有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/10/20 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
128項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
1.財政状態の状況
第7期事業年度(自 2020年11月1日 至 2021年10月31日)
(資産)
当事業年度末における資産合計は、前事業年度末に比べ228,051千円増加し、911,261千円となりました。流動資産は226,815千円増加し、896,376千円となりました。主な要因は現金及び預金の増加166,133千円であり、tripla Bookにおける宿泊代金の決済の増加等による預り金の増加328,913千円等によるものであります。固定資産は1,235千円増加し、14,884千円となりました。著しい増減はありませんでした。
(負債)
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末に比べ356,633千円増加し、761,424千円となりました。流動負債は362,873千円増加し、527,664千円となりました。主な要因は、tripla Bookにおける宿泊代金の決済の増加等による預り金の増加328,913千円であります。固定負債は、6,240千円減少し、233,760千円となりました。主な要因は、長期借入金から短期借入金へ振り替えた6,240千円です。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べ128,582千円減少し、149,836千円となりました。主な要因は当期純損失△128,582千円の計上による減少であります。
第8期第3四半期累計期間(自 2021年11月1日 至 2022年7月31日)
(資産)
当第3四半期累計期間における資産合計は、前事業年度末に比べ527,870千円増加し、1,439,131千円となりました。流動資産は528,458千円増加し、1,424,834千円となりました。主な要因は、現金及び預金の増加508,835千円であり、tripla Bookにおける宿泊代金の決済の増加等による預り金508,836千円等によるものであります。固定資産は587千円減少し、14,296千円となりました。
(負債)
当第3四半期累計期間における負債合計は、前事業年度末に比べ516,354千円増加し、1,277,778千円となりました。流動負債は535,074千円増加し1,062,738千円となりました。主な要因は、tripla Bookにおける宿泊代金の決済の増加等による預り金の増加550,782千円等によるものであります。コロナ禍の手元流動性確保のために2020年7月に借り入れたものですが、営業活動によるキャッシュ・フロー増加により借換えを行わず返済といたしました。固定負債は前事業年度末に比べ18,720千円減少し、215,040千円となりました。 (純資産)
当第3四半期累計期間における純資産合計は、前事業年度末に比べ11,515千円増加し、161,352千円となりました。主な要因は四半期純利益11,515千円の計上による増加であります。
2.経営成績の状況
第7期事業年度(自 2020年11月1日 至 2021年10月31日)
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大が長期化する中、国内外でのワクチン接種が進み、海外経済の回復を背景とする輸出の増加や設備投資の増加等による持ち直しの兆しがあったものの、変異株のまん延による感染拡大により、都市部を中心とした緊急事態宣言の発令、まん延防止措置等重点措置の実施が断続的に実施される等、感染状況が経済活動の環境に大きな影響を与える状態が前年から引き続き、個人消費を中心に回復は鈍い状態が続いております。
当社の事業と関連性が高い宿泊業界においては、延べ宿泊者数は、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年と比較し、51.8%となりました。内訳としては、日本人の宿泊者数は63.3%、訪日外国人の宿泊者数は4.0%に留まりました。時期で分けると需要の強弱は非常に変動性が高い状態でした。当事業年度初頭においては、Go To トラベルキャンペーンにより一時的に国内需要が喚起され、延べ宿泊者数は、一時的にコロナ禍前の70%(日本人に限定すると90%)を超える回復率となったものの、その後の感染拡大と緊急事態宣言の連続により、多くの月の延べ宿泊者数は、コロナ禍前の40%台に留まりました。オリンピックは開催されたものの、業界全体の需要としては、当該影響は非常に限定的でした。一方、2021年10月以降、新規感染者数の減少等の影響により、延べ宿泊者は回復いたしましたが、さらなる変異株の出現により、先行き不透明な状態が続いております。なお、延べ宿泊者数については、国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査」に基づき集計しております。
このような環境の下、当事業年度において、顧客価値向上のため、主要サービスである「tripla Book」、及び「tripla Bot」の機能改善に向けた開発投資を継続し、取扱高/GMV拡大のため、Google Hotel Adsといったメタサーチ連携強化、ベストレート機能の拡張等を行いました。また、施設数を積み上げる営業活動に注力いたしました。
このような取り組みの結果、tripla Bookの施設数は、当事業年度末において、前事業年度から725施設増の1,091施設、tripla Botの施設数は、当事業年度末において、前事業年度末から146施設増の892施設、当社の何らかのサービス(注1)が導入されている施設数は、当事業年度末において、前事業年度末から691施設増の1,587施設となりました。また、取扱高/GMVは、当事業年度末において、前事業年度末比の664.5%増の10,623百万円となりました。加えて、販売可能客室は前事業年度末から7.7万部屋増の11.3万部屋となりました。
以上の結果、当事業年度の営業収益は506,037千円(前事業年度比71.5%増)となりました。利益面については、営業損失は△136,239千円(前事業年度△319,945千円)、経常損失は△132,013千円(同△296,285千円)、当期純損失は△128,582千円(同△303,940千円)となりました。
なお、当社はホスピタリティソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。
(注) 1.tripla Payのみを導入している施設数を除きます。
第8期事業年度第3四半期累計期間(自 2021年11月1日 至 2022年7月31日)
