有価証券報告書-第9期(2021/12/01-2022/11/30)

【提出】
2023/02/24 17:10
【資料】
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【項目】
123項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、内外における新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくと見込まれております。
当社グループの提供するAIクラウド基盤(IoP Cloud)は、「個人認証ソリューション」と、主にヒトの生活三大要素であります「衣食住」の分野において、モノやサービスの「個人最適化ソリューション」を提供しております。新型コロナウイルス感染症の蔓延によって非対面サービスの重要性が増しており、当社グループが提供する「個人認証ソリューション」と「個人最適化ソリューション」への需要は拡大傾向にあります。
「個人認証ソリューション」が提供するオンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」は、犯罪収益移転防止法の改正及びコロナ禍の影響を受け、市場が拡大しております。株式会社矢野経済研究所「eKYC市場に関する調査(2021年)」(2021年7月27日発表)によれば、eKYC市場の規模は2020年度の40億円から2024年度には63億円に達すると見込まれており、業界を横断して更なる広がりが予想されています。また、経済活動の停滞から、DX(Digital Transformation)への投資は一時的に減少しますが、中長期的には各業界におけるDXは加速し、活発な投資が行われることが見込まれます。
このような環境の中で、当社グループは、当連結会計年度を、前期に引き続き、国内における主力サービスの拡大期と位置付け、事業を展開してまいりました。
当連結会計年度における売上高は1,651,627千円(前連結会計年度比21.3%増)、EBITDA(注)は△573,451千円(前連結会計年度はEBITDA △691,052千円)、営業損失は579,991千円(前連結会計年度は営業損失706,056千円)、経常損失は600,945千円(前連結会計年度は経常損失695,026千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は561,569千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失568,988千円)となりました。
(注)EBITDA=営業利益+減価償却費(有形・無形固定資産)+株式報酬費用
なお、当社グループはIoP Cloud事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における総資産の残高は、前連結会計年度末に比べ263,423千円減少し、2,351,432千円となりました。流動資産は261,037千円減少し、2,296,396千円となりました。主な要因は、営業活動に伴う支出による現金及び預金の減少241,527千円であります。固定資産は2,386千円減少し、55,035千円となりました。主な要因は、有形固定資産の増加933千円、連結範囲の変更による無形固定資産の減少1,949千円、関係会社株式の減損による投資有価証券の減少1,361千円であります。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べ321,756千円増加し、1,666,783千円となりました。流動負債は30,856千円増加し、875,263千円となりました。主な要因は、事業拡大に伴い資金調達を行ったことによる短期借入金の増加284,000千円、1年内に返済予定のものについてリファイナンスを行い長期借入金に振り替えたことによる減少243,300千円であります。固定負債は290,900千円増加し、791,520千円となりました。要因は、1年内に返済予定のものについてリファイナンスを行ったことによる振替、及び事業拡大に伴い資金調達を行なったことによる長期借入金の増加であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ585,180千円減少し、684,649千円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純損失計上による利益剰余金の減少561,569千円、非支配株主持分の減少11,881千円であります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ241,527千円減少し、2,062,928千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは567,009千円の減少(前連結会計年度は757,769千円の減少)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純損失672,359千円(前連結会計年度は税金等調整前当期純損失715,889千円)、売上債権の減少27,926千円(前連結会計年度は売上債権の増加額78,960千円)、未払金の増加25,204千円(前連結会計年度は未払金の減少14,660千円)であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは10,559千円の減少(前連結会計年度は13,112千円の減少)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出10,569千円(前連結会計年度は有形固定資産の取得による支出12,888千円)であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは370,862千円の増加(前連結会計年度は479,906千円の増加)となりました。主な要因は、事業拡大に伴う開発資金としての短期借入れによる収入284,000千円(前連結会計年度は191,000千円)、長期借入れによる収入170,000千円(前連結会計年度は長期借入れによる収入300,000千円)であります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループはIoP Cloud事業の単一セグメントであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
IoP Cloud事業1,651,627121.3

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2020年12月1日
至 2021年11月30日)
当連結会計年度
(自 2021年12月1日
至 2022年11月30日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
株式会社Paidy338,11424.8307,70518.6


(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積もりを必要としております。経営者は、これらの見積もりについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なものは次のとおりであります。
(関係会社株式の評価)
関係会社株式については、純資産価額に基づく実質価額が著しく下落している場合、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合を除き、評価損を計上することにしております。業績悪化により純資産価額が減少し、事業計画に基づく回復可能性が認められないとされる場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産の減損の兆候がある資産または資産グループにつき、将来の収益性が著しく低下した場合には帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することにしております。将来の収益性は取締役会で承認された事業計画を基礎として判断しておりますが、当該事業計画は、売上高等に一定の仮定を用いて策定しております。事業計画や市場環境の変化により、見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異については、繰延税金資産を計上することとしております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の計上額に影響する可能性があります。
② 経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載の通り、主に個人認証ソリューションの好調が継続したことにより、1,651,627千円(前連結会計年度比21.3%増)となりました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価につきましては、主に個人認証ソリューションの売上が増加したことにより、563,414千円(前連結会計年度比3.2%増)となりました。その結果、売上総利益は1,088,212千円(前連結会計年度比33.3%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は1,668,204千円(前連結会計年度比9.6%増)となりました。これは主に、事業拡大に伴う人員増加により人件費が67,185千円増加(前連結会計年度比13.1%増)、採用教育費が41,754千円増加(前連結会計年度比266.1%増)するとともに、個人認証ソリューションの売上増加により通信費が34,170千円増加(前連結会計年度比26.7%増)したことによるものであります。その結果、営業損失は579,991千円(前連結会計年度は営業損失706,056千円)となりました。
(営業外損益、経常損失)
当連結会計年度の営業外収益は21,284千円(前連結会計年度比29.2%増)となりました。これは主に、補助金収入8,663千円(前連結会計年度は計上なし)、持分法による投資利益4,867千円(前連結会計年度は計上なし)の計上によるものであります。営業外費用は42,238千円(前連結会計年度比675.6%増)となりました。これは主に、上場関連費用21,723千円(前連結会計年度は計上なし)、支払利息10,593千円(前連結会計年度比110.5%増)の計上によるものであります。その結果、経常損失は600,945千円(前連結会計年度は経常損失695,026千円)となりました。
(特別損益、法人税等合計、親会社株主に帰属する当期純損失)
当連結会計年度の特別損失は71,414千円(前連結会計年度比242.3%増)となりました。これは関係会社社債を譲渡したことによる損失を計上したものであります。法人税等合計は1,600千円(前連結会計年度比15.3%減)となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純損失は561,569千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失568,988千円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、事業開発に係る人件費であります。当社グループは、必要な資金を主に事業会社及びベンチャーキャピタルからの第三者割当増資、並びに金融機関からの借入により調達しております。今後につきましては、更なる事業開発のための投資を引き続き行っていく想定であります。これらの資金需要は内部留保で賄うことを原則としながら、中長期における資金需要並びに金利動向等を注視したうえで必要に応じて機動的に資金調達を行い、財務の健全性を維持する方針であります。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、持続的な事業拡大と企業価値向上を重要な経営目標とし、各経営課題に取り組んでおります。