。
厚生労働省の調べ「介護保険事業状況報告の概要(令和3年1月分)」によると、介護保険の受給者数(要介護・要支援の認定者数)は、2021年1月現在、679.2万人で、2000年4月時点の218万人と比較すると、約3.1倍に増大しており、このうち軽度の認定者数の増加が大きくなっております。当社では、要介護・要支援の認定者数が増加傾向にあり、受給者の変化では各区分で毎年1~2割の受給者の介護度が上昇していることから、今後中重度の要介護者は増加するものと予測しております。
なお、今のところ新型コロナウイルス感染症の影響は軽微ですが、高齢者の利用者が多い介護事業におきましては、特に慎重に同感染症の予防に努める必要があると認識しております。
3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは売上高の中長期的な成長を重視しております。また、安定的な利益確保を目指し、売上高営業利益率を客観的な管理指標としております。
4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの事業領域である、建設関連サービス事業、人材関連サービス事業、建設事業、介護事業を取巻く状況をみると、わが国の中長期的な人口減少・少子高齢化が、経済成長と財政健全化の制約となっており、今後政府は、「経済再生なくして財政健全化なし」の基本方針のもと、人づくり革命、生産性革命、働き方改革、新たな外国人材の受入等による安定財源の確保等による財政健全化施策を重点的に推進していくものと想定しております。
当社グループは、このような事業環境の変化に対応するため、中期経営計画において、VISION2030 「日本全域をカバーする地域のサポーター」を掲げ、地域の企業の事業承継の受け皿として積極的にM&Aを実施するとともに、日本全域をカバーする企業ネットワークの構築を行うことで、グループ内に多種多様な見識、技術、知見、ノウハウを獲得し、それをグループ入りした企業を中心に還元していくプラットフォーム型のビジネスを推進してまいります。
このような事業方針に対応するため、内部管理体制の更なる強化、優秀な人材の採用と育成、当社グループの知名度向上が重要な課題であると認識しております。
このような課題に対しては、コンプライアンス体制及び内部統制の充実・強化を図り、優秀な人材については育成だけでなく中途採用も積極的に推進していきます。当社グループの知名度向上については、専門部署を設け、更なるPR戦略を立案・実行してまいります。
なお、新型コロナウイルス感染症の終息時期は依然不透明ですが、当社グループでは同感染症に関する情報収集に努め、また同感染症の感染拡大に伴う影響を最小限に止めるための対応に当たっております。また同時に取引先などの社外の関係者、社員並びにその家族の安全・安心を最優先に考慮し、就業時間中のマスク着用の徹底、テレビ会議システムの活用による出張の抑止、在宅勤務の奨励など同感染症の拡大を止めるための対策を講じております。今後におきましても、引き続き、同感染症の感染拡大に伴う経済活動への影響及び当社グループが営む事業への影響を注視し、事業環境の変化に臨機応変に対応できる体制の構築を図ってまいります。