当第3四半期累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進み、3月にまん延防止等重点措置の解除を受け、回復の兆しが見え始めました。緩やかな景気回復を背景に投資再開の動きが広がる中、新たな変異ウイルスであるオミクロン株の感染急拡大を受け、個人消費が低迷するなど、勢いを欠いた経済活動を余儀なくされました。また、2月下旬にロシア・ウクライナ情勢が株価に与える影響や資源価格の高騰によるインフレの長期化が懸念されるなど、先行きは不透明な状況が継続しております。
当社ホスピタリティソリューション事業と関連性がある宿泊旅行業界においては、第3四半期においては新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が下がったことから、国内の日本人宿泊者数は回復を見せました。観光庁の統計によると、当第3四半期累計期間の延べ宿泊者数(インバウンド旅行者を含む)は、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年の同月と比較し、70.5%となりました。内訳としては、日本人の宿泊者数は87.2%にまで回復しましたが、訪日外国人の宿泊者数においては、4.5%に留まり、引き続き低い水準に留まりました。なお、延べ宿泊者数については、国土交通省観光庁の発表する数値に基づき集計しております。
新型コロナウイルス感染症の流行により、生活様式の変化を強いられる中、当社ホスピタリティソリューション事業においては、顧客価値向上のため、前年度に引き続き、主要サービスである「tripla Book」及び「tripla Bot」の機能改善に向けた開発投資を継続するとともに、2022年10月期第1四半期においては宿泊業界に特化したCRM/MAツールとして「tripla Connect」をリリースするとともに、2022年10月期第3四半期においては宿泊施設にて利用可能な決済ツールとして、「tripla Pay」をローンチいたしました。また、施設数を積み上げる営業活動に注力いたしました。
このような取り組みの結果、tripla Bookの施設数は、当第3四半期累計期間において、前年同四半期より619施設増の1,487施設、tripla Botの施設数は、当第3四半期累計期間において、前年同四半期より133施設増の969施設、当社の何らかのサービスが導入されている施設数は、当第3四半期累計期間において、前年同四半期末から604施設増の1,952施設となりました。また、取扱高/GMVは、当第3四半期累計期間において、前年同四半期比の258.9%増の20,890百万円となりました。加えて、販売可能客室数は当第3四半期累計期間において、前年同四半期より4.7万部屋増の14.3万部屋となりました。
以上の結果、当第3四半期累計期間の営業収益は554,772千円(前年同期比62.8%増)となりました。利益面については、営業利益は17,988千円、経常利益は18,537千円、当期純利益は11,515千円となりました。なお、第1四半期会計期間の期首から、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用したことに伴い、当第3四半期累計期間の営業収益、営業利益がそれぞれ42,036千円減額しております。なお、収益認識会計基準等の適用の詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項(会計方針の変更等)」をご参照ください。
なお、当社はホスピタリティソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。
3.キャッシュ・フローの状況
第7期事業年度(自 2020年11月1日 至 2021年10月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ166,133千円増加し、778,048千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果獲得した資金は166,683千円(前事業年度は239,905千円の使用)となりました。これは主に、税引前当期純損失132,172千円による減少、預り金の増減額328,913千円による増加等によるものです。預り金の増加328,913千円は主に、tripla Bookを利用したユーザーからの宿泊予約によるクレジットカード決済代金の増加となります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果獲得した資金は601千円(前事業年度は14,210千円の使用)となりました。これは主に、敷金及び保証金の返戻による収入4,954千円、有形固定資産の取得による支出4,483千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果使用した資金は4,188千円(前事業年度は278,075千円の収入)となりました。これは借入金の返済4,188千円によるものです。
4.生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当社は、インターネット上での各種サービスを主たる事業としており、生産に該当する項目がないため、生産実績に関する記載はしておりません。
b 受注実績
当社は受注生産をしておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。
c 販売実績
当社は、ホスピタリティソリューション事業の単一セグメントでありますが、以下のとおりサービスごとに記載しております。
なお、第7期事業年度及び第8期事業年度における販売実績は次のとおりであります。
第7期事業年度
(自 2020年11月1日
至 2021年10月31日)
第8期事業年度
第3四半期累計期間
(自 2021年11月1日
至 2022年7月31日)
金額(千円)前期比(%)金額(千円)
506,037+71.5554,772

(注) 1.上記の金額には、tripla Bookによる収益を含めております。当該金額は、第7期事業年度については212,493千円、第8期事業年度第3四半期累計期間については303,403千円であります。
2.上記の金額には、tripla Botによる収益を含めております。当該金額は、第7期事業年度については253,037千円、第8期事業年度第3四半期累計期間については249,319千円であります。
3.上記の金額には、System Integrationに掛かる一時的な収益を含めております。当該金額は、第7期事業年度については32,648千円、第8期事業年度第3四半期累計期間については169千円であります。
4.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、第7期事業年度及び第8期事業年度第3四半期累計期間において、総販売実績10%以上の相手先がないため、記載を省略しています。
5.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、本文中における将来に関する事項は、当書提出日現在において判断したものであります。
1 経営成績の分析
第7期事業年度(自 2020年11月1日 至 2021年10月31日)
当社の当事業年度の営業収益は506,037千円(前事業年度比71.5%増)、営業損失は△136,239千円(前事業年度△319,945千円)、経常損失は△132,013千円(同△296,285千円)、当期純損失は△128,582千円(同△303,940千円)となりました。
(営業収益)
当事業年度の営業収益は506,037千円(前事業年度比71.5%増)となりました。これは、tripla Bookの施設数が前事業年度から725施設増加し、当事業年度末において1,091施設となったこと、tripla Botの施設数が前事業年度から146施設増加し、当事業年度末において892施設となったこと、取扱高/GMVが当事業年度において10,623百万円(前事業年度比664.5%増)となったことによるものであります。導入施設数については大手チェーンホテルへの導入等により堅調に推移したと考えております。一方、取扱高/GMVについてはコロナ禍の影響による宿泊需要の低迷が継続した結果、低調に推移いたしました。
(営業損失)
当事業年度の営業損失は△136,239千円(前事業年度△319,945千円)となりました。営業収益は前事業年度から71.5%拡大したものの、営業費用の増加は4.4%の増加に留まり、642,277千円となりました。営業力及び商品開発強化などに対応する体制強化を行う一方で、業務改善等による生産性の向上に努めた結果、従業員数(臨時雇用を除く)は前事業年度から2名のみの増加に留まったことから、営業損失が大きく改善したと考えております。
(営業外収益、営業外費用及び経常損失)
当事業年度の営業外損益は、主に、補助金収入等による営業外収益4,965千円、支払利息等による営業外費用740千円を計上いたしました。この結果、経常損失は△132,013千円(前事業年度△296,285千円)となりました。
(特別利益、特別損失、当期純損失)
当事業年度の特別損益は、有形固定資産処分損による特別損失158千円を計上いたしました。この結果、法人税等△3,590千円計上後の当期純損失は△128,582千円(前事業年度△303,940千円)となりました。
第8期事業年度第3四半期累計期間(自 2021年11月1日 至 2022年7月31日)
当社の当第3四半期累計期間における営業収益は554,772千円、営業利益は17,988千円、経常利益は18,537千円、当期純利益は11,515千円となりました。
(営業収益)
当第3四半期累計期間における営業収益は554,772千円となりました。これは、tripla Bookの施設数が、前事業年度末から396施設増加し、当事業年度末において1,487施設になったこと、tripla Botの施設数が、前事業年度末から77施設増加し、当事業年度末において969施設となったこと、取扱高/GMVが当第3四半期累計期間において20,890百万円となったことによるものであります。導入施設数については、第7期事業年度と同様、大手チェーンホテルへの導入等により堅調に推移したと考えております。取扱高/GMVについては、コロナ禍の影響が第7期事業年度よりは緩和されたものの、オミクロン株のまん延等により主に第2四半期会計期間が少なかったため、引き続き低調に推移いたしました。
(営業利益)
当社では、営業力及び商品開発強化などに対応する体制強化を行っており営業・開発費用の支出が増加したものの、それ以上に営業収益を伸ばすことができたことにより、当第3四半期累計期間における営業利益は17,988千円となりました。なお、当第3四半期累計期間における広告宣伝費の額は13,143千円、給与手当の額は286,740千円、雑給の額は10,081千円、法定福利費の額は46,716千円となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
当第3四半期累計期間における営業外損益は、主に、為替差益等による営業外収益1,007千円、支払利息等による営業外費用458千円を計上いたしました。この結果、経常利益は18,537千円となりました。
(特別利益、特別損失、当期純利益)
当事業年度の特別損益は、固定資産処分益による特別利益105千円を計上いたしました。この結果、法人税等7,126千円計上後の当期純利益は11,515千円となりました。
2 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当事業年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社は、事業運営上必要な資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金、長期運転資金の調達について、自己資金又は金融機関からの借入を基本としており、都度最適な方法を選択しております。当社は設備投資については「第3 設備の状況」に記載のとおり少額であり、必要資金は具体的には、人件費、広告宣伝費等を含む運転資金、及び長期借入金の返済となります。特に、新しいサービス・プロダクトの開発、既存サービス・プロダクトの機能拡充のためのエンジニア採用等について資金配分を進めて参ります。
なお、当事業年度末における借入金の残高は240,000千円であります。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,286,884千円であります。
なお、当社は、ホスピタリティソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
3 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、事業年度末日における資産及び負債、会計期間における収益及び費用について会計上の見積りを必要としております。この見積りに関しては、過去の実績及び適切な仮定に基づいて合理的に計算しておりますが、実際の結果と相違する場合があります。
なお、財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
4 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、導入施設数(tripla Book、tripla Bot、当社のサービスを複数導入している施設数)、取扱高/GMV等を重要な経営指標と位置付けております。当該指標の具体的な数値については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
5 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に影響を与えるおそれがあることを認識しております。これらリスク要因の発生を回避するためにも、提供するサービスの機能強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。